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廃棄物処理法解説シリーズ(2) ~建設廃棄物の処理責任について~

前回は、一般廃棄物や産業廃棄物の処理責任がどこにあるのかについて説明しました。
今回は、事業形態が複雑になる場合が多い「建設工事」において、工事に伴って生じる廃棄物は誰が処理責任を負うかについて解説します。

(1)建設工事の施工体系について

建設工事には、戸建て住宅の建設から大規模なビルの開発まで、様々な規模の工事がありますが、一般的に、各種専門工事が組み合わされて工事が進められます。
専門工事と聞いてもピンとこない方もいらっしゃると思いますので、以下に建築工事における専門工事の例を挙げます。それぞれの工事は、それぞれの専門会社によってなされるのが一般的です。マンションやオフィスビルの建築現場を思い浮かべていただけると、イメージしやすいと思います。

建築工事の専門工事の例
杭工事、土工事、鉄筋工事、型枠工事、コンクリート工事、防水工事、シーリング工事、タイル工事、左官工事、吹付工事、シャッター工事、ドア工事、木製建具工事、ガラス工事、塗装工事、石膏ボード等工事、クロス張り工事、床張り工事、ユニットバス工事、二重床工事、フローリング工事、トイレブース工事、システムキッチン工事、排水工事、電気工事、植栽工事、舗装工事

(2)建設廃棄物の特徴

土木建築に関する工事に伴って生ずる廃棄物は「建設廃棄物」と呼ばれ(建設廃棄物処理指針(平成22年度版))、コンクリート塊、アスファルト塊、木くず、ガラスくず、金属くず及びそれらの混合物などがあります。
具体的には、土工事や杭工事で発生する汚泥、新築工事で使用する木材や内装材の端材や包装材等、解体工事で生じるコンクリートガラ、木材、ガラス、サッシ、内装材、汚泥等です。

建設廃棄物には、次のような特殊性があります。

  1. 廃棄物の発生場所が一定しない。
  2. 発生量が膨大である。
  3. 廃棄物の種類が多様であり、混合状態で排出される場合が多いが、適確に分別すれば再生利用が可能なものも多い。
  4. 廃棄物を取り扱う者が多数存在する。

出典:環廃産第110329004号 平成23年3月30日「建設工事から生ずる廃棄物の適切処理について(通知)」

この “4.廃棄物を取り扱う者が多数存在する”に関連して、前述の通知では「建設工事においては、建設工事の発注者、当該発注者から直接建設工事を請け負った元請業者、元請業者から建設工事を請け負った下請負人等関係者が多数おり、これらの関係が複雑になっているため、廃棄物の処理についての責任の所在があいまいになってしまうおそれ」があると記載されています。誰が建設廃棄物の処理責任が負うのか、フジコー裁判等長く議論の対象となってきましたが、平成22年の廃棄物処理法改正によって、建設廃棄物の排出者責任が明確化されました。

(3)建設廃棄物の排出者責任

平成22年の廃棄物処理法改正によって、廃棄物処理法第21条の3に「建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外」が追加されました。

廃棄物処理法第21条の3第1項
土木建築に関する工事(建設工事)が数次の請負によって行われる場合にあっては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についての廃棄物処理法の適用については、当該建設工事を注文者から直接建設工事を請け負った建設業者を事業者とする。

“当該建設工事を注文者から直接建設工事を請け負った建設業者”とは、元請業者に当たります。つまり、建設工事現場から生ずる廃棄物の処理責任は、元請業者にあることが明確化されました。

(ア)元請業者が一事業者の場合

元請業者が一事業者の場合は、建設工事における排出事業者は元請業者が該当し、その工事で発生する廃棄物の排出者責任を負います。


出典:環廃産第110329004号 平成23年3月30日「建設工事から生ずる廃棄物の適切処理について(通知)」

(イ) 元請業者が複数存在する場合(分離発注の場合)

1つの建設工事現場において、建物建築工事とプラント設備工事など、工事範囲ごとに元請業者が存在するケースもあります。元請業者が複数存在する場合は、各工事の元請業者が、その工事範囲ごとに発生する廃棄物の排出者責任を負います。


出典:環廃産第110329004号 平成23年3月30日「建設工事から生ずる廃棄物の適切処理について(通知)」

(4)下請業者の責務(保管)

廃棄物処理法では建設廃棄物の排出者責任は元請業者にあると規定されていますが、一定の場合に、下請業者も廃棄物の適正処理に関して責務や役割を負います。

例えば、建設工事現場内で下請業者が産業廃棄物の保管を行う場合、下請業者も排出事業者とみなされ(「みなし排出事業者」)、産業廃棄物保管基準が適用されます。

廃棄物処理法第21条の3(建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外)
第2項 建設工事に伴い生ずる産業廃棄物について当該建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者から当該建設工事の全部又は一部を請け負つた建設業を営む者(以下「下請負人」という。)が行う保管に関しては、当該下請負人もまた事業者とみなして、第十二条第二項、第十二条の二第二項及び第十九条の三(同条の規定に係る罰則を含む。)の規定を適用する。

※第十二条第二項、第十二条の二第二項及び第十九条の三とは

第十二条第二項
産業廃棄物保管基準に従わなければならない
第十二条の二第二項
特別管理産業廃棄物保管基準に従わなければならない
第十九条の三
廃棄物の保管、収集、運搬又は処分に関する改善命令

廃棄物の保管基準は、廃棄物処理法施行規則第8条に規定されています。
保管基準のポイントは以下の4点です。

  1. 保管は、次に掲げる要件を満たす場所で行うこと。
    • (ア)周囲に囲いが設けられていること。
    • (イ)見やすい場所に必要事項を表示した掲示板が設けられていること。
  2. 保管場所から産業廃棄物が飛散・流出・地下浸透しないよう、また悪臭が発散しないような措置を講ずること。
  3. 保管の場所にねずみが生息したり、害虫が発生しないようにすること。

(5)下請業者の責務(「少量の一定の廃棄物」の運搬)

書面による請負契約で下請負人が自ら「少量の一定の廃棄物」の運搬を行うことを定めた場合には、その下請業者は「みなし排出事業者」となり、廃棄物処理業の許可がなくても、その廃棄物の運搬を行うことが可能となります。

廃棄物処理法第21条の3(建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外)
3 建設工事に伴い生ずる廃棄物(環境省令で定めるものに限る。)について当該建設工事に係る書面による請負契約で定めるところにより下請負人が自らその運搬を行う場合には、第七条第一項、第十二条第一項、第十二条の二第一項、第十四条第一項、第十四条の四第一項及び第十九条の三(同条の規定に係る罰則を含む。)の規定の適用については、第一項の規定にかかわらず、当該下請負人を事業者とみなし、当該廃棄物を当該下請負人の廃棄物とみなす。

平成22年廃棄物処理法改正についての解説で、「建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外」についても詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。

DOWAエコジャーナル 法規と条例
廃棄物処理法改正(3) ~建設廃棄物関連のポイント~

【参考資料】

環境省ホームページ
「建設工事から生ずる廃棄物の適切処理について(通知)」環廃産第110329004号 平成23年3月30日

四国地方整備局ホームページ
建設業法のポイント


池尻 この記事は
エコシステム秋田株式会社
池尻 が担当しました

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