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研究発表−3:ほう素汚染土壌の水洗浄における温度の影響

第19回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会(2013年)

ほう素汚染土壌の対策は掘削除去が主流であるため、対策費用が高額になってしまうケースが多いですが、本研究ではほう素化合物の水への溶解性に着目することで、加温により土壌に含まれるほう素化合物の水への溶解が促進されることを確認しました。将来的には、温水等を利用した揚水・注水対策により、短期間でかつ稼働中の工場でも適用可能な浄化工法の開発につなげたいと考えています。

「ほう素汚染土壌の水洗浄における温度の影響」

ジオテクノス株式会社 三浦英俊

1. はじめに

ほう素は、工業的に利用される場合は、ほう砂やほう酸の状態であることが多い。ほう砂は、ガラスの原料・防腐剤・金属の表面加工等として、ほう酸は、目薬・医薬品・殺虫剤等として使用されている。本研究で使用したほう素汚染土壌を採取したサイトでは、粉末状のほう砂を高温で溶融する形で使用しており、粉末状のほう砂の飛散混入及び液状のほう砂の漏洩によりほう素の土壌汚染が発生したと想定された。

ほう砂やほう酸は、水に溶けやすい性質を持つ。この性質を利用して、揚水・注水によるほう素汚染土壌の現位置洗浄の適用を検討した例もある1)。また、ほう砂の溶解度は、20℃で2.58g/100 g、60℃で14.82g/100g であり2)、温度が上昇するに従って溶解度が上昇する性質を持つ。そのため、地盤を直接加熱しながら揚水・注水を行うことで、洗浄効果が向上する可能性が考えられた。

本研究では、実際のほう素汚染土壌を用いて実験室で洗浄試験を実施し、温度による洗浄効果の違いについて検討した。

2. 試験概要

2.1 試験に用いた土壌試料

試験に用いた土壌試料は、実際のほう素汚染土壌を使用した。試験に用いた土壌試料の状況は、表-1に示すとおりである。なお、土壌溶出量及び土壌含有量の分析方法は、環告18号及び環告19号である。

表-1 試験に用いた土壌試料(ほう素汚染土壌)
土質 土壌溶出量 土壌含有量 汚染原因
細砂~礫混り細砂 33mg/L 460mg/kg 粉末状のほう砂の飛散混入。高温で溶融した液状のほう砂の漏洩。

2.2 試験方法

連続評価試験(カラム試験)の条件を表-2、試験フローを図-1~図-2、試験写真を写真-2~写真-2に示す。
本研究では、①加熱効果確認試験(バッチ試験)、②加熱効果確認試験(バッチ試験)の繰り返し洗浄試験、③連続評価試験(カラム試験)の3種類の試験を実施した。ほう素の分析は、(株)共立理化学研究所製デジタルパックテストを使用した。 以下に試験方法の詳細を示す。

①加熱効果確認試験(バッチ試験)

ビーカーに純水を1L入れ、25℃、40℃、60℃、80℃の4条件で加熱した。所定温度に到達した後、ビーカーにほう素汚染土壌を100g入れて撹拌した。撹拌時間は6時間とし、撹拌終了後、洗浄水を0.45μmのメンブランフィルターでろ過した後に分析した。

②加熱効果確認試験(バッチ試験)の繰り返し洗浄試験

①と同様の方法にて加熱効果確認試験(バッチ試験)を繰り返し実施した。 加熱の温度設定は、25℃、40℃、55℃の3条件とした。
洗浄試験は、各条件で5回実施し、洗浄時間は、1回につき6時間とした。洗浄試験後、洗浄水を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した後に分析した。洗浄試験を実施した土壌は、次の洗浄試験を実施する前に風乾を行った。

③連続評価試験(カラム試験)

各カラムに所定量のほう素汚染土壌を充填し、各カラムを加熱した。加熱の温度設定は、25℃、40℃、55℃の3条件とした。各カラムを設定温度で一晩以上静置した後、最大で土壌重量の約100倍量の水を通水し、カラムを通過した水を定期的に分析した。

3. 試験結果及び考察

3.1 加熱効果確認試験(バッチ試験)結果

加熱効果確認試験(バッチ試験)における温度とほう素の溶出量の関係を表-3に示す。
撹拌を6時間実施した後のほう素濃度は、20~80℃の全ての温度で30~33mg/Lを示した。加熱効果確認試験(バッチ試験)では、温度によるほう素の溶出量の差は、特に認められなかった。

3.2 加熱効果確認試験(バッチ試験)の繰り返し洗浄試験結果

加熱効果確認試験(バッチ試験)を繰り返し実施した際の洗浄回数とほう素の積算抽出率・ほう素の溶出量の関係を図-3に示す。

温度が25℃のほう素の溶出量は、洗浄回数が1回の場合では29.5mg/Lを示したものの、2~5回の場合では1.4~1.5mg/Lとほぼ一定の値を示した。一方、温度が55℃のほう素の溶出量は、洗浄回数が1回の場合では33.0mg/Lを示した後、2~4回と進むに従って2.7mg/Lから1.1mg/Lに変化し、5回の場合では0.5mg/Lを示した。
また、洗浄回数が5回の際のほう素の積算抽出率は、25℃の場合では約77%、40℃の場合では約81%、55℃の場合では約85%であった。

これらの結果より、今回用いた汚染土壌は、84%程度のほう素を抽出することにより、浄化が可能と考えられる。また、本試験データに基づいて推定した場合、他の温度域でほう素の積算抽出率が84%になる洗浄回数は、40℃の場合では6回、25℃の場合では8回と推定された。

3.3 連続評価試験(カラム試験)結果

連続評価試験(カラム試験)における通水量とカラム浸出水のほう素濃度の関係を図-4に示す。

カラム温度が25℃のカラム浸出水のほう素濃度は、初期段階では19.3mg/L、通水量が土壌重量の10倍量の段階では3.2mg/Lを示した。一方、カラム温度が55℃のカラム浸出水のほう素濃度は、初期段階では95.2mg/L、通水量が土壌重量の10倍量の段階では8.5mg/Lを示した。この時点でのほう素抽出率は、25℃の場合24%、40℃の場合49%、55℃の場合76%となった。土壌重量の10倍量の水を使用したバッチ試験の結果と比較すると25℃の場合40%の減少、40℃の場合18%の減少であったが、55℃の場合は5%の増加となった。

これらの結果から、連続評価試験(カラム試験)では、カラム温度の差によるカラム浸出水のほう素濃度の差が認められ、カラム温度が高い程、その濃度が高くなる傾向が確認できた。

カラム温度を55℃に設定し、通水量を土壌重量の約100倍量にした場合のカラム浸出水のほう素濃度の変化を図-5、ほう素の積算抽出率の変化を図-6に示す。

通水量が土壌重量の約90倍を超えた所で、ほう素の積算抽出率が約84%となった。この時点での浸出水のほう素濃度は、1mg/L以下であり、加熱効果確認試験(バッチ試験)の繰り返し洗浄試験結果と同様に浄化が完了していると考えられる。また、通水量が土壌重量の10倍量付近を境に溶出傾向が異なっていることが確認された。

4. まとめ

本研究の結果、ほう素汚染土壌の水洗浄における温度の影響について、以下の通り確認した。

  • 加熱効果確認試験(バッチ試験)及びその繰り返し洗浄試験より、温度による洗浄効果の差は、わずかなものであった。
  • 土壌重量の10倍までの通水量による連続評価試験(カラム試験)では、カラム温度の差によるカラム浸出水のほう素濃度の差が認められ、カラム温度が高い程、その濃度が高くなる傾向が確認できた。25℃および40℃において、土壌からの抽出率は、10倍量の水を用いた1回のバッチ試験の抽出率と比較して低いが、55℃では抽出率が高い結果となった。
  • 本研究で使用したほう素汚染土壌では、ほう素の積算抽出率が85%程度で浄化完了と考えられるが、55℃における加熱効果確認試験(バッチ試験)では5回(土壌重量の50倍量の水を使用)、連続評価試験(カラム試験)では、通水量が土壌重量の約90倍で浄化が可能であった。10倍量までの通水では、バッチ試験と比較して抽出量が大きかったが、それ以降では抽出率が低い結果となっている。これは、ほう素の溶出機構が、通水量が土壌重量の10倍量付近を境に異なっているためと考えられる。ただし、これらの傾向を説明するほう素の溶出機構については、現時点では不明であることから、今後については、ほう素の土壌に対する吸着・脱着のメカニズムと温度の関係について検討を進めたい。

5. 引用文献・参考文献

1)井出・他(2007):ほう素汚染地盤浄化への原位置洗浄技術の適用検討
地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演要旨集、第13回、S3-8.

2)国立天文台編(2013):理科年表平成25年
丸善出版、第86冊、PP.511

3)杉田・他(2011):フッ素及びホウ素の土壌吸着に関する基礎的研究
Journal of MMIJ, Vol.127, pp.202-212.

この記事は
ジオテクノス株式会社
三浦 が担当しました

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