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DOWAエコジャーナル

2019.08.01 廃棄物管理 法律

廃棄物処理法解説 はじめの一歩(その8) ~排出事業者責任(1)~

廃棄物処理法

廃棄物処理法が改正される度に強化されていく排出者責任について、解説します。

【1】廃棄物処理法の規定

廃棄物処理法では以下のように規定されています。

第3条
事業者は、事業活動に伴って生じた廃棄物を、自らの責任において適正に処理しなければならない。
第11条
事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。

「処理」という言葉が出てきます。廃棄物処理法において「処理」とは、廃棄物が発生してから最終的に捨てられるまでの行為、すなわち、分別、保管、収集、運搬、再生、処分等を含む概念です(廃棄物処理法1条参照)。また、「処分」には、「中間処理」と、「最終処分」の二つの意味が含まれています。中間処理と最終処分を指す場合には、「処分」という言葉が使われます。

【2】事業活動に伴って生じた廃棄物

第3条と第11条は同じことを規定している様に思えますが、何が違うのでしょうか?

見比べると、廃棄物に関する表現が違うことがわかります。

第3条
事業活動に伴って生じた廃棄物の適正処理に責任を持たなければならない
第11条
産業廃棄物を自ら処理しなければならない

事業活動に伴って生じた廃棄物とは、イコール産業廃棄物のことではないのか?と思われた方もいると思いますので、一度確認をしたいと思います。

産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち政令で定められた20種類の廃棄物を指します。つまり、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、20種類の廃棄物は産業廃棄物で、それ以外は一般廃棄物、ということになります。(事業活動に伴って生じた一般廃棄物は、事業系一般廃棄物と呼ばれます。)

事業活動に伴って生じた廃棄物 = 産業廃棄物 + 事業系一般廃棄物

排出事業者は、産業廃棄物と事業系一般廃棄物の適正処理に関する責任を有しており、自ら処理しなければならないという義務は、産業廃棄物に関してのみ規定されています。

適正処理の責任(第3条) 自ら処理の義務(第11条)
産業廃棄物
事業系一般廃棄物 なし

では、「産廃の処理責任は排出事業者」とセットで「一般廃棄物の処理責任は自治体」、と言われることもありますが、これに関してはどうでしょうか。

廃棄物処理法では、以下のように規定されており、

第4条
市町村は、その区域内における一般廃棄物の減量に関し住民の自主的な活動の促進を図り、及び一般廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずるよう努めるとともに、一般廃棄物の処理に関する事業の実施に当たつては、職員の資質の向上、施設の整備及び作業方法の改善を図る等その能率的な運営に努めなければならない。

また、平成19年7月27日の中央環境審議会意見具申「事業活動に伴って排出される一般廃棄物である木くずに係る廃棄物の区分について」では、自治体は、一般廃棄物の処理について統括的な責任を有する

とされています。

つまり、自治体は一般廃棄物の処理について統括的な責任はあるけれども、産廃の排出事業者責任の様な処理責任を負っているわけではありません。

事業系一般廃棄物も、事業者が適正処理の責任を有しているという点について、ご注意ください。

次回は、排出事業者責任の内容について、解説します。

上田 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 上田 が担当しました

2019.08.01 サーキュラーエコノミー

溶融スラグに迫る その2 ~スラグの用途~

DOWAの取組対談廃棄物処理

北辻 政文(きたつじ まさふみ)教授

宮城大学 食産業学群
宮城大学ホームページ

「スラグ」という言葉は皆さん聞いたことはあると思いますが、どうやって作られていて、どんなものなのか?
素朴な疑問を、溶融スラグの専門家の北辻教授にお伺いしました。

【その2】スラグの用途

少し話が外れましたが、溶融スラグはコンクリートの骨材として使えるのですが、溶融スラグは「生コン」のJISになってないのです。JISになっているのは、道路の側溝とか、擁壁とかのプレキャストコンクリート製品のみなので、使用用途が限られるのです。

生コンは、何に使われるのですか?

生コンは土木工事のみならずマンション建設など建築構造物にも使われます。溶融スラグを用いたコンクリートも、力学的な性能は一般のものと同じで、全く問題なく使えます。
ただし、イメージが悪いですね。例えば、ご自宅のマンションを買うとします。最近は、5,000万円とか7,000万円くらいしたりしますので、一生で一回の買い物ですよね。その際、このマンションは環境にやさしいごみ溶融スラグが使われています、と言われたときに、あなたはそのマンションを買いますか?

私が溶融スラグに関する講演をして、溶融スラグの容器のふたを開けて見ていいですよ、というと、みんな最初は臭いを嗅ぐんです。原料がごみだから臭いんじゃないかって。

ごみ溶融スラグを使うとなると、マンションを販売する時の説明も難しいし、イメージが悪いので、建築では使いたくないのだと思います。

先に述べた鉄鋼スラグは、100年くらいの利用実績があり、生コンにも使われていますが、溶融スラグは、まだまだ30年くらいと利用実績期間が短いこともあり、総論賛成、各論反対な状況に陥っていて、なかなか普及しないのが現状ですね。

スラグに含まれる有害物質成分が溶け出してくるという事はないのですか?

先ほど、スラグにはシリカが含まれているとお話ししましたね。これが、封じ込めます。シリカのガラスネットワークはとても強いのです。
バカラのグラスをお持ちでしょうか?

持っていません。

フランスの伝統的なガラス食器で、非常に高価です。

欲しいです。

ご主人に買ってもらってください。
バカラのグラスは、実は、鉛ガラスなのです。だから、重いのです。鉛は人体に有害な重金属です。スワロフスキーのジュエリーはお持ちですか?

キラキラするので、好きです。

キラキラきれいですよね。あの光、ああいう光が出るように加工できるのが鉛ガラスです。
日本の伝統工芸の切子も鉛ガラスです。

つまり皆さんは、鉛が入っているグラスでお水とかお酒とかを飲んでいるわけです。しかしバカラのガラスからは重金属は外に出てこないのです。これは、シリカのガラスネットワークで、鉛が固定され溶出しないためなのです。
それと同じで、仮に溶融スラグに重金属が含まれていても外へ溶け出さないことも溶融スラグの特徴です。

もう1つ理由があります。溶融温度は1,300度以上と非常に高温になりますので、有害な有機物は熱分解され、さらに沸点の低い金属は高温で飛んでしまいます。このため、多くの有害な金属や有機系の物質はスラグには含まれていません。これが、土壌環境基準には分析項目が20項目以上あるのですが、スラグの分析項目は9つだけになっている理由です。

溶融スラグの骨材も、天然の砕石も品質は変わらないし、コンクリートは、プレキャストコンクリートも生コンも、同じなのです。

溶融スラグの生産量が年間80万トンを超えてきたので、今後のことを考えると、生コンで使わないと、利用率が低下すると考えられます。そこで、本研究室では生コンに使う研究をしています。いや、研究といいますか、もう、実績作りです。溶融スラグを使って生コンを練って、それで、大丈夫だね、ってみんなから信頼をもらえればいいのではないかと思っています。

漁礁ブロック

それと、今行っている研究が、漁礁ブロックの開発です。
溶融スラグを大きな器に入れることが出来れば1トンくらいの石の塊ができます。それを研究レベルですが人工の漁礁として活用できないかという研究をやっています。

ここ数年、磯焼けが極めて深刻です。磯焼けは海藻が生えなくなる状態になることですが、一つの理由は栄養塩や鉄イオンが不足しているということです。鉄イオンは光合成色素であるクロロフィルやβカロチンの濃度を高め、硝酸塩を摂取しやすくする作用があることから、海藻の生長、増殖には不可欠なミネラルです。

私たちはスラグの溶融・硬化過程において、スラグにあえて鉄(FeO)を供給してブロックを作製しました。青森県の今別、八戸の二カ所に置きましたが、モズクやコンブなど多くの海藻が生えました。とくに、八戸では大量の昆布が3メートルくらい伸び、非常に効果が大きかったです。

左:FeOを添加したスラグ人工石(約1,000kg)
右:コンクリートブロックに海藻類は着きにくい 1ヵ月後(青森県八戸市)

比較のためにコンクリートブロックも設置しましたが、設置後1ヶ月の観察では、コンクリートブロックには藻類がなかったのに比べ、人工石には明らかに藻類の着床が見られました。

スラグ人工石に着床した海藻類 6ヵ月後(青森県八戸市)

人工石設置後6ヶ月の状況では1m程のコンブを中心に、ワカメ、アオサ、アカバギンナンソウ、ダルスが確認されました。今別地区では大量のモズクが生い茂り、モズクの中に魚が隠れていることがわかります。この地区は砂地が多く、人工石を設置すれば6ヶ月で、魚の生息場が形成されることが確認できました。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は「スラグを活用する必要性」についてお伺いします。

2019.07.01 サーキュラーエコノミー

溶融スラグに迫る その1 ~スラグとは~

DOWAの取組対談廃棄物処理

北辻 政文(きたつじ まさふみ)教授

宮城大学 食産業学群
宮城大学ホームページ

「スラグ」という言葉は皆さん聞いたことはあると思いますが、どうやって作られていて、どんなものなのか?
素朴な疑問を、溶融スラグの専門家の北辻教授にお伺いしました。

【その1】スラグとは

まず、「スラグ」について教えてください。

スラグとは、鉱石から金属を製錬した時に出る副産物です。鉄を取った後のものは、鉄鋼スラグ、ニッケルを取った後のものは、フェロニッケルスラグ、その他、マンガンスラグ、銅スラグ、亜鉛スラグ、などがあります。スラグと一言で言っても外観も性能も違います。


写真:銅スラグ

鉄鋼スラグなど

鉄鋼スラグの発生量が最も多いです。
日本では、毎年1憶トンの鉄が作られます。1憶5千万トンの鉄鉱石を輸入して、溶鉱炉で鉄を溶かしますが、鉄鉱石に含まれる鉄は酸化鉄なので、酸化鉄から酸素を取って金属鉄にするためには、酸化鉄から酸素を取らなければいけません。その時に使うのが一酸化炭素やコークス、石灰石です。石灰石は同時に溶融物の粘度調整や還元雰囲気の調整にも役立ちます。粗鉄と同時に高炉スラグが発生します。鉄を1憶トン生産すると、高炉スラグが約3,000万トン発生します。

CaCO3 → CaO+CO2 → CO2+C → 2CO
石灰石
C → CO2 → CO
コークス

① 3Fe2O3+CO → 2Fe3O4+CO2
② Fe3O4+CO → 3FeO+CO2
③ FeO+CO → Fe+CO2

さらに、転炉でカルシウムを添加して、脱リンをしてさらに鉄の純度を高めます。この段階で出てくる転炉スラグで、1千万トン発生します。

これらの高炉スラグ、転炉スラグは、鉄鋼スラグと呼ばれ、つまり鉄鉱石から鉄を取った残りカスです。

溶融スラグ

一方で、溶融スラグというスラグもあります。溶融スラグは、ごみやその焼却灰を溶かして固めたものです。副産物ではないので、「スラグ」ではないという人もいます。
私たちは「溶融スラグ」と呼びますが、以前JISでは溶融スラグでななく、「溶融固化物」という表現で呼ばれていました。最近のJISでは、溶融スラグという表現に改定されました。

溶融スラグは、ごみや焼却灰を千数百度の高温で溶かし、いわゆるマグマ状態にします。これをゆっくり固めると石になり、水の中に入れて急激に冷やすと砂になります。千数百度のマグマ状になったものを冷やして固めているので、いわば人工の火成岩と扱っていると思えば良いでしょう。品質的には普通の安山岩と同じような性質と考えいただいて結構です。ごみから砂や石を造るのですから、これは究極のリサイクルと言えでしょう。


写真:溶融スラグ

一般廃棄物を溶融させた際の特徴として、ごみを高温で溶かすと、石や砂の成分だけでなく、同時に金属も溶けます。都市鉱山という言葉があるように、我々の身近な物には金、銀、銅やレアメタルなどの金属が入っています。溶融炉では、そうした有用な金属も同時に回収できるという特徴があります。

最近は、子供のおもちゃも光ったり、音が出たり、モニタがついているようなものも多いので、身近な物に金属が含まれているというのは、なんとなくわかりますが、家庭からでたごみで石ができるのか、すごく不思議です。掃除で集められた砂ぼこりとかでしょうか?

いろんなものに、シリカが含まれているからです。シリカは、植物にも含まれています。微量ですけども。

例えば稲はまっすぐに成長して折れずに立っていますね。あれも大量のシリカが含まれているからです。シリカが足りないと、稲は倒れてしまいます。だから、肥料としてシリカを田んぼへ入れます。強風が吹いたり、大雨、台風で稲が倒れて、稲穂が水につかっちゃうと腐っちゃってお米がダメになるので、稲の茎を強くするためにシリカを足すのです。知りませんでした?

知りませんでした。
シリカは、土や砂の成分で、植物はセルロースでできていますよね?

岩石や土にシリカは多く含まれていますけど、植物にも含まれているのです。もみ殻は90%シリカですよ。タイとか東南アジアでは、米作中心だから、もみ殻が大量にあるので、それを灰にしてシリカの代替としてコンクリートに使っています。そうすると、ポゾラン反応によりコンクリートの長期強度が上がるのです。

お米を作っているところでは、シリカが足りないので鉄鋼スラグを肥料としても使っているのです。
生ごみを燃やして灰ができますが、その主成分はシリカです。

スラグの用途

骨材

話は戻りますが、この溶融スラグというのは、高温でマグマ状になったものをゆっくり固めて石にしたものです。そうすると建設材料として、専門的な言葉ですがアスファルトやコンクリートに加える「骨材」として使えるのです。
それから水の中に急激に入れて砂にすると、細骨材と言いますが、砂の代替として使われます。

建設業において、粗骨材と細骨材は年間8憶トンくらい使われていると言われています。
溶融スラグは、80万トン程度作られていますので、仮に全量を使ったとしても、骨材全体の1%も満たない程度です。

コンクリートを作る時に、骨材はどれくらい入れるのですか?

ボリュームで7割くらいです。骨材は、「骨」と書きますが、「大事」という意味なのです。
肉を切らせて骨を断つという言葉がありますが、これは肉を切られても死なないけど、骨を切られたら死んじゃうのですね、おそらく。だから、骨は大事なのです。だから、「骨材」は、コンクリートに大事な材料という意味なんですよ。

これが、ノーマルコンクリートの断面です。
普通の粗骨材(砕石)が入っていて、細かいのが川砂です。

こちらが、銅スラグを使ったコンクリートの断面です。
細骨材として銅スラグが使われています。黒い小さい粒が銅スラグです。

これは、マンガンスラグを入れたものです。緑色がきれいで、気に入っています。

あと、これは、ガラスを入れて作ったコンクリートの断面です。

透明なガラスが、入ってる! かわいい!

かわいい? そうですか?
これは、実はブラウン管の鉛ガラスを使ったんです。ブラウン管には、電磁波を遮るのために鉛が使われているのですが、最近は液晶テレビになっちゃったので、ブラウン管が大量に余っています。そこで、それをコンクリートに入れることで放射線廃棄物の保管に使えると考えたのです。結果として、放射線を10%くらいカットできました。研究結果は良かったのですが、鉛は重金属でもあるので、後始末が困るから、という事で実用化されませんでした。

こちらは、青色のワイン瓶のガラスを入れたコンクリートです。

おしゃれなお店の内装みたいですね。

ガラス瓶って、茶色と透明の一升瓶はリユースできるし、茶色と透明のガラス瓶はリサイクルできるのです。でも、色付き瓶はリサイクルできなくて、ワンウェイなのです。最近は、女性にも焼酎とか飲んで欲しいということで、このようなおしゃれな色付きの瓶の利用が増えています。その結果、大量の色付き瓶が、廃棄されるようになりました。

一方、ガラスって、エッジで怪我をしますよね。このため、それをエッジレスにする加工技術があって、ガラスの粒を触っても怪我しないようにしています。これにより、ガラス瓶のカレットも利用できるようになりました。


写真:エッジレス加工後の、ガラス粒

ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は「スラグの用途」についてお伺いします。

2018.11.01 廃棄物管理 法律

廃棄物処理法解説 はじめの一歩(その7) 特別管理産業廃棄物かどうかの判断 ~汚泥:濃度による判定基準~

廃棄物処理法

前回に引き続き、鉛を含む「汚泥」が、産業廃棄物に該当するのかを確認する流れを説明します。前回は排出元施設限定について説明しましたので、今回は、濃度の判定基準について説明します。

【4】判定基準(濃度)

もう一度、廃棄物処理法施行令第2条の4第5号ル本文に戻りますと、「環境省令で定める基準に適合しないものに限る」という規定があります。

廃棄物処理法施行令 第2条の4第5号
ル 次に掲げる汚泥、廃酸又は廃アルカリ(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(令第二条の四の環境省令で定める基準等)

第一条の二 令第二条の四第一号の環境省令で定める廃油は、次に掲げるものとする
13 令第二条の四第五号ルの汚泥、廃酸又は廃アルカリに係る環境省令で定める基準は、汚泥については当該汚泥に含まれる判定基準省令別表第五の一の項から二五の項までの第二欄に掲げる物質ごとにそれぞれ当該各項の第三欄に掲げるとおりとし、(以下略)

と規定されていますので、判定基準省令(金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令)の別表第5を確認します。

「別表第5の1の項から25の項までの第2欄に掲げる物質ごとにそれぞれ当該各項の第3欄に掲げるとおり」に該当する部分を、黄色にしました。別表第5の第1欄には書かれている事が多いので、「難しい!」「わからない!」と思うかもしれませんが、実際に見るべきなのは、第2欄と第3欄のみですので、「物質名と基準値」一覧であるという単純な情報を得ることのできる表と思って確認していきましょう。

この表の中で、鉛は「0.3mg/L以下」という基準が示されていますので、これが鉛に関する判定基準となります。

金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令

別表第五(第三条関係)

第一欄第二欄第三欄
燃え殻(国内において生じたものにあつては、令別表第四の一の項の第二欄に掲げる施設において生じたものに限る。)、ばいじん(国内において生じたものにあつては、同項の第二欄又は第三欄に掲げる施設において生じたものに限る。)又は汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)アルキル水銀化合物アルキル水銀化合物につき検出されないこと。
水銀又はその化合物検液一リットルにつき水銀〇・〇〇五ミリグラム以下
燃え殻(国内において生じたものにあつては、令別表第四の二の項の第二欄に掲げる施設において生じたものに限る。)、ばいじん(国内において生じたものにあつては、同項の第二欄又は第三欄に掲げる施設において生じたものに限る。)又は汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の二の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)カドミウム又はその化合物検液一リットルにつきカドミウム〇・〇九ミリグラム以下
燃え殻(国内において生じたものにあつては、令別表第四の三の項の第二欄に掲げる施設において生じたものに限る。)、ばいじん(国内において生じたものにあつては、同項の第二欄又は第三欄に掲げる施設において生じたものに限る。)又は汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の三の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)鉛又はその化合物検液一リットルにつき鉛〇・三ミリグラム以下
汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の四の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)有機燐 化合物検液一リットルにつき有機燐 化合物一ミリグラム以下
燃え殻(国内において生じたものにあつては、令別表第四の四の項の第二欄に掲げる施設において生じたものに限る。)、ばいじん(国内において生じたものにあつては、同項の第二欄又は第三欄に掲げる施設において生じたものに限る。)又は汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の五の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)六価クロム化合物検液一リットルにつき六価クロム一・五ミリグラム以下
燃え殻(国内において生じたものにあつては、令別表第四の五の項の第二欄に掲げる施設において生じたものに限る。)、ばいじん(国内において生じたものにあつては、同項の第二欄又は第三欄に掲げる施設において生じたものに限る。)又は汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の六の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)砒素又はその化合物検液一リットルにつき砒素〇・三ミリグラム以下
汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の七の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)シアン化合物検液一リットルにつきシアン一ミリグラム以下
汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の八の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)ポリ塩化ビフェニル検液一リットルにつきポリ塩化ビフェニル〇・〇〇三ミリグラム以下
汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の九の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)トリクロロエチレン検液一リットルにつきトリクロロエチレン〇・一ミリグラム以下
一〇汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一〇の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)テトラクロロエチレン検液一リットルにつきテトラクロロエチレン〇・一ミリグラム以下
一一汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一一の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)ジクロロメタン検液一リットルにつきジクロロメタン〇・二ミリグラム以下
一二汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一二の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)四塩化炭素検液一リットルにつき四塩化炭素〇・〇二ミリグラム以下
一三汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一三の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)一・二―ジクロロエタン検液一リットルにつき一・二―ジクロロエタン〇・〇四ミリグラム以下
一四汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一四の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)一・一―ジクロロエチレン検液一リットルにつき一・一―ジクロロエチレン一ミリグラム以下
一五汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一五の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)シス―一・二―ジクロロエチレン検液一リットルにつきシス―一・二―ジクロロエチレン〇・四ミリグラム以下
一六汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一六の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)一・一・一―トリクロロエタン検液一リットルにつき一・一・一―トリクロロエタン三ミリグラム以下
一七汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一七の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)一・一・二―トリクロロエタン検液一リットルにつき一・一・二―トリクロロエタン〇・〇六ミリグラム以下
一八汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一八の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)一・三―ジクロロプロペン検液一リットルにつき一・三―ジクロロプロペン〇・〇二ミリグラム以下
一九汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の一九の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)チウラム検液一リットルにつきチウラム〇・〇六ミリグラム以下
二〇汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の二〇の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)シマジン検液一リットルにつきシマジン〇・〇三ミリグラム以下
二一汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の二一の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)チオベンカルブ検液一リットルにつきチオベンカルブ〇・二ミリグラム以下
二二汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の二二の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)ベンゼン検液一リットルにつきベンゼン〇・一ミリグラム以下
二三燃え殻(国内において生じたものにあつては、令別表第四の六の項の第二欄に掲げる施設において生じたものに限る。)、ばいじん(国内において生じたものにあつては、同項の第二欄又は第三欄に掲げる施設において生じたものに限る。)又は汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の二三の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)セレン又はその化合物検液一リットルにつきセレン〇・三ミリグラム以下
二四燃え殻若しくはばいじん(国内において生じたものにあつては、令別表第四の七の項の第二欄に掲げる施設において生じたものに限る。)又は汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の二四の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)一・四―ジオキサン検液一リットルにつき一・四―ジオキサン〇・五ミリグラム以下
二五燃え殻(国内において生じたものを除く。)、ばいじん(国内において生じたものにあつては、令別表第三の九の項に掲げる施設において生じたものに限る。)又は汚泥(国内において生じたものにあつては、令別表第五の二五の項の中欄に掲げる施設を有する工場又は事業場において生じたものに限る。)ダイオキシン類試料一グラムにつきダイオキシン類三ナノグラム以下

【5】汚泥が特別管理産業廃棄物に該当するかどうかの確認の流れ(まとめ)

【6】さいごに

特別管理産業廃棄物の定義については、条文の参照が多く、書かれている言葉も分かりにくかったりと、簡単ではありませんが、法令は整理されて記載されているため、心を落ち着けて粘り強く該当箇所を順に確認して行けば、理解できます。諦めない事が大切です。

上田 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 上田 が担当しました

2018.11.01 リスク管理 廃棄物管理

照明用安定器って何ですか?

PCB

Q:照明用安定器って何ですか?

A:

照明用安定器とは、蛍光灯やHIDランプ等のアーク放電を利用した光源の点灯時(始動時)に、安定した放電を保持するための器具です。

昭和32年(1957年)1月から昭和47年(1972年)8月までに国内において製造された照明器具の安定器のなかには、PCBが使用されたものが存在します。なお、一般家庭用の蛍光灯等の安定器にはPCBが使用されたものはありません。

PCBを含有する安定器は、安定器に貼付された銘板に記載さているメーカー、型式・種別、性能(力率)、製造年月等の情報から判別することができますので、その詳細は各メーカーに問い合わせるか、(一社)日本照明工業会のホームページをご参照ください。
PCB使用照明器具に関する情報 | JLMA 一般社団法人日本照明工業会

また、安定器の中には、コンデンサ内蔵型とコンデンサ外付型のものが存在します。コンデンサ外付型のうち、汚染のおそれなく安全にコンデンサを取り外せる場合については、取り外したコンデンサ部分をJESCOで処理するとともに、残部材(トランス部)は低濃度PCBの無害化処理認定・許可施設において処理が可能となります。詳しくは「中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)」の資料をご参照ください。
廃安定器の仕分けの徹底・促進について

【関連記事】

DOWAエコジャーナル
蛍光灯の安定器にPCBが使われているかは、絶縁油を抜き取って調査しないといけないのですか?

堀岡 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 営業企画部 堀岡 が担当しました

2018.10.01 リスク管理 廃棄物管理

工事業者がPCB廃棄物の排出事業者になれますか?

PCB

Q:PCBに汚染された電気機器等(PCB廃棄物)は、工事業者(元請業者)が排出事業者となることができますか?

A:

電気機器等の所有者が、排出事業者としてPCB廃棄物を適切に処理する責任を負います。

PCB含有電気機器は、使用を終了した時点で廃棄物となります。

「建設工事に伴って排出される」建設廃棄物については元請業者が排出事業者となることが廃棄物処理法第21条の3第1項において定められていますが、PCBに汚染された電気機器は、当該工事以前よりPCB廃棄物として保管されているため「建設工事に伴って排出される廃棄物」にはあたりません。

また、PCB特別措置法第11条においては、PCB廃棄物の譲り受け、譲り渡しを原則禁止しているためPCB廃棄物の所有者(工事発注者)から元請業者に対してPCB廃棄物の譲り渡し、処理依頼することはできません。

PCB廃棄物が排出される工事の場合は、事前に発注者と工事元請業者との間でPCB廃棄物の取扱いについて確認を行い、適切に処理することが求められます。

【参考サイト】

千葉県ホームページ
建築物の解体等に伴うポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の適正処理について

静岡県ホームページ
建物解体時のトランス・コンデンサ等廃電気機器等について

大阪府ホームページ
PCB廃棄物のQ&A(FAQ)

堀岡 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 営業企画部 堀岡 が担当しました

2018.09.03 廃棄物管理 法律

廃棄物処理法解説 はじめの一歩(その6) 特別管理産業廃棄物かどうかの判断 ~汚泥:排出元施設限定~

廃棄物処理法

廃棄物処理法解説 はじめの一歩シリーズその4その5では、廃油を例に、特別管理産業廃棄物に該当するかどうかを確認する流れについて説明しました。
今回は、「鉛」を含む「汚泥」の場合を例に、どのように確認していくのかについて、説明します。

廃棄物処理法施行令 第2条の4に、特別管理産業廃棄物の定義がされています。

【1】まずは施行令から

廃棄物処理法施行令 第2条の4 第5号ルに「次に掲げる汚泥、廃酸又は廃アルカリ及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの」についての規定があります。

廃棄物処理法施行令 第2条の4 第5号
ル 次に掲げる汚泥、廃酸又は廃アルカリ(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)

条文には(1)から(25)まであり、汚泥について成分と施設をもって限定しています。
原文から成分の限定と施設の限定を抜き出すと、以下の表になります。

成分施設の限定
1水銀別表第3の23
2カドミウム別表第3の24
3別表第3の25
4有機燐別表第3の26
5六価クロム別表第3の27
6砒素別表第3の28
7シアン別表第3の29
8PCB別表第3の30
9トリクロロエチレン別表第3の31
10テトラクロロエチレン別表第3の32
11ジクロロメタン別表第3の33
12四塩化炭素別表第3の34
131,2-ジクロロエタン別表第3の35
141,1-ジクロロエチレン別表第3の36
15シス-1,2-ジクロロエチレン別表第3の37
161,1,1-トリクロロエタン別表第3の38
171,1,2-トリクロロエタン別表第3の39
181,3-ジクロロプロペン別表第3の40
19チウラム別表第3の41
20シマジン別表第3の42
21チオベンカルブ別表第3の43
22ベンゼン別表第3の44
23セレン別表第3の45
241,4-ジオキサン別表第3の46
25ダイオキシン類別表第3の47

(1)~(25)までの成分によってそれぞれ、施設の限定に関しての規定がされています。

【2】次に施設限定について

施設の限定について確認するために、廃棄物処理法施行令 別表第3を確認します。

例えば、鉛に関しては、廃棄物処理法施行令 第2条の4第5号ル(3)に基づき、施行令別表第3の25の項を確認します。

廃棄物処理法施行令 別表第3の25
別表第五の三の項の中欄に掲げる施設(汚泥、廃酸及び廃アルカリの処理施設を除く。)を有する工場又は事業場

と規定されていますので、別表第5の3の項を確認します。

水質汚濁防止令別表第一第二十六号イ、ロ及びホ、第二十七号イ、ロ、ヌ及びル、第四十六号イ、ロ及びニ、第四十七号ロからホまで、第四十九号、第五十号、第五十三号、第五十八号(鉛を含有する電気用特殊陶磁器原料又はうわ薬原料の精製業の用に供するものに限る。)、第六十二号ロ(鉛電極又は鉛合金電極を用いて電解を行うものに限る。)、ホ及びヘ、第六十三号ハ及びホ、第六十五号、第六十六号並びに第七十一号の二イに掲げる施設並びに火薬製造業の用に供するトリニトロレゾルシン鉛製造施設並びにこれらの施設を有する工場若しくは事業場から排出される水又はこれらの施設を有する工場若しくは事業場において生じた汚泥、廃酸若しくは廃アルカリの処理施設 鉛又はその化合物

別表第5には、「水質汚濁防止法施行令別表第一」のうちのいくつかの施設と、火薬製造業の用に供する「トリニトロレゾルシン鉛製造施設」と記載されています。

【3】水質汚濁防止法施行令の別表第1を確認

「水質汚濁防止法施行令の別表第1のうちのいくつかの施設」がどのような施設なのか確認します。

長くなりますが、該当部分を抜き出します。

水質汚濁防止法施行令の別表第1

二十六号イ、ロ及びホ

二十六 無機顔料製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 洗浄施設
ロ ろ過施設
ホ 廃ガス洗浄施設

第二十七号イ、ロ、ヌ及びル

二十七 前号に掲げる事業以外の無機化学工業製品製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ ろ過施設
ロ 遠心分離機
ヌ 廃ガス洗浄施設
ル 湿式集じん施設

第四十六号イ、ロ及びニ

四十六 第二十八号から前号までに掲げる事業以外の有機化学工業製品製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 水洗施設
ロ ろ過施設
ニ 廃ガス洗浄施設

第四十七号ロからホまで

四十七 医薬品製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
ロ ろ過施設
ハ 分離施設
ニ 混合施設(第二条各号に掲げる物質を含有する物を混合するものに限る。以下同じ。)
ホ 廃ガス洗浄施設

第四十九号

四十九 農薬製造業の用に供する混合施設

第五十号

五十 第二条各号に掲げる物質を含有する試薬の製造業の用に供する試薬製造施設
(※第二条各号に掲げる物質を含有する試薬…今回の場合は鉛を含有する試薬)

第五十三号

五十三 ガラス又はガラス製品の製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 研摩洗浄施設
ロ 廃ガス洗浄施設

第五十八号(鉛を含有する電気用特殊陶磁器原料又はうわ薬原料の精製業の用に供するものに限る。)

五十八 窯業原料(うわ薬原料を含む。)の精製業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 水洗式破砕施設
ロ 水洗式分別施設
ハ 酸処理施設
ニ 脱水施設

第六十二号ロ(鉛電極又は鉛合金電極を用いて電解を行うものに限る。)、ホ及びヘ

六十二 非鉄金属製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
ロ 電解施設(溶融塩電解施設を除く。)
ホ 廃ガス洗浄施設
ヘ 湿式集じん施設

第六十三号ハ及びホ

六十三 金属製品製造業又は機械器具製造業(武器製造業を含む。)の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
ハ カドミウム電極又は鉛電極の化成施設
ホ 廃ガス洗浄施設

第六十五号

六十五 酸又はアルカリによる表面処理施設

第六十六号

六十六 電気めつき施設

第七十一号の二イ

七十一の二 科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する研究、試験、検査又は専門教育を行う事業場で環境省令で定めるものに設置されるそれらの業務の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 洗浄施設

引用が長くなりましたが、特別管理産業廃棄物かどうかを判断する廃棄物(今回は例として)、鉛を含む汚泥が発生する施設が、これらの施設又はトリニトロレゾルシン鉛製造施設に該当するかどうかを確認します。

次回は、濃度による判定基準について説明します。

上田 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 上田 が担当しました

2018.09.03 ネイチャーポジティブ

そうだったのか!マイクロプラスチック問題とは?(3) 〜マイクロプラスチックの問題と国際動向について〜

廃棄物処理

【6】マイクロプラスチックの影響

この海洋を漂うマイクロプラスチックがなぜ環境問題となるのでしょうか?

最大の要因は海洋生物がマイクロプラスチックを摂取してしまうことです。

海洋中の魚類、貝類、甲殻類などがマイクロプラスチックを誤飲した事例が報告されています。マイクロプラスチックは体内で消化されないため、粒子経が非常に細かい場合はそのまま体外へ放出されますが、粒子経がある程度大きい場合には消化器官の閉塞などの問題を引き起こし、最悪の場合は個体が死んでしまいます。

また、影響を受けるのは、魚介類だけではありません。「動物プランクトンによるマイクロプラスチック摂取」(Environmental Science & Technology誌)によれば、動物プランクトンもマイクロプラスチックを摂取することが報告がされています。マイクロプラスチックの誤食により脂質代謝に障害が起きるなどの影響が確認されています。

【図5】マイクロプラスチックを摂取した動物プランクトン
緑色に蛍光発光するポリスチレンビーズ(1.7μm-30.6μm)を観察

【出典】Matthew Cole et al., “Microplastic Ingestion by Zooplankton,” Environ. Sci. Technol., 2013, 47 (12), pp 6646–6655, DOI: 10.1021/es400663f

さらにマイクロプラスチックはその表面にPCBs(ポリ塩化ビフェニル)などの残留性有機汚染物質(POPs)を吸着させやすいという性質があります。実際に、日本の沖合海域で採取されたマイクロプラスチックから、海水中の濃度よりも高濃度のPCBsやDDE(ジクロロジフェニルジクロロエチレン)などの有害物質が検出されたという事例も報告されています。有害物が付着したマイクロプラスックを生物が食べてしまうことが起きているのです。

マイクロプラスチックを介した有害物資の生体への移行については、未だ詳細が明らかとはなっておりませんが、食物連鎖を通じて、有害物質がプランクトンから魚類、そして我々人間への蓄積する可能性も指摘されています。

【7】海洋プラスチック・マイクロプラスチックの発生防止へ向けた取組み

1970年代からプラスチックを中心とした海洋ゴミの調査は行われていました(【1】海洋ごみとは?参照)。
しかし、広大な海洋に漂流しているゴミは、誰のゴミか?それを誰がどうやって回収し処理するのか?その費用負担は誰がするの?という点が難題になっています。

その中で大量に存在し、かつ耐久性があり、生態系への被害もあるプラスチック(マイクロプラスチック)に関する国際的な議論が活発となったのは2015年以降です。
2015年のG7エルマウ・サミットにおいて、海洋ごみ問題が初めて首脳宣言に取り上げられました。
海洋ごみの発生予防や回収・処理のための行動を開始すること、マイクロプラスチック汚染の元となるマイクロビーズの自発的な廃止を目指すこと等が合意されました。

その後も、G7サミットや国連環境総会(UNEA)で、海洋プラスチックやマイクロプラスチックの発生防止へ向けた議論が行われてきました。

2018年のG7シャルルボワ・サミットで、カナダ及び欧州各国が自国でのプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に署名しました。「海洋プラスチック憲章」には、プラスチックのリユース・リサイクル目標やプラスチック製品への再生プラスチック材の使用率の増加などが盛り込まれています。
またプラスチック製品のデザイン変革や適切なプラスチックごみの回収・リサイクルを通じて、海洋プラスチックごみ防止に向けた国際的な取組みを推進するものです。

日本は「海洋プラスチック憲章」には署名をしませんでした。プラスチック使用削減の実現には、市民・産業界との調整が必要であり、その準備が足りないため参加を見送ったことが理由として挙げられております。

日本国内では、2018年6月に閣議決定した第4次循環型社会形成推進基本計画の中で、プラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略(「プラスチック資源循環戦略」)を策定し、これに基づく施策を進めていくことが明記され、プラスチック使用の削減、プラスチックごみの回収・再生利用、バイオプラスチックの実用性向上と化石燃料由来プラスチックの代替促進などに取り組むとしています。

現在は、「プラスチック資源循環戦略」の作成へ向けて、中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会が開催されています。「プラスチック資源循環戦略」は海洋プラスチック憲章の内容をカバーしつつ、2019年のG20までに策定するとしています。

マイクロプラスチックに関する取り組みもあります。
2016年3月、日本化粧品工業連合会は会員企業に対して、洗い流しのスクラブ製品(研磨剤入の洗顔料など)におけるマイクロプラスチックビーズの使用中止に向けた対応を図ることを要請しています。
また2018年6月には、海岸漂着物処理推進法が改正され、製造メーカーに対してマイクロプラスチックの使用抑制を求めています。

アメリカでは、2015年にアメリカ連邦議会で「Microbead-Free Waters Act of 2015」が可決されており、プラスチック製のマイクロビーズを含んだ、洗い流して使用する化粧品の販売・商取引が禁止されました。最近ではカナダ、オーストラリア、イギリスなどでも、アメリカと同様に国レベルでマイクロビーズの使用を禁止する動きが見られます。

このようにプラスチック・マイクロプラスチックの海洋への流出防止を目的として、その使用を規制・抑制するため各国で具体的な対策が始まっています。

【参考ホームページ】

外務省ホームページ
G7シャルルボワ・サミット 成果文書 健全な海洋及び強じんな沿岸コミュニティのためのシャルルボワ・ブループリント(仮訳)

G7 2018 Official Documents
Charlevoix Blueprint for Healthy Oceans, Seas and Resilient Coastal Communities

森田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室 森田 が担当しました

2018.08.01 ネイチャーポジティブ

そうだったのか!マイクロプラスチック問題とは?(2) 〜マイクロプラスチックについて〜

廃棄物処理

【2】マイクロプラスチックの定義

マイクロプラスチックは微小なプラスチックのことを指します。ただ、その大きさに関して公式の定義はありませんが、多くの場合5mm(ミリメートル)以下のプラスチック粒子を指します。(よって、ペットボトルやレジ袋などはマイクロプラスチックには含まれません。)

単位におけるマイクロ(μ)は100万分の1のことですので、1マイクロメートルは、髪の毛の太さのさらに千分の1程度になります。実際にマイクロプラスチックは、マイクロよりさらに小さい、nm(ナノメートル)単位(10億分の1m)のサイズも存在しています。これらは当然、目視できず、電子顕微鏡などでしか確認できないサイズです。

【3】マイクロプラスチックの種類と発生源

マイクロプラスチックはその発生源の違いから大きく2種類に分けられています。

(1)一次マイクロプラスチック(primary microplastics)

一次マイクロプラスチックとは、製品や製品原料として使用する目的のため、微小なサイズで製造されたプラスチックを指します。つまり、「元々小さかったプラスチック」です。

図1には、一次マイクロプラスチックの例を示します。


【図1】一次マイクロプラスチックの例

a)歯磨き粉から採取されたマイクロプラスチック(image courtesy of Joel Baker, scale bar: 40μm)
b)海岸で採取されたレジンペレット(image courtesy of Hideshige Takada, scale bar: 1cm)
【出典】UNEP (2016). Marine Plastic Debris and Microplastics.

写真左側のa)は歯磨き粉です。歯磨き粉には、汚れを擦り取るための研磨剤(マイクロビーズ)が含まれている場合があります。(すべての製品が含まれているわけではありません)。
写真右側のb)はレジンペレットです。レジンペレットはプラスチック製品の原料で、これを溶かし、成型するとプラスチック製品となります。これらもサイズによっては、マイクロプラスチックに該当します。

(2)二次マイクロプラスチック(secondary microplastics)

二次マイクロプラスチックとは、プラスチック製品が自然環境中で劣化し、粉々になることで生じたマイクロプラスチックを指します。つまり「元々大きかったのに摩耗等で小さくなった破片」のことです。海洋に流出したプラスチック製のボトルやビニール袋などのプラスチック製品が、波や紫外線に晒され、劣化することで発生する場合が多いと考えられています。

図2には、二次マイクロプラスチックの例を示します。


【図2】二次マイクロプラスチックの例

英国プリマス付近の海岸線で採取されたマイクロプラスチック
(image courtesy of M. Browne & R. Thompson, Plymouth Univ.)
【出典】UNEP (2016). Marine Plastic Debris and Microplastics.

写真からは、何かのプラスチック製品の破片であることが判ります。

【4】マイクロプラスチックの発生量と世界的な分布

「世界の海洋におけるプラスチック汚染」(PLoS ONE誌)によれば、少なくとも5.25兆個のプラスチック粒子(268,940トンに相当すると推計される)が海洋の表面を浮遊しながら漂っていることが報告されています。

図3は、海洋におけるプラスチックの大きさごとの分布を表しており、右側のカラーバーの色分けは1平方キロメートル当たりのプラスチック粒子の個数を表しています。

左上の図は、0.33mm~1.00mmのサイズのマイクロプラスチックの分布状況です。日本近海では1平方キロメートルに10,000個程度のマイクロプラスチックが浮遊していることになります。
北太平洋、南太平洋、北大西洋、南大西洋、インド洋などの茶色系の濃い色で示された海域にはマイクロプラスチックが多く滞留していることが分かります。

左下の図は、200mm以上のサイズのプラスチックの分布状況です。(これはマイクロプラスチックではありません)。日本近海では1平方キロメートルに100~1,000個程度のプラスチックごみが浮遊していることになります。これらのプラスチックごみが波や紫外線により劣化することで、小さく砕かれ、粒子経の小さなマイクロプラスチックへと変化していきます。

例えば、ペットボトル1本が劣化を繰り貸せば、数多くのマイクロプラスチックになることも容易に想像できます。


【図3】プラスチック分布のモデル解析

【出典】Eriksen et al.,”Plastic Pollution in the World’s Oceans: More than 5 Trillion Plastic Pieces Weighing over 250,000 Tons Afloat at Sea,” PLoS ONE, 9(12): e111913, 2014.

では、これらのマイクロプラスチックはどこからやってきたのでしょうか?

【5】海洋へのプラスチックの流出

一次マイクロプラスチックは、下水処理でキャッチしきれない粒子が海に流出するのが、主な流出原因です。

先に例として示した歯磨き粉の研磨剤の場合は、歯磨きの後に洗面台から排水溝を通じて下水に流れ込みます。その後に下水処理施設へと運ばれて排水処理されますが、粒子径が非常に小さいため、一部は下水処理を通り抜けて河川・海へと流出してしまう場合があります。

一方、二次マイクロプラスチックは、陸上から海へのプラスチックごみの流出が主な原因です。陸上からは年間800万tとも言われるプラスチックごみが海洋に流出しており、二次マイクロプラスチックを発生させています。

「陸上から海洋へのプラスチックごみ流出」(Science誌)では、各国の海へのプラスチックごみ流出量が報告されています(図4)。

図4の色の違いはプラスチックごみの流出量の違いを表しており、黄色の国(日本、欧州など)では年間1万トン以上、オレンジの国(米国、インドなど)では年間25万トン以上のプラスチックごみが海洋に流出しています。特にこげ茶色・茶色で表された中国、タイ、インドネシアからは、1ヵ国あたり年間100万トン以上のプラスチックごみが海洋に流出していると報告されています。

これらの地域では、人口増加・経済成長に伴ってプラスチック製品の使用量が増加しているのに対して、プラスチックごみの回収や適切な処理などの廃棄物管理の体制整備が十分でないため、海洋へのプラスチックごみの流出を防ぐことが難しいことが指摘されています。

ところで、日本では、ごみの分別回収・処理の体制が整備されており、プラスチックごみも容器包装リサイクル法により回収・リサイクルがされています。そのため、日本からはプラスチックごみが海に流出する事はないだろうと思いがちですが、日本の海岸にも日本語の書かれているプラスチックごみが多く打ち上げられています。

公園で散乱したごみや、街中でごみ箱から溢れたごみが飛ばされて川に流され、そのまま海に流されたりもしますので、日本は大丈夫、という事でもありません。


【図4】各国のプラスチック廃棄物の流出量に関する推計(数字の単位は百万トン)

【出典】Jenna R. Jambeck et al.,” Plastic waste inputs from land into the ocean,” Science 347, 768 (2015), DOI: 10.1126/science.1260352

次号では、マイクロプラスチックの実際の影響や発生防止へ向けた取組みについて解説します。

森田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室 森田 が担当しました

2018.08.01 廃棄物管理 法律

廃棄物処理法解説 はじめの一歩(その5) ~特別管理産業廃棄物の判定基準~

廃棄物処理法

廃棄物処理法解説 はじめの一歩 シリーズ、その3では、特別管理産業廃棄物の定義について解説をしました。
その4では、特別管理産業廃棄物の定義の要件の1つである施設限定について解説しました。今回は「判定基準」について解説します。

【1】特定有害産業廃棄物

濃度に関する判定基準が規定されているのは、特別管理産業廃棄物のうちの特定有害産業廃棄物です。

その3 ~特別管理産業廃棄物の定義~ 特別管理産業廃棄物 一覧表 参照

特定有害産業廃棄物については、廃棄物処理法施行令第2条の4第5号に定義されています。具体例として、「廃油」を例として説明していきます。

【2】具体的にみてみましょう ~廃油~

廃棄物処理法施行令 第2条の4第5号ヌに廃油:「次に掲げる廃油及び当該廃油を処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)」と書かれています。当該廃油を処分するために処理したものに係る基準は、施行規則に規定するということですので、次に施行規則を確認します。

廃棄物処理法施行規則第1条の2 第12項
令第2条の4第5号ヌの廃油を処分するために処理したものに係る環境省令で定める基準は、当該処理したものが、廃油の場合は廃溶剤(別表第2の9の項から18の項まで、22の項及び24の項の第1欄に掲げるものに限る。)ではないこととし、廃酸又は廃アルカリの場合は当該処理したものに含まれる別表第2の9の項から18の項まで、22の項及び24の項の第1欄に掲げる物質ごとにそれぞれ当該各項の第2欄に掲げるとおりとし、廃油、廃酸又は廃アルカリ以外の場合は当該処理したものに含まれる判定基準省令別表第6の9の項から18の項まで、22の項及び24の項の第2欄に掲げる物質ごとにそれぞれ当該各項の第3欄に掲げるとおりとする。

施行規則は、「廃油を処分するために処理したもの」に係る環境省令で定める基準は、という書き出しになっており、「廃油」についての濃度に関する基準はありません。
つまり、「廃油を処分するために処理したもの」に関しては、濃度基準がありますが、「廃油」についての濃度基準はないということになります。

なお、「廃油」とは、施行令において、12種類の溶剤と定義されていますので、特定有害廃棄物としての「廃油」=「12種類の廃溶剤」ということになります。

<廃棄物処理法施行規則第1条の2 第12項>

(※1)判定基準省令:金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令

【3】(参考)処分するために処理したものとは

廃棄物を処分した際に、発生した残渣などを指します。

【4】まとめ

廃油が特別管理産業廃棄物なのかを判定する流れを、フロー図にまとめました(「施行令で定める廃油(廃溶剤)を処分するために処理したもの」の考え方は前記のとおりです。)。

(※2)特別管理産業廃棄物の廃油に該当するかどうかについては、「引火点が70℃未満の燃焼しやすいもの」という指標があります。環境省の特別管理産業廃棄物の種類にも記載があります。「引火点が70℃未満の燃焼しやすいもの」に関しては、廃棄物処理法、施行令、施行規則に記載はなく、課長通知によって示さています。

厚生省環境整備課長通知(平成4年8月13日 衛環第233号)の第2 4(1)

特別管理産業廃棄物である「廃油(燃焼しにくいものとして厚生省令で定めるものを除く。)」とは、廃油のうち焼却を経なければ埋め立てることができないものを焼却処理の技術上の観点から定めることを意味するものであり、当該廃油に対する規制は、火災予防の観点から行われるものではないこと。なお、廃油に係る火災予防の観点からの規制は、従来どおり消防法により行われること。

消防法では、
揮発油類:危険物第4類引火性液体の第1石油類(1気圧下で引火点21度未満)
灯油類及び軽油類:第2石油類(1気圧下で引火点21度以上70度未満)
とされています。

(※3)燃焼しやすい廃油で特別管理産業廃棄物に該当し、さらに、溶剤の成分を含むため、特別有害産業廃棄物に該当する、という場合もあります。

<参考>
廃棄物処理法施行規則 別表第2(第1条の2関係)

第1欄 第2欄
9 トリクロロエチレン 試料1リットルにつきトリクロロエチレン1ミリグラム以下
10 テトラクロロエチレン 試料1リットルにつきテトラクロロエチレン1ミリグラム以下
11 ジクロロメタン 試料1リットルにつきジクロロメタン2ミリグラム以下
12 4塩化炭素 試料1リットルにつき4塩化炭素0.2ミリグラム以下
13 1,2−ジクロロエタン 試料1リットルにつき1,2−ジクロロエタン0.4ミリグラム以下
14 1,1−ジクロロエチレン 試料1リットルにつき1,1−ジクロロエチレン十ミリグラム以下
15 シス−1,2−ジクロロエチレン 試料1リットルにつきシス−1,2−ジクロロエチレン4ミリグラム以下
16 1,1,1−トリクロロエタン 試料1リットルにつき1,1,1−トリクロロエタン三十ミリグラム以下
17 1,1,2−トリクロロエタン 試料1リットルにつき1,1,2−トリクロロエタン0.6ミリグラム以下
18 1,三−ジクロロプロペン 試料1リットルにつき1,三−ジクロロプロペン0.2ミリグラム以下
22 ベンゼン 試料1リットルにつきベンゼン1ミリグラム以下
24 1,4−ジオキサン 試料1リットルにつき1,4−ジオキサン五ミリグラム以下

【関連リンク】
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則
金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令

東京都ホームページ
特別管理産業廃棄物の判定基準

上田 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 上田 が担当しました