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理化学研究所 井藤賀さん「コケ」を語る − その2

独立行政法人理化学研究所
植物科学研究センター 生産機能研究グループ
生産制御研究チーム 研究員
井藤賀 操 様

独立行政法人理化学研究所
植物科学研究センター

DOWAでは理化学研究所と「コケ」による排水浄化について共同研究を行っています。
この研究のカギを握る「コケ」研究の第一人者である独立行政法人理化学研究所の植物科学研究センター井藤賀操博士に「コケ」についてお話をお聞きしています。

今回は、「コケとの出会い」についてお話いただいています。

先生は、コケを愛してやまないとお聞きしておりますが、何がきっかけだったのですか?

私は(宇都宮)大学では農学部の植物栄養学研究室に在籍していました。
植物栄養学というとイネの生産性の研究等が一般的なのですが、いくつかの卒業研究テーマの中に「ホンモンジゴケの生理生態学的研究」というちょっと異色なテーマがありまして、それを選んだのが全てのきっかけでした。
農学は基本的に食料増産に貢献することが目的なので、コケの研究テーマについても、コケを用いて重金属で汚染された土地を浄化して食料増産に寄与する、というのを最終目標に掲げていました。

そのとき調査した「ホンモンジゴケ」というのは、全国各地で普通にお寺の軒下などにあるコケです。
お寺の屋根は銅葺きのものが多いですよね、だから軒下で生育しているホンモンジゴケは銅に対して強い(耐性がある)んです。ホンモンジゴケは銅を高蓄積することが解っていましたので、生体中の重金属分析する機器を使って、雨水の銅濃度とコケのなかの銅濃度を調べたりすることで、ホンモンジゴケと生育環境との関係など調べていたりしたんです。

卒業研究、修士研究を含め、ホンモンジゴケについて3年間研究しました。
大学院卒業後の就職が決まっていたんですが、「コケってなんなんだろう」という本質的な思いが強くなりまして、広島大学へドクターを取りに行ってしまいました(笑)

ハマってしまったんですね。

広島大学では「コケ植物の種分化のメカニズム」を研究テーマに、結局5年間研究してました(笑)

その後、出口博則先生(指導教官)の紹介で、新規事業としてコケによる壁面緑化の開発を進めている会社に就職させていただきました。そこである程度の成果も出たのですが、なかなか事業性の面が厳しく、開発が止まってしまい、転職を考えた時に、コケを使ったファイトレメディエーションの研究をしている先生(広島大学の先輩)を紹介していただき、その先生のお手伝いをかねて、無給でしたが修行をさせて頂きました。

無給ですか!

そうなんです(笑)。
修行ではとても為になる経験をさせていただいたのですが、「お手伝い」では食べていけないので、就職活動をするのですが、その中で理化学研究所の公募に出会ったんです。

ちょうど、文部科学省「再資源化処理のリーディングプロジェクト」の中でゴミを焼却した時に副生物として出てくる「焼却灰」の安全性を研究するセクションがあり、コケについてやらせてもらえるとの事でしたので、その公募に応募しました。
ありがたいことに、ホンモンジゴケと出会ってからは、コケの研究を一貫してやらしてもらってます。
ちょっと自己紹介が長くなってしまいましたね・・(笑)。

「再資源化処理のプロジェクト」での「焼却灰の安全性」の研究から、どのように「コケ」につながってくるのですか?

そもそも「焼却灰の安全性」のプロジェクトの主たる目的は「ゴミの減容化」と「効率的なエネルギーの取り出し」です。
当初、私は、ゴミを焼却するとどうしても出てくる焼却灰の安全性の評価とリスク低減技術の研究を担当していました。
「何が安全で何が危険か」についての基準については暗中模索の日々でした。
「何が安全で何が危険か」については、一般に環境基準などで規制されていますが、規制されている項目に挙げられている物質は、確かに規制されているのですが、背後に隠れている何らかの危険物質を知るモノサシが必要だったのです。
モノサシの一例として植物を含むさまざまな生物の半数影響データをつかった評価手法がよいのではないかという考えに至りました。
その手法は確率論的リスク解析によるものでして、そのリスク解析に多種類の生物を用いて研究していました。その中に灰そのものに耐性な生き物の代表種としてコケ植物「ヒョウタンゴケ」が含まれていた訳です。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
次号(5月)は、いよいよ本題!コケそのものについてお話しいただいています。

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