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法規と条例記事一覧 ▶︎

国家戦略特別区域における自然由来の汚染土壌の取扱いに関するパブリックコメント

【1】意見募集の概要

「環境省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る省令の特例に関する措置を定める命令(案)」(以下、命令案)に関するパブリックコメントが行われています。
検討する時間が少ないですが、特例措置の規制緩和については一考する必要があると思いますので解説します。募集締め切りが2015年12月6日となっておりますので、御意見のある方はお急ぎください。

【2】意見募集の対象

環境省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る省令の特例に関する措置を定める命令案について

【3】募集期間

平成27年11月7日(土)から12月6日(日)

【4】国家戦略特別区域法とは?

日本経済再生に向けた第三の矢としての成長戦略「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」(平成25年6月閣議決定)にて内閣総理大臣主導で、大胆な規制改革などを実現するための突破口として、国家戦略特区を創設する事とされました。国家戦略特別区域法(平成25年12月13日法律第107号)は、日本の経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革を通して経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力の強化とともに、国際的な経済活動の拠点の形成を図り、国民経済の発展及び国民生活の向上に寄与することを目的としています。

○公布日(平成25年12月13日)から施行
○ただし、次の規定は、政令で定める日(平成26年4月1日)から施行

  • 国家戦略特別区域計画の認定等に関する規定
  • 国家戦略特別区域計画に基づく事業に対する規制の特例措置等

国家戦略特別区報の概要」 内閣府地域活性化推進室 内閣官房地域活性化統合事務局

(1)国家戦略特別区域って、どんなところ?

現在、以下のような地域が指定されています。

指定日 範囲
<第1次指定>
平成26年5月1日
東京圏(東京都、神奈川県、千葉県成田市)※東京都の区域については平成27年8月28日に東京都全域に区域を拡大
関西圏(大阪府、兵庫県及び京都府)
新潟県新潟市 兵庫県養父市 福岡県福岡市 沖縄県
<第2次指定>
平成27年8月28日
秋田県仙北市 宮城県仙台市 愛知県

首相官邸ホームページ「国家戦略特区 これまでに指定した国家戦略特区」

(2)区域計画とは?

国家戦略特区ごとに国・地方公共団体・民間の三者から組織される国家戦略特別区域会議において国家戦略特別区域計画(区域計画)が協議・作成され、内閣総理大臣が認定します。区域計画が認定されると、当該国家戦略特区において、規制の特例措置の適用を受けた事業等の実施が可能となります。

内閣府地方創生推進室ホームページ「区域計画」

(3)国家戦略特別区域法第二十六条とは?

この規制緩和の根拠を、国家戦略特別区域法の第二十六条では以下のように述べています。

政令等で規定された規制の特例措置として、「国家戦略特別区域会議が、第八条第二項第二号に規定する特定事業として、政令等規制事業(政令又は主務省令により規定された規制に係る事業をいう。以下この条及び別表の十四の項において同じ。)を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該政令等規制事業については、政令により規定された規制に係るものにあっては政令で、主務省令により規定された規制に係るものにあっては内閣府令・主務省令で、それぞれ定めるところにより、規制の特例措置を適用する。」

【5】土壌汚染対策法における規制の特別措置とは?

(1)背景 ~「日本再興戦略」改訂2015~

平成27年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2015では、日本産業再興プランの新たに講ずべき具体的施策として、自然由来の汚染土壌の取扱いに関する新たな仕組みの構築として、「自然由来の汚染土壌の規制の在り方について、事業者等の意見を踏まえつつ、人の健康へのリスクに応じた必要最小限の規制とする観点から検討し、全国的な措置の実施に先駆けて、短期間で可能なものについては、早期に国家戦略特区において試行的に開始することとし、その結果を全国的措置に反映させる。(p121)」とあります。

(2)命令案について

「日本再興戦略」改訂2015をうけ、内閣府・環境省では土壌汚染対策法施行規則の特例を定めるため、命令案を公表し、パブリックコメントを実施しています。

公布、施行の予定は平成27年12月末とされています。

【6】命令案の内容とは?

内閣府・環境省が示した命令案は、自然由来特例区域における認定調査に関する規制緩和です。現在の認定調査の問題点と、命令案で示された改善内容(規制緩和)について、ご説明します。

(1)自然由来特例区域とは

例えば、土壌汚染対策法第4条の届出を行った際、人為的汚染のおそれがなく、専ら自然由来の土壌汚染のおそれがある土地については自然由来特例調査の命令が発出されます。この結果、基準不適合が確認された場合、その一連の土地すべてが自然由来特定区域となります。

(2)自然由来特例調査とは

自然由来特例調査では、敷地を900m区画(最大81,000m2)毎に2地点の10mボーリング調査を実施します。この結果で基準超過が明らかになった場合、敷地全体が自然由来特例区域となります。自然由来の汚染土壌は地質的に同質な状態で汚染が連続していますが、実際には10mまでの全ての深度で基準を超過するケースは稀で、有害物質の濃度にはムラもあるため、区域指定された土地の全ての土壌が汚染されている訳ではありません。


図:調査対象地が900m格子を越える場合の自然由来特例調査の試料採取区画と試料採取地点
例(道路工事の場合)

(3)認定調査とは

土壌汚染対策法では自然由来特例区域を含む要措置区域等から搬出される土壌は実際に基準適合しているか不適合であるかに係らず、汚染土壌として処理施設で処理をしなければいけません。しかし、一連の土地から搬出される土壌を一律に汚染土壌と判断することは合理性に欠けるため、認定調査という制度が設けられています。
認定調査は要措置区域等から土壌を搬出する際に事前に分析を行うもので、その結果、基準適合であることが判断された場合、非汚染土壌(土壌汚染対策法の規制対象外)として取り扱うことが可能になります。

(4)認定調査の分析項目と問題点

この認定調査では、区域指定に係る物質だけではなく、土壌汚染対策法で定められる全特定有害物質が分析の対象となっているため、分析費用は非常に高く、分析期間も長くなります。
一方、自然由来特例区域内には、汚染されていない土壌や基準値以下の土壌が存在する可能性がありますが、現在の法制度では汚染の判定を行う認定調査では全項目を高額な費用と時間をかけて分析する必要があります。
こういった不合理性について、平成27年3月(一社)日本経済団体連合会による規制改革会議や平成26年度自治体アンケートからも規制緩和すべきという意見がよせられていました。

(5)命令案による規制緩和

命令案では自然由来特例区域(国家戦略特別区域内に限る)における認定調査では土壌汚染対策法で定められる全特定有害物質を対象とするのではなく、区域指定に係る物質のみで良いことされ、区域中の土壌について効率的に汚染状態の判定を行い、建設工事を迅速に進めることが可能となります。なお、浄化工場で処理後に実施される判定に関しては従来どおり、全25物質が対象となります。

通常の認定調査 規制緩和後の認定調査(案)
区域指定 すべての区域指定地 自然由来特例区域
(国家戦略特別区域に限る)
調査方法 掘削前調査・掘削後調査 同左
分析項目 全25物質
ただし、認定調査時地歴調査により、掘削対象地において土壌の第三種特定有害物質(PCB以外)による汚染状態が土壌溶出量基準に適合していないおそれがないと認められる場合における当該第三種特定有害物質(PCB以外)を除く。
区域指定の物質のみ
処理工場
浄化判定
全25物質 全25物質

詳しくは、e-Govホームページをご確認ください。

「環境省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る省令の特例に関する措置を定める命令(案)」に関する意見募集について

【参考資料】

首相官邸ホームページ
国家戦略特区
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加藤 この記事は
DOWAエコシステム ジオテック事業部
加藤 が担当しました

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