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e.コラム

理屈っぽく、アレルギーを考えた

私は、理屈っぽいかもしれません。
いや、かなり理屈っぽいと思います。

大学生で、英語でのアカデミック・ディベートにハマりました。
ディベートでロジカルシンキングを学び、自分の発言、相手の発言にロジックが通っているか、通っていないか、どちらのロジックが勝っているか、ロジックで勝るためにはどうしたらいいか、を考える癖がつき、理屈っぽい性格に磨きがかかりました。

大学の研究室で、「データ」の精度や解析について学びました。

ディベートの文献調査も英訳も練習も試合も、研究室でのしごき(指導)も、かなり追い込まれてキツかったのですが、アドレナリンが出て楽しかったですし、とてもありがたい経験でした。

「そんな重箱の隅みたいな事はどうでもいいじゃないか」と言われても、それがロジックの成立には大事だからと譲らない所とか、つい反論してしまう所とかが、理屈っぽいと言われる所以だと思います。(しかし、日常会話は曖昧な言葉を使ったり、感覚的な言い方も多用するので、いつも理屈っぽい訳ではありません。)

子供の食物アレルギー

友人の子供が卵アレルギーで、ご飯作りが悩ましいだけでなく、外食しようとしても、何が食べられるかわからないとか、給食を食べられないので1人だけお弁当を食べないといけない等、親子とも大変な苦労をしています。
それで、子供の食物アレルギーのメカニズムについて情報収集をしました。

■発症のメカニズム

アレルギー反応のメカニズムは、ある物質が体内でアレルギー物質として認識され(抗体ができ)るために、その成分を摂取した際にアレルギー反応が生じる。と言われています。

出典:ぜん息予防のためのよく分かる食物アレルギー対応ガイドブック2014
(独立行政法人 環境再生保全機構)

でも、その物質が「選択的にアレルギー物質として認識される」メカニズムは解明されていません。

アレルゲンである小麦や卵、牛乳、大豆のタンパク質は物質量が大きいので、赤ちゃんの消化器官では消化しきれずに異物として認識されてしまうとか、現代社会は清潔になってきて免疫システムが発達する時期に十分なホコリや細菌(アレルゲン)に曝露しないために、無害なはずの物質にまで免疫システムが過剰反応してしまう、とか、腸内細菌のバランスが影響するとか、食生活が肉食になったせいではないかとか、農薬などの化学物質も関係しているとか、精製された砂糖が諸悪の根源だとか、ネットでの検索結果も含めると、様々な説が語られています。

でも。

分子量が大きい物質を含む食べ物は他にもありますし、小麦が主食の国で生まれた日本人の赤ちゃんにアレルギーが多いという話は聞きません。昔よりも肉食になったのは事実でしょうが、肉食の国の方がアレルギーの発症率が高いという調査結果はなさそうですし、化学物質も影響はある気がしますが、それだけが影響しているとは思えません。

幼児・児童期の食物アレルギー、成人の食物アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症などをごちゃまぜにして考えているのではないかと思われるものもありますし、最初から悪者であると決めつけているような印象を受ける説もあります。

■コホート研究

清潔さ(衛生仮説)については、都会よりも農家の子供のアレルギー発生が少ない都心部の幼児でアレルゲンと細菌に富む家庭の子供の方が、アレルギーと喘息の発生が少なかったなど、コホート研究結果があります。

コホート研究は、数十から数百人を対象として、環境と症状に関連があるかを調査します。私たちが肌感覚として感じるよりも、対象数が多いですし、ある程度条件を揃えた上で調査・解析しますので、肌感覚よりも事実に基づく現象を把握する事が出来ます。

もちろん、割合が多い・少ないという話ですから、コホート研究で導き出された結果に対しても反例(例えば、農家の子供であってもアレルギーや喘息を発症している人もいる)は当然存在すると理解しておかなければいけません。

現象としてはそういう傾向がみられるという事は事実だと思いますが、直接的には何が要因で、どのようなメカニズムでそういう現象が起きているのか、どうすれば防げるのかについてはわかりません。

■食べ物に対して免疫反応を抑制する仕組み(免疫寛容)

そもそも食べ物に対しては、免疫反応を抑制する仕組みがあります。これは、経口免疫寛容と言われます。食べたものに対して免疫作用が働かない様にする(寛容になる)事によって、通常、食物に対するアレルギーは起こりません。食物アレルギーは、経口免疫寛容が適切に働かないことが原因で生じている、と言えます。

■皮膚からの暴露

最近の研究では、経皮摂取、つまり「肌から体内に侵入した成分に対して抗体ができる事によって、アレルギー反応が起きる」という説があります。

経口摂取(食べたもの)に関しては免疫寛容という仕組みがありますが、経皮摂取では免疫寛容という仕組みはありません。

赤ちゃんは生後3か月頃から肌が乾燥してきます。その対応策として、保湿が大切なのですが、保湿するために塗ったクリームに「食べ物由来成分」が入っていると、それに対して抗体ができてしまい、将来その成分を食べた時にアレルギー反応が出る、というメカニズムである、という考え方です。
食べ物由来成分は、お肌にやさしい、体にもいいというイメージがありますが、実際に食べて免疫寛容が確立される前に、肌から体内に入れてしまうと、免疫システムが働いて防御対象となってしまう、という流れです。

NHK 今日の健康 ホームページ
子どもの食物アレルギー 新しい対策(2016)
大矢 幸弘(国立成育医療研究センター 医長)

Bio&Anthropos ホームページ
「いま、アレルギーのメカニズムが大きく塗り変わろうとしています」(斎藤博久インタビュー①)(2015)
斎藤博久(国立成育医療センター研究所副研究所長/日本アレルギー学会理事長)

東京都消費生活総合センター わたしは消費者 ホームページ
食物アレルギー発症のメカニズム(2012)
福冨 友馬(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)

■エコチル調査

現在、子どもの成長や健康に影響をあたえる「環境要因」をさがし、解明していくことを目的に、10万人の子供と両親を対象としたエコチル(エコロジー+チルドレン=エコチル)調査が環境省により行われています。ヒアリング調査に加え、血液サンプルや生活環境のサンプルを採取、分析し、さらにはサンプルを保存して、後からでも遡って分析ができる体制になっています。

調査対象も、化学物質の暴露による影響の他、遺伝的要因や、社会・生活習慣要因(地域(住所)、住居(種類、築年数、空調等)、両親の学歴・職業歴・勤務状況・収入、両親の喫煙・飲酒、食事、家庭環境(兄弟の数、ペット等)、遊び場の環境、学校の環境等)についても調査の対象とされています。

2011年にスタートした調査ですので、因果関係の解明に関する調査結果はまだ公表されていませんが、今後、調査対象の子供が成長するにつれて、妊娠時・幼少時の環境がその後の成長・発達にどの様な影響を及ぼしているのかの解明が進むと思います。

エコチル調査ホームページ
10万組の親子から考える アレルギーについて
大矢 幸弘(独立行政法人国立成育医療研究センター エコチル調査メディカルサポートセンター特任部長 生体防御系内科部アレルギー科医長)(2015)

エコチル調査 なぜ必要なの?

■さいごに

今まで漠然と考えていた事を、文章に書いていくと、自分ではロジックが通っていると思っていた事も通っていなかった事に気が付きました。書く事によって考えを整理できるとはこの事かと、改めて感じました。

それと、疫学的な研究や分子生物学的な研究によって、新しい発見がなされれば、今まで有力と言われていた説が変わる事もありますので、情報収集をして最新情報にアップデートしていく事も必要だなと思いました。

因みに、娘も理屈っぽく育っている気がします。

【参考ホームページ】

MedicalFinderホームページ
経皮,経腸感作と喘息発症(2014)
煙石 真弓、加藤 政彦、望月 博之(東海大学医学部専門診療学系小児科学)

独立行政法人 理化学研究所ホームページ
食物アレルギーの画期的な治療法につながる経口免疫寛容の仕組みを発見
-マウスの経口免疫寛容の分子作用機構を世界で初めて証明-(2010)

データベースプロジェクトホームページ
経口免疫寛容の分子生物学(1994)
上野川 修一・久恒 辰博・八村 敏志(東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命科学専攻)


この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました

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