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EUにおけるリサイクル制度および資源効率性(RE)政策の検討状況に関わる最近の動向について その7

公益財団法人 日本生産性本部
主任経営コンサルタント
喜多川 和典(きたがわ かずのり)様

公益財団法人 日本生産性本部

前回は、デカップリングとサステナビリティについて、お話を伺いました。
今回は、いよいよ、リサイクル材に関する政策について、お話をお伺いします。

【その7】リサイクル材について

RE政策については、今までお伺いしましたが、どうしてEUはそんなにリサイクルを推進しようとしているのでしょうか。

これはヨーロッパで発生する廃棄物全てをリサイクルしたら、ヨーロッパ全体における素材の何%分を調達できるかを示した、欧州環境庁の資料です。

欧州環境庁は上記のデータを発表して、これら資源を以前(その4)お話したようなソーティングで回収・リサイクルすることにより、最大値に近づけていこうとしています。

環境のためにリサイクルする、というよりは、資源を確保するためにリサイクルをする、という考え方なのですか。

そうです。以前ご紹介しましたが、下の表はEUの公文書の中から、REという政策目標に関して、どのような言葉が出てきているかを示しています。

時期 EUにおけるREに関する活動
2010年7月 欧州環境閣僚理事会(非公式)において廃棄物に関わる政策を従来の廃棄物政策を包括的な資源政策としての「持続可能な材料管理」(SMM Sustainable Materials Management)政策に統合することを方針決定
Sustainable Materials Management: Presidency’s Summary of the Informal Environment Council on Sustainable Materials Management, 12th and 13th July 2010
<二次資源の利用促進を目的とするMarket based approachのひとつとして「取引可能なリサイクル証明書」の導入が注目され、その実施可能性について欧州委員会に調査研究を要請>
2010年12月 欧州理事会 EUにおけるSMM政策の推進を議決
Council conclusions on sustainable materials management and sustainable production and consumption: key contribution to a resource-efficient Europe
<物質チェーンの断片的な政策をやめ、資源の統合化された政策にシフトし、高効率型循環型社会を目指す。また、廃棄物の終わりを定義し二次原料及びリサイクル材に関する品質基準を定め、国際的認証システムに関するより良い基準を開発することで環境面で適正な廃棄物管理を統治し、コンプライアンスを向上させる>
2011年1月 欧州議会 2020年に向けた資源効率の高い欧州に向けたフラグシップイニシアチブを決議
COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS A resource-efficient Europe – Flagship initiative under the Europe 2020 Strategy
<埋立禁止規制を通し拡大生産者責任を重視し、経済的および法的な手法との「最適な組み合わせ」を実施するよう勧告。経済インセンティブを含め新しい市場メカニズムにより二次原料市場を発展させ、それにより資源効率を改善し、資源の安定供給を強化すべき。また 二酸化炭素排出を低減させるリサイクルの可能性は考慮されねばならない。>
2011年3月 欧州委員会 RE(2020年に向けた資源効率化構築政策)に関するパブコメの収集
このパブコメ募集の質問票では特に有機廃棄物の有効利用に関する質問を設定。Market based approachを含む様々なSMMの政策手法に関してパブコメの収集を実施。2011年4月22日に締切。
2011年4月 欧州委員会 REに関するパブコメ結果情報を公表
Resource Efficiency: Public Stakeholder Consultation on Resource Efficiency:

EUで狙っているのは資源産業の再構築。これは一次資源(バージン原料)が支配的な資源産業を二次資源(リサイクル材料)優先の資源産業に再構築するという事です。
例えば自動車メーカーが鋼材を調達するにあたって、鋼材がもし二次資源を使えるのであれば、必ず二次資源を優先に使いなさい、リサイクル材がバージン材よりいつも優先ですよといっているんです。

また、何パーセントまでリサイクル材を混ぜられるのかについても、触れています。例えば、スクラップ材由来の鉄を30%混ぜられるとするなら、30%混ぜた鉄を買って使いなさいと言っているわけです。資源産業における一次資源と二次資源の優先順位を逆転させようとしているんですね。

そういう話になると、そんなことほんとにできるのかな?と内心思いますが、最近、欧州の板硝子協会は、「われわれはこれからガラスの製品の製造のため、ガラスカレットをこれまで以上にたくさん買います」という発表をしました。

私は自動車のリサイクルに関係してきましたが、廃車のガラスは常に問題になります。実際、自動車の解体施設でガラス材をきちんとを分けても、買い手がほとんどつかないのが現実です。特に廃車のガラスは大変難しいんです。容器のガラスについても、容器包装リサイクル法の下でガラスのリサイクルに積極的に取り組もうとし、官民協力して肝いりで育てようとしたガラスのリサイクル業者が経営難に追い詰められたこともあります。

しかしEUでは、具体的なREの政策の中で2次資源優先という話が出てきた時に、欧州の板硝子協会がガラスカレットをこれまで以上たくさん買いたいと言い始めたのです。しかも、EU政府はガラスの埋立禁止も検討していると。果たしてそんなことができるのかと思いますが、実際に、そういうことが前に進もうとしています。今後、RE政策の下でこれまで以上にいろいろな動きが出てくることと思います。

その他同じようなことですが、二次資源の有効利用や、消費者とのコミュニケーション、リサイクル材に関するトレーサビリティーというものを確立し、製品にどれだけのリサイクル材が使われているかをきちんとデータにして可視化し、消費者に届けるようにすると言っています。

このような考えから「プロダクト・パスポート」と呼ばれる新たなツールの提案もなされています。これはトレーサビリティだけでなく使用済み後の材料利用に関するすべての可能性を伝達するツールとして位置づけらえています。

リサイクル材を使う事を政策が後押しする事で、リサイクル材の付加価値を上げているのですね。

こうした事を踏まえると、やはり日本の廃棄物制度も変革しないといけないと思います。
以前(その4)、EUのソーティングセンターについて紹介しましたが、そのソーティングセンターのマテリアルフローが以下のフローです。

以前、ドイツの草分け的なソーティング・センターの社長に話を聞く機会がありました。ドイツで機械による廃棄物の選別が始まったのはDSD(当時、日本の容器包装リサイクル協会に相当するドイツの組織)が発足した1990年代に入ってからだそうで、容器包装のリサイクルが始まった当初、ソーティング施設では、スチールとアルミくらいしか分けていなかったと言います。その後、PETとガラスを分けたらPETが良い値で売れたと。次にHDPEとLDPEを分けたらこれも売れた。さらに紙パックを分けるようになったとのことです。

その社長によれば、大量収集し選別処理すればさらにPP、PSも分けられるようになりこれらも売れた。当初2~3ヵ所だった光学選別機の数は10ヵ所以上になり、処理ラインは2,000メートルを超える規模になったということです。最近のソーティングセンターは立体的に作られかなりコンパクトにできていますが最初のものはかなり広い敷地を使っていました。

このように処理ラインは伸びても、投入量に対する処分廃棄率の割合が20%程度まで下がったということで、有価売却できるゴミが増え、ゴミの処分費が減少したので、結果、収支は良くなったということでした。
このように選別すると資源として販売できるようになり、取引先に対し安定供給を確保するため、大量のゴミ収集が必要になりました。そして、ソーティング・センターの生き残り条件は、当初言われた年間3万トンから10万トンくらいになったとその当時、そこの社長は言ってましたが、最近聞くところでは15万トンにまで来ていると。

このようなソーティングセンターが設備投資してきた目的は、環境保護ではなく、単なる利益目当てです。経済原理だけがヨーロッパのソーティングセンター開発のドライブであって、結果として容器包装廃棄物や一般廃棄物のリサイクルが推進されたという関係にあります。制度はそれを後押ししたに過ぎないのです。

RE政策はEUの政策ですが、日本にはどのような影響が考えられるでしょうか。

RE政策が進むと、リサイクル材の使用・リサイクル産業に関し、次のようなことが起こってくると考えられています。

  • より高い資源効率を追求するため、例えば、金属製錬とセメント業が共同で熱利用のシステムを構築するなど、異業種間でのREを高めるための協業などが起こり、政府機関もそれを支援する。
  • 素材メーカーは、多くのリサイクル材を利用し、環境効率の高い製品を製造するようになるため、環境を保護する企業と一般市民から見られるようになる。
  • 人口一人あたりの再生不能な素材消費量が大幅減となっても利益を生み出せる素材メーカーが生き残る。

(WBCSD Vision 2050より引用)

このようなことを含め、RE政策には、今後の社会を変革させる非常に大きなポテンシャルがあるものと思います。

この政策を通じ、ヨーロッパが見据えている現実とは、2050年に世界の人口が90億に達するという問題です。これは日本にとっても人ごとではありません。いろんな意味でこれから重くのしかかってくる可能性のある問題です。つまり、途上国の貧困問題を解決し、先進国の人々の生活を現状程度に維持するという命題がそれです。日本も2050年の世界を見据え、社会・経済のあり方に踏み込んだ議論をし、それに対するソリューションを提案していく時期に差し掛かっていると思います。

RE政策に関連し、欧州の公共調達指令やグリーン調達指令の実施において、例えば、これだけのリサイクル材を使っていなければ公共事業体、すなわち自治体とか政府機関は「製品を買いませんよ」というようなことを言い出す可能性があります。

このような動きが具体化すると、ヨーロッパの大手企業では、エコラベルがとれていないものは購入しないと言うところがありますので、日本国内で再生材の調達が困難な日本メーカーの製品が欧州市場で苦戦を強いられるということもあるかもしれません。なぜなら、ソーティング施設がほとんどない日本では、特に再生樹脂の調達がなかなかうまくできないからです。

これはあくまで仮説ですが、EUで製品を販売する際、リサイクル材を使っている製品には消費税ゼロ、けれども、一次原料(バージン原料)をつかっていれば非常に高い税がかけられるという事も、全くの絵空事では無いという状況です。
バージンとリサイクルの材料コストの差を税で変えていこうという提案はすでになされています。

バージン原料であれば高い税をかける、リサイクル材であれば税はほとんどかからないというようなことが考えられるとすれば、上図の例で示すように、50%のリサイクル材で作った車は材料コストは50万円なのに対し、リサイクル材をほとんど使わない車では材料コストに高額な税が掛かるため、70万円と高くつくというようなことが現実問題として出てくる可能性があります。

このような問題が現実味を帯びる動きとして、廃プラのリサイクルに関する欧州のスタンダードが2013年から動き始めました。次回はこの話から始めることにします。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、欧州スタンダードについてお話をお伺いしています。


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