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地球温暖化が近年の日本の豪雨に与えた影響

気象庁気象研究所、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所、海洋研究開発機構の研究チームは、2017年(平成29年)7月九州北部豪雨と2018年(平成30年)7月豪雨に相当する大雨の発生確率に地球温暖化が与えた影響を定量的に評価しました。

今回は、この研究成果についてご紹介します。

出典:地球温暖化が近年の日本の豪雨に与えた影響を評価しました(国立環境研究所)

まず、2017年7月九州北部豪雨と、2018年7月豪雨についておさらいします。

1. 2017年(平成29年)7月九州北部豪雨

福岡県から大分県にかけて観測史上最も多い記録的な雨量を観測し、九州地方整備局管内で初めて「大雨特別警報」が発令されました。日田雨量観測所では、日降水量336mmを記録し、平成24年九州北部豪雨の時と比較して、累加雨量は約2倍を記録。
九州北部の3水系(遠賀川、筑後川、山国川)では、氾濫危険水位を超える洪水が発生し、3観測所では観測史上最高水位を更新しました。

出典:平成29年7月九州北部豪雨災害に関する情報(国土交通省九州地方整備局)

2. 2018年(平成30年)7月豪雨

  • 6月28日から7月8日までの総降水量が四国地方で1,800ミリ、東海地方で1,200ミリを超えた
  • 7月の月降水量平年値の2~4倍となる大雨となった
  • 九州北部、四国、中国、近畿、東海、北海道地方の多くの観測地点で24、48、72時間降水量の値が観測史上第1位となった

と、広い範囲における長時間の記録的な大雨となりました。

出典:平成30年7月豪雨(前線及び台風7号による大雨など)(気象庁)

3. 研究手法は、「イベント・アトリビューション」

「イベント・アトリビューション」とは、スーパーコンピューターの中で、
・温暖化のない地球と、
・温暖化が進行している今の地球
を再現して、猛暑や台風といったことが起こる確率を計算して比較する方法です。

異常気象はそもそも観測記録が少なく、また大気の「揺らぎ」が偶然重なった結果発生するので、1つ1つの事例について温暖化の影響のみを分離して評価することは難しく、それぞれの異常気象について、温暖化の影響がどれくらいあるのかを科学的に証明することは困難でした。

しかし、近年の計算機能力の発展により、発生する可能性のある偶然の揺らぎを、大量の気候シミュレーションによって網羅することで、温暖化のない地球と、温暖化が進行している今の地球の状況を比べることが可能になりました。

4. 50年に1度の大雨の発生確率の違い

50年に1度の現象かどうかは、「特別警報」発表の判断基準になっています。

(参考)気象等に関する特別警報の指標(発表条件)(環境省)

図1は、温暖化のない状態(青線)と、温暖化が進行している状態(赤線)とを比較したものです。
横軸は降水量、縦軸は再現期間(何年に1度起こる事象か)を示しています。

図1:過去に発生した二つの豪雨に相当する時期及び地域における降水量と再現期間(〇年に一度)

赤実線は実際の(温暖化がある)気候条件、青点線は温暖化がなかったと仮定した場合の気候条件における再現期間。(a)は平成30年7月の瀬戸内地域、(b)平成29年7月の九州西部。(a)では3日積算降水量、(b)は日降水量を用いている。エラーバーは、サンプルの偏りや不足によって生じる誤差の幅を表し、過去実験の1981~2010年の期間における50年に一度の雨量の場所に表示してある。同じ降水量(横軸)に対し、グラフが下にあるほど現象の再現期間が短い(高い頻度で起こる)ことを示す。

それぞれのグラフについて、見ていきます。

2017年(平成29年)7月九州北部豪雨

温暖化がなかった気候条件(青線)では約54年に1度の頻度であった日降水量が、実際の気候条件(赤線)では約36年に1度のレベルまで頻度が増加していました(図1b)

2018年(平成30年)7月豪雨

温暖化がなかった気候条件(青線)では約68年に1度の頻度であった3日間降水量が、実際の気候条件(赤線)では約21年に1度のレベルまで頻度が増加していました(図1a)。

5. さいごに

大雨が降り特別警報が発表される度に、「50年に1度の大雨っていうけど、多い気がする」と何となく思っていましたが、最新のシミュレーションによって、「50年に1度」の規模の大雨が降る頻度が上がっている事が示されました(以前は50年に1度の頻度だった規模が、今では50年に1度以上の頻度で発生するという事でもあります)。

日常生活でふと思った事が、計算機能力が発展したことで、温暖化のない地球と、温暖化が進行している今の地球の状況を比べることが可能になって、温暖化はウソか?ホントか?という両極端なことではなく、温暖化による影響がどの程度あるのかを検証できるようになったというのは興味深いですね。

詳しくは、国立環境研究所ホームページをご確認ください。
地球温暖化が近年の日本の豪雨に与えた影響を評価しました


上田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました

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