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その道の人に聞く

溶融スラグに迫る その2
~スラグの用途~

宮城大学 食産業学群
北辻 政文(きたつじ まさふみ)教授

宮城大学ホームページ

「スラグ」という言葉は皆さん聞いたことはあると思いますが、どうやって作られていて、どんなものなのか?
素朴な疑問を、溶融スラグの専門家の北辻教授にお伺いしました。

【その2】スラグの用途

少し話が外れましたが、溶融スラグはコンクリートの骨材として使えるのですが、溶融スラグは「生コン」のJISになってないのです。JISになっているのは、道路の側溝とか、擁壁とかのプレキャストコンクリート製品のみなので、使用用途が限られるのです。

生コンは、何に使われるのですか?

生コンは土木工事のみならずマンション建設など建築構造物にも使われます。溶融スラグを用いたコンクリートも、力学的な性能は一般のものと同じで、全く問題なく使えます。
ただし、イメージが悪いですね。例えば、ご自宅のマンションを買うとします。最近は、5,000万円とか7,000万円くらいしたりしますので、一生で一回の買い物ですよね。その際、このマンションは環境にやさしいごみ溶融スラグが使われています、と言われたときに、あなたはそのマンションを買いますか?

私が溶融スラグに関する講演をして、溶融スラグの容器のふたを開けて見ていいですよ、というと、みんな最初は臭いを嗅ぐんです。原料がごみだから臭いんじゃないかって。

ごみ溶融スラグを使うとなると、マンションを販売する時の説明も難しいし、イメージが悪いので、建築では使いたくないのだと思います。

先に述べた鉄鋼スラグは、100年くらいの利用実績があり、生コンにも使われていますが、溶融スラグは、まだまだ30年くらいと利用実績期間が短いこともあり、総論賛成、各論反対な状況に陥っていて、なかなか普及しないのが現状ですね。

スラグに含まれる有害物質成分が溶け出してくるという事はないのですか?

先ほど、スラグにはシリカが含まれているとお話ししましたね。これが、封じ込めます。シリカのガラスネットワークはとても強いのです。
バカラのグラスをお持ちでしょうか?

持っていません。

フランスの伝統的なガラス食器で、非常に高価です。

欲しいです。

ご主人に買ってもらってください。
バカラのグラスは、実は、鉛ガラスなのです。だから、重いのです。鉛は人体に有害な重金属です。スワロフスキーのジュエリーはお持ちですか?

キラキラするので、好きです。

キラキラきれいですよね。あの光、ああいう光が出るように加工できるのが鉛ガラスです。
日本の伝統工芸の切子も鉛ガラスです。

つまり皆さんは、鉛が入っているグラスでお水とかお酒とかを飲んでいるわけです。しかしバカラのガラスからは重金属は外に出てこないのです。これは、シリカのガラスネットワークで、鉛が固定され溶出しないためなのです。
それと同じで、仮に溶融スラグに重金属が含まれていても外へ溶け出さないことも溶融スラグの特徴です。

もう1つ理由があります。溶融温度は1,300度以上と非常に高温になりますので、ほとんどの金属は高温で飛んでしまい、多くの金属や有機系の物質はスラグに含まれません。このため、土壌環境基準は20項目あるのですが、スラグの分析項目は9つだけになっています。

もう1つ理由があります。溶融温度は1,300度以上と非常に高温になりますので、有害な有機物は熱分解され、さらに沸点の低い金属は高温で飛んでしまいます。このため、多くの有害な金属や有機系の物質はスラグには含まれていません。これが、土壌環境基準には分析項目が20項目以上あるのですが、スラグの分析項目は9つだけになっている理由です。

溶融スラグの骨材も、天然の砕石も品質は変わらないし、コンクリートは、プレキャストコンクリートも生コンも、同じなのです。

溶融スラグの生産量が年間80万トンを超えてきたので、今後のことを考えると、生コンで使わないと、利用率が低下すると考えられます。そこで、本研究室では生コンに使う研究をしています。いや、研究といいますか、もう、実績作りです。溶融スラグを使って生コンを練って、それで、大丈夫だね、ってみんなから信頼をもらえればいいのではないかと思っています。

漁礁ブロック

それと、今行っている研究が、漁礁ブロックの開発です。
溶融スラグを大きな器に入れることが出来れば1トンくらいの石の塊ができます。それを研究レベルですが人工の漁礁として活用できないかという研究をやっています。

ここ数年、磯焼けが極めて深刻です。磯焼けは海藻が生えなくなる状態になることですが、一つの理由は栄養塩や鉄イオンが不足しているということです。鉄イオンは光合成色素であるクロロフィルやβカロチンの濃度を高め、硝酸塩を摂取しやすくする作用があることから、海藻の生長、増殖には不可欠なミネラルです。

私たちはスラグの溶融・硬化過程において、スラグにあえて鉄(FeO)を供給してブロックを作製しました。青森県の今別、八戸の二カ所に置きましたが、モズクやコンブなど多くの海藻が生えました。とくに、八戸では大量の昆布が3メートルくらい伸び、非常に効果が大きかったです。

左:FeOを添加したスラグ人工石(約1,000kg)
右:コンクリートブロックに海藻類は着きにくい 1ヵ月後(青森県八戸市)

比較のためにコンクリートブロックも設置しましたが、設置後1ヶ月の観察では、コンクリートブロックには藻類がなかったのに比べ、人工石には明らかに藻類の着床が見られました。

スラグ人工石に着床した海藻類 6ヵ月後(青森県八戸市)

人工石設置後6ヶ月の状況では1m程のコンブを中心に、ワカメ、アオサ、アカバギンナンソウ、ダルスが確認されました。今別地区では大量のモズクが生い茂り、モズクの中に魚が隠れていることがわかります。この地区は砂地が多く、人工石を設置すれば6ヶ月で、魚の生息場が形成されることが確認できました。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は「スラグを活用する必要性」についてお伺いします。


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