DOWAエコジャーナル > その道の人に聞く 記事一覧 > 大量発生が予測される自然由来重金属汚染土壌への対応 その1

その道の人に聞く

大量発生が予測される自然由来重金属汚染土壌への対応 その1

一般社団法人 日本汚染土壌処理業協会
円谷 創(つぶらや はじめ)様

日本汚染土壌処理業協会ホームページ

政府の政策転換、景気浮揚、東京オリンピック招致決定などにともなって、道路開発等の公共工事が急ピッチで進められています。これら工事で発生する残土の処分、利用先についてはメディアでも取り上げられ、問題となっています。
また、これらの残土の中には自然由来の重金属を含有するものもあり、これらの適正な処理が課題の一つとして挙げられます。今回は一般社団法人日本汚染土壌処理業協会の円谷さんにこれら課題の状況についてお尋ねしました。

最初に、一般社団法人 日本汚染土壌処理業協会について教えてください

一般社団法人 日本汚染土壌処理業協会(JSTA)は改正汚染土壌対策法で汚染土壌処理業に許可制度が導入されたのを機に平成22年8月に設立されました。現在の会員企業は12社16施設で構成されています。
適正処理の推進、運搬と処理技術の研究、研賛等に係る事業、関連制度の確立促進を目的として、活動を行っています。事業内容としては以下のとおりです。

  1. 汚染土壌の適正処理の推進に関する事項
  2. 汚染土壌の運搬・処理状況に関する調査研究、資料の収集、情報の提供に関する事項
  3. 汚染土壌の運搬・処理技術や環境対策技術の開発に関する事項
  4. 汚染土壌の運搬・処理に関する研修会等の開催、協力及び講師の斡旋に関する事項
  5. 汚染土壌の運搬・処理に関する図書、会報等の刊行に関する事項

国内全体の汚染土壌発生量280万トンに対して、協会全体の実績は年間およそ100万トンで約36パーセントのシェアを有しています。

今後発生すると予想される膨大な量の自然由来重金属含有汚染土壌の適正処理に対しましても、会員企業一丸となって処理技術の向上と共有、また情報の取りまとめや発信の窓口になるべく活動に取り組んでいこうとしているところです。

大量に発生するといわれていましたが、処理の必要な土壌はどのくらい発生するのでしょうか?

当会では、自然由来重金属含有土壌は大規模公共工事(図2)により2022年度まで年間300万~500万トン発生すると試算しています(図3)。

試算方法は、新聞、ホームページ等で公表されている各工事の残土発生量に自然由来重金属含有土壌が20%含まれると想定し、想定比重1.8を乗じ、算出しています。有明地区は数量根拠が明確ではないのですが、オリンピックの選手村だけで42万m2の開発規模であることが雑誌等で公表されておりますので、仮に選手村の10倍の面積×1mと想定して概算の建設残土発生量を算出しました。

なお、この試算は図2に示す工事のみで試算した結果であり、全国的には各所で工事が計画中または実施中です(図4)。したがって、図3の試算よりも実際にはもっと多くの自然由来重金属含有土壌が発生すると考えています。

そもそも自然由来重金属含有土壌はなぜ存在しているのでしょうか

日本は110もの火山があり、まさに火山列島。そのマグマにはさまざまな重金属が含まれています。古代からの噴火により噴出したマグマが冷えて固まると、花崗岩などの岩となり、土地の隆起や侵食によって地表にあらわれてきます。これが重金属含有土壌の発生原因となります。身近なところでは温泉にヒ素やホウ素、フッ素などが含まれていたり、銅、鉛、亜鉛などの鉱山が全国各地に分布しているなど、重金属は様々な形で自然界に存在しています。

これらの自然由来重金属含有土壌はいつから発生して、どのように処理されるのでしょうか?

自然由来重金属含有土壌の対応事例は古くからあり、現場内に封じ込め施設を建設する埋め立て管理、場外の処理施設へ搬出しての処理、海面埋立施設へ搬出しての埋立処分といった事例があります。
1案件あたりの発生量が大きいことが特徴として挙げられます。(表1、2参照)

■表1 自然由来の重金属等への対応事例
遭遇事例現場名顕在化の契機対策土量または露出面積対策
トンネル建設工事による発生した岩石・土壌からの溶出中越
トンネル
事業実施区域周辺に銅鉱床が存在することが明らかとなったため、詳細設計時の地質調査ボーリングに重金属調査を追加した。その結果、溶出量基準を超過するひ素を確認した。800,000m3一重遮水シートの盛土内封じ込めによる事業用地内処理
トンネル建設工事による発生した岩石・土壌からの溶出 八甲田
トンネル
事業計画時に鉱化変質岩が存在することが明らかになり、酸性水や溶出した重金属等による周辺環境への影響が懸念されたため。540,000m3一重遮水シートの盛土内封じ込めによる事業用地内処理
トンネル建設工事による発生した岩石・土壌からの溶出仙台市営地下鉄東西線「土壌・地質汚染評価基本図〜仙台地域〜2006年」により建設予定地に自然由来の重金属等が分布することが明らかとなり、現地調査を行ったところ、竜の口層にひ素、カドミウムが確認された。このため仙台市が定めた「建設副産物適正処理推進要綱」(H15.5.20制定)に基づき、適切な処理を行うべき検討を開始した。400,000m3底部一重遮水シートおよび覆土の盛土内封じ込めによる事業用地外処理
トンネル建設工事による発生した岩石・土壌からの溶出甲子
トンネル
「甲子トンネル施工技術検討委員会」の提言により重金属調査を実施した。その結果、詳細設計時の地質調査ボーリングコアから土壌溶出量基準を超過する鉛、セレンを確認し、ひ素とカドミウムの長期的な溶出可能性を確認した。50,000m3二重遮水シートの盛土内封じ込めによる事業用地内処理
整地などの地山の掘削工事により発生した岩石・土壌からの酸性水工業団地調整池工事前の地質調査では、強酸性を呈する現地周辺ため池の水は確認されなかったが、工業団地造成地内調整池の完成直後に底面の溜まり水が強酸性を呈することを確認した。6,300m2セメント系固化改良土による露出面の表面被覆

(建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル(暫定版)平成22年3月より抜粋)

■表2 ずりの最終処分方法と場所
トンネル名用途場所道路盛土盛土処分場旧トンネル内既設処理プラント海中投棄封じ込め備考
下白滝T高速道路網走1     管理型・道路盛土、遮水シート
中越T高速道路旭川1     管理型・道路盛土、遮水シート
兜T国道小樽   1  管理型・旧トンネル内、遮水シート
青葉T国道室蘭  1   管理型・道路盛土、遮水シート(二重)
オロフレT地方道室蘭1     管理型・道路盛土、遮水シート
三豊T国道室蘭  1   管理型・道路盛土、遮水シート(二重)
八甲田T新幹線青森  1   管理型・道路盛土、遮水シート、仮設クローズド型
亀田山T高速道路秋田・青森    1 既設処理プラント・一般残土処分、土壌浄化
雪沢第2T高速道路秋田 1    管理型・盛土、遮水シート
仙台地下鉄地下鉄宮城 1    管理型・盛土、遮水シート、森林復旧盛土
甲子T国道福島1     管理型・道路盛土、遮水シート(二重)
額田T高速道路愛知1     管理型・道路盛土、遮水シート(?二重)
第二伊勢2号国道三重  1   管理型・処分場
川豊T国道愛媛  1   管理型・処分場
唐八景T地方道長崎     1海中投棄封じ込め、一般土で封じ込め、干潟時投棄・一般土被覆
計(15)525111 

(JTA技術委員会安全環境小委員会自然由来重金属文献調査ワーキング, 自然由来の重金属を含むずりの処理対策に関する文献調査, トンネルと地下, vol.45(2)2014より抜粋)


ここまでお読みいただきありがとうございます。
大量の自然由来重金属含有土壌の問題と現状について、お話しいただきました。
次回は、対策と今後の課題についてお話しをお聞きしています。


※ご意見・ご感想・ご質問はこちらのリンク先からお送りください。
ご氏名やメールアドレスを公表する事はありません。

▲このページの先頭へ