近年、リチウムイオン電池(LIB)の火災の急増や、リサイクルの重要性が高まっていることから、LIBに関する制度の改訂などが進んでいます。今回は、制度を中心にLIBがどのように適正処理・リサイクルされているのかをご紹介します。
■急増する火災事故
環境省の市区町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策集によると、令和5年度には全国の市区町村でリチウムイオン電池等に起因する火災事故等が8,543件発生しています。ごみ収集車や処理施設での火災の場合、作業員へ危害が及んだり、処理施設の稼働停止により地域全体のごみ処理が滞る可能性も示唆されています。こうした事態を防ぐため、家庭でも企業でも適正な処分が求められます。
■重要物資の確保
リチウムイオン電池をはじめとした蓄電池は、生活・経済に大きく影響がある物資として、経済安全保障推進法における「特定重要物資」に含まれています。またLIBに含まれるリチウム、コバルト等も特定重要物資(重要鉱物)に含まれており、安定供給の確保に向けた取り組みの中にはリサイクル関連の施策が含まれています。
> 経済産業省:重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針
■リチウムイオン電池の回収・リサイクル制度
リチウムイオン電池を廃棄する場合は、廃棄物処理法に基づいて適正に収集、運搬、処分、リサイクルすることが基本ですが、その回収・リサイクルについては、現在、複数の法制度によって実施されています。
1.資源有効利用促進法
リチウムイオン電池を含む小型二次電池は「資源有効利用促進法」により、製造事業者・輸入販売業者などによる自主回収、リサイクルが義務付けられています。この義務を果たすため、蓄電池やその使用機器の製造メーカー等約400社で構成される一般社団法人JBRCが中心的な役割を担っています。
廃棄されたLIBについては、EPR(拡大生産者責任)の考え方に則り、資源有効利用促進法に基づく自主回収を進めるため、JBRCが電気店やスーパーなどの協力(協力店約7,000か所)を得て回収・リサイクルする仕組みが構築されています。この場合、回収された廃電池は店舗から排出される産業廃棄物となります。
この仕組みの中では、自治体が家庭ごみなどとして回収・保管し(約1,300か所)、それをJRBCが回収する場合もあります。この場合は、収集された廃電池は一般廃棄物となります。
廃LIBの取扱量は、2024年度で510tとなっており、そのうち自治体の回収量は205tです。JBRCは、産廃、一廃両方の廃棄物処理法の広域認定を取得しており、両方とも自治体の許可無しで取扱うことができます。
(出典)一般社団法人JBRCリチウムイオン電池の適切なリサイクルについて
江戸川区の事例
東京都江戸川区では、JBRCが推進する回収システムを活用しています。JBRCは加盟メーカーのリチウムイオン電池、ニカド電池、ニッケル水素電池の回収を行っており、家電量販店などの「排出協力店」で受け付けています。JBRCの資料によれば、回収する場合には、放電し、絶縁テープなどにより絶縁することが必要とされています。
> 江戸川区:各種電池の処分方法
一方、JBRC会員以外のメーカーの電池や、膨張・変形した電池については、区の清掃事務所または清掃課の窓口で回収しています。このように、電池の状態やメーカーによって回収先が異なる場合があります。
JBRCによる回収と再資源化スキーム
上述の通り、JBRCでは、協力店や自治体に集められる廃LIB等について、依頼を受けて回収しています。集められた廃LIBは、全国で5か所のリサイクラーに送られ再資源化工程を経て、コバルト、ニッケル等の再生資源が回収されています。ちなみに、DOWAエコシステムグループのエコシステム秋田もJBRCのリサイクラーに含まれています。
発火事故の防止や回収率向上のための制度改正等の取り組み
上記の廃LIB等の回収システムは、資源有効利用促進法に基づいて構築されたものですが、この制度では、 ① 回収再資源化の実施状況をモニタリングする仕組みとなっていないこと、 ② 回収スキームが構築しにくいこと、 ③ リチウム蓄電池を取り外せない一体型製品の増加(一体型は義務対象外)等から、回収率が低いという課題がありました。
さらに、 小型バッテリーに起因の発火事故が増加していることから、回収率を向上させることが求められました。
このため、2025年6月に資源有効利用促進法が改正され、廃LIB等の指定再資源化製品について、高い回収目標等を掲げた自主回収・再資源化する計画を申請し認定を受けたメーカー等には廃棄物処理法の特例措置(適正処理の遵守を前提として業の許可が不要)を講じ、回収を促進することとしています。
また、発火リスクの高い製品として、電源装置(モバイルバッテリー等)、携帯電話用装置、加熱式たばこデバイスを指定再資源化製品に加えること、さらに、LIBを取り外せない一体型製品についても義務の対象に追加することが予定されています。
2.小型家電リサイクル法等による回収・リサイクル
小型家電リサイクル法は、家電リサイクル法で対象となる4品目(テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)以外の家電製品を対象としており、LIBを含む小型家電製品はその小型家電リサイクル法のシステムでも、回収されます。同法では、小型家電リサイクル法認定事事者及び市町村が、対象となる小型家電を回収し、破砕・分別等前処理された後、国内製錬等で金属回収等を行っています。DOWAエコシステムの子会社2社(エコリサイクル、アクトビーリサイクリング)も認定事業者として回収・リサイクルに貢献しています。
現在、小型家電リサイクル法でも、加熱式たばこデバイス、電子たばこデバイス、モバイルバッテリー、ポータブル電源を回収対象の品目に加えることを検討していますが、LIBを含む小型家電を取り扱う認定事業者でも、同様に発火事故が発生しており、その防止が課題となっています。
3.再資源化事業等高度化法
廃LIB等については、他にも2025年11月から施行される 再資源化事業等高度化法に基づいて、回収・リサイクルされることが想定されており、資源有効利用促進法での対象拡大とも相まって、今後、さまざまな制度で回収が進められることになります。
> 参考:資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律が全面施行されました
■自治体等による回収、処理・リサイクル方法
1.自治体による処分方法
リチウムイオン電池の回収方法は自治体によって大きく異なります。そのため、自分が住んでいる自治体のウェブサイトやごみ分別ガイドで最新の情報を確認する必要があります。
上述の通り、JBRCのスキームを活用して排出する人が家電量販店等に直接リチウムイオン電池を持ち込むケースもありますが、自治体が回収する例もあります。例えば、世田谷区ではリチウムイオン電池等を不燃ごみとして回収する取り組みを始めています。その他の不燃ごみとは袋を分け、膨張したものは別の回収窓口に持ち込むという形で安全対策がされています。
> 世田谷区:10月から充電式電池を収集します
先ほども出てきた市区町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策集によれば、ステーションでの回収や清掃工場への持ち込みをルールとしている自治体が多いようです。
2.産業廃棄物の処分方法
事業活動で発生するリチウムイオン電池は、産業廃棄物として適切に処理する必要があります。JBRCでも、排出者登録をした事業者からの小型充電式電池が回収されています。
車載用などの大型リチウムイオン電池の処理・リサイクルについては、DOWAグループの事例について、以下の記事でもご紹介しています。
> LIB(リチウムイオンバッテリー)とは? その5 DOWAのLIBリサイクル
また、当社はリチウムイオン電池の火災事故防止につながる啓発・回収・イベント等を実施する、環境省のLIBパートナー企業としても登録されています。
■おわりに
リチウムイオン電池は便利な一方で、適切に処分しなければ重大な事故を引き起こす可能性があります。また重要な鉱物を使用していることもあり、リサイクルの重要性も高まっています。これらのことから、資源有効利用促進法、小型家電リサイクル法、再資源化事業等高度化法と、複数の法制度によって適正処理・リサイクルが進められています。
関係省庁の取組については、2025年12月13日に出された「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」でも情報発信されています。製造~処理・再利用までの各段階における対策や、各省庁の個別の施策などについて取りまとめられています。
> 環境省:リチウムイオン電池総合対策パッケージの策定について
DOWAグループも、JBRCリサイクラーとしての役割、小型家電リサイクル法認定事業者としての活動を通じて、リチウムイオン電池の適正処理とリサイクルに貢献してまいります。
この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました











