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水銀等による環境の汚染の防止に関する計画 ~「マーキュリー・ミニマム」の環境の実現を目指して~(案)が発表されました。 その1

■経緯

「水銀に関する水俣条約」締結に向けた日本国内の対応のうち、「水銀による環境の汚染を防止する法律」(2015年6月19日公布)において、主務大臣は、「水銀による環境の汚染を防止する計画」を策定するとされています。これに基づき、水銀等による環境の汚染の防止に関する計画 ~「マーキュリー・ミニマム」の環境の実現を目指して~(案)が発表されました。

【関連ページ】

これまでの日本の水銀に関する対応や関連法については、以下のページを参照にしてください。

水銀条約に関する水俣条約について
水銀に関する水俣条約締結に向けた日本の対応(まとめ)

また同法は、水俣条約への締約国が50か国に達した後90日目に発効となり、同計画は、同法の発効後に日本における水銀対策の実施計画として告示され、また水俣条約事務局に提出されます。

■計画の概要

この計画(案)では以下の事項が定められております。

  1. 水銀等による環境の汚染を防止するための基本事項
  2. 国、地方自治体、事業者及び国民が講ずべき措置に関する基本的事項
  3. その他条約の的確かつ円滑な実施を確保するための重要な事項

その中で、今回は、「1. 水銀等による環境の汚染を防止するための基本事項について」説明いたします。

■解説1
「1. 水銀等による環境の汚染を防止するための基本事項について」

今回の計画では、水銀対策のコンセプトとして、「マーキュリー・ミニマム」を掲げています。これは、水俣病を経験した日本においてグローバルな「マーキュリー・ミニマム」の環境の実現に向けて世界をリードすることを目的としており、そのためには、条約に規定されている措置のみならず、それを上回る措置及び我が国独自の措置を講じていくとしています。

具体例としては、以下のような事例が挙げられております。

1)水銀採掘

対象・・・
鉱業法に基づく鉱業権付与されたもの。
措置・・・
水銀の一次採掘(試掘も含む)が禁止。

2)水銀の輸出入

対象・・・
水銀の輸出入に関わるもの
措置・・・
水銀に環境の汚染防止に関する法律施行令3条に規定する水銀の輸出規定に加え、同条に規定される特定の水銀化合物の輸出も原則禁止。
(※ 3条 水銀、塩化第一水銀、酸化第二水銀、硫酸第二水銀、硝酸第二水銀及び硝酸第二水銀水和物、硫化水銀(詳細は、水銀による環境の汚染防止に関する法律施行令
輸出が許可される用途を条約上許可された用途に限定。
周辺環境の汚染や健康被害のおそれのある零細及び小規模な金の採掘及び暫 定的保管を目的とする輸出の禁止。
外為法に基づく事前の輸出審査において、輸出先における水銀の最終用途及び最終需要者等について厳格に確認し、報告を求める。
輸入に関しては、外為法に基づき、条約発効日から条約を実施するための措置を講ずる。

3)水銀添加製品の輸出入

対象・・・
条約付属書A第一部に掲載されている日本で流通する水銀添加製品。
措置・・・
この付属書第一部に掲載されている水銀添加製品の品目を特定水銀使用製品として指定し、製造及び組み立て製品への部品としての組み込みを原則として禁止するが、条約で認められた用途のために製造されることが確実であるものに限り、例外的に主務大臣が、製品ごとに製造許可の有効期間を設定の上、その種類ごとの製造を許可する。またこれら製品の廃止期限も条約付属書第一部状の段階的廃止期限である2020年に対して実態上可能なものについては前倒しする。品目や前倒し期限について以下を参照。

表 特定水銀使用製品に係る規制の前倒し・深堀

出典:環境省、水銀等による環境の汚染の防止に関する計画 ~「マーキュリー・ミニマム」の環境の実現を目指して~(平成28年)

4)製造工程における水銀等の使用に関する措置

対象・・・
条約付属書B第2部において規定されている塩化ビニルモノマー製造のような水銀を使用する製造工程。
措置・・・
実態として代替工程が確立されているため、条約発効日から水銀使用の禁止。

5)水銀等を使用する方法による金の採掘(零細及び小規模な金の採掘を含む)に関する措置

対象・・・
水銀を用いた金精練。
措置・・・
水銀アマルガム法を精練方法とする金の採掘を禁止。

6)排出に関する措置

対象・・・
以下に示す排出源。条約上の水銀排出施設はピンクの部分であり、日本独自の規制として、鉄鋼製造業も要排出抑制施設に規定。
表 我が国における主要排出源ごとの大気排出(平成26年度)

出典:水銀大気排出インベントリー(平成26年度)
措置・・・
排出実態、技術水準及び経済性等を踏まえ、施設の種類及び規模ごとに実効性のある排出基準等を課す。具体的には水銀排出施設の新規・既存に関わらず条約発効日の後2年以内に「利用可能な最良の技術に適合する排出限度値」に基づく排出規制を課す。日本では、条約に規制されていない鉄鋼製造施設を「要排出抑制施設」に規定し、規制をするとしている。

7)放出に関する規定

対象・・・
水質汚濁防止法に基づく届け出より、水銀を排出する可能性のある施設。
措置・・・
上記の施設の排水中の水銀濃度はすべて基準値以下であった。また、日本のすべての公共水域での測定でもすべて適合であった。引き続き、都道府県等による管理・監視を実施していく。

8)水銀廃棄物以外の水銀等の環境上適正な暫定保管に関する措置

対象・・・
水銀リサイクル事業者、蛍光管リサイクル事業者、水銀使用製品製造者、試薬メーカーなど一定量貯蔵しているもの。
措置・・・
現行は有価で扱われている水銀等が条約発効後に廃棄物に移行する可能性があり、貯蔵方法等に関する制度を構築し、規制。

9)水銀等廃棄物に関する措置

対象・・・
廃棄物に該当する水銀含有物(廃水銀・水銀等汚染物・水銀使用製品廃棄物、水銀含有再生資源)。

表 条約上の水銀廃棄物からの水銀回収等の現状(2010年ベース)

出典:環境省、水銀等による環境の汚染の防止に関する計画 ~「マーキュリー・ミニマム」の環境の実現を目指して~(平成28年)

措置・・・
廃棄物処理法に対象となるものについては、適切な処理をする。
具体的には、
  • 廃水銀 特別管理一般廃棄物、特別管理産業廃棄物に指定し、その特性に応じた収集、運搬基準を制定し、硫化・固型化後の処理の義務付け。
  • 水銀汚染物及び水銀使用製品廃棄物
    一般廃棄物:適正回収に向けた関係者の責務に基づく取組の促進。
    産業廃棄物:水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等に指定し、委託契約書及び産業廃棄物管理票等への記載の義務付け。
    一定濃度以上の場合は水銀回収義務付け。
    また、水銀使用製品において、家庭もしくは、事業者等で退蔵されているものに関しては早期の回収・処分を目指す。
  • 水銀再生資源
    8)と同様な措置を行う中で、管理に関して監視を強める。

10)汚染された場所に関する措置

対象・・・
土壌汚染対策法及び水質汚濁防止法に基づき、水銀等により汚染された場所。
措置・・・
汚染された場所を特定し、評価する。具体的には、土壌汚染に関する調査及び汚染土壌の対策の確保。水質汚濁防止法において地下水のモニタリング調査や浄化等の措置の確保。

次回は、計画(案)で定められている以下の事項について紹介いたします。
2. 国、地方自治体、事業者及び国民が講ずべき措置に関する基本的事項
3. その他条約の的確かつ円滑な実施を確保するための重要な事項

【参考資料】

詳細は環境省ホームページをご確認ください。

「水銀等による環境の汚染の防止に関する計画(案)」の取りまとめについて


三戸 この記事は
バイオディーゼル岡山株式会社
三戸 が担当しました

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