DOWAエコジャーナル > その道の人に聞く 記事一覧 > 理化学研究所 井藤賀さん「コケ」を語る

その道の人に聞く

理化学研究所 井藤賀さん「コケ」を語る

独立行政法人理化学研究所
植物科学研究センター 生産機能研究グループ
生産制御研究チーム 研究員
井藤賀 操 様

独立行政法人理化学研究所
植物科学研究センター

DOWAでは理化学研究所と「コケ」による排水浄化について共同研究を行っています。
今回のインタビューは、この研究のカギを握る「コケ」研究の第一人者である井藤賀操博士を独立行政法人理化学研究所の植物科学研究センターにお邪魔して「コケ」についてお話をお聞きしました。

新聞記事 理研 植物科学研究センターHPより
http://labs.psc.riken.jp/brt/Japanese/nikkei.pdf

まずは、理化学研究所についてお聞かせください

正式には、独立行政法人理化学研究所といいます。
現在の理事長はノーベル化学賞を受賞された野依良治博士です。
日本で唯一の自然科学の総合研究所として1917年に創立され、科学技術に関する試験及び研究等の業務を総合的に行うことにより、科学技術の水準の向上を図ることを目的に、物理学、工学、化学、生物学、医科学などにおよぶ広い分野で研究を進めています。
また、それらの研究成果を社会に普及させるため、大学や企業との連携による共同研究、受託研究等を実施しているほか、知的財産権等の産業界への技術移転を積極的にすすめています。
「産業界への技術移転」ということで、理研の基本技術の研究成果をもとに設立した会社は多いんです。「理研ビタミン」「リコー」などは有名ですね・・。

また、独立行政法人ということでいうと、DOWAさんのホームページの第1回目インタビューが「産総研」の駒井博士でしたが、「産総研(独立行政法人産業技術総合研究所)」も独立行政法人ですね。ともに日本を代表する公的研究機関です。

私ども理化学研究所は、和光、筑波、播磨、横浜、神戸などに研究拠点があり、研究者は、約3000人所属しています。

こちらの、横浜研究所についてお聞かせください。

横浜研究所はライフサイエンス(生命科学)の総合研究拠点です。
私の所属している「植物科学研究センター」をはじめ「ゲノム医科学研究センター」「免疫・アレルギー科学総合研究センター」「オミックス基盤研究領域」「生命分子システム基盤研究領域」「新興・再興感染症研究ネットワーク推進センター」「生命情報基盤研究部門」の7つで構成されています。

また、横浜研究所は、「横浜バイオ産業センター」「横浜市立大学連携大学院」「横浜市産学共同研究センター」「リーディングベンチャープラザ」等バイオ関連の企業研究機関が集積する横浜サイエンスフロンティア地区(横浜市鶴見区末広町)に立地しています。

2010年、横浜研究所は、複数のセンターに所属する研究室の一部の活動拠点を、「横浜バイオ産業センター」に移設しました。DOWAさんとの共同研究開発拠点は、共同研究課題内容をより高度化・加速化するために、この横浜バイオ産業センター内の実験室236へ移設され、研究開発環境が立ち上げられました。

さて、ライフサイエンス(生命科学)の特徴ですが、さまざまな視点で総合的な理解をしていかなくてはなりません。そのために、生命を総合表現する空間「オミックス・スペース」で研究活動がなされています。

「オミックス・スペース」とは何ですか・・・・??

生命科学に関する研究対象には、たとえば遺伝子(ゲノム)があり、その遺伝子情報から転写されてできたもの(トランスクリプトーム)、それからできるタンパク質(プロテオーム)、代謝物質(メタボローム)、そして生物の表現形(フェノーム)とあります。おのおのは有限対象物ですから、各対象物の全体をスペースとしてとらえ、スペース全体を徹底的に調べようということに研究所は取り組む訳です。

生命はそれらスペースが巧妙な重層構造をなしたネットワークを形成しているわけですから、生命を総合的に表現するためにすべてのスペースを統合して理解しようとする対象こそが、「オミックス・スペース」でしょう。よって、各研究分野間での交流はとても大切です。

ただ、個人の研究者で統合的に研究を進めるのは、なかなか難しいのですが、横浜研究所では、全ての研究分野のデータを総合的に利用できるようになっていまして、生命科学の総合研究の基盤を担っているという訳です。

また、研究基盤という点で申し上げると、理研には、

  • 世界最高精度のSNP(単一塩基多型)解析施設:進化的に保存されている遺伝子の変異に関する解析のための施設
  • 高速DNAシーケンス(DNA解読)装置、
  • 世界最大級のNMR (nuclear magnetic resonance、核磁気共鳴)施設:タンパク質の立体構造解析の装置(NMRは外部の研究機関の方も利用することができます)

など、世界的にも最先端の研究ができる基盤が備えられています。

井藤賀さんが取り組んでいらっしゃる「植物科学」というジャンルはどういう分野なのでしょう?
たとえば遺伝子組み替え植物のようなものの研究とか・・?

「植物科学」というのは、英語では「プラントサイエンス」といいます。
研究対象は植物で、植物を科学するジャンルです。
もう少し具体的に申し上げると、植物の生長や代謝、生育環境への適応や免疫応答など植物の持つ機能を理解しようとする研究分野です。
現在、研究を自在に行えるように、全ゲノムの解読が完了している「シロイヌナズナ」という便利なモデル植物を研究の主たる対象にして、共通理解を深めていく手法をとっていますが、将来的にはモデル植物であるシロイヌナズナから作物や樹木への応用研究へつなげることで、食糧問題、物質生産の危機や環境問題に貢献することで健康に役立てようという指向の研究分野です。
最近では基礎研究から科学技術革新を実現することにむけた活動もはじまりつつあります。

基礎研究だけでなく、将来的な応用までとなると、これも広い視野が必要ですね。
今回のDOWAとの共同研究も将来的な植物機能の応用ということになると思うのですが、どのようなかたちで研究をされているのですか?

野依理事長が提案されている「バトンゾーン研究(産業界との融合的連携研究プログラム)」というプログラムがあります。バトンゾーンは、基礎研究から生まれた成果(シーズ)の蓄積を活用して企業のニーズに適合した研究開発を共同で行う場のようなものです。今回の私たちとDOWAさんとの共同開発活動の機会はまさにそのバトンゾーンでの活動というになります。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
この続きは、4月号にてお届けいたします。

※ご意見・ご感想・ご質問はこちらのリンク先からお送りください。
ご氏名やメールアドレスを公表する事はありません。

▲このページの先頭へ