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拡大生産者責任制度について その5
〜容器包装リサイクル法〜

国立研究開発法人 国立環境研究所
資源循環・廃棄物研究センター
循環型社会システム研究室 室長
田崎 智宏(たさき ともひろ)様

国立研究開発法人 国立環境研究所
資源循環・廃棄物研究センター

「EPR」という言葉をご存知ですか。
EPRは、Extended Producer Responsibilityの略で、日本語では、「拡大生産者責任」と呼ばれています。
2014年は家電リサイクル法、容器包装リサイクル法、自動車リサイクル法等の見直しの年でもあり、その中で、「拡大生産者責任」という言葉を聞く機会もあったと思います。

今回は、家電リサイクル見直しに関する議論が行われていた中央環境審議会 循環型社会部会 家電リサイクル制度評価検討小委員会の委員でもある、国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター循環型社会システム研究室 田崎さまに、「拡大生産者責任」についてインタビューをさせていただきました。

【その5】容器包装リサイクル法

容器包装のリサイクル法における拡大生産者責任も同じように有能論に基づく仕組みになっているのですか?

容器包装は逆に原因論に近いと思います。
ごみの発生に関わっている全ての関係者が、みんなで痛み分けをしているという法律になっています。
家電リサイクル法と容器包装リサイクル法は同じ国の制度なのですが、かなり性格が違うと思います。

容器リサイクル法についていいますと、家庭ごみの中で大きな割合を占める容器包装廃棄物をきちんと減量・リサイクルしましょうという目的で、

  • 自治体は家庭から排出される容器包装廃棄物の分別収集を行いましょう。
  • 消費者は自治体の定める分別に協力しましょう。
  • 収集されたモノのリサイクルは生産者の責任としましょう。

という考え方になっています。

しかし、容器包装ならびに容器包装を用いた製品のメーカーはたくさんいますが、家電製品や自動車と比べると圧倒的な力を有しているわけではありません。これらのメーカーと比べて、規模も大きくはありません。
そこで、実際にリサイクルするという物理的な役割はリサイクラーに担ってもらい、メーカーはリサイクルに必要なお金を支払ってくださいという仕組みになっています。
このお金を集めたり、自治体からの容器包装廃棄物をリサイクラーに委託したりする業務は、容器包装リサイクル協会、いわゆる「容リ協」というところが行っています。

容器包装リサイクル協会の役割の図

田崎さんは昨年6月に東京で開催されたOECDの拡大生産者責任の会議にも出られていました。私も傍聴させていただきました。
そこで、冒頭に環境省の方が「日本では、回収・リサイクル率が非常に高い、拡大生産者責任の政策は成功している。」と仰っていました。日本の拡大生産者責任に則った制度は成功と言える状況なのでしょうか?

日本人、特に研究者は批判精神に富むので、自分達の国の成果を過小評価しがちという傾向がありますね。逆に、行政が作成する英語の資料をみると、褒め過ぎのように思うときがあります。なので、もうちょっと中間的な評価が一番客観的というか正しいんだろうなと思っています(笑)。

まず、90年代後半から2000年代において、リサイクル量や回収量が増えたというのは、まさしく容器包装リサイクル法や家電リサイクル法が制定される中で進んだことです。また、家電の環境配慮設計への反映、容器包装の軽量化、減量化が進んでいるのは事実で、これらはきちんと評価してしかるべきです。
特に、容器リサイクル法制定前は、自治体が収集する一般廃棄物に含まれるプラスチックはリサイクルができていなかったのですが、容器包装リサイクル法ができて、リサイクル施設の総処理能力がかなり増えていますし、リサイクル技術も進展しています。
プラスチックをリサイクルできる選別施設とリサイクラーの持っている再商品化設備の両方が増えて、リサイクル量、回収量共に増えていますので、評価に値します。
一方それで十分かというと、コストがかかり過ぎていることなどは日本の容器包装リサイクル法の問題点としてあげないといけないでしょう。

容器包装リサイクルについては、消費者が分別したり洗ったりしたものを、リサイクラーで再分別や再洗浄している事もあると聞きます。消費者(分別)・行政(回収)・リサイクラー・協会とアクターが分かれている弊害の様に思いますが、いかがでしょうか。

消費者によっては、汚いものを混ぜてしまうことがありますので、リサイクラーでの作業は仕方がないと思いますし、そうしないと販売できるようなリサイクル品になりません。現在、問題として指摘されているのは自治体による選別作業とリサイクラーによる選別作業で、これらが重複していてもう少し効率化できないかということです。

ところで、アクターが分かれている弊害というのは、実は、OECDの拡大生産者責任のガイダンスマニュアルでは逆のことが書かれていて「責任をできるだけ明確に割り当てるべき」とあります。
責任が曖昧だと、きちんと責任が果たされないという発想によるものです。

しかし、日本のこれまでの政策経験によれば、役割を明確に分ける事で、自分たちの責任しか考えなくなってしまっています。
役割分担というのは、全体の共通的な目標があり、関係者がそれに同意した上で明確にしないといけないのですけれども、容器包装リサイクルも家電リサイクルも全体目標が明確でないまま、各論で役割を分けているので、結局それぞれ都合のいいかたちで最適化をしてしまい、システム全体としてはあまりうまくいかないわけです。

例えば、容器包装の分別の場合、マテリアルリサイクルに必要な分別の水準と、ケミカルリサイクルに必要な分別の水準は違います。しかしながら、分別ルールをつくる自治体は、容器包装廃棄物のリサイクルを行うリサイクラーを選ぶことができません。
もう少し効率化して、全体のシステムコストやシステムの負担が下げられるような目標をかかげて役割をどうするかを話し合わないといけないのですが、現行の容器包装リサイクル法ではそこが出来ておらず、改善していくことが今後の課題でしょう。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、海外のリサイクル法制事情と日本の違いについてお話しをお伺いしています。


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