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DOWAエコジャーナル

2025.04.01 サーキュラーエコノミー 法律

再生材利用の義務化を含む資源有効利用促進法の改正案が閣議決定されました

リサイクル

2025年2月2日、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。そのうち「資源の有効な利用の促進に関する法律」(資源有効利用促進法)の改正では、再生材利用の義務化や、環境配慮設計などについての規定が追加されています。

■法改正の背景

経済産業省では、欧州におけるサーキュラーエコノミー関連規制の導入など、国際的な資源循環をめぐる状況が大きく変化する中、日本の社会経済システムを「線形経済」から「循環経済(サーキュラーエコノミー)」に転換するための方策について、産業構造審議会資源循環経済小委員会で検討を行ってきました。

(参考)産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 取りまとめ

今般、その報告を踏まえた資源有効利用促進法の改正案が閣議設定されました。
資源有効利用促進法は3Rの取り組みを促進するものですが、今回の改正案では3Rの取り組みを通じて脱炭素化を図る点にも言及されています。

■改正のポイント

①再生資源の利用が義務化される[法第21~24条]

特定の製品(「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」)に関する事業者に対する判断基準が定められるとともに、その製品の生産量・販売量が一定量以上であれば、再生資源の利用促進のための取り組み計画を主務大臣へ提出する必要があります。

計画の実施状況も主務大臣へ報告する必要があり、再生資源の利用状況が判断基準に照らして不十分だと勧告を受ける可能性がある点に注意が必要です。勧告に従わないとその旨を公表されたり、措置命令につながる可能性もあります。

具体的な製品についての記載は無く、政令で定められる予定ですが、この法律の制定に関連する「資源循環経済小委員会」では、自動車・LIB等(再生材としてはプラスチックやレアメタル)の海外への流出が課題視されており、この辺りが含まれるのではないかと考えられます。

(出典)経済産業省:資源循環経済小委員会(第8回)資料(赤枠は筆者による)

②環境配慮設計の認定制度が作られる[法第29条]

特定の製品の製造業者が脱炭素化を推進するために講じるべき措置に関して、指針が定められます(「資源有効利用・脱炭素化促進設計指針」)。また、設計についての認定制度も制定するとされています。

該当する製品は、現状では以下の通りです。

  • 指定省資源化製品(自動車、家電、PCなど)
  • 指定脱炭素化再生資源利用促進製品(本改正にて規定。具体的な品目は政令で制定予定)
  • 指定再利用促進製品(自動車、家電、PC、複写機、給湯器など)

③再資源化についての認定制度が作られ、廃掃法許可の特例が適用される[法第54条など]

指定再資源化事業者(小型二次電池、PCの製造・加工・修理・販売業者)であり、自主回収と再資源化のために収集運搬や処分を行う場合は、実施計画を作成して認定を取得できるとされています。また、廃掃法の業の許可は不要になります。

④CEコマースの促進について[法第26条]

指定再利用促進製品の製造・加工・修理・販売・賃貸業者に対する判断基準が定められます。この点は、法律案の概要ではCEコマースの促進という形で言及されています。

※CEコマース:リユース、リース、リペア、中古販売など、「CEに資する製品の利用を促進するビジネス」(資源循環経済小委員会資料より引用)のこと

■施行日

2026年4月1日

■おわりに

今後、政令等で具体化されていく予定です。特に再生資源の使用義務については、関連する会社にとっては重要な法律になると考えられますので、引き続き注視していく必要がありそうです。

詳細は、経済産業省のHPをご覧ください。

「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2025.04.01 サーキュラーエコノミー 法律

使用済太陽光パネルのリサイクル制度創設に向けた審議報告(その3)
~「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について」を大臣に意見具申~

PVリサイクル

環境省の「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省の「太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」の最終となる合同会議(第9回)が3月21日に開催されました。

今回の合同会議では、パブリックコメントの結果とその後の法制的検討を踏まえて修正された「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)」が審議されました。今回、その内容をレビューします。

中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ 合同会議(第9回)

■「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)」の主な変更内容

  • 再資源化義務の対象が「太陽光発電設備」から「太陽光パネル」に変更
  • 再資源化費用の交付先が、「設備所有者」から「再資源化事業者」に変更
  • 情報は「第三者機関が一元的に管理」するとしていたところ、「国と第三者機関が管理」することに変更
  • 語句の変更(主要な部分)
    変更前 変更後
    設備所有者 所有者
    (太陽光発電設備の)
    解体・撤去
    (太陽光パネルの)
    取り外し
    解体等費用 取り外し等費用

■主な変更点①:再資源化義務対象の変更について

再資源化義務の対象が「太陽光発電設備」から「太陽光パネル」に変更されたことにより、太陽光パネルの所有者が負担する費用(新たな制度に基づくもの)は、発電設備の解体等費用からパネルの取り外し等費用に限定されることになります。

この変更に対して、委員からは、太陽光パネルだけでなく発電設備全体の解体撤去に規制をかけることが重要で、パネル以外のものが放置・不法投棄されることのないよう対策を求める意見等がだされました。

これに対し、環境省・経済産業省からは、廃棄物処理法、建設リサイクル法、電気事業法など関連法制度も組み合わせて総合的に対策を行い、放置・不法投棄を防止するとした上で、こうした措置で不十分が明らかとなった際は追加措置も検討することが示されました。

■主な変更点②:再資源化費用の交付先の変更について

廃棄太陽光パネルの再資源化費用については、当初、再資源化を実施したことを証明できる書類等の提出を条件として、第三者機関が製造業者・輸入販売業者から徴収した費用から設備所有者等に一定額を交付するとしていたところ、今回の変更により、再資源化事業者が直接、一定額の交付を受けることになります。

この変更に対して、委員からは、費用の流れが明確かつ合理的となった一方で、再資源化費用の低減にむけたインセンティブが働きにくくなる懸念が示されました。

これに対し、環境省・経済産業省からは、今後の細則検討の中で例えば環境配慮設計の有無や程度を再資源化費用の算定の際に考慮することや、「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(高度化法)によって一定程度効率的な再資源化が見込まれる状況を作ることで再資源化に伴う社会的費用の低減を図りたいとする考えが示されました。

(出典)第9回審議会資料より

■主な変更点③:情報管理者の変更について

これまで第三者機関が一元的に情報管理を行うとしていたところ、今回の変更により、情報管理は国と第三者機関が行うこととなりました。

この変更に対し、委員からは、国が関与することで情報の収集と管理が前進するといった好意的な意見や、情報の使い方として適正処理や規制面だけでなく、欧州で実装化が予定されているデジタルプロダクトパスポート(DPP;製品の持続可能性に関する情報を電子的に記録したもの)にも将来的に対応できるよう求める意見などが出されました。

■今後の予定

第9回合同会議では、全体を通して委員から大きな異論は出ず、報告書のとりまとめは委員長に一任されました。そして、3月28日には、主務大臣への意見具申が行われました。今後、法案が策定される見込みです。

環境省・経済産業省は、今後も引き続き有識者や業界関係者等から意見を聴取しつつ、法制的な観点から詳細な制度設計を進めていくとしています。

○環境省:中央環境審議会意見具申「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について」について

狩野 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 狩野 が担当しました

2025.04.01 法律

CO2排出量取引制度への参加義務化を含むGX推進法の改正案が閣議決定されました

カーボンニュートラル

2025年2月2日、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。そのうち「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)の改正では、企業のCO2排出量の排出枠や、排出権取引などについての規定が追加されています。

■法改正の背景

カーボンニュートラルと経済成長の両立(GX)を実現する施策として、カーボンプライシングに関する制度基盤を整備するためにGX推進法の改正案が出されています。

化石燃料の輸入事業者等に課せられる化石燃料賦課金制度や、発電事業者に課せられる排出量取引制度(有償オークション)については既に法律で規定されています。今回の改正では、CO2排出量が多い事業者に対する取引制度についての規定が追加されました。

■改正案のポイント

①一定以上CO2を排出する事業者は排出枠取引制度へ参加する必要がある[法第32~35条など]

CO2排出量が一定量以上の事業者は、CO2の平均排出量などについての届出が必要であり、CO2排出量取引制度への参加が求められます。子会社等は、共同で届出できるとされています。
この「一定量」の具体的な数値は政令で定められる予定ですが、内閣官房の「GX実行会議」や本法律案の概要資料ではすでに「10万t」であることが記載されています。

(出典)内閣官房:GX実行会議(第14回)資料

また、届出における排出目標量の妥当性について第3者のチェックが必要になることや、関連する会社が共同で届出することができることなどが規定されています。

届出事業者は、排出量に応じた「排出枠」を調達する必要があります。一定量の排出枠は無償で割り当てられますが、これを超えてしまう分については排出権取引市場(後述)からの調達が必要になります。もし調達できず、オーバーした排出枠が生じた場合、課徴金が必要になるとされています。

②排出権取引市場が作られる

排出枠は、排出権取引市場で取引されることになります。GX推進機構が設置運営し、価格調整が必要な場合には排出枠の買い入れなどを実行します。

(出典)内閣官房:GX実行会議(第14回)資料

今回の改正を含めてGX推進法に基づき、2050年カーボンニュートラルと経済成長を同時に実現する取組みが、以下のようなスケジュールで進められます。

  1. 2023年の「GX推進法」の成立
  2. 2026年から始まる10万t以上排出の事業者による「排出枠取引制度」
  3. 2028年から始まる「化石燃料賦課金」の導入
  4. 2033年から始まる電力事業者の「有償オークション」

の4段階の取組みになっています。

(筆者作成)

■施行日

2026年4月1日

※化石燃料賦課金制度は2028年度から、発電事業者(特定事業者)に関する排出枠の有償割当ては2033年度から(従来通り)

■おわりに

CO2を年間10万t以上排出する企業は、排出量取引制度への参加が求められます。排出量を排出枠内に収めるための削減努力が必要ですが、排出枠以上に削減できれば、余剰分を売却できるというメリットもあります。

詳細は、経済産業省のHPをご覧ください。

「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2025.04.01 サーキュラーエコノミー

対談企画 サーキュラーエコノミーでハッピーになるのか その4 所有権と資源循環

対談

細田 衛士(ほそだ えいじ)様

東海大学副学長、政治経済学部経済学科・教授
慶應義塾大学名誉教授
中部大学理事、名誉教授

1993年より国税庁中央酒類審議会 新産業部会リサイクルワーキンググループ座長、1995年通商産業省産業構造審議会廃棄物小委員会委員、2000年運輸省FRP廃船の高度リサイクルシステム・プロジェクト推進委員会委員、2003年環境省政策評価委員会委員、2011年中央環境審議会委員、2011年林政審議会委員、2023年「サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ」事業における総会、ビジョン・ロードマップ検討ワーキンググループの委員などを歴任

粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 持続可能な消費と生産領域 主任研究員

2000年京都大学工学部卒業、2002年東京大学大学院工学系研究科修了(工学修士)。2007年政策研究大学院大学修了(国際開発学修士)。2023年9月立命館大学大学院理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)2002年-2005年(株)野村総合研究所にて研究員/コンサルタントとして、環境ビジネス・環境政策関連調査/コンサルティングに従事。2007年6月IGES入所。循環経済・資源効率性向上に向けた政策研究や国際政策動向の調査・分析、循環経済・資源生産性指標の政策応用に関する調査研究を行っている。

■教育

細田

高度経済成長の時に雇用のシフトがうまくいった理由の1つに「教育力」があります。
工業高校では非常にいい教育指導が行われて、卒業後は地方のモノづくりに携わり、それなりにハッピーな生活をすることができて、非常に格差の少ない社会だった。というのが高度経済成長モデルでした。
それが、モノ作りが海外に出ていってしまうと、工業高校を卒業しても就職の場がなく、地方の産業が空洞化してきます。
そうすると、地域での雇用をどう作り上げるか、ということを考えないといけません。

ポイントは2つあります。

1つ目は地域の循環をどうやって考えていくのか。これは地方創生の問題でもあります。
日本は地域循環を大事にしてきましたが、経済の安全保障や国防も含めて、地域がしっかりしていないと、水源を知らないうちに外国人に買われてしまったりすることだってあります。

2つ目は、教育の質を変えていかないといけない。
経済成長を実現していた時、日本がなぜ強かったかというと、公立の初等教育の教育力の高さだと思います。教育力が高ければ、雇用調整能力も高いはずなんです。

今、先生のなり手がいない、先生不足という大変な問題が生じています。教育力を上げて雇用調整能力を付けていくことは、時間がかかりますが、まだキャッチアップできると思っています。

粟生木

小学校の資料を見ると、私が想像するよりもSDGsも含む環境教育が良く行われていて驚くことがあります。
将来的には、この分野の専門的な高等教育に関心のある学生が増え、例えば、地域で出た食品廃棄物をエネルギーに変換して地域で使うなど、それぞれの地域で資源という意味で自立することが可能な社会経済システムの設計や実施を担えるような社会になることは非常に重要と思います。

■システムの転換

細田

小学生の授業で、自動車産業の教える時に、自動車の解体・リサイクルも一緒に教えるんです。動脈と静脈の両方を教える教育、作るだけでなく、どうやって使いまわしていくかという教育も必要だと思います。

我々の世代は、「ごみは捨てればいいじゃないか。焼却すればいいじゃないか。」という感覚が染みついています。確かに家庭ごみを清掃工場で燃やすのは、ごみ戦争を回避するために必要だったのですが、今は時代遅れになっていて、「捨てるということにはコストがかかる」、コストがかかるとしたらなるべく捨てないようにする、ということを認識しないといけませんね。

よく、再生資源化するコストが高いといわれるんですが、それは当たり前なんです。
なぜかって、「捨てる」ことを前提に経済システムが作られた社会の中では、「リサイクル」は高くなるんです。モノが循環利用される制度を作っておくと、捨てるコストが高くなり、リサイクルの費用が相対的に安くなります。

社会システムが変わって、再生資源が集まりやすくなると、コストが下がりますし、大量に処理できると汎用技術が使えるようになりますので、コストは完全に逆転すると思いますよ。

粟生木

いろんな方と議論していて、現状の社会経済システムを想定して、資源循環を実現するための議論をしようとすると、コスト等の問題で難しいという結論になってしまいます。10年くらいのスパンで、動脈側と静脈側それぞれの技術やシステムの変化・発展がうまく合致する、すなわち、資源循環システムのコストが最適化されうる状況をイメージしながら、もしくはすり合わせるための方法を考えながら、実現に向けたプロセスを議論していくべきだろうなと思っています。

細田

再生資源が使われていくと、静脈産業の体力は増すのですが、そのためにはまず再生資源を集めないといけない。でも静脈産業に、まだそこまでの体力はない。

動静脈連携が推進されていますが、排出事業者側がきっちりと分別して排出して再生資源として利用するという発想にまだなっていないのですよね。
そうすると、捨てることへの制限、日本だと最終処分量の削減という制限もインセンティブになってくると思います。

■所有権と資源循環

細田

大きな枠組みでいうと、所有権をどう考えるか、ということだと思うんです。
長い資本主義の歴史は、私的所有が認められて物質的には豊かな社会ができました。でも、「捨てる」という行為が「作る」という行為にどうつながるか、経済学者の中でほとんど議論になってきませんでした。

私的所有権を否定する共産主義はうまくいかないので、資本主義社会で考えると、捨てることをどこかで制約しておかないといけないと思うんです。

資源はいずれなくなりますので、今ある資源はみんなで使うようにしないといけない、という共有財のような性質もあり、いったん「保有」したならば、自分の知識と技術で十分に利益を取らないといけない。これは廃棄の責任を上流に持っていく、ということと関連します。

ご存じの通り、EUは衣料品や靴などの在庫の廃棄を禁止することにしました。

(参考)Ecodesign for Sustainable Products Regulation – European Commission

この「捨ててはいけない」というのは、所有権に対する強烈な宣言なんですよ。
所有権には、当然、処分権が入っていますので、処分権を制約するということは、所有権を制約しているということになります。

捨ててはいけない、ということは使わなきゃいけないわけで、これは大胆なシフト、究極のサーキュラーエコノミーだと思います。こういう政策を大胆に打っていくところに、EUのすごさを感じています。

粟生木

捨てちゃいけないということもありますが、資源消費と経済発展のデカップリングの大前提として、「過剰に作らない」というのがありますよね。
例えば、ICTで需要予測をしたうえで生産したり、循環を想定した製品を作るなど、色々な方法があると思います。所有権や処分権を制限することも、過剰消費抑制につながるのでしょうか?

細田

捨てられなかったら、使わなければいけません。しかも、節約して利用しないといけなくなります。

上田

個人としては「要らなかったら捨てればいい」と気軽に買えなくなる、会社だと売れる見込みがなければ生産しにくくなる、ということでしょうか。

細田

我々の世代は「ごみなんて捨てればいいじゃん、燃やせばいいじゃん」という意識が染みついてしまっているのですが、将来へのロードマップとしては、「ただ捨てて燃やせばいい」というものではなく、捨てるということはコストがかかるんだということを、教育していくのも必要ですね。

日本人のいいところは「ものを大事にする」ところなのですが、もう1歩先のところで、「資源は循環して使う、使わないものは持たない(所有しない)」という認識を持たないといけません。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

2025.04.01 その他

DOWAエコシステムと地域とのつながり

DOWAの取組

DOWAエコシステムグループは、国内外の様々な地域で事業活動を行っています。
国内外の拠点では、地域住民とのコミュニケーションやスポーツ活動・イベント活動の支援、若者や子供たちへ環境教育などを実施し、地域社会の発展を支える活動を積極的に展開しています。
今回はDOWAエコシステムグループの地域に根差した活動をご紹介します。

■工場見学の受け入れ

工場見学の様子

DOWAエコシステムグループは、地域コミュニケーションの一環として、教育機関や地域住民の方々を対象とした工場見学を行っています。

一例として、2024年6月にはエコシステム花岡(秋田県大館市)が花岡小学校の1年生から6年生までの35名の企業見学を受け入れたほか、2024年11月には、メルテックいわき(福島県いわき市)がふくしま産業廃棄物バスツアーの受け入れを行い、いわき市在中の小中学生および保護者、約40名が見学しました。

また、エコシステム山陽(岡山県美咲町)やエコシステム千葉(千葉県袖ケ浦市)では、家族に職場や仕事内容の理解を深めてもらうため、家族見学会を開催しています。

■スポーツ活動の支援

ミニバスケットボール交歓大会
DOWAチャレンジCUPの様子

DOWAエコシステムグループは、スポーツ活動の支援に取り組んでいます。

一例として、DOWAエコシステムは女子バレーボールV2リーグに所属する「フォレストリーヴズ熊本」とスポンサー契約を締結し、エコシステム山陽(岡山県美咲町)は日本女子サッカーなでしこリーグ1部に所属する「岡山湯郷Belle」の2024シーズンオフィシャルスポンサー契約を締結しています。

また、2024年11月にはエコシステムジャパン(東京都千代田区)やエコシステム山陽などが「ミニバスケットボール交歓大会 DOWAチャレンジCUP」に協賛し、次世代のスポーツ支援にも取り組んでいます。

■ゴミ問題や資源循環を楽しく学べる冊子「DOWA×うんこドリル ゴミと資源」による啓発活動

©Y.F/BKS / 環境教育の様子

DOWAグループは、2023年に(株)文響社とのコラボレーションにより、ゴミ問題や資源循環を分かりやすく、また、楽しく学べる冊子「DOWA×うんこドリル ゴミと資源」を制作しました。

この冊子は、子供たちにゴミ問題と資源循環の大切さを伝え、理解を深めてもらうことを目指しています。秋田県(小坂町・大館市など)および岡山県(岡山市・津山市など)にある当社グループの拠点周辺の小学校に無償で配布しており、一部の自治体では配布に合わせて社員が環境教育を行う取り組みも実施しています。これまで、ごみと資源について学習している4年生・5年生を対象に、小学校6校で環境教育を行いました。

日本一楽しい環境ドリル DOWA × うんこドリル ゴミと資源

■環境教育の実施

DESI SGP 2024の様子

DOWAエコシステムグループは、出張授業の実施など、環境教育に取り組んでいます。

2024年7月には、PT DOWA ECOSYSTEM INDONESIA(インドネシア共和国東ジャワ州)が、近隣の高校生に環境問題に対する理解と関心を深めてもらい、インドネシアの持続可能な社会づくりを推進することを目的に、「DESI SGP 2024」を実施しました。

また、2024年9月から2025年1月にかけて、バイオディーゼル岡山(岡山県岡山市)が岡山市内の小中学校8校、約1,500人を対象に出前授業を実施しました。

※SGP 2024(Small Grants Program 2024)=小規模助成金プログラム

■おわりに

当社グループは今後も、スポーツ活動・イベント活動の支援や若者や子供たちへ環境教育などを通じて、地域に根差した企業として、皆さまとともに地域社会の発展に貢献していきます。

【参考】

DOWAホールディングス ホームページ
地域社会との共生
サステナビリティトピックス

2025.04.01 その他

エコシステム花岡のPVリサイクルの取り組みが、AKT秋田テレビの番組「脱炭素社会の実現へ 秋田の再生可能エネルギー最前線2025」に取り上げられました!

DOWAの取組PV

AKT秋田テレビ(秋田県の日本テレビ系列局)が制作する「脱炭素社会の実現へ 秋田の再生可能エネルギー最前線2025」という番組に、エコシステム花岡(秋田県大館市)の廃太陽光パネル(以下、PV)のリサイクルの取り組みが取り上げられました。

この番組は、秋田県の洋上風力発電など、再生可能エネルギーの取り組みを紹介する内容です。番組内では、2030年代の太陽光パネルの大量廃棄を見据えた取り組みとして、エコシステム花岡のPVリサイクル事業が紹介されました。

番組はAKT秋田テレビの公式YouTubeチャンネルで公開されていますので、ぜひご覧ください!
※公開期間:2025年8月29日正午まで

写真:撮影の様子

エコシステム花岡について 詳しくはこちら
廃太陽光パネル(PV)のリサイクルについて 詳しくはこちら

2025.03.03 サーキュラーエコノミー

対談企画 サーキュラーエコノミーでハッピーになるのか その3 産業構造変化と雇用のシフト

対談

細田 衛士(ほそだ えいじ)様

東海大学副学長、政治経済学部経済学科・教授
慶應義塾大学名誉教授
中部大学理事、名誉教授

1993年より国税庁中央酒類審議会 新産業部会リサイクルワーキンググループ座長、1995年通商産業省産業構造審議会廃棄物小委員会委員、2000年運輸省FRP廃船の高度リサイクルシステム・プロジェクト推進委員会委員、2003年環境省政策評価委員会委員、2011年中央環境審議会委員、2011年林政審議会委員、2023年「サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ」事業における総会、ビジョン・ロードマップ検討ワーキンググループの委員などを歴任

粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 持続可能な消費と生産領域 主任研究員

2000年京都大学工学部卒業、2002年東京大学大学院工学系研究科修了(工学修士)。2007年政策研究大学院大学修了(国際開発学修士)。2023年9月立命館大学大学院理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)2002年-2005年(株)野村総合研究所にて研究員/コンサルタントとして、環境ビジネス・環境政策関連調査/コンサルティングに従事。2007年6月IGES入所。循環経済・資源効率性向上に向けた政策研究や国際政策動向の調査・分析、循環経済・資源生産性指標の政策応用に関する調査研究を行っている。

■技術革新

粟生木

例えばEUも域内で資源を循環させて、修理や製品のサービス化など分野での雇用や成長にも期待していると思います。

仮に日本も修理サービス等にシフトしたとして、経済発展が見込めるのかどうかについて、どう思われますか?

細田

サーキュラーエコノミーに関連する産業ではシェアリングも含めて色々あって、修理サービスはEUでも話題に上がり注目されますが、修理サービスの雇用力そのものは小さいので、「修理」という言葉だけに囚われないほうがいいと思っています。
なぜなら、いいものを作れば、修理をする必要はないからです。

しかしながら、サーキュラーエコノミーの産業はマクロでみると雇用力が大きい可能性は十分あります。コモディティ化された製品を大量生産するような、レッドオーシャンの中で激しく競争するのではなく、前回お話しした着物をリメイクして付加価値を高める、といったような付加価値を高めて足し合わせるとマクロとして大きな雇用力となる可能性があります。

我々が学生の頃に言われていたことなのですが、
各セクターの技術進歩を比べると、サービス産業は技術進歩による生産性の向上が小さいんです。
というのは、 例えば床屋さんあるいはパーマ屋さん、っていうと娘に笑われるんだけど、ヘアサロンで1人の従業員が対応できるお客さんの数は、昔からあまり変わらないわけです。
そうすると支払い意思が増えない限り、1人の従業員が当たり対応できるお客さんの数は限られるし、売り上げも限られますね。

そうすると、サービスセクターは技術進歩が低い、ということになります。昔はサービス産業が増えてくるにつれて経済成長率は下がるという考え方があり、実際そうだったのです。
ところがです。
今や、サービス産業もICTやAIの時代になって、省人化されてきました。新しいアイデアによる付加価値の創出も可能になりました。

上田

飲食店で、注文は端末から、支払いは自動精算機(セルフレジ)というお店が増えてきましたし、スーパーやコンビニエンスストアでのセルフレジも増えてきて、店員さんが減ったように思います。

細田

この省人化によって生産性は上がりますが、浮いた雇用はどこに行くのか、という問題が出てきます。
産業構造が伸縮的に動けば、別の産業が雇用を吸収してくれるのですが、雇用を吸収する産業がなければ雇用のギャップが生じてしまいます。

例えば、イギリスで産業革命が起きた時は、雇用調整がうまく機能しました。
実は、産業革命の前に農業革命が起きて、農業の生産性がすごく上がっていたんです。

どういうことかというと、イギリスで農耕用に馬を大量に飼うようになりました。馬は人と比べて生産性が高いので必要な労働者が少なくなり、労働者が新しい産業の労働者となったのです。

つまり、馬によって農業の労働生産性が上がり、農業部門で余剰になった労働力が新しい産業の生産性向上に寄与し、しかも新しい産業のプロダクトに対する需要もあり、産業革命という形でイギリスの経済成長が一挙に進みました。

粟生木

サーキュラーエコノミーで、国内資源循環やCEコマース的なビジネスが増えるだけでなく、その産業へ労働者がシフトできるか、という事がポイントになるという事でしょうか。

細田

その通りです。

■産業構造変化と雇用のシフト

細田

EUはサーキュラーエコノミー政策で大きな枠を作って、さらに現実的な政策として、EPR(拡大生産者責任)で動かしていこうとしています。そこで重要なのは、最終的にハッピーになるためには格差をなくさなきゃいけないし、雇用力を増やして、失業を減らさないといけない。そうしたときに圧倒的に重要になるのは、産業構造が変化したときの雇用シフトです。

例えば、サーキュラーエコノミーや資源循環という言葉を取り去って考えたときに、産業の構造が変化し、雇用のシフトも含めて生産性が上がり、それが賃金の上昇に繋がったという点で、戦後の高度成長はまさに典型例でした。

はじめは、朝鮮戦争などの影響もあり、繊維工業などの糸偏(いとへん)の産業や鉄鋼・鉱業・金属加工業などの金偏(かねへん)の産業が盛んになりました。
そして、高度経済成長期には、加工・組立産業も大いに栄え、重化学産業が盛んになりました。
産業構造が変化して、雇用が産業構造の変化に応じてシフトして、なおかつプロダクトが需要されたんです。
だから、経済は成長し、日本の労働生産性もどんどん上がっていきました。
ところが今は、産業の構造調整がうまくできていません。

まず、かつてのように需要が出て来ないのです。
コロナの時に還付金が10万円支給されても、消費者は使いませんでした。こういう状況では、高度経済成長の時のようにはいきません。高度経済成長の事例から、 循環経済について類推すると、大きな関門が3つあります。

  • 1つ目は、循環経済が需要を作り出せるかということ。
  • 2つ目は、産業の構造調整でうまく雇用が調整されるかということ。
  • 3つ目は、新たな産業でも労働生産性が高いかということ。

この3つのことが クリアされないと、うまく行かないんです。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

2025.03.03 法律

温暖化対策目標設定のための審議が行われました

カーボンニュートラル

環境省の「2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会」と経済産業省の「中長期地球温暖化対策検討WG」が合同で開催されています。
今回は、これまでの審議についてご紹介します。

■審議の目的

2021年、地球温暖化対策推進法(温対法)に基づいて「地球温暖化対策計画(温対計画)」が閣議決定されるとともに、同年には「日本のNDC(国が決定する貢献)」も国連に提出されています。

温対計画は温対法の定めで、少なくとも3年ごとに目標・施策を再検討する必要があり、加えて2025年2月までに次期NDCを国連へ提出する必要があります。そこで、温対計画やNDCの内容検討を含む気候変動対策について、審議されることになりました。

■NDCとは?

パリ協定においては、温室効果ガスの排出削減目標を提出・更新する義務があり、この目標が「国が決定する貢献(NDC)」になります。パリ協定に参加するすべての国は、5年ごとにNDCを更新・提出しなければなりません。

日本の現在のNDC(2021年10月提出)では2030年度に温室効果ガスを46%以上削減することなどが書かれています。

○環境省:日本のNDC(国が決定する貢献)

■これまでの審議状況

第1回では気候変動対策の現状と今後の課題についての説明がなされ、2050年ネットゼロに向けた我が国の基本的な考え方・方向性などが議論されました。

第2回、第3回では様々な団体からのヒアリングが実施されました。各団体の脱炭素に向けた取り組みが紹介されたり、温室効果ガス削減目標等に関する提言が行われていました。

○ヒアリング対象団体

第2回
  • 日本経済団体連合会
  • 日本気候リーダーズ・パートナーシップ
  • 日本商工会議所
  • 日本労働組合連合会
第3回
  • Climate Youth Japan
  • Fridays For Future Japan
  • Japan Youth Platform for Sustainability
  • 国際協力機構(JICA)
  • 能代市
  • 横浜市

第4回、第5回では関係省庁の対策、取り組みに関してヒアリングが実施されました。

○ヒアリング対象団体

第4回
  • 農林水産省
  • 環境省 フロン対策室 / 経済産業省 オゾン層保護等推進室
  • 環境省 環境再生・資源循環局(廃棄物分野の対策紹介)
第5回
  • 環境省 地球環境局 地球温暖化対策課(エネルギー需要側対策の取組)
  • 国土交通省環境政策課
  • 環境省 地球環境局 国際脱炭素移行推進・環境インフラ担当参事官室 / 経済産業省 GXグループ 地球環境対策室(排出削減に貢献する国際協力)

第6回では地域脱炭素化の取り組みや温室効果ガスの排出経路分析などについて報告されたのち、事務局から「2050年ネットゼロに向けた我が国の基本的な考え方・方向性」について説明されました。
次期NDC水準として、2035年に60%、2040年に73%以上の削減(=2050年カーボンニュートラルに向けて、直線的な排出削減経路)という案になっています。

(出典)中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討WG 合同会合(第6回)

第7回では地球温暖化対策計画の案が出されつつ、第9回までにかけて排出削減経路についての議論が続けられました。地球温暖化対策計画案に盛り込まれた削減目標も、上記同様に2035年に60%、2040年に73%以上の削減となっています。
その後、地球温暖化対策計画については2月18日に閣議決定されています。

○環境省:地球温暖化対策計画(令和7年2月18日閣議決定)

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2025.03.03 法律

「カーボンフットプリント表示ガイド」が公表されました

カーボンニュートラル

2025年2月4日、環境省から、「カーボンフットプリント表示ガイド」が出されました。このガイドでは、企業が製品・サービスのカーボンフットプリント(CFP)※を計算し、適切に表示するための基準、手順が示されています。今回は、ガイドの内容等についてご紹介します。

※カーボンフットプリント(CFP:Carbon Footprint of Product)とは、製品・サービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通した温室効果ガス排出量を、CO2排出量として換算した値のこと

■ガイドライン策定の背景

カーボンフットプリント(CFP)の算定に関する取り組みは、2023年3月に公表された「カーボンフットプリント ガイドライン」によって進められています。しかし、表示方法についての課題や、消費者のCFPに対する認知の低さ、さらに欧米では「グリーンウォッシュ」(環境改善の効果が無いのに効果があると称すること)が課題になっていました。

上記の課題を踏まえて設置された検討会を経て公表された「カーボンフットプリント表示ガイド」は、製品・サービスのライフサイクルにおける二酸化炭素排出量を計算し、表示するための基準と手順を明確にするものです。消費者が環境に配慮した購買を行えるよう支援するとともに、企業が自社製品等の環境性能を向上させるための指針となります。

■カーボンフットプリントについて

今回のガイドで対象とされるCFPは、以下の図にもある通り、製品・サービスのライフサイクル全体のGHG量が対象とされています。

(出典)カーボンフットプリント表示ガイド(概要)

■ポイント

ガイドラインの内容から、いくつか抜粋したポイントについてご紹介します。

①表示ガイドの位置づけ
このガイドは消費者のCFPに対する認知度・理解度を高め、CFPの表示を促進することを目的として出されています。ただし、CFP表示を義務付けているものではありません。

②基本的な考え方
ガイドによれば、CFPの表示に際しては、「誤解を招かないようにする」、「情報を正確に記載する」、「対象を明確にする」、「表示を更新する」ことに留意するよう書かれています。例えば「業界で最小のCFP」など、現実的に把握できない情報で表現をすることなどが禁止されています。

③背景情報の表示
CFPを表示する際には、単に結果を記載するだけでなく、以下の背景情報を合わせて掲載する必要があります。

  • 算定の単位
  • ライフサイクルステージ(ライフサイクルのどこからどこまでの範囲を算定対象としているのか)
  • 表示されたCFPの根拠となる算定報告書へのアクセス
    (算定報告書は、基本は「カーボンフットプリント ガイドライン」を参照して作成)
  • (必要な場合)説明文

④他社比較の制限
ガイドでは、他社製品との比較に制限を設けています。これはガイドラインの20ページから詳細に説明されており、公平かつ正確な情報提供を保証するための措置です。製品間の比較は、同一カテゴリー内、同等の用途や性能を持つ製品に限定され、誤解を招くような表示は避けなければなりません。

⑤表示場所
CFPの表示は製品そのものに記載するだけでなく、Web上への表示でもよいとされています。なお、③の背景情報もWeb表示でよいとされています。Webへ表示する場合、表示されている場所をQRコードで示すなどの対応が必要です。

(出典)カーボンフットプリント表示ガイド(概要)

⑥検証
ガイドでは、数値について第三者機関等での検証を求めるものではありませんが、検証した場合は、そのデータへのアクセスを可能にする必要があります。

■おわりに

「カーボンフットプリント表示ガイド」は、製品・サービスのCFPを算定し公開したい企業にとって、表示方法等を考えるために重要な資料だと考えられます。詳細については、環境省の資料をご覧ください。

○環境省:「カーボンフットプリント表示ガイド」の公表について

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2025.03.03 サーキュラーエコノミー

一般廃棄物の「灰」事情 その3 溶融スラグ(エコスラグ)の活用事例

DOWAの取組リサイクル廃棄物処理

前回は、焼却灰からの貴金属回収(溶融メタル「メルマイン®」)についてご紹介しました。今回は、溶融スラグ(エコスラグ)由来の製品である「メルエース®」の活用事例についてご紹介いたします。

■溶融スラグ(エコスラグ)について

①溶融スラグとは

溶融スラグとは、1,200℃以上の高温条件下で無機物を溶融した後に冷却してガラス質または結晶質の固化物となったものを指します。

溶融スラグは原料の種類別に、

  • 鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグと、
  • 銅などの製錬時に発生する非鉄金属スラグ、
  • 一般廃棄物や産業廃棄物を原料にしたエコスラグ

などに分類されます。

(参考)鉄鋼スラグについて:鐵鋼スラグ協会

②徐冷スラグとは

溶融スラグは冷却方法によっても、「水砕スラグ」と「徐冷スラグ」の2種類に分けることができます。(徐冷スラグには空冷スラグも含みます。)
「水砕スラグ」は、溶融物を冷却水槽に直接落下させて急冷する方法で製造されるスラグです。形状は、ガラス質(非結晶)の粒状となります。
「徐冷スラグ」は、溶融物をヤードもしくは容器に受け、空気中で放冷または適度の散水による冷却で製造されるスラグを指します。形状は、結晶質の岩石状となります。

(参考)港湾・空港等整備におけるリサイクルガイドライン 国土交通省

(参考)溶融リサイクル | DOWAエコシステム株式会社

③溶融スラグ(エコスラグ)の利用用途

2023年度に製造された廃棄物由来の溶融スラグ(エコスラグ)は、61万トン利用されています。用途内訳は、道路用骨材36%、埋戻し材・盛土材22%、コンクリート用骨材14%、地盤・土質改良材9%、最終処分場の覆土5%などです。

(出典)2023年度版 エコスラグ有効利用の現状とデータ集
一般社団法人日本産業機械工業会 エコスラグ利用普及委員会

■溶融スラグ(エコスラグ)製品「メルエース®」

①メルエース®とは

メルテック(株)(栃木県小山市)では、一般廃棄物や産業廃棄物の焼却灰及びばいじんを溶融処理し、2023年度は2.4万トンの溶融スラグ(エコスラグ)を製造しています。溶融物を大きな容器内でゆっくり冷却して製造しており、徐冷スラグに該当します。なお、この徐冷中に、比重差を用いて、溶融メタルと溶融スラグを分離させます。

冷却後に1m程度の溶融スラグ岩石を、10cm程度の大きさに破砕したものが、エコスラグ「メルエース®」です。

火成岩(マグマが冷却・固化した岩石)の(安山岩、玄武岩)に似た性質があります。

②メルエース®のポイント 強度と安全性

メルエース®は溶融炉内最高1,600℃の高温で溶融し、数日かけてゆっくりと冷却しているため、天然石(安山岩、玄武岩)と同じくらいの強度を持ちます。また、外見も天然石のような岩石状となります。

焼却灰の中に含まれることがある健康に悪影響を及ぼすダイオキシンは、高温で溶融するため完全に無害化されます。
また、カドミウムや鉛などの重金属類も溶融することでスラグ成分と重金属とを分離できるため、JIS規格の要件を満たした安全な製品として有効利用することができます。

(関連記事)生まれ変わる焼却灰(溶融スラグについて)

メルテック(株)で製造されたメルエース®は溶融メタル「メルマイン®」と同じく、栃木県リサイクル認定制度の「とちの環(わ)エコ製品」にも認定されています。
廃棄物もひと手間加えることで、金属や資材など安心して使える製品として生まれ変わることができます。
(メルエース®・メルマイン®は、商標登録製品です。)

(参考)メルテックの製品が栃木県公式チャンネルで紹介されました! – ニュースリリース | DOWAエコシステム株式会社

③メルエース®の活用事例

メルテック(株)では、2023年度において2.4万トンのメルエース®を製造し、近隣の再生砕石会社に販売し、路盤材、整地材、埋戻し材などの土木資材として、全量利用されています。

次回は、焼却灰の減量化サービスについて、ご紹介いたします。

【関連サイト】

メルテック株式会社
メルテックいわき株式会社

伊藤 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 伊藤 が担当しました