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バイオコークスの研究と未来 その3

地球温暖化抑制に向け、CO2削減の為の様々な取り組みが世界中で行われています。
今回のインタビューは、製鉄に欠かせない石炭コークスの代替として世界的に注目されているバイオマスを原料にしたバイオコークスの開発をされた近畿大学の井田准教授にお話を伺っています。

【その3】 バイオコークスの実用化の課題

バイオコークスはどんな用途に使われるのでしょうか?

用途としては基本的に石炭コークスの代替を目指しています。
具体的には、製鉄炉(高炉)や鋳造炉(キュポラ炉)、に使われている石炭コークスの代替ですね。また、廃棄物処理に使われているガス化溶融炉でも使えます。

面白いところでは、ミニSLの燃料として使われた事があります。子どもたちを乗せるミニSLにわざわざCO2を多量に排出する石炭コークスを使うことは無いだろうと思われたんだと思います。

その他、北海道下川町では、ビニールハウスのボイラーの燃料として使われていて、CO2発生ゼロの温室トマトを作っています。

実用化という点ではどうでしょうか?

実用化に向けた実証実験では、国内唯一の鋳鉄溶解炉メーカーの(株)ナニワ炉機研究所さんと行った小型キュポラ炉の実証実験では石炭コークスの40%を代替することに成功しています。

また、(株)豊田自動織機さんと共同で2008年に実際に工場で運用している20t/hの鋳造炉で実証試験を行ったのですが、少なくとも10%以上はバイオコークスで代替できることは確認しました。心配していた工程や品質への影響も無いだけでなく、バイオコークスの熱分解ガスの燃焼効果で、石炭コークスだけの時より炉内温度が上昇し溶解速度が速まったという結果も得られています。

参照:近畿大学NEWS 2008/5月

その後も、(株)豊田自動織機さんでは大阪の森林組合さんが作ったバイオコークスを通常の生産に使用して頂いていて、いろいろなデータをいただいています。
バイオコークスの強度は1,000℃くらいまでは維持できていることや、現状の炉でも20%はバイオコークスに代替することができそうだと伺っています。
他、実際に操業している方からは、他の原材料に比べて「お茶から作ったバイオコークスは鉄がよく溶ける」という感想も聞いていますので、何かお茶特有の要因があるのか調べてみたいとも思っています(笑)。

もう一つ、実証実験から実用化までいっている例では、一般ゴミを溶かす溶融炉の製造メーカのJFEエンジニアリング(株)さんと(株)ナニワ炉機研究所、日本砿研(株)さんと共同実証試験をして、スラグを1,400℃くらいで溶融できるデータが得られています。
JFEエンジニアリング(株)さんと廃棄物処理系のバイオコークスで高温ガス化溶融炉をオペレートする国際特許も出しています。

参照:近畿大学NEWS 2011/5月

実用化も間近という感じですね

日本の企業からは、良い技術であると言うことは理解して頂いているのですが、コストが合わないという点がネックになり、積極的に取り組もうという会社さんは少ないですね。

それと、原料の問題もあります。日本の自動車会社で年間30万トンの石炭コークスを使っています。その20%を代替需要でまかなおうとすると、年間6万トンのバイオコークスが必要になりますが、原料になるバイオマスが足りないのです。
バイオ廃棄物を多く排出するのは飲料メーカーで、例えば、コーヒー豆のカスが8トン/日くらい出ているところもあります。しかし、この程度の量ではビジネス化するには量が足りませんね。

また、コストで見てみますと、現在の国内の鋳物用石炭コークスの価格が5−6万円/トンくらいだったと思うので、生産の現場で使っていただくにはそれ以下の価格でないといけないのですが、国内で作った場合を試算してみると、製造原価の段階で3万~3.5万円/トンくらいかかりますから、市場に流通する時には4~5万円/トン以上になってしまうと思います。

ただし、国内製造はコストのハードルが非常に高くとても難しいのですが、海外、特にASEANの諸国ではものすごく積極的です。

海外ではどうして積極的なのですか?

東南アジアでは、パーム椰子やサゴ椰子、PFK、とか、もみ殻、稲わらなどバイオマス廃棄物が、ほぼ「ただ」で大量に手に入ります。例えば、パーム油を作る工場から出るパーム椰子の廃棄物が100トン/日くらい出てきますので、材料には困らない状況ですね。
また、人件費も安いですから、東南アジアだと試算で1万円/トンくらいで製造できます。その価格ならば、日本に輸入しても2万〜3万円くらいで供給が可能になります。

さらに、自国内の需要と供給という点でタイなどはものすごく理にかなっています。
現在、タイとマレーシアで技術供与のプロジェクトを行っているのですが、タイは工業が盛んで石炭コークスの需要があるのですが、国内では石炭が取れないので、主に中国から石炭を輸入しています。100%輸入石炭に頼っているので、高くても輸入せざるを得ません。

一方で、タイはもみ殻の廃棄物が大量に出ていますからバイオコークスが実用化されれば、石炭の半額以下で自国産のコークスが入手できますので、導入に積極的です。タイだけでなくその他のASEAN諸国でも工業が盛んな国で石炭を輸入に頼る国はバイオコークスに大変興味を持っています。

東南アジアでも、インドネシアの場合は、バイオマスはいっぱいあるのですが、自動車産業などの工業が発展していないため、あまり前向きでは無いですね。
ただ、国内にコークスの需要がなくても余剰のバイオマス廃棄物からバイオコークスを製造し、日本などへ輸出して外貨を得るということも可能だと思います。

日本にとっても、東南アジアで作られたバイオコークスが輸入できれば、価格の面でも石炭コークスの代替として利用されてくるとおもいますし、新しい炉の開発につながり、需要が増加すれば安定供給されてくるというメリットもあります。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、将来に向けて・・・今後の活動と未来についてお聞きしています。


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