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海外で設立した企業の移転

Q.海外に設立した子会社があります。
今後、本社のグローバル戦略に合わせて移転させる計画があります。
環境側面から注意する点は何がありますか。

A.

現在事業活動を行っている国(移転元)及び、移転先の国の法規・条例等の把握に努めるとともに、環境インパクトにつながる事象の洗い出しを確実に行う事をお薦めします。

近年、欧米諸国はもとより、アジア各国でも環境問題の高まりをふまえて、環境関連の法規制が年々整備されてきております。国をまたいで事業所を移転する場合、その業種によって各国ごとに規制する法規があり、非常に多くの手続きが必要となります。
ここでは、環境リスクの側面から見た事例と、移転計画策定時に必要と思われる基本的な対処方法についてお話しします。

当然、移転元・移転先の各国では、それぞれ、憲法、法律、政令、省令、規則、条例等が整備されています。事業内容によって、大気、水質(河川等公共水域へ放流する排水、地下水等)、土壌などの公害関連の法規や、廃棄物、事業内容によっては住民移転が必要となるような規制もあります。
移転元では、事業所の閉鎖に伴う申請や手続き、移転先では事業開始に伴う手続き、とそれぞれの国において、これらの法規制を確実にクリアしていく必要があります。

一般的に環境リスクに対し求められる対応には、現状把握(環境アセスメントなどの現況調査)を含む場合もあり、その対処には、一定の期間を要する事になります。また、規制の違いにより日本では必要ないコストが発生することもありますので、期間と経費については十分に配慮し、移転計画に反映していくことが必要となります。

また、移転先の国で事業所を設置する場合においても、事業所施設等の建設や設備搬入、据え付けなどの作業に伴い、たとえば建設廃材や建設残土、梱包材の処理などが発生する場合があります。
これらの廃棄物について、不法投棄されないようにその処分に配慮した工事内容であるかを確認し、発注をすることが求められます。場合によっては、移転先の国内事情を事前に把握したうえで、処分先、処分方法を指定して発注する必要となる場合もあります。

このように、事業所移転に伴う環境側面のリスクは非常に多岐にわたります。移転計画では、限られた期間で全体工程を確実に進めていくことが求められますので、移転計画の初期段階で、環境リスクの洗い出しを確実に行うことが非常に重要です。

しかし、国によっても、また事業内容によっても異なる複雑な環境リスクを移転計画の策定段階で洗い出すことは非常に困難な作業となります。そこで、移転計画策定の初期段階で、環境コンサルタントなど専門家を通して環境リスクの洗い出しを行う方法も有効です。これは各国の環境法規制に通じる専門家が、移転元・移転先の国の関連法規等を精査し、移転計画に関するリスクを明確にしていくものです。
これにより事業者として、初期段階で環境リスクを明確化することが出来るとともに、各リスクへの対処工程を移転計画の全体スケジュールに反映させていくことが可能となるのです。

■その他のリスク評価

このような事業活動や事業拠点の移転に伴うリスク評価のご依頼をいただく場合、環境関連のみならず、健康と安全性(労働安全)も対象とした、いわゆるHSE(Health・Safety・Environment)についても、合せて実施する事例が多くあります。これは、欧米企業を中心に「環境」というカテゴリーが、「健康」「安全性」の概念も含んだものになっているためです。今後、国内でも「環境」というカテゴリーは、労働安全も含んだ、「HSE」という認識へとシフトしていくものと思われます。


鈴木 この記事は
イー・アンド・イー ソリューションズ
鈴木 が担当しました

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