「自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン」が公表されました
これまでに、「自動車向け再生プラスチック市場構築のための産官学コンソーシアム」にて自動車産業とリサイクラーに関する動静脈連携の取り組みの必要性や、実現に向けた国の支援策について議論されています。
その後、2025年3月31日に、自動車向け再生プラスチック市場構築のための課題とアクションプランについて取りまとめた「自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン」が公表されました。アクションプランはこちらに掲載されています。
自動車向け再生プラスチック市場構築のための産官学コンソーシアム(環境省)
■アクションプラン策定の背景
2024年11月20日と2025年3月17日に、「自動車向け再生プラスチック市場構築のための産官学コンソーシアム」が開催されました。このコンソーシアムは、以下のような背景から開催されています。
- 「プラスチック資源循環戦略」においてプラの再生利用を倍増するとしているが、まだ多くの廃プラが熱回収であり、リサイクルプラは7割が輸出されている
- EUのELV規則案では、自動車へ再生プラ使用が義務化される動きがある
コンソーシアムでは、以下図のように、静脈産業と動脈産業の目指す姿が取りまとめられました。動脈産業の技術力と静脈産業の再生プラスチック供給能力を高度化し、グローバルな資源循環ビジネスを牽引することを目指すとしています。

合わせて、以下図の通り、自動車向けの再生プラスチック供給量の目標が掲げられました。

この目標に向けて、現状とのギャップを分析し、自動車産業とリサイクラーに関する動静脈連携の取り組みの必要性や、実現に向けた国の支援策が検討されました。その上で、2025年3月31日には自動車向け再生プラスチック市場構築のための課題とアクションプランを取りまとめた「アクションプラン」が公表されています。
■自動車向け再生プラスチック市場構築に向けた課題とアクションプラン
「アクションプラン」では、以下図のように、自動車向け再生プラスチック市場構築に向けた7種類の課題が特定されており、それぞれに対して解決に向けたアクションが示されています。

以下は、アクションプランで取り上げられた課題と対応策です。
- 課題①:
- 自動車解体時のプラ回収に対するインセンティブ不足
- 対応策:
- 資源回収インセンティブ制度を周知し、関係団体のコンソーシアム形成を促進する。静脈産業は運搬効率UPのため、破砕機導入を進める。
- 課題②:
- ASRからのプラ回収率の低さ
- 対応策:
- 静脈産業はASR選別のために高度選別技術を実装する。国は設備導入を支援する。
- 課題③:
- 再生プラの価値の訴求が不十分
- 対応策:
- 動静脈で連携し、リサイクルによる環境負荷削減効果を発信するため、国が価値訴求の方策を検討する。環境省はリサイクルによる環境負荷の削減効果検証のための算定方法等も検討する。
- 課題④:
- 動静脈間の情報共有不足
- 対応策:
- 動静脈と国で連携し、再生プラを対象とした品質評価(自動車部品に使えるかどうか)を行い、再生プラの使いこなし方も検討する。
- 課題⑤:
- 廃プラの多くがリサイクル向けに利用されていない(大半が焼却・熱回収)
- 対応策:
- 排出時等の分別に必要な情報を収集し、自治体とも連携して分別回収の促進を行う。静脈産業は競争力のあるリサイクル拠点を整備する。
- 課題⑥:
- 再生プラの品質バラつきの大きさ
- 対応策:
- 動静脈でマテリアル・ケミカルリサイクル技術を開発し、必要な設備を導入する。
(目的:高品質な再生プラ供給、品質のバラつきに対処、GHG排出削減に貢献)
- 課題⑦:
- 規制物質への対応体制が不足
- 対応策:
- 産業界で物性・懸念化学物質測定のための機器を導入し、国が情報流通プラットフォームの整備を実施。
■今後の動き
アクションプランを踏まえて、①Car to Carと②X to Carについて、それぞれワーキンググループを立ち上げて検討が行われる予定になっています。
WG①:Car to Car(使用済自動車由来のプラスチック)
上記①~③を検討課題とし、自動車リサイクルでクローズドループを確立させる。
WG②:X to Car(その他由来のプラスチック)
上記④(一部⑤)を検討課題とし、再生プラの質・量の課題を解決する。
また、本コンソーシアムも、引き続き開催される予定です。
【参考】
「自動車向け再生プラスチック市場構築のための産官学コンソーシアム」参画機関/参加者
以下表の通り、自動車産業やリサイクラーに関する団体や有識者等がコンソーシアムに参画しています。

(出典)自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン(概要版)
この記事は
DOWAエコシステム 企画室
後藤 が担当しました