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タイ王国とタイの環境問題(5) ~大洪水 − その後~

サプライチェーンの混乱から日本にも大きな影響を与えた2011年のタイの大洪水。復興に向けた現地の実情と今後の動向をタイからレポートいたします。

1. 洪水の発生と終息まで

熱帯の国タイでは例年8月から10月頃が雨期のピークにあたり、いわゆる「スコール」のような土砂降りの雨が各地で突発的に降ります。特にバンコクを含む中部地域(チャオプラヤ川流域)では土地が非常に平坦なため、豪雨の後に局所的な浸水被害が発生することはこれまでにもよくありました。ただ、2011年は台風がインドシナ半島に例年より多く上陸したことと、北部のダムの貯水率の調整がうまく行われなかったことにより、10月に入りダムからの放水が止められない状態となり流域の広い範囲で浸水が発生しました。

浸水域は中部を拡大・南下して10月中旬にはアユタヤ周辺の工業地帯に到達、日系企業も多く入居している複数の工業団地が2~3m程度浸水しました。
11月には浸水域はバンコク市街地にも到達し、市内北部の空港が水没するなど一時は都心部への浸水が懸念されました。
最終的には政府の懸命な防衛策により都心部は死守されましたが、浸水状態はその後1カ月程度続きました。
11月中旬には各地で水位は低下しはじめ、年末までには全域で排水作業が完了しました。浸水被害を受けたエリアはおよそ1万8000平方kmでほぼ四国と同じ面積になります。

また、中部の工業地帯には食品関係の工場も多くあったため、11月頃には全国的にスーパーやコンビニで水や加工食品の棚がガラガラになる事態となりましたが、その後沈静化しています。

2. 復旧作業について

排水作業が終了した後には泥まみれの建物と水に浸かってしまった設備・資材が残りました。筆者も水が引いた直後の工場に入りましたが、電気がストップした状態の薄暗い工場は生臭さとかび臭さが入り交じっており、狭い部屋の中では粉塵化した泥が舞っていました。工業団地内の道路には死んだ魚やタニシが大量に落ちていました。
工場内に堆積している泥は病原菌等で汚染されている可能性があったため、WMSグループでは本格的な復旧作業に先駆けて消毒サービスを複数のお客様に提供致しました。
同様に敷地内の土壌も重金属やVOC(揮発性有機化合物)等で汚染されている可能性があり、調査を行いました。さらに、浸水した工場の建材などの災害廃棄物の受け入れも行いました。

ご存知ですか ~ Confined Space における作業について(酸素欠乏危険作業)

タイにおいても安全衛生に係わる各種規制がありますが、地下ピット・タンク等の酸素欠乏状態が発生する恐れのある場所での作業は、日本と同じく対応する安全教育を受けた作業者にのみ認められています。特に、洪水後に汚泥が溜まった地下ピットでは酸欠状態になっている可能性があり、専門の講習を受けた有資格者が、ガスセンサー・送風ブロアーなどを使用しながら作業を行うことが義務付けられています。
WMSグループには有資格者が複数在籍しておりますので、タンクの清掃などについていつでもお問い合わせください。

3. 今後の動向について

12月中旬から復旧作業が各地で始まっていますが、進捗にはバラつきがあるようです。
浸水の前に設備を2階などに避難することができた工場では比較的早期に生産を再開していますし、24時間体制の人海戦術で復旧を目指す工場もありました。
一方で、主要な設備の入れ替えが避けられず、同地点での操業再開を断念してタイ国内の別の地域やタイ国外への移転を決定した工場もあるようです。

いずれにせよ、工場の閉鎖及び新規建設をお考えの場合は敷地の汚染状態を調査されることをWMSグループとしてはお勧めしております。
特に、洪水後のサイトでは表層土壌から自社では使用していない薬品(重金属)が検出された事例もあり、近隣の工場からのもらい汚染のリスクが高まっております。また、将来的にそのサイトで汚染が見つかった際に、何らかの調査結果を元に退出時の汚染の有無を説明できれば責任を遡及されるリスクが低減できます。
また、タイ国内に工場を新設される場合は操業開始前の時点の汚染の有無を把握することで、導入が予定されているタイ版の土壌汚染対策法(特定の業種の工場に対して工場敷地内の土壌・地下水の調査・リスク評価・リスク低減義務が導入されます)に対して前もって対応することが可能です。

このように、タイは復興に向けて前進しておりますが、未だに工業生産が100%回復したとは言えない状態です。再発防止に向けて政府が堤防等のインフラ整備を更に進めていく必要があります。

一方で、もともと中部地域では洪水も灌漑手段の一つとして受け入れた上で共存してきた歴史があり、農業地帯の中に点在している工業団地をどのように守っていくのかという大きな課題が残っています。しかしながら、洪水のリスクがあっても、産業の集積度合いや熟練工の集めやすさなどからタイ国内に踏みとどまる事を選んだ企業も多いことも事実です。
大らかで明るいタイの人達と一緒に働き、この国が今回の洪水を乗り越えてさらに成長していくことを願って止みません。

WMSグループでは日本の土壌汚染対策法に精通した常駐の日本人エンジニア並びにタイの各種環境法規と施工管理に精通したタイ人スタッフがサイトの調査から浄化まで一貫して対応しております。日本語でのレポート作成にも対応しております。タイ版土壌汚染対策法の詳細や調査のご相談はWMSグループまでお気軽にお問い合わせください。

【担当:松浦】 (kenichi.matsuura@wms-thailand.com

この記事は
ESBEC(タイ)
松浦・奈良部 が担当しました

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