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DOWAエコジャーナル

2016.03.01 リスク管理

危険物を運搬する場合の「危険物」の表示について

Q.危険物を産業廃棄物として運搬する場合、指定数量未満であれば乗用車に「危険物」の表示をしなくてOKですか?

A.

「危険物の規制に関する政令」には、次のように規定されています。

【危険物の規制に関する政令】

第三十条
法第十六条 の規定による運搬方法の技術上の基準は、次のとおりとする。
指定数量以上の危険物を車両で運搬する場合には、総務省令で定めるところにより、当該車両に標識を掲げること。

また、「危険物の規制に関する規則」には次のように規定されています。

【危険物の規制に関する規則】

第四十七条
令第30条第1項第2号の規定により、車両に掲げる標識は、0.3メートル平方の地が黒色の板に黄色の反射塗料その他反射性を有する材料で『危』と表示したものとし、車両の前後の見やすい箇所に掲げなければならない。

指定数量未満の危険物を運搬する場合の標識については、法令では義務づけられていませんが、念のため、管轄する消防署に具体的な運搬状況等を説明した上、確認することをおすすめします。

田中 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 田中 が担当しました

2015.08.01 リスク管理 法律

印紙代を負担するのは誰ですか?

廃棄物処理法

Q.印紙代を負担するのは誰ですか?

A.

まず、印紙税法では

  • 課税文章の作成者が印紙税を収める義務がある(第3条)
  • 課税文書を2者以上が共同して作成した場合には、連帯して印紙税を納める義務がある(第3条第2項)

とされています。

印紙税法
(納税義務者)
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
2 一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には、当該二以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。

廃棄物の処理委託契約書は、排出事業者と処理業者が共同で作成しますので、この場合印紙税法によれば、排出事業者と処理事業者(収集運搬事業者、処分事業者)が「連帯して」印紙税を納める義務があることになります。実際にどちらが印紙税を負担するか印紙を貼るかはお互い相談して決めます。契約書の作成義務を負う排出事業者が印紙税を負担して印紙を貼る場合もあれば、折半する場合もあります。

なお、委託契約書は1部のみの作成でも法律上問題ありませんが、委託内容を双方で確認するという意味で、本書を2部作成し当事者のそれぞれが保管する、というケースが一般的です。その場合は、当事者間で折半することが多いようです。

【参考資料】

e-Govホームページ
印紙税法
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令

井上 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 井上 が担当しました

2014.10.01 サーキュラーエコノミー

生まれ変わる焼却灰(溶融スラグについて)

DOWAの取組リサイクル廃棄物処理

エコジャーナル読者の皆さん、皆さんが毎日捨てている家庭ごみが、貴重な資源として再利用されているということをご存知でしょうか?都市ごみ(あるいは都市ごみの焼却灰)を高温で溶融して製造する「溶融スラグ」は路盤材などの土木資材として、皆さんの身近な所で使用されています。ここでは、「路盤材とは」「溶融スラグについて」「溶融スラグのJIS規格」「溶融スラグの活用方法」について、説明していきます。

1. 路盤材とは

アスファルト舗装道路が、どのような構造になっているのか、代表的なものを図1に示しました。自動車や大型のトラックが通行しても、十分に支えられる強度を保つには、地盤がしっかりとしていなければなりません。そのため、複数の層を形成して、強度、耐久性を高める必要があります。
図1の上層、下層路盤を合わせて路盤と呼び、砕石や溶融スラグが「路盤材」として使用されます。この層は、上から伝達された荷重を、下に分散させて伝える役割を持ちます。路盤には、一般的に40mmサイズの砕石が用いられています。この砕石ですが、路盤材としての品質をクリアすれば、溶融スラグも利用することが可能です。また、路盤だけでなく、道路の表層部分にも、より粒度の細かい砕石が、アスファルトの混合物として利用されています。平坦ですべりにくく、より快適な走行を確保する重要な役割です。


図1:一般的なアスファルト舗装の断面図

2. 溶融スラグとは

「溶融スラグ」とは、家庭ごみ等の一般廃棄物や下水道汚泥の焼却灰等を1,200℃以上の高温で溶融した後、冷却、固化したものを指します。冷却方法により、徐冷スラグ(写真1)、急冷スラグ(写真2)と分類され、いずれも主な成分は、SiO2、CaO、Al2O3と、天然の石に類似する組成になります。特に徐冷スラグは、強度や外観も天然石と同等のものとなります。


写真1:徐冷スラグ / 写真2:急冷スラグ(水砕スラグ)

溶融スラグの原料となる焼却灰中には、ダイオキシンや重金属などの有害物質が含まれることがありますが、溶融スラグを製造する際には1200度という高温で溶融させるため、ダイオキシンは分解されます。また溶融により、スラグ成分と重金属とを分離できるため、重環境負荷低減を実現することができます。

この溶融スラグの安全性を明確に定め、有効利用を促進するために「JIS規格」が制定されています。

3. 溶融スラグには、JIS規格があります

JIS規格とは、日本で使用される工業用の標準規格です。この規格を満たすことは、異なる製造者の製品でも、同一規格として、問題なく一緒に利用できるという指標になります。特に、公共工事などの仕様書には、JIS規格の製品を使用する内容が盛り込まれていることがあります。

さて、溶融スラグにおけるJIS規格は2006年に制定され、用途ごとに以下の二つが規定されています。

  1. JIS A 5031 コンクリート用溶融スラグ骨材
  2. JIS A 5032 道路用溶融スラグ

ここでは、溶融スラグが最も多く使用されている道路用骨材としてのJIS規格(JIS A 5032)の概要を説明します。

■JIS A 5032の概要

(1)種類

焼却灰の高温溶融だけでなく、鉄の製造過程でも、スラグが発生します。それらは、鉄鋼スラグと呼ばれ、土木資材やセメント原料として幅広く利用されています。

溶融スラグの名称は、それら道路用鉄鋼スラグのJIS規格に準拠して制定されました。骨材の種類、サイズによって表1のように分類されます。

表1:溶融スラグの種類と用途
種類 記号(※1) 用途
単粒度溶融スラグ SM – 5,13,20 加熱アスファルト混合物
溶融スラグ細骨材 FM – 2.5 加熱アスファルト混合物
粒度調整溶融スラグ MM – 25,30,40 上層路盤材
クラッシャラン溶融スラグ CM – 20,30,40 上層路盤材

※1 アルファベットは各種類を表し、数字はスラグの最大寸法を表しています。

(2)品質

■外観

溶融スラグは堅硬で、かつ、異物、針状や扁平、鋭利な破片など、使用上有害となるものを含んではなりません。

■有害物質

溶融スラグには、有害物質の溶出量、含有量が表2のとおり定められています。基準値は、土壌汚染対策法の溶出及び含有基準と同じです。

表2:有害物質の溶出、含有基準
  溶出量基準 含有量基準
カドミウム 0.01mg/L以下 150mg/kg以下
0.01mg/L以下 150mg/kg以下
六価クロム 0.05mg/L以下 250mg/kg以下
ひ素 0.01mg/L以下 150mg/kg以下
総水銀 0.0005mg/L以下 15mg/kg以下
セレン 0.01mg/L以下 150mg/kg以下
ふっ素 0.8mg/L以下 4,000mg/kg以下
ほう素 1mg/L以下 4,000mg/kg以下
■その他

この他にも、表面密度や吸水率、すりへり減量など、物理的な特性も一定以上の品質を必要とします。

これらのJIS規格は、現在は一般廃棄物及び下水道汚泥由来の溶融スラグに適応されています。これは、2006年の制定時、下水道汚泥以外の産業廃棄物由来の溶融スラグは、データの蓄積が少なかったため、JIS適用範囲に入らなかったためです。実際にはJIS規格で求められる品質基準を十分に満たした産業廃棄物由来のスラグも製造されています。

更なる循環型社会の推進のため、2011年7月に制定された「付属書2 − 道路用スラグに環境安全品質及びその検査方法を導入するための指針」(※2)などを踏まえ、現在、JIS改正の検討がスタートしたところです。

※2 「建設分野の規格への環境側面の導入に関する指針」(平成15年3月制定)の付属書

4. 溶融スラグの利用用途

(1)一般的な事例

2012年の日本全国の一般廃棄物の直接焼却量は、年間で3,399万tで、そのうち、36%にあたる1,235万tの廃棄物が溶融処理を施され、79万tの溶融スラグが製造されました。製造された溶融スラグは道路用骨材、コンクリート骨材、地盤の改良材などとして利用されています。(※3)

※3 『2013年度版 エコスラグ有効利用の現状とデータ集』
(一般社団法人日本産業機械工業会 エコスラグ利用普及委員会 2014年5月)

溶融スラグを資源として有効活用することは、同時に焼却灰の埋立て処分量を削減し、最終処分場の延命化につなげることができます。また、砕石の利用を減らす分、天然資源の使用量を削減することができ、環境負荷の低減にも貢献できます。

(2)DOWAグループにおける事例

DOWAグループでは、メルテック株式会社が焼却灰から溶融スラグを製造しています。一般廃棄物由来の焼却灰を主に、産業廃棄物由来の焼却灰も受け入れ、溶融しています。一般廃棄物由来の焼却灰に産業廃棄物由来の焼却灰が混ざるため、溶融スラグはJIS規格の適応範囲には入りませんが、品質面では、創業以来JIS規格を満たし続け、環境面、安全面からも安心して利用していただける溶融スラグです。

メルテックでは、溶融スラグを砕石用として利用するため徐冷方式を採用してきました。徐冷スラグは、水で急冷した水砕スラグとは異なり、サイズが大きく、また強度が高いという特徴があります。JIS規格ではCM-40相当の溶融スラグになります。年間で約1.9万tの溶融スラグを製造していますが、それらは小山市近隣の土木資材として路盤材(写真3)や、駐車場の敷石(写真4)として100%有効活用されており、循環型社会に貢献しています。

写真3:一般道路用路盤材 / 写真4:駐車場用砕石

メルテックの詳しい事業については、以前の記事にて紹介しています。ホームページと併せてご覧ください。
カタログに載らない話 2010年6月記事 焼却灰を再生骨材にリサイクルしています

【メルテック紹介ページ】

メルテック株式会社

安富 この記事は
メルテック株式会社 安富 が担当しました

2014.06.01 サーキュラーエコノミー

5分でわかる!金属のリサイクル

DOWAの取組リサイクル

DOWAグループでは、生活には欠かせない身近なものから、多くの金属をリサイクルしています。

■暮らしの中の金属

例えば、携帯電話には、金、銀、銅、インジウム、リチウムなどが含まれています。
家電や小型家電が壊れたり、買い換えて使わなくなった時、リサイクルすることで、製品に含まれる金属を取り出して、また資源として使う事ができます。

DOWAエコシステムがリサイクルをしているのは、冷蔵庫・エアコン・テレビ・洗濯機などの家電製品、携帯電話・デジタルカメラ・音楽プレーヤーなどの小型家電、車などです。

■収集・運搬

これらは使われなくなると、リサイクルするために、集められて工場に運んでこられます。収集は、DOWAが主体となって回収したり、自治体が集めてDOWAが回収したり、と回収する方法は様々です。

■まずは分別

工場に運ばれてきたモノは、まずバラバラに分解され、粉々に粉砕され、種類別に分別されます。それがリサイクル原料と呼ばれるもので、下の図のように様々なものがあります。

■金属リサイクル

プラスチック、アルミニウム、鉄などは、それぞれの種類ごとにリサイクル会社でリサイクルされます。
リサイクル原料のうち、基板などは色々な金属が混ざっているので、これらは小坂製錬という製錬会社で、複数の金属を製錬します。

製錬された金属は、家電や車のパーツを作るのに使われたりと、様々な用途に使われていきます。

そしてまた、その家電が使用されなくなると、DOWAグループが再び金属を回収します。

DOWAグループは、皆さんの知らないところで、皆さんが使用している様々なモノをリサイクルし、これからも安心して暮らせる環境を支えていきます。

蔵石 この記事は
DOWAエコシステム 海外事業推進部 蔵石 が担当しました

2014.02.01 廃棄物管理

「PCB特措法」解説(3) ~排出者がしなければいけない事と罰則2~

PCB

前回は、PCB廃棄物保管事業者(排出者)が遵守すべき事項について、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)に基づいた規則及び罰則を紹介致しました。その一方で、PCB廃棄物は「廃棄物処理法」に基づいた保管基準を順守することも求められています。
「PCB特措法」解説シリーズではありますが、第3回は「廃棄物処理法」に基づいて保管基準等を解説致します。

「PCB特措法」解説 第1回 ~制定の背景、目的、処理期限~
「PCB特措法」解説 第2回 ~排出者がしなければいけないことと罰則1~

■特別管理産業廃棄物の保管基準(廃棄物処理法施行規則第8条の13)

  • 周囲に囲いがあること
  • 見やすい箇所に掲示板を設けること
  • 特別管理産業廃棄物が飛散し、流出し、及び地下に浸透し、並びに悪臭が発散しないよう措置を講ずること
  • ねずみが生息し、及び蚊、はえその他の害虫が発生しないようにすること
  • 他のものが混入するおそれのないように仕切りを設けること等の措置を講ずること

■PCB廃棄物の保管基準(廃棄物処理法施行規則第8条の13第5号)

  • 容器に入れ密封するなど、PCBの揮発の防止のための必要な措置
  • PCB廃棄物が高温にさらされないための必要な措置
  • PCB廃棄物の腐食の防止のための必要な措置

■特別管理産業廃棄物管理責任者の設置(廃棄物処理法第12条の2第8項、廃棄物処理法施行規則第8条の17)

  • PCB廃棄物を保管している事業場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を置かねばならない
  • 特別管理産業廃棄物管理責任者は、環境省令で定める資格を持った者であること
規則 罰則
廃棄物を不法に廃棄した場合 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科(法人には3億円以下の罰金)
廃棄物の収集運搬や処分の許可を受けていない収集運搬・処分業者に委託した場合 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科
マニフェストに虚偽の記載をした場合 6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金
特別管理産業廃棄物の管理責任者を置かなかった場合 30万円以下の罰金

また、排出者責任として以下の項目が定められています。

■排出者責任(廃棄物処理法第12条第5項)

  • 当該産業廃棄物の発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の工程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

具体的には、平成23年2月4日の環境省通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律等の施行について(通知)」にて、事業者が委託先において産業廃棄物の処理が適正に行われていることを確認する方法として、処理を委託した産業廃棄物処理業者の施設を実地に確認する方法等があげられています。
また、自治体によっては条例で具体的に規定をしている場合もあります。
所轄の自治体の条例もご確認ください。

  • (例:静岡県)
    • 事前に委託先を実地確認すること。
    • 継続して委託するときは毎年1回以上、定期的に処理状況を実地確認すること。

もちろん、DOWAのPCB無害化処理施設(エコシステム山陽・エコシステム秋田)では、事前の処理施設見学も承っておりますので、お気軽にご相談ください。

【参考資料】

環境省ホームページ
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律等の施行について(通知)

堀岡 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 営業企画部 堀岡 が担当しました

2014.01.06 廃棄物管理

「PCB特措法」解説(2) ~排出者がしなければいけない事と罰則1~

PCB

ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(以下「PCB特措法」)についてシリーズで解説をしています。

「PCB特措法」解説 第1回 ~制定の背景、目的、処理期限~

PCB特措法解説・第2回目は、排出者に関係する各項目と罰則について解説していきます。

「PCB特措法」では、PCB廃棄物保管事業者(排出者)が遵守すべき事項をそれぞれ定めています。

定義(第2条)

「事業者」とは、第十三条(ポリ塩化ビフェニル使用製品に係る措置)を除き、その事業活動に伴ってポリ塩化ビフェニル廃棄物を保管する事業者

事業者の責務(第3条)

PCB廃棄物を自らの責任において確実かつ適正に処理する責務を負うこととされています。

期間内の処分(第10条、規則第8条)

平成39年3月31日までの適正な処分について規定しています。なお、事業者が上記の処分等に違反した場合は、環境大臣または都道府県知事が、事業者に対し期限を定めて、PCB廃棄物の処分など必要な措置を命ずることができます。(法第16条)

保管状況等の届出(法第8条、規則第5条)

PCB廃棄物を保管する事業者は、前年度における保管・処分の状況について、都道府県・政令市に届出書を提出しなければなりません。また、PCB廃棄物の中間処分又は最終処分が終了した場合、その旨を記載した産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写しを複写したものを、届出書に添付しなければなりません。

保管事業場の変更届出(規則第6条)

PCB廃棄物を保管する事業場に変更があった場合は、変更後10日以内に、変更届出書を都道府県知事・政令市長へ提出しなければなりません。

PCB廃棄物の承継の届出(法第12条第2項、規則第9条)

相続、合併、または分割により、PCB廃棄物を承継した場合は、承継があった日から30日以内に、承継届出書を都道府県知事に提出しなければなりません。

譲渡及び譲り受けの制限(法第11条、規則第8条)

PCB廃棄物を譲り渡し、又は譲り受けることは、PCB廃棄物の確実かつ適正な処理に支障を及ぼすおそれがないものとして環境省令で定める場合を除き、禁止されています。

※ 地方公共団体又は日本環境安全事業株式会社(JESCO)以外の者に譲り渡すには、事前に所管の知事又は市長の承認が必要となります。承認の手続については、所管の都道府県又は政令市の担当課にお問い合わせください。

また、PCB特措法においては、以下の罰則規定が定められています。

規則 罰則
平成39年3月31日までに適正処理を行わず、環境大臣または都道府県知事による改善命令に違反した場合 3年以下の懲役もしくは、1,000万円以下の罰金またはこれらの併科
PCB廃棄物を譲渡し、または譲り受けた場合
(環境省が定める場合を除く)
3年以下の懲役もしくは、1,000万円以下の罰金またはこれらの併科
PCB廃棄物の保管および処分について届出を行わなかったり、虚偽の届出をした場合 6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金
PCB保管事業者の相続、合併または分離により事業を承継した法人が承継の届出を行わなかったり、虚偽の届出をした場合 30万円以下の罰金

Q.なぜ事業者が保管や処理の責任を負うのですか?

A.
廃棄物処理法やPCB特措法では、事業者の責務として、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないこと、処理するまでの間、適正に保管することなどが定められています。従って、PCBを含む電気機器等を使用してきた事業者自身が、不用となったこれらの機器の保管や処理に責任を有することとなります。

次回は、それでは実際どのようにPCB汚染廃棄物を保管しなければならないのか、廃棄物処理法に基づいて確認していきましょう。

堀岡 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 営業企画部 堀岡 が担当しました

2013.12.01 カーボンニュートラル

バイオコークスの研究と未来 その4 将来に向けて

DOWAの取組バイオ燃料対談

井田 民男(いだ たみお)様

近畿大学 理工学部 機械工学科 准教授

近畿大学機械工学科
近畿大学ホームページ バイオコークスプロジェクト
平成23年 新エネ大賞「資源エネルギー長官賞」
平成24年 地球温暖化防止活動環境大臣賞 受賞

地球温暖化抑制に向け、CO2削減の為の様々な取り組みが世界中で行われています。
今回のインタビューは、製鉄に欠かせない石炭コークスの代替として世界的に注目されているバイオマスを原料にしたバイオコークスの開発をされた近畿大学の井田准教授にお話を伺っています。

【その4】 将来に向けて

なるほど、これからは海外なんですね。

最近は、東南アジアへの技術供与の話が非常に多いですね。去年からほとんど海外とのやりとりです。
これからは二国間オフセット・クレジットが導入されてきますから、現地でCO2削減を実現することも日本にとっても意義のあることになりますね。

【参考資料】
環境省ホームページ

二国間オフセット・クレジット制度

ちょうど今年5月に、安倍首相が春に東南アジア各国へ行かれましたが、そのときに、近畿大学が泰日工業大学と学術交流協定に調印しました。
中でもバイオコークスの技術に興味を持たれたと聞いています。国内に余剰しているバイオマスを利用し、資源国家としてビジネスが成立しますから、ASAENのバイオマス・ポテンシャルからすると、環境とエネルギーを両立できるチャンスと感じてくれていると思います。
特にシンガポールはすごいなと感じます。

それに比べて日本は組織決定するまでの動きが遅いというか、投資意欲が薄いという印象ですね。やはり、国内で製造するのはビジネスとして難問が多すぎるということだと思います。

最近の動向を見ていると、これからは、工学の技術者も海外へ出て行かないといけないと感じています。

先生は国内の実証から実用化を経て、現在、東南アジアを中心にバイオコークス実用化に向けご活躍されていますが、将来に向けた研究などについてお聞きしたいのですが。

5年前に大学を離れ3年間、基礎研究や学生教育から離れさせてもらって、バイオコークスの実用化・ビジネス化に専念しました。
そのおかげもあり、一昨年(平成23年)にバイオコークスという国産エネルギーを作ったという内容で新エネ大賞の資源エネルギー庁長官賞をいただき、去年の12月にその技術を使って、豊田自動織機さんがCO2削減の地球温暖化防止活動として環境大臣賞を受賞されました。
やはり、これらの受賞は大きなきっかけで、各方面から後押しをいただきましたね。

現在は、やっと落ち着いてきたので、去年から授業に戻り、学生教育もできるようになってきて、これからは最先端のバイオエネルギー工学を教育へ取り入れることと発展研究へとシフトしていきたいと考えています。

そんなところへ、図らずしも一昨年、学園から「バイオコークス研究所の設立準備の指示」を頂き、2012年の12月にバイオコークス研究所を創設させていただきました。

バイオコークス研究所は、バイオコークスをはじめとする持続可能社会に向けたエネルギー技術の研究が目的です。また、現在、大学がグローバル化を推進している中で、数年後にはMAX 7~80人くらいの留学生を受け入れていくことになると思います。

まだ、私のところには留学生はマレーシアの2名だけなのですが、最近は本当に優秀な留学生が多いと感じますね。
ASEANの大学はまだ教育システムや論文の評価などが遅れているところがあるのですが、学生はグローバルな能力、特にすばらしい英語力を持っています。

また、「自分の国を良くしたい」との意欲の点でも非常にまじめで、彼らも5年後10年後に母国で成果を出してくるだろうと期待しています。
我々教授陣が若いアジアの優秀な人達を育て、東南アジアからノーベル賞の受賞者が出ると嬉しいですね。

学生も東南アジアの発展と共にどんどんと優秀な人材が育ってくるのでしょうね。

研究についてのビジョンはいかがでしょうか?

次の研究課題としては、去年からNEDOの2030年を目指した次世代バイオマスエネルギー事業を皮切りに、バイオマスから石炭を作る研究を始めています。コークスは鉄鋼分野などの狭い範囲でしか使えませんが、CO2の問題を考えると火力発電の石炭の需要に対応することが次の目標です。

世界中のCO2排出量で最も多いのが石炭由来によるもので、約40%を締めていますから、石炭をバイオマスに置き換えることが実用化できれば、バイオコークスの比ではなく温暖化防止に貢献できます。

現状のバイオコークスは発電にはつかえないのですか?

使おうと思えば30%位は使えると思いますが、火力発電所で使っている蒸気タービンは1,200℃の蒸気を使いますからコークスのチャー燃焼だけでは酸素を入れても温度が足りません。
製鉄にコークスを使うのは、「タール(揮発成分)」が不純物になってしまうためで、燃焼温度を上げるだけであれば揮発成分が含まれている石炭を使います。揮発成分は酸素を供給すれば3,000℃くらいまで上げることができます。コークスだけでは作れない温度ですね。
発電の為には、石炭のように揮発成分のラジカル反応が使えるようなバイオマス燃料を作らなければなりません。

バイオコークスとは違ったプロセスで作らないといけないんですか?

バイオコークスを作ってから石炭を作るというプロセスになります。
バイオマスから石炭を造るプロセスが木化・風化・石化というプロセスを踏んでいますからそれ以外の方法は今のところ考えられないですね。

とすると・・バイオコークスに揮発成分をプラスするのですか?

いいえ、バイオコークスの特長は原料の持っている揮発成分も含めたエネルギーが100%変換されて固化されていますから。その揮発成分を残したまま石炭化するという方法になります。

数学で言うと排他的証明というのですが、バイオコークスにはバイオマスの組成全てが含まれていますから、バイオコークスから何を除いたら石炭になるのかということを考えるんですね。
石炭になるのに何が悪さをしているかもわかってきて、それを選択的に取りだすこともできるところまで到達しています。

石炭として100%使えるところまではできましたが、まだいろいろ解決しなくてはならないこともありますから、到達度では85%くらいですかね。
残り15%を解決し実用化の研究へシフトしていきたいと思っています。

最後にお伺いしたいのですが、現在、DOWAエコシステムと共同研究をさせていただいていますが、DOWAという会社は御存知でしたか?

DOWAさんは、金属リサイクルで有名でしたので知っていました。
共同研究のお話を頂いた時には「こちらこそ」という感じでした。それまでお付き合いが無いところから興味を持っていただいて、実験などさせてもらうと新たな発見があって非常に面白いです。

特にウレタン100%でバイオコークスが作れるか?というのは、自分でも「つくれるんだ!」と驚いたくらいです(笑)。廃棄物処理やリサイクルをしている会社ならではの発想ですよね。

さらにDOWAさんグループの廃棄物溶融炉などでバイオコークスが利用できるようになると嬉しいですね。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回で、インタビューは終了です。バイオコークスの製造方法からASEANを含めた国際規模での地球温暖化抑止の重要な解決技術だとわかりました。
今後の井田准教授のますますのご活躍をお祈りします。

2013.12.01 廃棄物管理

「PCB特措法」解説(1) ~制定の背景、目的、処理期限~

PCB

今回から、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(以下「PCB特措法」)について解説をしていきます。

【1】PCB特措法が制定された背景は?

ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」)は、昭和29年から国内で生産が開始され、水に溶けない、化学的に安定、絶縁性に優れるといった特性から、電気機器の絶縁油や熱媒体、感圧複写紙等に広く使用されました。

しかしながら、昭和43年に発生した「カネミ油症事件」*1などを契機として、その人体への毒性が社会問題化し、処理の体制が確立する以前、昭和47年に行政指導(当時の通産省)によって製造中止となりました。

その後、昭和49年には、「化学物質の審査及び製造等の規則に関する法律(化審法)」でPCB機器の製造・輸入・使用が原則的に禁止となりました。

そこで、国の主導のうえ処理体制を構築することとし、PCB廃棄物については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法)」に基づき一部で処理が行われましたが、施設の設置に際して地域住民の理解が得られず、また全体的には回収や処理のシステムが構築されないままであったため、ほぼ30年の長期にわたりほとんど処理が行われず、長期保管の状態が続くことを余儀なくされていました。

このような長期保管が継続するなか、国内においてはPCB廃棄物の紛失等が発生し、環境汚染の進行が懸念されるとともに、国際的な枠組みとしてPCB等残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants : POPs)*2に関するストックホルム条約(POPs条約)が平成13年に採択され、日本は平成14年に締結しました。平成16年に発効に必要な50カ国目が締結したことを受け、平成16年に発効しました(本条約ではPCBに関して、平成37年までの使用の全廃、平成40年までの適正な処分を求めています)。

このように、PCB廃棄物の処理体制の構築は長年の課題となっており、以上のような背景から、長期において大量に保管されているPCB廃棄物の適正かつ確実な処理の確保・推進を行うため、PCB廃棄物特別措置法が制定されました。

【2】PCB特措法の目的とは?

廃棄物の処理に関する法規制は、従来、廃棄物処理法に基づいて行われていますが、PCB廃棄物については、難分解性、人の健康や生活環境に被害を生ずる恐れがあるという性状や、長期にわたって処分が進んでいないという社会的情勢に鑑み、廃棄物処理法による規制に加えて、処理体制を速やかに整備し確実かつ適正に処分を行う必要があるため、PCB廃棄物特別措置法が制定されました(法第1条・目的等)。

【3】PCB特措法の施行及び改正は?

PCB廃棄物特別措置法は、平成13年7月15日より施行されています。また、政令及び省令に委任された事項を定める命令は、次の通りです(いずれも、法の施行日から施行されています)。

PCB廃棄物特別措置法施行令(平成13年6月22日政令第215号)
処分期間(第2条関係)や都知事が行う事務(第3条関係)について規定。

PCB廃棄物特別措置法施行規則(平成13年6月22日環境省令第23号)
処理したものに含まれるPCB量の基準(第2条関係)、PCB廃棄物処理計画、保管等の状況の届出・公表、改善命令書等の基準・記載事項等細則を規定。

なお、平成24年12月にPCB特措法施行令が一部改正され、施行令で定められたPCBの処理期限が、平成28年7月より平成39年3月31日へと延長されました。

【用語説明】

*1 カネミ油症事件

昭和43年(1968年)、北九州市を中心に西日本において発生し、食用油の製造過程において熱媒体として使用された塩化ビフェニルが、腐蝕したパイプの孔からもれて油に混入し、この油を食用に供した人達に急性毒性による被害を与えたものです。

*2 残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants:POPs)

  1. 環境中で分解しにくい(難分解性)
  2. 食物連鎖などで生物の体内に蓄積されやすい(高蓄積性)
  3. 長距離を移動し。極地等に特関されやすい(長距離移動性)
  4. 人の健康や生態系に対して有害性がある(毒性)

以上のような性質を持つ化学物質であり、一部の国々の取り組みのみでは地球環境汚染の防止には不十分であり、国際的に協調してPOPsの廃絶、削減等を行う必要から、国際的な枠組みとして、平成13年5月、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」が採択されました。

堀岡 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 営業企画部 堀岡 が担当しました

2013.11.01 カーボンニュートラル

バイオコークスの研究と未来 その3 バイオコークスの実用化の課題

DOWAの取組バイオ燃料対談

井田 民男(いだ たみお)様

近畿大学 理工学部 機械工学科 准教授

近畿大学機械工学科
近畿大学ホームページ バイオコークスプロジェクト
平成23年 新エネ大賞「資源エネルギー長官賞」
平成24年 地球温暖化防止活動環境大臣賞 受賞

地球温暖化抑制に向け、CO2削減の為の様々な取り組みが世界中で行われています。
今回のインタビューは、製鉄に欠かせない石炭コークスの代替として世界的に注目されているバイオマスを原料にしたバイオコークスの開発をされた近畿大学の井田准教授にお話を伺っています。

【その3】 バイオコークスの実用化の課題

バイオコークスはどんな用途に使われるのでしょうか?

用途としては基本的に石炭コークスの代替を目指しています。
具体的には、製鉄炉(高炉)や鋳造炉(キュポラ炉)、に使われている石炭コークスの代替ですね。また、廃棄物処理に使われているガス化溶融炉でも使えます。

面白いところでは、ミニSLの燃料として使われた事があります。子どもたちを乗せるミニSLにわざわざCO2を多量に排出する石炭コークスを使うことは無いだろうと思われたんだと思います。

その他、北海道下川町では、ビニールハウスのボイラーの燃料として使われていて、CO2発生ゼロの温室トマトを作っています。

実用化という点ではどうでしょうか?

実用化に向けた実証実験では、国内唯一の鋳鉄溶解炉メーカーの(株)ナニワ炉機研究所さんと行った小型キュポラ炉の実証実験では石炭コークスの40%を代替することに成功しています。

また、(株)豊田自動織機さんと共同で2008年に実際に工場で運用している20t/hの鋳造炉で実証試験を行ったのですが、少なくとも10%以上はバイオコークスで代替できることは確認しました。心配していた工程や品質への影響も無いだけでなく、バイオコークスの熱分解ガスの燃焼効果で、石炭コークスだけの時より炉内温度が上昇し溶解速度が速まったという結果も得られています。

参照:近畿大学NEWS 2008/5月

その後も、(株)豊田自動織機さんでは大阪の森林組合さんが作ったバイオコークスを通常の生産に使用して頂いていて、いろいろなデータをいただいています。
バイオコークスの強度は1,000℃くらいまでは維持できていることや、現状の炉でも20%はバイオコークスに代替することができそうだと伺っています。
他、実際に操業している方からは、他の原材料に比べて「お茶から作ったバイオコークスは鉄がよく溶ける」という感想も聞いていますので、何かお茶特有の要因があるのか調べてみたいとも思っています(笑)。

もう一つ、実証実験から実用化までいっている例では、一般ゴミを溶かす溶融炉の製造メーカのJFEエンジニアリング(株)さんと(株)ナニワ炉機研究所、日本砿研(株)さんと共同実証試験をして、スラグを1,400℃くらいで溶融できるデータが得られています。
JFEエンジニアリング(株)さんと廃棄物処理系のバイオコークスで高温ガス化溶融炉をオペレートする国際特許も出しています。

参照:近畿大学NEWS 2011/5月

実用化も間近という感じですね

日本の企業からは、良い技術であると言うことは理解して頂いているのですが、コストが合わないという点がネックになり、積極的に取り組もうという会社さんは少ないですね。

それと、原料の問題もあります。日本の自動車会社で年間30万トンの石炭コークスを使っています。その20%を代替需要でまかなおうとすると、年間6万トンのバイオコークスが必要になりますが、原料になるバイオマスが足りないのです。
バイオ廃棄物を多く排出するのは飲料メーカーで、例えば、コーヒー豆のカスが8トン/日くらい出ているところもあります。しかし、この程度の量ではビジネス化するには量が足りませんね。

また、コストで見てみますと、現在の国内の鋳物用石炭コークスの価格が5−6万円/トンくらいだったと思うので、生産の現場で使っていただくにはそれ以下の価格でないといけないのですが、国内で作った場合を試算してみると、製造原価の段階で3万~3.5万円/トンくらいかかりますから、市場に流通する時には4~5万円/トン以上になってしまうと思います。

ただし、国内製造はコストのハードルが非常に高くとても難しいのですが、海外、特にASEANの諸国ではものすごく積極的です。

海外ではどうして積極的なのですか?

東南アジアでは、パーム椰子やサゴ椰子、PFK、とか、もみ殻、稲わらなどバイオマス廃棄物が、ほぼ「ただ」で大量に手に入ります。例えば、パーム油を作る工場から出るパーム椰子の廃棄物が100トン/日くらい出てきますので、材料には困らない状況ですね。
また、人件費も安いですから、東南アジアだと試算で1万円/トンくらいで製造できます。その価格ならば、日本に輸入しても2万〜3万円くらいで供給が可能になります。

さらに、自国内の需要と供給という点でタイなどはものすごく理にかなっています。
現在、タイとマレーシアで技術供与のプロジェクトを行っているのですが、タイは工業が盛んで石炭コークスの需要があるのですが、国内では石炭が取れないので、主に中国から石炭を輸入しています。100%輸入石炭に頼っているので、高くても輸入せざるを得ません。

一方で、タイはもみ殻の廃棄物が大量に出ていますからバイオコークスが実用化されれば、石炭の半額以下で自国産のコークスが入手できますので、導入に積極的です。タイだけでなくその他のASEAN諸国でも工業が盛んな国で石炭を輸入に頼る国はバイオコークスに大変興味を持っています。

東南アジアでも、インドネシアの場合は、バイオマスはいっぱいあるのですが、自動車産業などの工業が発展していないため、あまり前向きでは無いですね。
ただ、国内にコークスの需要がなくても余剰のバイオマス廃棄物からバイオコークスを製造し、日本などへ輸出して外貨を得るということも可能だと思います。

日本にとっても、東南アジアで作られたバイオコークスが輸入できれば、価格の面でも石炭コークスの代替として利用されてくるとおもいますし、新しい炉の開発につながり、需要が増加すれば安定供給されてくるというメリットもあります。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、将来に向けて・・・今後の活動と未来についてお聞きしています。

2013.10.01 カーボンニュートラル

バイオコークスの研究と未来 その2 バイオコークスの特徴

DOWAの取組バイオ燃料対談

井田 民男(いだ たみお)様

近畿大学 理工学部 機械工学科 准教授

近畿大学機械工学科
近畿大学ホームページ バイオコークスプロジェクト
平成23年 新エネ大賞「資源エネルギー長官賞」
平成24年 地球温暖化防止活動環境大臣賞 受賞

地球温暖化抑制に向け、CO2削減の為の様々な取り組みが世界中で行われています。
今回のインタビューは、製鉄に欠かせない石炭コークスの代替として世界的に注目されているバイオマスを原料にしたバイオコークスの開発をされた近畿大学の井田准教授にお話を伺っています。

【その2】 バイオコークスの特徴(原理)

もう少し詳しくバイオコークスについてお聞きしたいと思います。
石炭と石炭コークスの違いについて、少し説明をお願いしてよろしいですか。

ではまず、石炭について説明します。
石炭は植物が光合成をして生成されたリグニンやセルロースなどの高分子物質が「木化」し「風化」して、地中で加熱・加圧されて「石化」したものですが、そのプロセスは、1,000~3,000万年位かけてじっくり行われます。

1,000万年以上もかかっているのですが、石炭は「木」の名残である「木タール」など揮発成分を持っています。「チャー」と呼ばれている炭素部分と「タール(揮発成分)」の2つを持っているのが石炭です。

石炭は、まず揮発成分が気化してガスが燃え、温度が高くなってきて炭素部分が燃えてくるのですが、製鉄に使用する場合には「タール」のタール分が不純物として鉄に悪さをするので取り除く必要があるんですね。

石炭コークスは、コークス炉という装置を用いて石炭を高温で蒸し焼きにして、「タール」の成分を飛ばしてチャー(炭素部分)だけを残したものです。これが「乾留」と呼ばれている工程です。

残された炭素はグラファイトに近い性質なので、融点が無く、軟化点により、高温下で軟化してドローッとしています。その軟化点(粘結性)を利用して固めたものが石炭コークスです。石炭コークスは多孔質な穴が空いた状態の炭素の固まりなんです。

バイオコークスはコークスに近いのですか?

バイオコークスの製造過程は、石炭の生成過程の「石化」までの工程を行っているのに非常に近いです。
植物が初期の石炭性状になるまでの数千万年の変化を数十分で行わせているとも言えますね。

数千万年の変化を数十分で・・・すごいですね。どのような仕組みでそのようなことが起こっているのでしょうか?

一言でいうと、リグニン反応を起こさせて加圧して固めるということをしているのですが・・・説明すると難しいですね(笑)。

ご存じの通り物質は、通常、固体・液体・気体と相変化します。
固体の状態というのは分子と分子がしっかり結合しています。

通常は温度を上げていくと液体になるのですが、液体の状態というのは、分子の結合の形は変わらないで分子と分子の距離が変わって柔らかくなっているという状態になります。
さらに温度を上げていくと、限界が来て分子がちぎれて自由に移動できるようになります。その状態が気体ですね。

一方、バイオマスのような高分子は温度を上げていっても、液体にならずに気化する直前まで焦げながら耐えていて、限界が来ると気化がはじまります。
このときに起きている変化を説明しますと・・・・固体の状態から分子の並びや距離はそのまま維持しながら、分子間の結合力のみが弱くなっていくということが起きています。結合力が弱くなりながらも、限界まで形を変えずに我慢しているような感じですね。

その気化がはじまる温度が250~300℃で、固体の骨格を維持しながら分子間の結びついている力が最も弱くなっている状態です。
その気化が始まる前の180℃くらいで20MPa程度の圧力を加えると、高分子の骨格の形でギューッと高密度化させることができるのです。そして冷却すると180℃の状態で溶けていた繊維成分のヘミセルロースが接着剤の役目をして固まるのですね。
それがバイオコークスです。

それから、なぜ、水分量が10~15%の範囲かと言いますと、バイオコークスの中では、加圧によって導管などの植物の細胞構造はつぶれてしまっていますが、細胞壁自体は、形がつぶされながらも残っていてその内側に水の分子が残っています。その細胞壁の内側に1層だけ水の分子が張り付いた状態になっていなくてはなりません。水分量が多くなって水の分子が2層以上あると加熱による水蒸気の活動が大きすぎて爆発のようなことが起こってしまいます。

バイオコークスの原料はどのようなモノが多いのでしょうか?
得意な原料とか、バイオコークスにしにくい材料などありますか。

バイオコークスはどんなバイオマス原料でも作ることができます。これまで作ったもののいくつかですが、サンプルがあるのでご覧ください。

稲藁、もみ殻、お茶・コーヒー豆(ジュースメーカの産廃)、鉛筆・・・中には綿100%の靴下なども原料として使えました。
バイオコークスは原料が100%そのままの形で圧縮されていますから、臭いをかぐと原料の香りがしますので原料がわかりますよ。

それはお茶、こちらが桜の枯れ葉です。ちょっとカラフルで面白いのが鉛筆を原料にしたものです。


写真:左から 稲わら、りんごの皮、茶殻、桜の枯れ葉

お茶のにおいや、桜の臭い、鉛筆の臭いそのままですね。
見た目も、鉛筆から作られたバイオコークスは鉛筆の塗装がカラフルですね。小学校で集めたのですか?

小学校などでは環境教育の意味からご協力頂いたりしていますが、これは鉛筆工場の残渣を利用しています。プリントや芯がズレたりした、不合格になったものです。
鉛筆の芯は炭素ですが、鉛筆に使われるものは炭素の中でもダイヤモンドの次に高級なグラファイト炭素で、純度が高いので、2,000℃でも燃えないのです。鉛筆をたくさん集めることができたら非常に面白いバイオコークスができると思います。

見せていただいたものは稲藁とかお茶とか単一の原料でできていますが、単一原料でないと作れないのですか?

いろいろな原料が混ざっていても問題ありません。これらは、原料による特性のデータを得る為の試作でもあるので、単一の原料から作成しています。

バイオコークスを作るには、原料が数ミリにクラッシュされていることと水分量が10~15%の範囲である必要がありますので、原料は以下の4つに分類されます。
A クラッシュが必要なもの
B 乾燥をしなければならないもの
C その両方をしなければならないもの
D なにもしなくてよいもの

意外と手間がかかるものが木材です。数ミリにクラッシュしなければいけませんし、木材は水分量が約50%くらいなので、15%まで水分量を落とす手間がかかります。
コーヒーとかお茶殻は水分量が約80%くらいありますがクラッシュする必要はなく乾燥だけで済みます。
もみ殻は、水分量の調整も簡単で粒もちょうどよい大きさなのですが、外殻にシリカの膜があって、そのままではリグニン反応が起きませんでしたので、一度クラッシュさせないといけません。
一番の優等生は、そば殻で、粒の大きさも水分量もぴったりなのでそのまま使えます。

変り種では、原料がバイオマスでは無いのでバイオコークスとは呼べませんが、
DOWAさんと実験した100%ウレタン廃棄物とか、紙やらスポンジやらの混在した一般ゴミのRDFでも作れましたね。
また、先ほどお話しした放射線汚染された稲藁は、重量比で半分くらいは土が混ざっていました。汚染土も一緒に固化して封じ込められるわけです。

バイオコークスは、このサンプルのような円柱形・棒状のものになるのですか?

これの形は製造装置に由来します。筒に材料を詰め込んで、ギューッとプレスをするので円柱形になるのです。
バイオコークスの製造工程は下図のようになります。

  1. 原料充填
    所定サイズの原料を反応容器の上部から充填します。
  2. 圧縮
    油圧シリンダーにより原料を圧縮します。
  3. 加熱
    圧縮した状態で約180℃×約30分の加熱を行います。
  4. 冷却
    圧縮した状態で間接水冷により常温まで冷却します。
  5. 製品排出
    反応容器下部から製品を油圧シリンダーで押出します


こうして描いてしまうと簡単な仕組みに見えてしまいますが、実は、製造装置もなかなか難しい条件をクリアしています。

成功のカギは、製造装置の筒を作ることなのです。
上図のように原料を筒に詰め込んで上から圧縮していくのですが、その時の温度は180℃です。水蒸気を逃がさずに中の空気だけを逃がす筒を作ることが必要なのです。水分を逃がしてしまうと、ただのペレットになってしまいますし、空気が残っていると固めようとしても内部圧で固まりません。

流体力学などから計算して筒の設計はできたのですが、そんな微妙な隙間を持った筒は学内では作れず、近畿大学の地元、東大阪の鉄工所さんにお願いましたら3日ほどで作っていただけました。さすが「東大阪ものづくりの街」ですね。

実用化の初期は1個1個を作る図の様なバッチ式の製造装置でしたが、現在は連続式の装置もできています。サンプルの長い棒状のモノがその装置で作ったものです。


実験と装置の開発が並行して行われているのですね。

私の研究のスタイルとして、わかっている現象を追いかけるのは好きではないんですね。
バイオコークスもそうなのですが、新しい研究をするためには新しい原理の装置をつくらないと新しい答えが出て来ないと思っています。
ちなみに、マイクロフレームを作ったときは、ガス(水素)を通すための髪の毛の太さの銅のパイプを応力集中という理論を用いて作ることが成功のカギでした。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、「バイオコークスの実用化の課題」についてお聞きしています。