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循環型都市計画進行中のフィレンツェのゴミ事情
ユネスコ歴史地区のゴミ事情

イタリア中部トスカーナ州フィレンツェ県の州都でもあり県都でもあるフィレンツェ市は、人口38万人、年間に1千万人を超す観光客が世界中から訪れる観光都市です。

中でもユネスコ歴史地区は、ルネッサンス時代からの貴重な文化遺産を維持するために、景観や環境に配慮した都市計画が進められています。その一貫として進められている循環型ゴミ改革プロジェクトは、2021年10月より開始され順調に各地区で進行され来年内にも完成する予定です。

イタリアでは、ゴミなど廃棄物処理に関連する事業は、各地方団体であるコムーネ(市町村)に一任されています。フィレンツェ市は、ALIAという廃棄物収集事業社に業務委託して、ごみ収集、道路清掃、廃棄物の資源化などを行なっています。

(参考)Firenze Città Circolare – Cambia la raccolta differenziata

今回は、フィレンツェの歴史地区チェントロのゴミ事情をレポートいたします。

地下埋込型コンテナの設置

チェントロの歴史地区には、景観に配慮した地下埋込型コンテナが街のあちらこちらに配置されています。一般家庭、留学生、ビジネス短期滞在者などがゴミをここに持ち込んで捨てるようになっています。

市場やレストランなどの飲食店が多い地区には、特別に生ゴミとプラスチック専用の地下埋込型コンテナをまとめて設置しています。周辺の飲食店は、残飯や使い捨て容器の一つとしてのプラスチック皿などの廃棄物をこの場所に捨てることができます。

ゴミの収集は、中型トラックが日に何度か回収にきます。特に、生ゴミは季節により収集回数を変え腐敗や悪臭を防ぐ対策がなされています。

では、この地下埋込型コンテナからどのようにしてコンテナのゴミを取り出すかというと、トラックがクレーンでコンテナごと持ち上げて、トラックの荷台にゴミを落とします。そして、すぐにまたコンテナを元の地下に戻します。

そのダイナミックな回収作業に、カメラを向ける観光客をよく目にします。きっと、日本でも、珍しい収集方法なのではないでしょうか?

地下埋込型ゴミコンテナは、地上に設置されているゴミポストの面積は小さいのですが、その地下には深さ約2~3mの金属製コンテナが配置されています。そのため、地上で見るよりも大容量のゴミを収集することができます。

地下埋込型であるため、ゴミが路上に溢れ出ることもなく、また密閉型システムであることから臭いも最小限に抑えることができます。ネズミや害虫などの侵入も防ぎ、衛生面でも非常に効率的なシステムといえるでしょう。

歴史地区内は、車両侵入禁止地区も多く、また道幅も狭い石畳の道が多くあります。そのため、コンテナを配置できる地区は、回収トラックが進入できる道幅のある地区に限られます。トラックの運転手は熟練した手つきで細い道を廻りながら、ゴミを回収します。

フィレンツェは、『天井のない美術館』と称されるほどに、多くの文化遺産が歴史的地区内に現存する街。そのため、景観との兼ね合いを非常に重視しており、改装一つするにも厳しい審査をクリアしなければなりません。

そんな美観を大切にするフィレンツェ市のゴミポストのデザインは、シンプルで機能的、どの街角に配置しても違和感のない工夫が施されています。

例えば、分別ゴミの表示。色分けして、捨てられるものを実物表示しています。極力文字を省いて、何が捨てられるのか、これならば世界中から訪れる観光客もひと目でわかりますね。観光大国ならではのアイデアなのではないでしょうか。

ゴミポストは、以下のように分別ゴミを色分けしています。

写真:左から、茶色・青色・灰色のゴミポスト

茶色:生ゴミ

パン、野菜、果物、肉、コーヒーかす、ティパック、小枝、花、木製箱、木製かご、湿った紙やナプキン

黄色:紙

ダンボール、レシート、封筒、コピー用紙、包装紙、商品の包装紙、卵パック、新聞、雑誌、本、ノート、ティッシュ、ナプキン、汚れていないピッツァの箱

青色:プラスチック

ペットボトル、洗剤ボトル、プラスチックハンガー、テトラパック、プラスチック皿、アルミ缶、食品プラスチック容器、発砲スチロール、プラスチック製フィルターなどプラスチック製家庭用品

緑色:ビン

ビン、グラス、ビン容器、ガラス

灰色:その他の不分別品

タバコの吸殻、スポンジ、ゴム手袋、サングラス、ぬいぐるみ、人形、歯ブラシ、櫛、かみそり、おもちゃ、傘、ライター、CD、ビデオ

大型ゴミ:収集番号を取得後に戸別収集

家具、ベッド、洗濯機や掃除機などの家庭用電化製品、コンピューター、材木、鉄くず

A-passの配布

今回のゴミ改革プロジェクトの要の一つは、不法投棄をなくし都市環境を整備するための税収を確保することでした。歴史地区外でも、県や州を越えて不法投棄に来る侵入者が後を絶ちません。時には、路上に溢れた投棄物が交通を妨げることもありました。

こうした問題に対処するために、A-passというデジタルシステムが導入されました。小型のデジタルキーA-passは、デジタル開閉式のゴミコンテナを使用するためのパスキーです。A-passは、TARI(ゴミ処理税)を延滞せずに納税している世帯にのみ配布されます。A-passがなければコンテナの開閉もできないため圏外からの不法投棄も減少しました。

このA-passシステムは、同時に各世帯のTARI(ゴミ処理税)の支払状況を確認し、指定場所以外での不法投棄を監視する機能も備えています。現在もフィレンツェ近郊にA-passシステムのデジタル開閉式ゴミコンテナの設置が進められています。

各世帯のゴミ処理税は、家族の世帯人数、家屋の延床面積、固定資産税などを総合して算出されます。夫婦に子一人の三人家族が150m2のマンションに居住している場合、年間のゴミ処理税は、約160€となります。

A-passシステムの導入により、市内のゴミポストもすべてデジタル式ゴミポストに交換されました。現在、どこまで交換作業が終わっているのか、進捗状況をALIAのサイトからいつでも確認することができるようになっています。

(参考)A che punto siamo – Firenze Città Circolare

住民登録のない観光客、留学生、一時滞在者などには、政府から一時登録の案内が送られ、携帯電話からサイトにアクセスすれば、ゴミポスト用のアプリで簡単に操作できるシステムが整備されたため、世界中からの観光客も迷わずにゴミ処理に協力してくれるようになりました。

また、A-passのないゴミの投棄は、不法投棄として最高500€の罰金が科せられます。

観光客用ゴミポスト

地下埋込型ゴミポストの他にも、歴史地区内には不分別のゴミポストがいたるところに配置されています。主に、観光客のペットボトルやジェラートのカップ、立ち食いピッツァの紙などのゴミです。このゴミポストは、特に普通車両の進入できない地区に設置され、ゴミは小型カートを手押しした清掃人が日に何度か回収にきます。

こうして、徹底的に街の景観を守り次世代に文化遺産を伝えることが、フィレンツェ市民の役割だと、自覚しているフィオレンティーナも多くいるので、安心して今日も暮らしていけるのでしょう。


この記事は
イタリア在住フリーライター
小川ひろみ が担当しました

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