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EUにおけるリサイクル制度および資源効率性(RE)政策の検討状況に関わる最近の動向について その5

公益財団法人 日本生産性本部
主任経営コンサルタント
喜多川 和典(きたがわ かずのり)様

公益財団法人 日本生産性本部

EUでは、省資源、省エネルギー経済を包括的な枠組みとして形成し、その中でEUの産業の付加価値と競争力を高める政策の検討が行われており、経済システムの大きな方向転換の波が訪れようとしています。

その取り組みは、廃棄物の削減・リサイクル・リユースなどを重点に進めてきた、日本の環境政策にも今後影響を及ぼすものと予想されます。

前回、EUの資源循環のハブとなっているソーティングセンターについて、お話を伺いました。今回は、いよいよ、「RE(資源効率)政策」についてお話いただきます。

【その5】RE(資源効率)政策について

REとは、Resource Efficiencyの略なんですね。

EUでREという名の政策に関わる最初の公文書が姿を現したのは2010年の7月でした。欧州環境閣僚非公式理事会において、従来の廃棄物政策を、廃棄物に関わる包括的な資源政策として「持続可能な材料管理」(SMM Sustainable Materials Management)政策に統合する方針が示されました。

しかし、2008年に制定された「廃棄物枠組指令」の中に「資源効率」、つまりREという言葉がすでに登場しておりました。そして、このコンセプトを具体的に動かそうとするキックオフがかかったのが、2010年7月でした。この時公表された文書には、「これまでのヨーロッパの断片的なリサイクル制度の延長線上に、真の循環型社会の構築は成し遂げられない」といったことが書かれました。つまりそれまでの政策は成功していない、むしろ、失敗しているのだというふうに断言しているのです。そして、全部それらを包括的な視点から見直さないとダメだといっています。

政策を決める人たちが、今までの政策は失敗だった、と自己否定するのですか?すごいですね。

私はこれを読んだ時に、すごいことが書いてある。こんな文書がなにか間違いで出て来てしまったのだろうと思い、公式文書であることさえ疑いました。そして、すぐにこんな話は消えるのではないかと思ったのですが、それが全く逆で、次々と新しい本格的な議論が具体的な決議を伴って進んで行き驚きました。

2010年7月の欧州環境閣僚理事会の方針決定で、EUはこの政策に関するロードマップを翌年の秋までに作り上げると書いてありましたが、その通りに進んできました。2011年1月、欧州議会でもフラッグシップイニシアチブが決議され、2011年3月には欧州委員会が新しい政策に関するパブコメをとっています。

時期 EUにおけるREに関する活動
2010年7月 欧州環境閣僚理事会(非公式)において廃棄物に関わる政策を従来の廃棄物政策を包括的な資源政策としての「持続可能な材料管理」(SMM Sustainable Materials Management)政策に統合することを方針決定
Sustainable Materials Management: Presidency’s Summary of the Informal Environment Council on Sustainable Materials Management, 12th and 13th July 2010
<二次資源の利用促進を目的とするMarket based approachのひとつとして「取引可能なリサイクル証明書」の導入が注目され、その実施可能性について欧州委員会に調査研究を要請>
2010年12月 欧州理事会 EUにおけるSMM政策の推進を議決
Council conclusions on sustainable materials management and sustainable production and consumption: key contribution to a resource-efficient Europe
<物質チェーンの断片的な政策をやめ、資源の統合化された政策にシフトし、高効率型循環型社会を目指す。また、廃棄物の終わりを定義し二次原料及びリサイクル材に関する品質基準を定め、国際的認証システムに関するより良い基準を開発することで環境面で適正な廃棄物管理を統治し、コンプライアンスを向上させる>
2011年1月 欧州議会 2020年に向けた資源効率の高い欧州に向けたフラグシップイニシアチブを決議
COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS A resource-efficient Europe – Flagship initiative under the Europe 2020 Strategy
<埋立禁止規制を通し拡大生産者責任を重視し、経済的および法的な手法との「最適な組み合わせ」を実施するよう勧告。経済インセンティブを含め新しい市場メカニズムにより二次原料市場を発展させ、それにより資源効率を改善し、資源の安定供給を強化すべき。また 二酸化炭素排出を低減させるリサイクルの可能性は考慮されねばならない。>
2011年3月 欧州委員会 RE(2020年に向けた資源効率化構築政策)に関するパブコメの収集
このパブコメ募集の質問票では特に有機廃棄物の有効利用に関する質問を設定。Market based approachを含む様々なSMMの政策手法に関してパブコメの収集を実施。2011年4月22日に締切。
2011年4月 欧州委員会 REに関するパブコメ結果情報を公表
Resource Efficiency: Public Stakeholder Consultation on Resource Efficiency:
2011年9月 資源効率性の高い欧州に向かうロードマップ
Roadmap to a Resource Efficient Europe
URL:http://ec.europa.eu/environment/resource_efficiency/pdf/com2011_571.pdf
→2020年までに、天然資源と生態系が公共事業体と民間企業によって適切に高く評価され、そして十分に考慮されなければならない。その最初のマイルストーンは改正されたEU廃棄物枠組み指令のEU全域における完全施行である。
→2013年および2014年に欧州委員会は種々の廃棄物に関する法規制の整合性が確保されるためのバランスを取る機能を設け法律の見直しを行うことを望む。これは、容器、使用済み自動車、廃電気電子機器に関する指令の規定に影響を与えるであろう。
2012年2月 資源効率の高い欧州ロードマップ、経済・財務閣僚理事会も承認
Council Conclusions: Economic aspects of the roadmap to a resource-efficient Europe
URL:http://www.consilium.europa.eu/uedocs/cms_Data/docs/pressdata/en/ecofin/128089.pdf
<欧州委員会に、資源効率ロードマップに提示された諸施策について早急に詳細な分析を行い、欧州経済に及ぼすあらゆる効果について今後の予測を示すことを求める。>
2012年5月 欧州委員会 資源効率の指標に関する協議プロセス(パブコメ収集)を実施
Consultation Paper: Options for Resource Efficiency Indicators
URL:http://ec.europa.eu/environment/consultations/pdf/consultation_resource.pdf
欧州委員会の資源効率(RE)に関する具体案を示し、ステークホルダーからのパブリックコメントを募集
REに関する指標案は、メイン指標、ダッシュボード指標、スコアボード表示の3段構造。

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正直、これらの足の速い動きには驚きました。EUではだいたいにおいて、こういう大きい政策は予定がくるうのですれど、REに関しては着々と進んできています。
さらにREの方針は、環境関連の委員会・理事会だけでなく、経済財務閣僚理事会でも反対されず承認されました。
これまでの例を見ると、環境分野の法令は、環境閣僚理事会を通過しても、経済財務閣僚理事会では長い間滞ることは珍しくありません。つまり、環境理事会とか環境の関係部門では問題なく通ってきても経済財務閣僚理事会のところでもめていろんな横やりが入って滞るケースというのが多いわけです。しかし、RE政策は経済財務閣僚理事会をすんなり進みました。

環境の部署と経済(産業)に関する部署が対立するのは、日本でもよくある話ですが、RE政策はどうしてすんなり通ったのでしょうか?

これは環境政策ではなく、欧州の資源調達と利用を効率化して欧州産業の国際競争力を高める産業政策であるとしています。さらに、2012年の5月、資源効率に関する指標についてEU初の試案が示されたわけです。そして、EUは、「これからは国や企業を比較する指標はGDPや売上ではなく、このRE指標にもとづいて相互比較するのだ」ということまで言及しています。本当に実現可能なのかちょっと解らないんですけれども、とにかくそこまで言及しています。

下の図が、REに関する指標の構造です。


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一番上のリードインジケーターというのが一番メインの指標になります。 その下にある様々な指標が統合され最終指標になるという構造でつくられています。
下位指標には、ダッシュボード・インジケータ、それからテーマ別の個別インジケーターというものがぶら下がっています。

そしてEUは、今後、加盟国相互の経済の発展度合を比較する主たる指標をGDPからこのREインジケーターに移すのだと述べています。そのようなことが本当にできるのか個人的には疑問ですが、そこまで言及しています。

GDPとREとは指標として全く違うと思いますが。。それくらいの意気込みがある、という事なのでしょうか。

このような動きを理解するには、EU内の動向だけを見ているだけでは充分ではありません。これらの政策議論のバックグラウンドはUNEPにも見ることができます。それは「UNEP資源パネル」がEUのRE政策のバックボーンのひとつとなっています。

■UNEP資源パネルの動向

UNEP資源パネルの目的

■資源パネルは、世界の資源の管理に向けた総合的アプローチを開発し、また、経済成長と資源利用と環境劣化から切り離す(デカップリング)ことに向けた科学的推進力となることを期待され2007年11月に設立された。以下の2点を目的としている。

□天然資源の持続可能な利用、特にライフサイクル全体における(資源利用による)環境影響について、政策的に関連性のある、中立的で整合性のとれた権威ある科学的評価を提供する。

□環境劣化を経済成長から切り離す(デカップリングする)方法についての理解を深めることに貢献する。

組織構成等

■専門家からなるパネルメンバー、政府や国際機関の担当者からなる運営委員会とUNEP技術産業経済局(DTIE)持続可能な消費と生産部(SCP Branch)による事務局によって構成されている。なお、資源パネルの英語名は、International Panel for Sustainable Resource Management (International Resource Panel)である。Intergovernmental Panelではないため、各政府の影響力に対し独立性が高いものと解釈できるが、実質は運営委員会の意見を反映しながら運営される。

■パネルメンバーは、5つの作業部会(デカップリング、環境影響(旧:優先付け)、土地と土壌(旧:バイオ燃料)、世界の金属フロー/サイクル、水資源効率)に参加し、資源パネルの主たる活動である評価報告書を作成している。

開催実績

第1回
国際資源パネル会合(2007年11月)ブタペスト(ハンガリー)
第2回
国際資源パネル会合(2008年5月)ローマ(イタリア)
第3回
国際資源パネル会合(2008年11月)サンタバーバラ(アメリカ)
第4回
国際資源パネル会合(2009年6月)パリ(フランス)
第5回
国際資源パネル会合(2009年11月)北京(中国)
第6回
国際資源パネル会合(2010年6月)ブリュッセル(ベルギー)
第7回
国際資源パネル会合(2010年11月)ケープタウン(南アフリカ共和国)
第8回
国際資源パネル会合(2011年5月)ヘルシンキ(フィンランド)
第9回
国際資源パネル会合(2012年5月)コペンハーゲン(デンマーク)
第10回
国際資源パネル会合(2012年11月)東京(日本)

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この資源パネルは第1回2007年の11月のブタペストから始まりまして、最近ですと2012年の東京での資源パネルが開催されています。

OECDも持続可能な資源管理(SMM)に関するワーキンググループを作って、EUと非常によく似た議論をしています。
そしてこれら政策議論の核心となる基本的なコンセプトのひとつは、「デカップリング」と呼ばれるものです。

デカップリングですか?

「カップル」というのは結婚するとか仲良くなっている二人を意味します。「デ」がついているわけですから、それを引き離すという意味です。
何を引き離すのかというと、経済の成長と資源の消費量を引き離すということです。これまでは、経済の成長と資源の消費量というものは常にカップリングされていた、仲良く一緒に進んできた、それがこれからは経済成長は続いても資源の消費量は下がる、あるいは上がらないというようにしていくのを「デカップリング」と言っています。


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なぜ「デカップリング」が必要なのかということについて、「UNEPの資源パネル」は2つの理由を上げています。

一つは人口の増加です。
地球の人口というのは、おそらく2050年には90億に達し、最終的には100億程度になるだろうと言われています。これは避けることのできない事実というのが今の認識です。今すでに数十億と言われる貧困層の人々が地球上で暮らしていますが、2050年90億に達した時、先進国の人々は今と同レベルの生活水準を維持し、途上国の人々ではそれに準じる生活水準に到達するには、現在の資源消費に依存した経済システムの延長線上ではとてもそれを実現できない、あるいは維持できないということです。

それともう一つが、資源の高騰です。
資源価格は短期的には上下しますが、今後、長期的には着実に上がっていくだろうという予測を示しています。これまでは、製品が世に現れ、それを求める市場に応じて大量生産の仕組みが開発され、生産量が増えると、素材も大量に調達できるようになり、素材の単価は下がってきた。言い換えると、大量生産は素材・材料の単価を下げる効果があり、材料価格が下がることで、大量生産が生み出す付加価値の増大が、労働者に高い人件費の支払いを可能にし、とりわけ、先進国における国民の生活を豊かにしてきたと考えることができますが、今後そうしたことは続かないだろうという見方をしています。それはつまり、材料価格が上がってくるということを背景にしています。

このデカップリングとサステナビリティについて、次回、改めてお話しましょう。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、デカップリングとサステナビリティについてお話をお伺いしています。


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