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持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループ(JCLP) その4
~不都合な真実~

名称 日本気候リーダーズ・パートナーシップ
(Japan Climate Leaders’ Partnership(JCLP))

設立 2009年7月

持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループをご存知ですか?
脱炭素社会の実現に向け、個別企業の枠を超えた活動に取り組んでいるという「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan Climate Leaders’ Partnership(JCLP))」の事務局である松尾 雄介様に、お話を伺いました。

【その4】不都合な真実

日本の排出量

私もいろいろなデータ調べたのですが、残念ながら日本人はCO2をたくさん排出して生活している国民ですね。単純にCO2の排出量を人口で割ると、一人当たりの排出量はOECDの中でも高いほうです(※)。それでもアメリカと比べたら全然少ないですが、中国に比べたらはるかに多くのCO2を排出しています。そういった意味では環境先進国ではないかもしれないと思います。
(※日本の二酸化炭素排出量は世界のおよそ3.4%を占めていますが、日本人の排出量はは世界平均のおよそ1.6倍です)

そうですね。COPに行くと、世界の中での日本の立ち位置を理解できるので、だいたいみんなブルーになります。そして、会期の最後のほうで、なんとか頑張ろうという感じになって帰ってくる、という感じです。

前回紹介した、2017年の『NHKスぺシャル』の頃が一番ブルーでした。本当に、行くところ、行くところで石炭火力のことを聞かれたり、日本は昔はすごく憧れの国だったのに、なんで今こんなふうになったのか、ということ言われました。

そんなにブルーになったのですか?

でも今は、そこまでではありません。日本側もだいぶ変わりました。
少なくとも“日本の石炭火力で世界に貢献”というような、そういうファクトから見る明らかに不適切なものは少なくなりました。ただ、まだニーズがあるとか、まだ貢献の余地があるみたいな。もしくは石炭火力をもっと進化させようみたいな、そういうトーンはまだ見られます。ただ、ファクトを見れば、石炭火力の高効率化では、2℃(1.5℃)目標を達成できないのは明らかです。

日本でも、最近は石炭火力は脱炭素とは言えないので、それを続けるのは良くないんじゃないか、と言い始めているメディアも少なからずあります。

日本もだいぶ変わってきたと思ってもよろしいですか。まだまだですか。

ゴールには遠いですが、変化自体はありますし、変化としてはそんなに小さくもないと思います。

アメリカ

温暖化の流れの中で注目されているのがアメリカですが、2019年11月にパリ協定脱退に向けて手続きを開始しましたね。

アメリカは、パリ協定から脱退する方向で動いています。ただ、アメリカがパリ協定からが抜けようが抜けまいが、アメリカは色々な理由があってCO2自体はそこそこ減りつつあるんです。シェールガスが問題視されている一方で、再生可能エネルギーがすごい勢いで広がっています。
あと、アメリカは日本よりは州の力が強いので、We are still inといった州の取り組みがあり、州独自でかなり規制を強化してするところがあります。パリ協定を脱退したから、いきなりアメリカのCO2が急増するということにはならないとは思いますが、ただ2℃目標には全然足りないという、今までの状況が続くのだと思います。

確かにアメリカには世界屈指のグローバル企業が多いので、アメリカが国として脱退したからもうCO2は関係ないという訳にはいかないんですね。

そうです。気候変動の面でも、アメリカはすごく分断されています。気候変動は、大問題だと思ってる人たちは日本よりも相当アクティブに活動しています。

カリフォルニア州は、かなり積極的ですよね。

カリフォルニア州はすごいですよ。とにかく色んな政策を立てて、トランプ政権と訴訟で戦っています。今ホットなニュースは、燃費規制です。カリフォルニアは「CO2削減のため、これからどんどん燃費規制を厳しくします」と言い、連邦政府は「それはだめだ」と言い、カリフォルニアが「何を言ってるんだ。俺たちやりたいんだ」という事で、訴訟になっています。
面白いことに、トランプ政権側、つまり燃費規制を緩めようとしている側を支援する自動車会社とカリフォルニア州側についてる自動車会社がいて、ニュースになっています。日本のメーカーでは、トヨタがトランプ政権側についているとの報道もありました。

カリフォルニア州は、例えば新しい住宅には太陽光パネルの設置を義務付けるというような、積極的な、日本でもやればいいのにと思えるような政策を立てています。

今、カリフォルニアは、山火事とかですごく大変なようです。
気候変動の一般的な傾向なのですが、気候変動の影響で乾燥している地域は更に乾燥して、湿ったところは洪水などのリスクが高まっています。カリフォルニアも、以前から山火事は起こっていたのですが、ひどくなってきていて、それで電力会社が1社破綻してしまいました。

リアルな影響

会社が破綻したんですか?

電力会社による電線の整備が行き届いていなかったのが、山火事の1つの原因だと、賠償になり、連邦法のチャプター11、破綻を申請したというのがありました。
それが気候変動とひも付けられて、気候変動で倒産した第1号だ、という話になっています。

それと、保険がかけられない、という話もあります。実際にカリフォルニアで保険の更新ができない割合が増えているそうです。
山火事等を踏まえると、その被害を受けやすいと思われるカリフォルニアの住宅の保険はリスクが高いらしく、もう保険を引き受けないという会社が出てきているそうです。

このように、カリフォルニアでは日本よりも一歩か二歩ぐらい、リアルに気候変動の影響が顕在化しています。そして、そういう現象が気候変動とひも付けて認知されています。日本では、これだけ台風が来て、ようやく温暖化の影響もあると、言い始めましたが、温暖化対策には話が向かず、防災に力を入れる、という議論になっています。
カリフォルニアでは、このままでは本当に危機的な状況になるのが目に見えているので、温暖化対策も抜本的に強化すべきという議論になっていると思います。

そういった世界の事例はたくさんあっても、今こうやって松尾さんに話していただいたようなことは、日本にはあまり入ってきていないのでしょうか。JCLPの会合で伺う色々な話は、日本の報道ではあまり見かけないのですが、温暖化にまつわる様々な情報を知って初めて、危機意識が芽生えてくると思います。

JCLPの会員企業の皆さんは、そういう問題意識を持ってらっしゃると思います。ですので、JCLPとしても、自分たちが見たこと、考えたこと、感じたことはちゃんと発信していきたいと考えています。

余談ですが、『NHKスペシャル』では、本当に密着されました。朝食を食べているところから夕食を食っているところまでずっと。視察団に参加された企業にとってみると、ずっと密着されて一部の発言を切り取られるのではという不安もあったのかと想像します。
でもやっぱり皆さん発信することは大切なことだと考えていましたので、密着取材を受け入れることになりました。かなり突っ込んだ議論をしている所まで放送されてしまいましたが、反響も大きかったので、良かったと思っています。

知ってもらう事は、初めの一歩ですね。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


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