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水銀廃棄物ガイドライン解説 その1 「水銀廃棄物とは」

2017年6月に環境省から「水銀廃棄物ガイドライン」が公表されました。
今回はガイドラインの解説の第1回目として、水銀関連の廃棄物処理法施行令等改正の経緯や水銀廃棄物について説明します。

1. 水俣条約の目的

2013年10月の外交会議で採択された水俣条約は、大気中の長距離移動性、環境中での循環・残留性、生物体内蓄積性を有する水銀を世界的に懸念される化学物質として認識し、水銀等の人為的な排出と放出から人の健康と環境を保護することを目的としています。

2. 廃棄物処理法施行令等改正の経緯

水俣条約第11条(水銀廃棄物)では水俣条約の目的達成のための取組の1つとして、水銀廃棄物が環境上適正な方法で管理されるように、締約国が措置を講ずることを求めています。

水俣条約で求められる項目を担保するための国内の措置について検討され、2015年2月に中央環境審議会より環境大臣へ「水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀廃棄物対策について」が答申されました。

答申で示された水銀廃棄物の環境上適正な処理の在り方を踏まえて、廃棄物処理法施行令が2015年11月に改正され、その規定に基づき2015年12月に第1段施行分に係る施行規則等が改正され2016年4月1日に施行されています。さらに2017年6月に第2段施行分に係る施行規則等が改正され2017年10月1日に施行されます。

【関連記事】
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3. 水銀廃棄物ガイドラインの目的

水銀廃棄物の取り扱い、収集運搬や処分の留意事項を具体的に解説することによって、水銀廃棄物の適正な処理を担保することです。

4. 水銀廃棄物とは

水銀廃棄物とは、廃金属水銀等、水銀汚染物、水銀使用製品廃棄物の総称です。

従来は水銀汚染物の特別管理産業廃棄物(図の黒枠部分の(特別管理産業廃棄物))のみが規制されていましたが、2015年の施行令改正により、廃金属水銀等、水銀含有ばいじん等、水銀使用製品廃棄物という区分が追加されました。これらのうち、従来の特別管理産業廃棄物に加えて、廃水銀(一般廃棄物)、廃水銀等(産業廃棄物)が特別管理廃棄物に該当します。


図 水銀廃棄物の分類

出所:水銀廃棄物ガイドライン(環境省)

5. 廃水銀及び廃水銀化合物(以下「廃水銀等」)

(令第2条の4第5号二、規則第1条の2第5項、規則別表第1)

2015年の施行令改正により、(1)「特定の施設から排出した廃水銀等」と(2)「水銀が含まれている物(一般廃棄物を除く。)又は、水銀使用製品が産業廃棄物になったものから回収した廃水銀」が新たに特別管理産業廃棄物に指定されました。2017年の施行規則改正で特定施設が追加されました。

現在、金属水銀は有価物として取り扱われているため廃棄物処理法にて特別な規定はなされていませんが、今後、水俣条約により水銀の使用が制限され、中長期的には金属水銀を廃棄物として取り扱う必要が生じると想定されることが背景にあります。

(1)特定の施設から排出した廃水銀等に関して、
「特定施設」(規則別表第1)と排出される廃水銀等の例

  1. 水銀等が含まれている物又は水銀使用製品廃棄物から水銀を回収する施設(例:回収された廃水銀が廃棄物となったもの)
  2. 水銀使用製品の製造の用に供する施設(例:製造用に保管していた水銀が廃棄物になったもの)
  3. 灯台の回転装置が備え付けられた施設(例:レンズを浮かせるための水銀槽式回転装置で使用した水銀が廃棄物になったもの)
  4. 水銀を媒体とする測定機器(水銀使用製品(水銀圧入法測定装置を除く。)を除く。)を有する施設(例:水銀が使用されている備え付けのポシロメーターで用いられた水銀が廃棄物になったもの)
  5. 国又は地方公共団体の試験研究機関(例:廃試薬)
  6. 大学及びその附属試験研究機関(例:廃試薬)
  7. 学術研究又は製品の製造若しくは技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究を行う研究所(例:廃試薬)
  8. 農業、水産又は工業に関する学科を含む専門教育を行う高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校、職員訓練施設又は職業訓練施設(例:廃試薬)
  9. 保健所(例:廃試薬)
  10. 検疫所(例:廃試薬)
  11. 動物検疫所(例:廃試薬)
  12. 植物防疫所(例:廃試薬)
  13. 家畜保健衛生所(例:廃試薬)
  14. 検査業に属する施設(例:廃試薬)
  15. 商品検査業に属する施設(例:廃試薬)
  16. 臨床検査業に属する施設(例:廃試薬)
  17. 犯罪鑑識施設(例:廃試薬)

1〜7の施設に関しては、平成28年4月から施行済み。
8〜17の施設は平成28年10月から特定施設に追加されました。
下線部は、平成31年3月に改正されました。

(2)水銀が含まれている物(一般廃棄物を除く。)又は、水銀使用製品が産業廃棄物になったものから回収した廃水銀の例

  • 水銀等が含まれているものから回収した廃水銀(例:水銀含有再生資源から回収した廃水銀、水銀含有ばいじん等から回収した廃水銀等)
  • 水銀使用製品が産業廃棄物になったものから回収した廃水銀(例:蛍光ランプ、水銀を含む計測機器等から回収した廃水銀等)

6. 水銀含有ばいじん等

(令第6条第1項第2号ホ)

水銀含有ばいじん等の対象となる濃度については、水銀の大気排出に関する規制を効果的に実施するという観点から設定されており、水銀の「含有」量に関する基準値という点が特徴です。
水銀含有ばいじん等に該当するかどうかの基準値と、水銀の回収が必要になる基準値が規定されました。
一定濃度以上の水銀を含有する水銀汚染物は、キレート処理やセメント固化では水銀溶出を抑制できないおそれがあるため、あらかじめ水銀を回収する事が義務付けられました。

名称 水銀含有ばいじん等に該当するかどうかの基準(改正規則第7条の8の2) 水銀の回収が必要となる濃度
(改正規則第8条の10の3の2)
ばいじん、燃え殻、汚泥、鉱さい 15mg/kg以上含有 1,000mg/kg以上含有
廃酸、廃アルカリ 15mg/L以上含有 1,000mg/L以上含有

7. 水銀使用製品産業廃棄物

●水銀使用製品

(令第6条第1項第1号、規則第7条の2の4)

水銀使用製品とは、以下の1~3を指し、水銀使用製品が産業廃棄物となったものが「水銀使用製品産業廃棄物」に該当します。

水銀使用製品

  1. 下の規則別表第4に示すもの
  2. 水銀使用製品の組み込み製品
    (下の規則別表第4に示すもののうち×印がないものを材料又は部品として製造される製品)
  3. 水銀の使用に関する表示がされている水銀使用製品

規則別表第4

1水銀電池
2空気亜鉛電池
3スイッチ及びリレー(水銀が目視で確認できるものに限る)×
4蛍光ランプ(冷陰極蛍光ランプ及び外部電極蛍光ランプを含む。以下同じ×
5HIDランプ(高輝度放電ランプ)×
6放電ランプ(蛍光ランプ及びHIDランプを除く)×
7農薬
8気圧計
9湿度計
10液柱形圧力計
11弾性圧力計(ダイアフラム式のものに限る)×
12圧力伝送器(ダイアフラム式のものに限る)×
13真空計×
14ガラス製温度計
15水銀充満圧力式温度計×
16水銀体温計
17水銀式血圧計
18温度定点セル
19顔料×
20ボイラ(二流体サイクルに用いられるものに限る)
21灯台の回転装置
22水銀トリム・ヒール調整装置
23放電管(水銀が目視で確認できるものに限り、放電ランプ(蛍光ランプ及びHIDランプを含む。)を除く)×
24水銀抵抗原器
25差圧式流量計
26傾斜計
27水銀圧入法測定装置
28周波数標準機×
29ガス分析計(水銀などを標準物質とするものを除く。)
30容積形力計
31滴下水銀電極
32参照電極
33水銀ガス発生器(内蔵した水銀等を加熱又は還元して気化するものに限る。)
34握力計
35医薬品
36水銀の製剤
37塩化第一水銀の製剤
38塩化第二水銀の製剤
39ヨウ化第二水銀の製剤
40硝酸第一水銀の製剤
41硝酸第二水銀の製剤
42チオシアン酸第二水銀の製剤
43酢酸フェニル水銀の製剤
備考19の項の製品は水銀使用製品に塗布される物に限り×

下線部は、平成31年3月に改正されました。

水銀の使用に関する表示がされている水銀使用製品

水銀等が使用されている事が表示されている水銀使用製品が産業廃棄物となった場合に、水銀使用製品産業廃棄物に該当します。


例:J-Moss水銀含有表示の例

J-Moss:以下の7製品の水銀含有量が0.1wt%を超えている場合には、J-Mossマークを付けることが義務付けられていますが、「Hg」という化学記号を記載するかは任意です。

対象製品:
①パーソナルコンピュータ、②ユニット形エアコンディショナ、③テレビ受像機、④電気冷蔵庫、⑤電気洗濯機、⑥電子レンジ、⑦衣類乾燥機
対象物質:
鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB(ポリブロモビフェニル)、PBDE(ポリブロモジフェニルエーテル)

●回収が必要となる水銀使用製品産業廃棄物

(令第6条第1項第2号ホ(2)、規則 第7条の8の3)

規則別表5に示される製品は液体の金属水銀を含み、機器の破損により金属水銀そのものが出される恐れがあるため、あらかじめ水銀の回収が求められます。

規則別表第5

1スイッチ及びリレー
2気圧計
3湿度計
4液柱形圧力計
5弾性圧力計
6圧力伝送器
7真空計
8ガラス製温度計
9水銀充満圧力式温度計
10水銀体温計
11水銀式血圧計
12灯台の回転装置
13水銀トリム・ヒール調整装置
14放電管(放電ランプ(蛍光ランプ及びHIDランプを含む。)を除く。)
15差圧式流量計
16浮ひょう形密度計
17傾斜計
18積算時間計
19容積形力計
20ひずみゲージ式センサ
21滴下水銀電極
22電量計
23ジャイロコンパス
24握力計

下線部は、平成31年3月に改正されました。

次回は、排出事業者が留意しなければいけない改正点について、説明します。

【出典】

環境省ホームページ
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の公布(水銀関係)について
水銀廃棄物ガイドライン第2版(平成31年3月)
(参考)水銀廃棄物ガイドライン第2版 新旧対照表

【参考資料】

環境省ホームページ
廃棄物処理法施行令等の改正(水銀関係)についての説明会(平成29年6月実施)説明資料(平成29年6月)
水銀廃棄物の適正処理について、新たな対応が必要になります。
水銀廃棄物関係
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 平成二十七年十一月十一日政令第三百七十六号の未施行内容

経済産業省ホームページ
資源の有効な利用の促進に関する法律の基本方針の改定及び判断基準省令の一部改正について

インターネット版官報
平成30年12月3日(号外 第266号)


上田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました

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