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溶融スラグに迫る その1
~スラグとは~

宮城大学 食産業学群
北辻 政文(きたつじ まさふみ)教授

宮城大学ホームページ

「スラグ」という言葉は皆さん聞いたことはあると思いますが、どうやって作られていて、どんなものなのか?
素朴な疑問を、溶融スラグの専門家の北辻教授にお伺いしました。

【その1】スラグとは

まず、「スラグ」について教えてください。

スラグとは、鉱石から金属を製錬した時に出る副産物です。鉄を取った後のものは、鉄鋼スラグ、ニッケルを取った後のものは、フェロニッケルスラグ、その他、マンガンスラグ、銅スラグ、亜鉛スラグ、などがあります。スラグと一言で言っても外観も性能も違います。


写真:銅スラグ

鉄鋼スラグなど

鉄鋼スラグの発生量が最も多いです。
日本では、毎年1憶トンの鉄が作られます。1憶5千万トンの鉄鉱石を輸入して、溶鉱炉で鉄を溶かしますが、鉄鉱石に含まれる鉄は酸化鉄なので、酸化鉄から酸素を取って金属鉄にするためには、酸化鉄から酸素を取らなければいけません。その時に使うのが一酸化炭素やコークス、石灰石です。石灰石は同時に溶融物の粘度調整や還元雰囲気の調整にも役立ちます。粗鉄と同時に高炉スラグが発生します。鉄を1憶トン生産すると、高炉スラグが約3,000万トン発生します。

CaCO3 → CaO+CO2 → CO2+C → 2CO
石灰石
C → CO2 → CO
コークス

① 3Fe2O3+CO → 2Fe3O4+CO2
② Fe3O4+CO → 3FeO+CO2
③ FeO+CO → Fe+CO2

さらに、転炉でカルシウムを添加して、脱リンをしてさらに鉄の純度を高めます。この段階で出てくる転炉スラグで、1千万トン発生します。

これらの高炉スラグ、転炉スラグは、鉄鋼スラグと呼ばれ、つまり鉄鉱石から鉄を取った残りカスです。

溶融スラグ

一方で、溶融スラグというスラグもあります。溶融スラグは、ごみやその焼却灰を溶かして固めたものです。副産物ではないので、「スラグ」ではないという人もいます。
私たちは「溶融スラグ」と呼びますが、以前JISでは溶融スラグでななく、「溶融固化物」という表現で呼ばれていました。最近のJISでは、溶融スラグという表現に改定されました。

溶融スラグは、ごみや焼却灰を千数百度の高温で溶かし、いわゆるマグマ状態にします。これをゆっくり固めると石になり、水の中に入れて急激に冷やすと砂になります。千数百度のマグマ状になったものを冷やして固めているので、いわば人工の火成岩と扱っていると思えば良いでしょう。品質的には普通の安山岩と同じような性質と考えいただいて結構です。ごみから砂や石を造るのですから、これは究極のリサイクルと言えでしょう。


写真:溶融スラグ

一般廃棄物を溶融させた際の特徴として、ごみを高温で溶かすと、石や砂の成分だけでなく、同時に金属も溶けます。都市鉱山という言葉があるように、我々の身近な物には金、銀、銅やレアメタルなどの金属が入っています。溶融炉では、そうした有用な金属も同時に回収できるという特徴があります。

最近は、子供のおもちゃも光ったり、音が出たり、モニタがついているようなものも多いので、身近な物に金属が含まれているというのは、なんとなくわかりますが、家庭からでたごみで石ができるのか、すごく不思議です。掃除で集められた砂ぼこりとかでしょうか?

いろんなものに、シリカが含まれているからです。シリカは、植物にも含まれています。微量ですけども。

例えば稲はまっすぐに成長して折れずに立っていますね。あれも大量のシリカが含まれているからです。シリカが足りないと、稲は倒れてしまいます。だから、肥料としてシリカを田んぼへ入れます。強風が吹いたり、大雨、台風で稲が倒れて、稲穂が水につかっちゃうと腐っちゃってお米がダメになるので、稲の茎を強くするためにシリカを足すのです。知りませんでした?

知りませんでした。
シリカは、土や砂の成分で、植物はセルロースでできていますよね?

岩石や土にシリカは多く含まれていますけど、植物にも含まれているのです。もみ殻は90%シリカですよ。タイとか東南アジアでは、米作中心だから、もみ殻が大量にあるので、それを灰にしてシリカの代替としてコンクリートに使っています。そうすると、ポゾラン反応によりコンクリートの長期強度が上がるのです。

お米を作っているところでは、シリカが足りないので鉄鋼スラグを肥料としても使っているのです。
生ごみを燃やして灰ができますが、その主成分はシリカです。

スラグの用途

骨材

話は戻りますが、この溶融スラグというのは、高温でマグマ状になったものをゆっくり固めて石にしたものです。そうすると建設材料として、専門的な言葉ですがアスファルトやコンクリートに加える「骨材」として使えるのです。
それから水の中に急激に入れて砂にすると、細骨材と言いますが、砂の代替として使われます。

建設業において、粗骨材と細骨材は年間8憶トンくらい使われていると言われています。
溶融スラグは、80万トン程度作られていますので、仮に全量を使ったとしても、骨材全体の1%も満たない程度です。

コンクリートを作る時に、骨材はどれくらい入れるのですか?

ボリュームで7割くらいです。骨材は、「骨」と書きますが、「大事」という意味なのです。
肉を切らせて骨を断つという言葉がありますが、これは肉を切られても死なないけど、骨を切られたら死んじゃうのですね、おそらく。だから、骨は大事なのです。だから、「骨材」は、コンクリートに大事な材料という意味なんですよ。

これが、ノーマルコンクリートの断面です。
普通の粗骨材(砕石)が入っていて、細かいのが川砂です。

こちらが、銅スラグを使ったコンクリートの断面です。
細骨材として銅スラグが使われています。黒い小さい粒が銅スラグです。

これは、マンガンスラグを入れたものです。緑色がきれいで、気に入っています。

あと、これは、ガラスを入れて作ったコンクリートの断面です。

透明なガラスが、入ってる! かわいい!

かわいい? そうですか?
これは、実はブラウン管の鉛ガラスを使ったんです。ブラウン管には、電磁波を遮るのために鉛が使われているのですが、最近は液晶テレビになっちゃったので、ブラウン管が大量に余っています。そこで、それをコンクリートに入れることで放射線廃棄物の保管に使えると考えたのです。結果として、放射線を10%くらいカットできました。研究結果は良かったのですが、鉛は重金属でもあるので、後始末が困るから、という事で実用化されませんでした。

こちらは、青色のワイン瓶のガラスを入れたコンクリートです。

おしゃれなお店の内装みたいですね。

ガラス瓶って、茶色と透明の一升瓶はリユースできるし、茶色と透明のガラス瓶はリサイクルできるのです。でも、色付き瓶はリサイクルできなくて、ワンウェイなのです。最近は、女性にも焼酎とか飲んで欲しいということで、このようなおしゃれな色付きの瓶の利用が増えています。その結果、大量の色付き瓶が、廃棄されるようになりました。

一方、ガラスって、エッジで怪我をしますよね。このため、それをエッジレスにする加工技術があって、ガラスの粒を触っても怪我しないようにしています。これにより、ガラス瓶のカレットも利用できるようになりました。


写真:エッジレス加工後の、ガラス粒


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は「スラグの用途」についてお伺いします。


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