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そうだったのか!地球温暖化とその対策(8)
~気候枠組条約締約国会議(COP21)について~

今回は、2015年11月~12月にパリで開催されました気候枠組条約締約国会議(COP21)の合意事項について説明いたします。

【1】合意に至った前提条件〜温暖化に対する警鐘〜

このグラフをご覧ください。

  • 横軸は、1870年以降の人類が排出したCO2量の累計
    (GtCO2:ギガトン−二酸化炭素:二酸化炭素の重量でギガ(109)トン)
  • 縦軸は、1861年~1880年の20年間を基準とした気温上昇量
  • 折れ線グラフ中の数字は、西暦(年)

の3つをプロットしたグラフです。


出典:IPCC第5次報告書 WG1 政策決定者向け報告書 Fig SPM.10 に筆者加筆

上部の横軸は、温室効果ガスの排出量を二酸化炭素の重量(ギガトン-二酸化炭素(CO2))で表しており、下部の横軸は、温室効果ガスの排出量を炭素量(ギガトン−炭素(C))で示しています。二酸化炭素の分子量は44で、炭素の分子量は12ですので上部の横軸の値は下部の横軸の44/12倍の値となります。以下の説明では、上部横軸のCO2重量ベースの排出量を用います。

■このグラフから判ること

(以下の①②③④⑤⑥はグラフ内の数字に対応しています。)

  1. ①黒実線(Historical)は、1870年~2010年までの累積CO2排出量と温度上昇の実績を示しています。この間の累計CO2排出量は約1,600Gt-CO2で、その間の気温上昇は約1℃です。
  2. ②赤実線は、RCP8.5シナリオに沿った2010年~2100年までの予測です。
    (RCPとは、Representative Concentration Pathwaysの略であり、代表濃度経路シナリオと訳されます。)
    RCP8.5(高位参照シナリオ)は、有効な温暖化対策をせずに、経済成長とともにCO2排出が続き、2100年以降も温暖化が進む場合の予測です。この場合2100年までの累積CO2排出量は7,500Gt-CO2を超え、約4.5℃の気温の上昇を招く可能性があります。(温度上昇の幅はグラフではRCP rangeで示され、2.6~4.8℃の幅が示されています。)

    ※RCPには、この他にCO2排出量が2050年頃にピークを迎えて、2100年までに良化に転じる「低位安定化シナリオ(RCP2.6)」と、「高位安定化シナリオ(RCP4.5)」と「中位安定化シナリオ(RCP6.0)」の4つがシミュレーションされています。

  3. ③COP21で目標とされた「2℃」を達成するには、累積CO2排出量は、3,000Gt-CO2までに抑える必要があります。
  4. ④目標である「温度上昇を2℃」に抑えるためには、今後排出できるCO2量は1,400Gt-CO2しかありません。今後排出できるCO2は、カーボンバジェットと呼ばれます。
  5. ⑤しかし、今のペースで排出量が増加していくと(赤線)、約30年でこのカーボンバジェットは無くなってしまいます。
    世界のCO2排出量(2012年)は32.6Gt-CO2であり、2000年以降は年率3%で増加しています。
  6. ⑥「低位安定化シナリオ:RCP2.6(青線)」は、2030年までは現行と同程度のCO2を排出し、2030年以降急激にCO2削減が図られ、2050年以降はほぼCO2の排出は0(ゼロ)になるというシナリオです。CO2排出0というのは、CO2は植物吸収量相当しか排出しないという社会です。

こうした社会を形成するためには、大きな技術革新が行われ、順次導入されていく必要があります。

【2】COP21での合意

これらの前提条件を元にCOP21で合意された内容のポイントは、以下の6つです。

  1. 地球の気温上昇を産業革命以前(19世紀半ば)と比較して、2℃以下にする。
    さらに1.5度未満への努力をする。
  2. 起こりうる気候変動への適応能力・耐性を強化する。
  3. 温暖化ガス排出を削減の促進する。
  4. 達成目標の制定に関しては、先進国、途上国に関係なく国別目標を設定し、実施する。現行の各国の目標の積み上げだけでは、2℃目標には届かないので、5年おきに目標見直し(強化)をする。
  5. 気候変動による損失や被害に関する国際的な救済方法を検討する。
  6. 先進国が重点的に温暖化対策への資金提供を行う。2020年目標で年間1000億ドル(およそ12兆円)とする。また温暖化防止の技術革新に関する支援実施の準備をする。

今回のCOP21では、先進国、途上国に関係なく国別目標を設定しました。温暖化の責任は先進国であるという議論から、先進国がリーダーシップを発揮して途上国とともに義務を果たすという議論へ変化し、明確な長期目標の下で「待ったなし」の目標設定と削減実施が全ての国に求められることとなった歴史的な会議です。そして、この目標の実現は、2050年にはCO2を排出がほとんど排出しない社会を形成することを意味しています。そのため、2030年までに大きな技術革新とともに、ライフスタイルの大きな変換も必要となると考えられます。

今の私たちの生活において、CO2を排出しないで生活することは可能でしょうか?
皆さんも想像してみてください。家庭での直接的なCO2排出だけを考えても、調理、お風呂、暖房、自動車でガスやガソリン等の化石燃料を利用しています(一部、電化されていますが)。また間接的なCO2排出としては、電力(現在は約90%が火力由来)使用によりCO2を排出しています。
また、我々が購入する製品の製造過程や輸送等、すべての活動はCO2の発生と深く結びついています。直接的、間接的に二酸化炭素を出さずして、まったく現在の生活は送れないのが現状です。

私たちが、CO2を出さずに生活を送るためには、新たな技術革新だけでなく、社会システムの再構築も必要ですが、技術革新と社会システムの再構築を考えた場合に2050年は遠いようでも、まったく時間がないとも考えられます。

さらにこれを日米欧などの先進国だけの課題とするのではなく、途上国も含め、世界規模、地球規模での大胆かつ確実な実施をCOP21では約束したこととなります。

【参考資料】

環境省ホームページ
「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)及び京都議定書第11回締約国会合(COP/MOP11)の結果について」

公益財団地球環境戦略研究機関(IGES)ホームページ
<第8回ポストCOPセミナー>COP20の結果をいち早く報告:「COP20 結果速報と今後の展望」~リマ会議は2015年合意への道筋をつけたか~

全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)
第21回締約国会議(COP21)


三戸 この記事は
バイオディーゼル岡山株式会社
三戸 が担当しました

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