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中国・天津市における家電リサイクル事業

DOWAエコシステムは2010年5月、中国・天津市において、蘇州同和資源綜合利用有限公司(江蘇省蘇州市、以下 「蘇州同和」)に次ぐ中国第二の事業拠点「天津同和緑天使頂峰資源再生有限公司」(以下 「天津同和」)を設立しました。住友商事・天津市緑天使再生資源回収利用有限公司との3者合弁で、2011年1月施行の「廃旧電器電子産品回収処理管理条例」(中国家電リサイクル法)に基づく家電リサイクル事業を展開しています。

■中国・天津市の概要

首都・北京から南東約140kmに位置する天津市は面積11,760km2(秋田県とほぼ同じ)、人口約1,200万人、北京・上海・重慶に並ぶ中国四大直轄市に指定されています。GDP成長率は10年連続2桁、環渤海湾地域最大の国際貿易港・天津港を擁する一大経済都市です。

「天津」という都市名は、明の時代(1400年頃)に「天子(皇帝)が河を渡った場所」という意味からついたものです。市の中心部には戦時中にイギリス・フランス・ロシア・日本など9カ国が租界(外国人居留地)を置いていた当時の建築物が多数現存しており、異国情緒豊かな観光エリアを形成しています。臨海地域(濱海新区)には近年「エコシティ(生態城)」開発が進む国家級工業開発区・TEDA(天津経済技術開発区)が、西部地域(静海県)には目下拡張整備中の国家指定リサイクル団地・子牙循環経済産業区があり、共に内外の注目を集めています。

■天津市における家電リサイクル事業

天津同和は、2011年1月の家電リサイクル法施行に合わせて、子牙循環経済産業区において家電リサイクル事業を開始しました。合弁パートナーの緑天使が天津市内の家電量販店や自社回収拠点から集荷した使用済み家電製品5品目(テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコン・パソコン)を、人手による解体と機械破砕・選別処理に供して、鉄・銅・アルミニウム・プラスチックなどの素材を回収しています。
第8号でご紹介した蘇州同和と同様、DOWAエコシステムが日本で長年培った家電リサイクルの技術やノウハウを導入しており、質の高い処理プロセスおよび環境・安全対策を備えています。初年度の処理台数目標は15万台、今後数年以内に年間40万台処理体制の実現を目指します。

■中国の家電リサイクル:廃旧電器電子産品回収処理管理条例

中国家電リサイクル法(廃旧電器電子産品回収処理管理条例)は、先行する日本の家電リサイクル法やEUのWEEE指令の一部内容(対象品目・費用負担など)を取り入れた制度設計となっています。一方で中国独自の特徴として、「有償買取」「解体補助金」などが挙げられます。

  • <有償買取>
    日本では使用済み家電製品を排出する際、1台あたり数千円の「リサイクル料金」を消費者が負担することが義務付けられていますが、中国では対象5品目全てが有価での取引、つまり回収業者や処理業者が「買い取り料金」を支払う必要があります。従来から使用済み家電製品はリユース・リサイクル問わず有価取引でしたが、リサイクル法施行後も引き続き踏襲されています。
  • <解体補助金>
    使用済み家電製品が有償買取である一方で、リサイクル法では「廃棄電器電子産品処理基金」を設立し、この基金から処理業者に「解体補助金」を支給することを謳っています。同時に、生産者(家電メーカー)および輸入業者がこの処理基金への拠出義務を負い、具体的な拠出金額や処理業者への補助金支給基準は今後各利害関係者のヒヤリングを行った上で制定する、とされています。日本やEUのように家電メーカー自らが回収・処理の直接的義務を負わない代わりに、基金への拠出を通じて適正なリサイクル処理を促進することが求められています。ただし、法施行後約3ヶ月が経過した現時点においても、処理基金の詳細スキームや運用開始時期については公表されていません。

従って、当面の間、処理業者は「有償買取の継続」「解体補助金なし(支給待ち)」の前提で、人手による解体や機械処理にかかるコストを抑制しつつ、金属やプラスチック等の回収物の純度を高めて売上を増やすことで工場運営を維持継続することが求められます。ここでご紹介した補助金以外の細則で未決定・不透明な部分も多く、いわゆる「見切り発車」状態のリサイクル法の動向を、引き続き注視する必要があります。

今まさにスタートしたばかりの中国版家電リサイクル。天津同和は、経済成長著しい天津市において、このリサイクル制度と共に歩み、事業の発展を通じてそのプレゼンスを高めつつ、日中合作の先進的かつ模範的な環境配慮型工場を目指していきます。


森瀬 この記事は
DOWAエコシステム リサイクル事業部
森瀬 が担当しました

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