一般廃棄物の「灰」事情 その4 ばいじんの減量化・再資源化
前回は、溶融スラグ(エコスラグ)由来の製品である「メルエース®」の活用事例についてご紹介しました。今回は、ばいじんの一般的な処理や再資源化サービス(メルテック(株)横須賀事業所)のご紹介をいたします。
■ばいじんについて
①法律上の「ばいじん」
廃棄物処理法では、産業廃棄物のばいじんは「大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設、ダイオキシン類対策特別措置法に定める特定施設又は産業廃棄物焼却施設において発生するばいじんであって、集じん施設によって集められたもの」と定義されています。
(参考)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(e-Gov 法令検索 )
また、特別管理一般廃棄物のばいじんは「ごみ焼却施設で生じたばいじん」とされています。
(参考)特別管理廃棄物規制の概要(環境省)
②発生フロー
ばいじん(煤塵)は、モノを燃やした時に発生する煤(すす)や塵(ちり)などの微粒子のものを指し、飛灰(フライアッシュ)とも呼ばれています。ばいじんは、燃焼排ガス中に含まれており、取り除いて大気中に放出されます。よって、ばいじんは、バグフィルターや電気集じん機等の集じん施設から発生します。
③主な種類
ばいじんは、取り扱う原料や燃料によって以下のように様々な種類があります。
- 製鋼ダスト(鉄スクラップ溶解用電気炉で発生するダスト)
- 転炉ダスト(製鋼用転炉で発生するダスト)
- 石炭灰(石炭火力発電で発生するダスト)
- キュポラダスト(鋳鉄鋳物製造炉キュポラで発生するダスト)
- バグフィルターダスト、電気集じん機ダスト(ごみ処理炉等の粉塵を除去するバグフィルター等から発生するダスト)
など

④ばいじんの成分・性状
ばいじんの成分や性状は、取り扱う原料や燃料の種類だけでなく、同時に取り除かれる排ガス中和剤の種類や操業条件(燃焼時の温度や空気比、排ガス処理時の温度や中和剤の使用量など)によって異なります。また、ごみ処理炉等ではダイオキシン類や水銀除去のために使用された粉末活性炭が含まれる場合もあります。
■ばいじんに添加する薬剤
①排ガス中和剤
燃焼ガス中に塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)などの酸性ガスが含まれる場合は、pH調整のため燃焼ガスに中和剤を噴霧や散水して中和を行います。一般的に、湿式排ガス洗浄では苛性ソーダ(NaOH溶液)、乾式排ガス洗浄では消石灰や重曹の粉末が多く用いられています。
ごみ焼却炉で発生するばいじんの一例を蛍光X線で分析すると、酸化カルシウム(CaO)、酸化ナトリウム(Na2O)、塩素(Cl)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化カリウム(K2O)などが含まれているのが分かります。

②重金属不溶化薬剤
ばいじんは鉛やカドミウムなどの重金属類を含むことが多いため、重金属類を不溶化する薬剤を水とともに混練し、埋め立て基準値を満たす品質にした後で管理型処分場に埋め立てされるのが一般的です。
不溶化する薬剤には、セメント、キレート剤、そしてリン酸などの無機薬剤が用いられます。
- キレート剤
強アルカリ性ばいじんに多く使用されています。鉛やカドミウムなどの不溶化に適し、高い速効性があります。 - セメント・コンクリート
セメントやコンクリートの固化作用で重金属類の固定化を行います。薬剤は安価ですが、重金属不溶化能力が他薬剤に比べて劣ること、数日間の養生期間が必要になること、そして産物重量が多くなることなどが短所になります。 - 無機系薬剤
リン酸系薬剤は、カルシウムなどとの反応で生成したヒドロキシアパタイトに、鉛などの重金属が取り込まれて不溶化します。不溶化後は長期安定性があります。
重金属不溶化薬剤は、それぞれ適したpHや必要添加量などが違うため、薬剤費や処理後ばいじんの処分費などのコスト、養生期間に保管する保管場スペース、処理後ばいじんの品質の合格率などから最も適したものを選択する必要があります。
■メルテック(株)横須賀事業所のサービス
メルテック(株)横須賀事業所は2021年5月に竣工しました。横須賀事業所では、主にばいじんを受け入れ、以下の4ステップを行い再資源化の妨げとなる塩類を除去します。
①受け入れ
後工程で水洗浄を行うため、塩基度が高い溶融飛灰や重金属不溶化剤(キレート剤等)を添加していないばいじんでも受け入れが可能です。
▶許可証はこちら サービス | メルテック株式会社
ばいじんの乾湿状態に合わせて受け入れ、保管を行います。調湿されたばいじんはダンプで運搬されてヤードに受け入れします。乾燥したばいじんはサイロに受け入れします。ばいじんに混入する恐れがある焼却灰についても、取り扱いの対象としています。

②前処理・水洗浄
乾燥したばいじんは溶解槽で水と混合されて、スラリー状にします。一方、調湿されたばいじんの場合は固化した塊を含むため、水を加えながら粉砕してスラリー状にします。
ばいじんの成分や性状は多種多様ですので、原料管理と調合で成分や性状を平準化させることで、洗浄後残さ等の品質を安定化させることができます。
③ろ過
スラリー化したばいじんは、フィルタープレスと呼ばれる大型脱水機に送液されて濾過や脱水を行い、再資源化の妨げとなる塩類を除去します。塩類を除去することで、溶融再資源化するばいじん等の量を増やすことができます。フィルタープレスからの排水は、塩類や重金属を含むため排水処理施設で下水道基準に適合するように処理します。下水道基準値を満足していることを確認後、下水道へ放流いたします。
④再資源化施設へ出荷
洗浄後残さは、所定の水分値まで乾燥させ、メルテック(株)本社工場(栃木県小山市)及びメルテックいわき(株)(福島県いわき市)に出荷し、溶融再資源化します。
メルテック(株)及びメルテックいわき(株)で溶融資源化したものは、前回記事でもご紹介したように、建設資材や金属として生まれ変わります。DOWAグループは今後もグループ会社や異事業間で連携強化し、とことんリサイクルを推進していきます。
【関連サイト】
この記事は
エコシステムジャパン株式会社
伊藤 が担当しました