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カーボンプライシングの現状と展望 その6
~炭素税~

カーボンプライシングの代表的な2つの手法のうち、前回まで「排出権取引」についてお話を伺ってきました。
今回は、もうひとつの手法である「炭素税」について、IGESの小嶋 公史(こじま さとし)さんにお話を伺います。


写真:小嶋 公史 様

Q)まず、炭素税の概要について教えてください。
A)炭素税とは文字通り、炭素を消費して二酸化炭素を排出することに対する税金です。石油や天然ガスなどの化石燃料にかかる税と考えれば分かりやすいでしょう。税金ですから、国が税率を決めることになります。化石燃料に課せられれば、企業や一般消費者には、石油などの燃料価格や、それに伴う電気代などが上昇するという形で影響します。直接、間接のいずれにしても、炭素を使う全ての企業や国民に課せられることになります。
Q)排出権取引との違いはどのようなところでしょうか。
A)排出権取引と比較すると、炭素税は国の定める税金ですから、前もって近い将来までの支出を予測でき、企業等にとっては対応しやすいと言えるでしょう。引き上げが前もってアナウンスされれば、それに応じた対応を取ることができます。一方で、国としては、税率をどの程度にすれば目標の削減効果を得られるのかが不確実なのが難点と言えるでしょう。

ここで、排出権取引と炭素税の違いについて、表にまとめました。

排出権取引 炭素税
価格 変動(市場が決定) 固定(国が決定)
CO2削減効果 確実な削減が期待される 予測は難しい
対象 大規模排出者が対象となる。
(国の全ての排出はカバーできない)
消費者や中小企業も含めて広く課税できる。
政府収入 基本は排出者間の売買で、政府の収入にはならない。 政府の税収となる。
企業収支 売ることもでき、ビジネスチャンスが生まれる。予測は難しい。 納税するのみ。予測可能。
制度設計 難しい。特に、初期の割り当ての難航が予想される。 比較的容易だが、減免措置が複雑になる可能性も。

Q)炭素税は、1990年代の初めに北欧諸国で導入がスタートしています。これは、気候変動枠組み条約の採択が1992年であったことを考えると、随分と早かったのですね。
A)欧州では1980年代に所得税や法人税などの直接税から間接税へシフトする動きの一環として、炭素税に限らず様々な環境税を視野に入れた税制のグリーン化の議論が活発に行われていました。そのような流れの中で、木質バイオマスなどの自国のエネルギー資源の有効活用など、エネルギー戦略も踏まえて炭素税を導入したという経緯があります。
Q)北欧の炭素税は、産業界も含めて広く課税されているのでしょうか。
A)必ずしもそうではありません。例えば、最も高率の炭素税をかけているスウェーデンでは、CO2排出量の多い産業に対して減免措置が取られています。その結果、炭素税の対象となっているのは国全体のCO2排出量の4割弱、実効炭素価格は炭素税率の半分程度にとどまっています。
Q)日本では、ガソリンに対する税金は揮発油税などCO2排出量1トンあたりに換算すると24,000円以上という、スウェーデンの炭素税の約2倍に相当する税金が掛けられていますが、このような化石燃料に対する税は炭素税と言えるのでしょうか。
A)揮発油税などの化石燃料に対する税は目的がCO2の削減ではありませんが、化石燃料の使用を抑制するという意味で炭素税と同じ働きをするという指摘もあります。しかし、燃料の種類によって税率が異なっており、例えばCO2排出量あたりで比較すると、軽油の税率はガソリンの約半分、石炭に至っては1/10以下ですので、CO2排出量の多い化石燃料が有利になってしまうこともありうるという点で炭素税と異なります。CO2削減を効果的に進めるためには、炭素税はCO2の排出量に応じて課税される必要があります。
Q)CO2の削減を効果的に進めるためには、税収もCO2削減のために使うべきなのでしょうか。
A)CO2の削減を最優先にするのであれば、税収をCO2削減のための投資などに振り向けることは有効でしょう。しかし、炭素税をより広い視点で考えた場合、いろいろな税収使途が考えられます。例えば所得税や法人税の減税の振り向けることでCO2削減と経済の活性化の両方を目指すという考え方も有力ですし、地方創生や少子高齢化対策に活用することも考えられます。

西山 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
西山 が担当しました

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