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サステナブルなファッションを「知る」ということ

近年アパレル業界において「サステナブルなファッション」が推進されており、最近では私たちの周りでも耳にすることが多くなりました。しかし、私たち消費者側には「サステナブル=環境に優しいエコ商品」という具合にしか届いていない印象を受けます。

ここにおけるサステナブルは、ファッション業界が危害する世界の自然環境や労働など、幅広い問題の解決を目標としています。この取り組みは国連機関も手を取り合って推進しており、地球全体における課題でもあるのです。

出典:UN ALLIANCE FOR SUSTAINABLE FASHION
ユニセフやILOなど国連が手を取り合い、持続可能な開発目標に貢献することを目的とした同盟。

■汚染される自然環境や劣悪な労働環境

日本に住んでいると考え難いことが世界で起きています。現状の一部を列挙しました。

【衣料・繊維産業の現状】(2015年)

世界の衣料・繊維産業 (参考)日本
水の消費量 年間790億トン(*1) 年間799億トン(*2)
※取水量ベース
二酸化炭素の排出量 年間17億1500万トン(*1) 年間12億2500万トン(*3)
廃棄物の排出量 年間9,200万トン(*1) 年間4,398万トン(*4)
※一般廃棄物(家庭ごみ・し尿など)

世界の衣類・繊維産業が消費する水は790億トンで、これは一般的な競技用プール316万個分に相当します。参考に日本の水の消費量と比較すると、日本で1年間に消費される水は799億トン。衣類・繊維産業では大量の水が使われていることが分かります。
衣料・繊維産業の水の消費量、二酸化炭素の排出量、廃棄物の排出量は2030年までに少なくとも50%増加すると推測されており(*1)、干ばつや水質汚染、気候変動など多くの自然破壊を加速させる事が危惧されています。

身近なもので例をあげると、ジーンズ1枚を制作するにも7500ℓの水(人間が7年かけて飲む量)を必要とします(*5)
さらに染色には大量の水と化学物質を使用しますが、染色工場のある発展途上国は環境法の規制が緩いため、これらはろ過されることなく自然界に排出されることもよく起こっています(*1)

【児童労働の現状】

●2016年の児童労働者の数は1億5200万人(5歳~17歳)(*6)

貧困や不十分な教育、紛争などが原因となり、幼い子どもたちが働いています。その中には、先進国が設立した縫製工場もあり、劣悪な作業条件の下で雇われていることが問題視されています。

出典:国際労働機関 左記を参照に筆者がグラフを作成

児童労働は減少傾向にありますが、まだ何億人もの子どもたちが苦しんでいます。SDGsの目標では2025年までに撲滅することを掲げています。
私たちが安く購入できるファッションの裏側には、このような状況が潜んでいる場合があるのです。

■私たちにできること

先にお伝えした問題以外にも、マイクロプラスチックによる生命体の危機や繊維工場の不衛生さなど抱えている問題は多岐に渡ります。

これらの話を聞くと衣類の購入を控えたくなりますが、不買は問題解決になりません。廃棄物の量は減るかもしれませんが、衣服が製作されなくなることにより労働者の給与が減り、生活することがさらに困難になってしまうからです。

では私たちにできることは何でしょうか。

【製作過程における背景を知る】

このコラムで、世界が抱えている自然環境や児童労働の問題を少しでも知ることができたかと思いますが、このように現状を知ることも私たちができる行動の1つです。

例えば、着ている服のタグを見ると、生産国が明記されています。その国の情勢を調べてみることも良いでしょう。

写真:筆者撮影―タイ製のパーカー(左)と中国製のルームウェア(右)。
そのほか、バングラデシュ製やミャンマー製の衣類も発見しました。

【ブランドのサステナブルな商品や活動に注目する】

メジャーなところで言うと、ユニクロではリサイクル素材で作られたダウンが誕生しました。着古した後は、ユニクロ店舗に設置してある回収BOXに入れると、工場でダウン・フェザーを再生され、新たなダウン商品として発売されます。

NIKEでは、工場で廃棄された材料を使ったスニーカーも誕生しました。製造時に排出される二酸化炭素も最少に抑えることに成功しています。また、アディダスでもリサイクル素材を使用したウェアが誕生しており、スポーツブランドでも取り組みが進んでいることが伺えます。

アウトドアファッションブランドPatagoniaは、約30年前から地球環境に積極的な取り組みを見せており、今シーズン(2020年12月現在)製品の68%はリサイクル素材でできています。

また、フェアトレードの商品に注目してみるのも良いでしょう。開発途上国の生産者や労働者と公正な貿易を行い、適正な価格で仕入れているため、彼らの労働環境が保証されます。

出典:FAIRTRADE JAPAN -国際フェアトレード認証ラベル。
このラベルが付いている商品は、フェアトレードの基準を満たしています。

フェアトレード専門ブランドPeopleTreeでは、自然素材やそれぞれの国の伝統的な技法を活かした商品を作ることで、現地の人々が安全かつ収入を得るシステムを構築しています。

このように、ブランドが掲げている目標や活動を知り、共感できるものを取り入れていく。そしていつしか処分する時の環境面を考えて、商品を選ぶことをしてみてはいかがでしょうか。

そのほかにも、リサイクルショップで商品を購入する、服をリメイクするなど私たちにできることはたくさんあります。製造から購入、そして処分までに関わる背景を知ることが、サステナブルなファッションの核心だと考えます。

【参考文献】

*1)
Nikolina SAJN(2017)
Environmental impact of the textile and clothing industry: What consumers need to know
*2)
国土交通省
平成30年版 日本の水資源の現況 本編 第二章 水資源の利用状況
*3)
全国地球温暖化防止活動促進センター
日本二酸化炭素排出量の推移(1990年-2018年度)
*4)
環境省
一般の廃棄物の排出及び処理状況等(平成27年度)について
*5)
世界自然保護基金(WWF)
WWF(2012) 生きている地球のためのより良い生活
*6)
国際労働機関(ILO)
ILO(2017) - 児童労働の世界推計:推計結果と趨勢、2012〜2016年

この記事は
WEB記事やシナリオを執筆する文筆家
百奈山えんな が担当しました

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