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DOWAエコジャーナル

2023.04.03 法律

「毒物及び劇物取締法」概要 その3 取り扱い(盗難・紛失防止)

毒劇法

毒物及び劇物取締法(以下、毒劇法)は昭和25年に制定された法律です。
前回は、規制と対象者についてご説明しました。
今回は、取り扱い(盗難・紛失防止)についてご説明していきます。

盗難・紛失防止については、以下のように記載されています。

毒物及び劇物取締法
第十一条 第1項
毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、毒物又は劇物が盗難にあい、又は紛失することを防ぐのに必要な措置を講じなければならない。

「毒物劇物営業者及び特定毒物研究者」以外については、第22条第5項に準用について規定されていますので、毒物劇物営業者、特定毒物研究者に限らず、業務上毒物又は劇物を取り扱うすべての方が対象となることとなります。

第二十二条
5 第十一条、第十二条第一項及び第三項、第十七条並びに第十八条の規定は、毒物劇物営業者、特定毒物研究者及び第一項に規定する者以外の者であつて厚生労働省令で定める毒物又は劇物を業務上取り扱うものについて準用する。

では、盗難にあうこと、紛失することを防ぐための措置とは、どのようなことでしょうか。

毒物及び劇物の保管管理について (通知)(昭和52年3月26日薬発第313号)

1 毒物及び劇物取締法(以下「法」という。)第十一条第一項に定める措置として次の措置が講じられること。
(1) 毒劇物を貯蔵、陳列等する場所は、その他の物を貯蔵、陳列等する場所と明確に区分された毒劇物専用のものとし、かぎをかける設備等のある堅固な施設とすること。
(2) 貯蔵、陳列等する場所については、盗難防止のため敷地境界線から十分離すか又は一般の人が容易に近づけない措置を講ずること

2 毒物劇物取扱責任者の業務については、昭和五十年七月三十一日薬発第六六八号薬務局長通知「毒物劇物取扱責任者の業務について」により示されているところであるが、さらに毒劇物授受の管理、貯蔵、陳列等されている毒劇物の在庫量の定期的点検及び毒劇物の種類等に応じての使用量の把握を行うよう指導されたいこと。

■措置のポイント

  • 毒物・劇物を保管する場所は,その他の物を保管する場所と明確に区分する
  • 保管庫は毒物・劇物専用の堅固なものする
  • 保管庫には施錠する

    (イラスト)おやすみん / (出典)毒劇物盗難等防止ガイド(厚生省(現 厚生労働省))

  • 保管場所は敷地境界線から十分に離すか、一般の人が容易に近づけないようにする

    (出典)毒劇物盗難等防止ガイド(厚生省(現 厚生労働省))

  • 定期的に保管量の点検をして使用量を把握する

    (出典)毒劇物盗難等防止ガイド(厚生省(現 厚生労働省))

■チェックリスト

チェックリストも提供されていますので、ご活用ください。

(出典)毒物劇物取扱いチェックリスト(業務上取扱者向け)(高槻市)

次回は、漏洩防止についてご説明します。

【参考サイト】

毒物・劇物 適正な取扱いについて(京都市)
毒物・劇物の取扱いは適正に!(愛知県)
毒物・劇物を取扱う全ての方へ(堺市)

上田 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 上田 が担当しました

2023.04.03 国際動向

カナダ・バンクーバーのゴミ分別・収集事情

海外ごみ事情

今回はカナダのバンクーバー市のゴミ分別・収集事情についてご紹介いたします。

バンクーバーはカナダのなかではトロント、モントリオールに次ぐ3番目に大きな都市で、太平洋側に位置しています。国内の他の地域に比べると比較的温暖な気候で、住民の約半数が公用語(英語・フランス語)以外を第一言語とする他民族都市です。

ゴミ分別について

バンクーバー市では、埋め立てや焼却処分をするCompost(生ゴミ)、Garbage(一般ゴミ)とリサイクルを行うContainers(容器類)、Paper(紙)、Grass bottles/ jars(ガラス瓶・容器)の5種類のゴミが日常的に回収されています。

Compost(生ゴミ)には廃棄食品や食べ物で汚れた紙類・木や竹製の箸類、落ち葉や草花など基本的に生物分解が可能なものが対象となります。

日常的にでるゴミのうち、生ゴミやリサイクルゴミ以外のほとんどのものはGarbage(一般ゴミ)として捨てられます。ビニール袋やおむつなどがその例です。

Containers(容器類)には、ガラス製の物を除く、すべての容器が含まれます。写真のとおり、牛乳パックなど紙製のものから空き缶、プラスチック製、アルミニウム製のものなどきれいに水で洗われた、もしくは汚れのない容器はまとめて「容器類」として分別します。ダンボールや紙袋、雑誌・新聞紙、書類などは、Paper(紙)です。ガラス製の瓶や容器は水で洗い流してからGrass bottles/ jarsとして分けます。

これらの5種類に含まれないゴミ、例えば電化製品や粗大ゴミなどは市内に点在する受取所に市民がみずから持ち込むか、民間の引き取り業者に直接連絡をしてお金を支払い、取りに来てもらうことになります。費用は大きさや種類によって異なり、数千円〜数万円になることもあります。

ゴミ収集事業者について

バンクーバー市では住んでいるのが一軒家か集合住宅かによってゴミ収集を行う事業者が異なります。

一軒家の場合、Compost(生ゴミ)とGarbage(一般ゴミ)はバンクーバー市によって回収・処分されますが、バンクーバー市は集合住宅のゴミ収集対応をほとんどしていないため、建物管理者が民間の回収業者を選んで契約しなくてはなりません。

そのため隣同士のビルでも回収業者が違うのは当たり前で、街中では様々な会社の異なる色・デザインのゴミ箱、ゴミ収集車を見かけます。一方でリサイクルゴミについては、一軒家でも集合住宅でも同じRecycle BCという非営利団体によって回収が行われており、税収によってその費用が賄われています。

ゴミ収集の頻度とゴミ箱について

一軒家の場合、Garbage(一般ゴミ)は2週間に1度の回収、Compost(生ゴミ)、Containers(容器類)、Grass bottles/ jars(ガラス瓶・容器)、Paper(紙)は毎週回収されます。回収はどの種類も同一日に行われます。

ゴミ箱は各家庭にCompost(生ゴミ)用、Garbage(一般ゴミ)用の箱が1つずつ、Containers(容器類)用、Grass bottles/ jars(ガラス瓶・容器)用のカゴが1つずつ、そして Paper(紙)用の袋が1つ提供されています。

Compost(生ゴミ)用のゴミ箱は4種類から、Garbage(一般ゴミ)用のゴミ箱は5種類からサイズが選べます。そして選んだゴミ箱のサイズによって、毎年自治体へ支払うゴミ処理代が決定され、固定資産税と一緒に請求されます。提供されているゴミ箱のサイズとそれにともなう年間の自治体への支払い金額は以下の表の通りです。

集合住宅については建物管理者と事業者の契約によって回収頻度は異なりますが、週に1回の頻度で回収を行なっているところが多いです。

ゴミ箱は契約先のサービス事業者によって提供されます。写真のとおり、ゴミ箱には会社名とその連絡先が記載されており、事業者ごとに色やデザインも異なります。一般家庭用のゴミ箱がプラスチック製である一方、集合住宅ではゴミの量も多くなるので重量に耐えられるよう、金属製のゴミ箱が使用されていることがほとんどです。

写真:※各民間業者が集合住宅に提供しているゴミ箱

ゴミ収集当日について

ゴミ収集当日は、朝7時までに自宅前の道路脇に各種ゴミ箱を写真のように設置します。

写真:※ゴミ収集当日に各種ゴミ箱を設置した様子

収集車が来るとゴミ箱の横で停止し、アームを伸ばしてゴミ箱をまるごと持ち上げ逆さにします。そのことでゴミ箱の蓋が開き、自動的に中のゴミが収集車に収まるようになっています。その姿はメカニックで壮観なため、ゴミ収集車は小さな子どもたちの間で消防車と並ぶほど人気があります。

この記事は
バンクーバー在住フリーライター 藤枝さくら が担当しました

2023.04.03 リスク管理 廃棄物管理

廃棄物をドラム缶に入れて排出する際、ドラム缶の種類は気にしなくてもよいですか?

廃棄物処理

Q:廃棄物をドラム缶に入れて中間処理業者へ搬出する場合、使用するドラム缶は何でもいいですか?

A:

廃棄物の種類に応じて適したドラム缶を使用してください。

■ドラム缶選定のポイント

  1. 材質
  2. 蓋の形状

例えば、酸性の廃棄物にはケミカルドラムを使用する必要がありますし、液体の廃棄物にはクローズドラムを使用する必要があります。

■ドラム缶の種類

ドラム缶に入れる廃棄物で使用すべきドラムは異なります。

①材質

ドラム缶で一般的なのは鉄製やステンレス製です。その他、ケミカルドラムという、ドラム缶の中が耐薬品性の樹脂製のものや、外側も含めてすべて樹脂製のものもあります。

左:鋼製ドラム / 右:ケミカルドラム

出典:製品情報(朝日容器(株)ホームページ)

②蓋の形状

「クローズドラム」は、口栓以外に開口部がなく、密閉性が高いのが特徴です。そのため、液体に用いるのに適しています。
「オープンドラム」は天板そのものが取り外せ、開口部が大きいのが特徴です。このため、固形物に用いるのに適しています。

左:クローズドラム / 右:オープンドラム

オープンドラム(ボルトで固定)

■適切なドラム缶を使わないと、どんなリスクがありますか?

中に入れる廃棄物に適したドラム缶を使用しないと、漏洩のリスクが高まります。
運搬中に漏洩すると、廃棄物が流出したり飛散したり、廃棄物がガス化して拡散する等、周辺環境に悪影響を与えてしまいます。また、道路に漏洩させた場合には漏洩させた廃棄物の回収と道路の清掃、行政・周辺住民への説明などが必要になります。

では、どうして漏洩のリスクが高まるのでしょうか?その理由は2つあります。

①ドラム缶が腐食して穴が開いてしまう

鉄は酸によって腐食します(溶けます)。ステンレスであってもは酸によって腐食します。そのため、鉄・ステンレス製ドラムに酸性の廃棄物を入れた場合、容器が腐食するリスクが高まります。

例えばドラム缶内部で腐食が進んでいるケースは多くあります。ドラム缶の内部で腐食が進行していた場合、その箇所は脆くなっていますので、運搬中に隣のドラム缶と接触した衝撃で穴が開いてしまうリスクは高まります。

酸性の廃棄物を処理委託する場合には、耐薬品性のあるケミカルドラムを使用する必要があります。

②蓋の隙間から中身が出てしまう

液体の廃棄物をオープンドラムに入れた場合、オープンドラムの蓋の隙間から漏洩するリスクが非常に高くなります。

オープンドラムは天板をバンドで蓋閉じます。

天板にはゴム製のパッキンがついているので、一見、密閉性があるように思えますが、パッキンが古くて腐食していたり、バンドを止めるボルトが緩んでいたり、運搬中に隣のドラム缶と接触する事でバンドが緩んだりするため、運搬中の揺れで隙間から中身がこぼれてしまうリスクが高いのです。

オープンドラムからの漏洩例

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2023.03.01 法律

「毒物及び劇物取締法」概要 その2 対象者ごとの規制

毒劇法

毒物及び劇物取締法(以下、毒劇法)は昭和25年に制定された法律です。
前回は、毒物及び劇物取締法の概要をご説明しました。
今回から、規制内容についてご説明していきます。

1. 対象者

毒劇法では、業態によって適用される規制や遵守事項が異なります。
対象者は以下の様に区分されています。

対象者 具体的な対象
毒物劇物の製造、輸入、販売又は授与を行う方 毒物劇物営業者
  • 化学品の製造業者
  • 輸入業者
  • 販売店
  • 小売店
製造、輸入、販売又は授与目的以外で、毒物劇物を業務上使用する方 届出を要する業務上取扱者
  • めっき業者
  • 金属熱処理業者
  • 毒物劇物を大量に運送する業者
  • しろあり防除業者
届出を要しない業務上取扱者
  • 試験研究機関
  • 学校等教育機関
  • 農家
  • 運送業者
  • その他化学品を扱う業務を行う方
特定毒物を使用される方 特定毒物研究者、特定毒物使用者
  • 試験研究機関
  • 特定の農薬を使用する農業団体の方

2. 対象者ごとの規制・遵守事項

それぞれの対象ごとの規制を表にすると、以下の様になります。

対象者登録・届出・指定譲渡手続き交付制限情報提供毒劇物取扱責任者取扱
(盗難・紛失・漏洩防止)
表示廃棄・運搬・貯蔵の技術的基準事故時の措置立入検査
毒物劇物営業者
届出を要する業務上取扱者
届出を要しない業務上取扱者
特定毒物研究者、特定毒物使用者

取扱(盗難・紛失・漏洩防止)、表示、廃棄・運搬・貯蔵の技術的基準、事故時の措置、立入検査については、毒物劇物を業務上取り扱う方すべてが対象となります。

次回は、「取り扱い(盗難・紛失)」についてのご説明します。

【参考サイト】

e-GOV
毒物及び劇物取締法

厚生労働省ホームページ
毒物および劇物取締法について
毒物及び劇物取締法の規制の概要

上田 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 上田 が担当しました

2023.03.01 国際動向

インドネシアのB3廃棄物処理事情

DOWAの取組廃棄物処理海外ごみ事情

先日お知らせしたとおり、インドネシア共和国東ジャワ州ラモンガン県にて、DOWAグループ2拠点目となる総合廃棄物処理拠点、PT. DOWA Eco System Indonesia(DESI)が操業を開始いたしました。

【NEWS】インドネシアの第2処理拠点DESIが稼働を開始しました(2023年1月31日)

現在インドネシア唯一の総合廃棄物処理拠点である、西ジャワ州ボゴール県にあるPT. PPLiに次ぐ2つめの拠点となります。ちなみに「DESI」は、デシィと読みインドネシアでは女の子の名前によく見られます(^_^)。

今回はこれを機に、これまでにも何度か触れていますが、インドネシアにおける有害廃棄物にまつわるあれこれをご紹介します。

インドネシアでは日本における産業廃棄物を、Limbah B3(B3廃棄物=有害危険産業廃棄物)と呼びます。Bahan=物質、Beracun(有毒)dan(and)Berbahaya(危険)の頭文字を取ってB3です。Limbahは廃棄物、特に産業廃棄物を指します。
余談ですが、インドネシアでは略称で呼ぶことが多く、BやKが付いた団体名などがたくさんあり、覚えるのがなかなか大変です。

インドネシアでも環境関連法令はかなり整備されつつあり、B3廃棄物関連では、排出者責任の規定や違反した場合の罰則、マニフェスト制度(現在はFestronikと呼ばれる電子マニフェスト制度が導入済み)、運搬業者や処理業者へのライセンス制度、など日本と同じような規則が存在します。

B3廃棄物については、マニフェスト制度とは別に、廃棄物の種類、特徴、総量、発生日、どの業者に処理委託したか、などの記録を作成して報告する義務があります。

とはいえ、インドネシアあるあるですが、実態は異なることが多々あります。
以下、我々の経験も踏まえて、現場の状況や日系企業が陥りがちなリスクなどに触れたいと思います。

(1)法令

前述の通り、日本と同じような、場合によっては日本より厳しいレベルの規則・規制が整備されています。とはいえ、各法令間で整合が取れていなかったり、担当者によって解釈が違っていたり、何の前触れもなく突然新しい法令が発布・施行されたり、といったことがしばしば起こります。
行政に問い合わせても明確な回答が得られない、それどころか、規則が変わっているにも関わらず、以前の規則に基づいて対応を要求してくる担当官もいます(新しい規制を理解していない、そもそも知らない)。

大事になるのは、自社の事業を行う上で必要な許認可は何か、それはどの法令に基づいているのか、いつまでに取得が必要なのか、といった点を明確にしておくことです。また、その情報を入手できるソースを確保することが重要です。
環境分野で経験のあるスタッフを自社で抱える、あるいは信頼できるコンサルと契約する、などがよいかと思います。それができないと、適当なことを言ってくる担当官や業者などの言うがまま、アタフタと対応を迫られることになってしまいます。

(2)ライセンス

B3廃棄物処理に関するライセンスは、大きく以下のとおり分類されます。

① 運搬(Transport)
② 一時保管(Collection)
③ 中間処理(Treatment) (前処理、焼却処理、水処理など)
④ リサイクル(Utilization)
⑤ 最終処分(Landfill)

一番多いのが、「ウチはB3の許可を持っています」と言ってくる業者が、上記のうち一部分しか許可を持っていないケースです。

特に①の運搬許可を持っている会社は数が多いのですが、運搬許可を持っている会社ができるのは、一時保管や中間処理など②以降のライセンスを保有する企業へ廃棄物を運搬することのみです。委託した業者が自社から廃棄物を引き取った後、適正な処理業者へ運搬しているかどうか、などを確認するのは日本同様排出者の義務として規定されています。

また、各ライセンスで取り扱える廃棄物の種類(Waste Code)が定められており、委託する業者が自社から発生する廃棄物を取り扱えるかどうか、確認する必要があります。

なお、⑤の最終処分のライセンスを保有して廃棄物を受け入れているのは、インドネシア全土でDOWAグループのPPLi、DESIの2社のみとなります。
※特例として、発電所などに、自社発生廃棄物専用の最終処分場を保有する許可が発行されることがあります。

(3)管理体制

現地法人で日本人自らが廃棄物処理に関わっている企業は、非常にまれです。
ローカルスタッフから「許可を持っている会社に委託しています」「この分野は危ないので、この業者を使うしかありません」といった説明を受け、特定の方に任せっきりになってはいないでしょうか?

前述の通り、インドネシアでは排出者責任、廃棄物を適正に処理する義務、違反した場合の罰則(罰金+責任者の投獄!)などが明確に定められています。
よほど悪質でない限り、それらが実行されるケースは多くありませんが、行政からの指示・指導には(たとえ理不尽な内容と思っても)まじめに対応する、あるいはお金を持っている(と思われている)日系企業はターゲットになりやすい、ということを自覚しなければなりません。

大事なのは、廃棄物を自社の敷地から運び出してしまえば終わり、ではなく、その後どういう業者に運ばれ、どういう処理をされているのか、(できればご自身の目で)現地確認を行うことです。日本では当たり前のことかもしれませんが、それをインドネシアの地でも同じように行えるかどうか、そこがポイントになってくるかと思います。

以上、長くなりましたが、インドネシアにおけるB3廃棄物処理の現状が、少しでも伝われば幸いです。

インドネシアにおいては、廃棄物に関するライセンスについて収集運搬から最終処分まで全て保有しているのはDOWAグループの2社のみです(PPLiは全てのライセンスを保有、DESIは現時点で運搬のライセンス保有していませんがPPLiがサポートしています)。

DOWAグループでは、お客様に安心して本業に取り組んでいただけることをサポートしていきたい、と考えています。

廃棄物だけでなく、環境関連で何かお困りのこと、ご相談等ありましたら、お気軽にご連絡ください!

PT. DOWA Eco System Indonesia(DESI) 立川 尊信(たちかわ たかのぶ)
e-mail: takanobu.tachikawa@desi.co.id  Mob/WA:+62-811-3191-901

立川 この記事は
DOWA Eco System Indonesia 立川 が担当しました

2023.02.01 法律

水濁法施行令の一部が改正されました
~指定物質へPFOS/PFOA等が追加されます~

PFAS

水質汚濁防止法(水濁法)施行令の一部が改訂され、指定物質が追加されましたので、変更内容についてご紹介いたします。

■改正内容

以下の物質が指定物質に指定されました。

  • 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)
  • アニリン
  • ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びその塩
  • ペルフルオロオクタン酸(PFOA)及びその塩

(参考)PFOSってなに?

■施行日

2023年2月1日

■指定物質とはなにか

過去においては「水質汚濁防止法」等により、規模の大きな排水設備からの有害物質の排出等の規制が進んだ結果、水質汚濁の改善に成果を挙げてきましたが、近年、河川・水路等で発見される水質事故(水質異常等)の件数が増加し、これまでの制度において事故時の措置の対象となっていない物質や施設でも、環境に影響を与えていることが明らかになってきました。

そうした水質事故時に対応措置を取るべき対象物質・施設を拡大することが必要とされたため、2010年5月に水質汚濁防止法が改正され、指定物質とそれを排出する指定事業場に対する規制制度が整備されました。

(出典)水質汚濁防止法に基づく指定物質の追加について(概要)(環境省)

指定物質については、水質汚濁防止法に基づく事故時の措置及びその対象物質について(答申)(2011年2月)において、公共用水域に多量に排出されることにより人の健康若しくは生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるものとされ、具体的にはとして排水基準(有害物質以外)、環境基準、要監視項目、水道水基準、水質管理目標設定項目、事故事例(水質事故)が確認された物質、が指定物質として選定されることになりました。

■指定物質に指定されたことによる影響

指定物質を扱う指定事業場の設置者は、事故(災害を含む)により指定物質を含む水が排出された場合には、直ちに応急の措置を講じ、事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事へ届出なければなりません。(水質汚濁防止法第14条の2第2項)

(参考)エコペディア 指定施設(水質汚濁防止法)

今回追加された物質にはPFOSが含まれていますので、例えばPFOSを含む泡消火剤を設置している事業者の方は留意が必要です。

なお、消火活動においてPFOS及びPFOAを含有する泡消火薬剤を使用したことによる排出は事故時の措置の対象とはならないとされていますが、関係省庁はPFOS非含有泡消火薬剤への交換を促進しています。

■なぜ指定物質に指定されたのか

水質汚濁防止法に基づく事故時の措置及びその対象物質について(答申)(2011年2月)において、排水基準(有害物質以外)、環境基準、要監視項目、水道水基準、水質管理目標設定項目、事故事例(水質事故)が確認された物質、が指定物質として選定されています。

今回指定物質に追加された物質は、それぞれ2013年から2020年の間に環境基準や要監視項目に追加されていたことから、中央環境審議会水環境・土壌農薬部会(2022年9月15日)において、PFOS等の4物質を指定物質として指定することが適当とされました。これを踏まえ、今回、水濁法施行令の一部が改正されたものです。

特にPFOSとPFOAは国際的にも注目されており、環境中の濃度低減が求められています。

直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS) 環境基準(生活環境項目のうち、水生生物の保全に関するもの) 2013年3月追加
アニリン 要監視項目 2013年3月追加
PFOS(及びその塩)
PFOA(及びその塩)
要監視項目 2020年5月追加
水道水質基準(水質管理目標設定項目のうち、農薬類を除く) 2020年3月追加

詳しくは環境省ホームページをご確認ください。
「水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について
水質汚濁防止法に基づく指定物質の追加について(概要)
水質汚濁防止法に基づく指定物質の追加について
PFOSを含有する消火器・泡消火薬剤等の取扱い及び処理について

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2023.02.01 サーキュラーエコノミー

LIB(リチウムイオンバッテリー)とは? その5 DOWAのLIBリサイクル

DOWAの取組LIBリサイクル

前回は、リチウムイオンバッテリーのリサイクルの制度についてご紹介しました。
今回は、リチウムイオンバッテリーのリサイクルの現状やDOWAの取組をご紹介します。

■リサイクルの現状

1. 現在の車載用リチウムイオンバッテリー処理方法について

使用済み自動車のリチウムイオンバッテリーは主に自動車再資源化協力機構が回収・処理業者を手配し、資源としてリサイクルされています。

(出典)10_参考資料7電池・モーター・CFRP(env.go.jp)

リサイクルされる際は、リチウムイオンバッテリーの感電防止対策を行った後に処理しやすい大きさに解体し、熱処理により電解液の無害化を行った後に破砕選別が行われるのが一般的です。

【参考】ブラックマス(エコペディア)

2. リサイクルする上での課題

■大型化

車載用リチウムイオンバッテリーは数百kgと大型です。また、電力系統用の電池として使われているリチウムイオンバッテリーだとさらに大型の電池もあります。
熱処理炉が大型の電池に対応していない場合には、熱処理を行う前に解体する必要があります。

■解体の難しさ

リチウムイオンバッテリーは製造メーカーごとに規格が異なるため、メーカーごとに解体の手順が異なります。また、そもそも解体を想定していない電池も存在するため、解体に手間がかかります。

■感電のリスク

リチウムイオンバッテリーはエネルギー密度(体積あたりのエネルギー量)が高いため、大型のリチウムイオンバッテリーを解体する場合には感電防止対策を行う必要があります。

バッテリーパックの蓋を開けて、中のモジュールを取り出す作業は感電のリスクが高いので、事前にリチウムイオンバッテリーに蓄えられているエネルギーを放電させるなどの感電防止対策が必要となります。放電するための方法としては、塩水につけたり、放電器を使う方法、熱処理によって電池の蓄電機能を破壊する方法等があります。

■電解液の危険性

リチウムイオンバッテリーの電解液には危険物第4類に指定されている、低引火点の有機溶媒が使われています。
この電解液は引火点が低いため、例えば、解体の際に電動工具を使用すると、電動工具の火花から引火する危険性があります。更には、消防法で定められる指定数量への対応も必要となります。

また、電解液には六フッ化リン酸リチウムなど、空気中の水分と反応してフッ酸が生じてしまう物質が含まれている場合があります。その場合には、解体時には空気と触れないよう注意が必要となります。

加えて、電解液にフッ素が含まれている場合、熱処理工程においても排ガス処理に注意しなければなりません。

■資源の回収効率

EUの電池規則案ではリチウムイオンバッテリーからの元素回収率として、2030年までにリチウム70%、ニッケル95%などの目標が定められています。このようなリサイクル制度に対応するためにも、リチウムイオンバッテリーに含まれる元素の回収効率を向上させる必要があります。

しかし、リチウムイオンバッテリーには様々な元素が含まれており、またバッテリーの種類によって含有している元素や構成比が異なります。そのため、ブラックマスからコバルトやニッケルを分離・回収するのが難しいことが課題となっています。

■DOWAの取り組み

3. DOWAのリサイクル施設の特徴

DOWAグループでは、秋田県と岡山県にリチウムイオンバッテリーのリサイクル施設を保有しています。

■大型でも解体せずに処理可能

DOWAグループのリチウムイオンバッテリーのリサイクル施設では大型のリチウムイオンバッテリーを解体せずにそのまま焼成炉へ投入して熱処理する事が可能です。
熱処理前の解体工程が不要のため、その分コストカットに寄与します。

■感電のリスクが低い処理工程

DOWAのリサイクルプロセスでは解体を経ず、有姿のままリチウムイオンバッテリーを熱処理しますので、熱処理前の解体が必要ありません。

■電解液を無害化できる

熱処理によってリチウムイオンバッテリーの蓄電機能を破壊することと、電解液に含まれる有機溶剤の無害化を同時に達成できます。

写真左:エコシステム秋田 外観

4. 高い回収率を目指す技術力

リチウムイオンバッテリーの熱処理では、ただ加熱すれば良いのではなく、熱処理後に行われる資源回収工程での回収効率を上げることができる熱処理である必要があります。

資源回収工程では、鉄、銅などを分離した後に破砕・選別を行い、鉄・銅・ブラックマス(レアメタル含有)を回収しています。
そのため、DOWAのリサイクルプロセスでは、レアメタルを含有するブラックマスからの資源回収の効率を上げるための処理条件など、より資源回収率を高めるための条件を研究し、資源の回収率を上げるためのきめ細やかな処理条件のコントロールを行いながら熱処理を行います。

【参考】100%リサイクル素材による正極材製造への可能性

ブラックマスの不純物を取り除く事で、ブラックマスを前駆体原料として使う、電池to電池の取り組みや、ブラックマスからのリチウム回収(炭酸リチウムの状態での回収)も、実証実験を実施しています。

写真:ブラックマス(左)と炭酸リチウム(右)

5. 適正処理、リサイクルのためのお願い

リチウムイオンバッテリーによって含まれる金属の割合が異なるため、同じ種類ごとに管理してリサイクルを行うことで、より効率よく資源を回収する事ができます。車載用など、大型のリチウムイオンバッテリーについては特に分別(正極活物質の種類ごとの分別)が重要となります。

【参考】LIB(リチウムイオンバッテリー)とは? その2 LIBに含まれる金属

6. さいごに

EV自動車の普及に伴って蓄電池の市場は拡大しており、自動車の廃棄に伴うリチウムイオンバッテリーの廃棄量も、今後増加していくことが予想されます。
また、リチウムイオンバッテリーに含まれるレアメタルの生産量が、今後増えていく需要を満たせるかどうかも懸念されています。そのため、リチウムイオンバッテリーのリサイクルはますます重要になると考えています。

DOWAグループの国内におけるリチウムイオンバッテリーのリサイクル施設は、既存の廃棄物の焼却設備を活用したもので、国内最大級のリチウムイオンバッテリーの処理能力を有しています。国外では、タイでも専用の焼却炉を導入し、地産地消によるリサイクルシステムを構築しています。

【参考】タイで有害廃棄物処理を開始しました
タイにおける環境・リサイクル事業を大幅に拡充

DOWAグループは、更なるリサイクル技術の向上を通じ、これからもリチウムイオンバッテリーの資源循環に貢献してまいります。

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2023.01.06 国際動向

エコ大国ドイツのごみ処理事情と、ごみ削減への取り組み ~デュッセルドルフ~

海外ごみ事情

ドイツのNRW州に位置するデュッセルドルフは、ヨーロッパの日本人在住者が多い都市として知られています。

世界の企業も多く集まる、ルール工業地帯の中心都市デュッセルドルフのごみ処理情報を、現地よりお届けします。

1)デュッセルドルフが誇る焼却技術

写真:シュタットベルケ焼却工場外観

ドイツ最大のエネルギー・公益事業会社の1つであるシュタットヴェルケ デュッセルドルフのゴミ焼却技術は、サスティナブルでかつ効率的な都市インフラの代表です。
収集された一般ごみは焼却され、その熱はエネルギーや熱源としてデュッセルドルフの施設などに送られています。

このシステムで50年以上にわたり、デュッセルドルフの市民や企業からの廃棄物を環境に優しい方法で処理してきました。

シュタットヴェルケ デュッセルドルフの公式動画
(ドイツ語解説ですが、ごみ焼却についてアニメーションでわかりやすく説明されています)

2)ドイツのごみ収集で発生する料金

デュッセルドルフではごみ収集を包括している市営の団体AWISTAに、ごみ処理の年間金額を支払います。金額は、ゴミの量(回収用ゴミ箱の大きさ)や、回収頻度、家の大きさにもよって異なりますが、一例として、4人家族で100平米、週2回回収の場合、およそ年間200ユーロほどの支払いです。

これは一般家庭では住居オーナーに支払い義務があり、賃貸住居の場合は家賃にその金額が含まれますが、設置されたトナーに入る分であれば、ごみの量に制限はありません。
各住居に設置されたごみの 回収専用ゴミ箱も住居オーナーが購入し、住人はいつでも家庭ゴミをトナーに入れることが可能です。

3)ごみの分類と回収

写真:町中の共有ガラス瓶コンテナ

【個人住居に設置される回収トナー】

  1. 一般家庭ごみ(黒色)
    調理済みの生ごみ、汚れた紙、電球、ライターなど
  2. 資源ごみ(黄色)
    プラスティック、アルミ缶、紙パックなど
  3. 古紙(青色)
    段ボール、新聞、コーティングされていない本など
  4. 生ごみコンポスト(茶色)
    調理されていない野菜・果物、植物、コーヒーの粉など

【共有コンテナ】

街中に設置されている専用の回収コンテナは、大きく分けて以下の3種類あります。これらは業者によってリサイクル処理されています。

  • 古着
  • 空きびん(白、緑、茶の色別)
  • 古紙

【リサイクリングセンター】

ゴミ処理業者が管理する回収所に直接持っていき、無料で引き取ってもらうことが可能です。

  • 有害物質を含む廃棄物
  • 廃材
  • 電子機器

写真:リサイクリングセンターのコンテナ。左から古着、家電、電球

【粗大ゴミ】

ゴミ処理業者に予約して、指定の日に住居の前に出しておくと、無料で回収されます。
数に限度はありませんが、指定外のものは上記のリサイクリングセンターに直接持ち込まなければなりません。

無料回収予約にも限度はなく、予約が取れるのが3〜4週間後になるため実際には約1か月に1回ほどの頻度で出すことが可能です。

4)飲料ボトルのデポジット制

写真:デポジットのついたボトル回収機

ドイツでは、一部を除きほとんどの飲料のペットボトル、アルミ・スチール缶、ビンに対し、購入の際にデポジットを支払う義務があります。

金額例 (2022年8月現在、1セント≒1,38円)

  • ペットボトル 15セント
  • アルミ・スチール缶 25セント
  • ビン 8セント

使用後はスーパーや購入したショップへ返却し、デポジットが返金されます。
これにより、ドイツではペットボトルなどのゴミは圧倒的に少なく、ヨーロッパでも珍しいシステムです。

5)ドイツのエコ意識について

写真:紙包装の花

エコ大国とも呼ばれるドイツでは、国民のエコ意識も高く、それは子供のころからの環境教育により自然と身についているものと言われています。
個人差はありますが、若年層でも当たり前のように、エネルギー削減やごみ削減に対する知識や関心があり、一般家庭でもビニール袋やラップ、使い捨てのものの使用に抵抗があるようです。

【販売店での様子】

写真:スーパーの各種売り場

ドイツではスーパーで売られる食材にも、できるだけプラスティック梱包が減らされているので、その一部をご紹介します。

  • 肉類
    梱包売りのものは以前までプラスティックトレイに乗せられ、さらに袋に入っていましたが、現在はトレイが省かれたものが増えています。
    量り売りの場合にもトレイは使用されません。
  • 野菜・果物
    多くの商品が梱包はされておらずそのまま売られており、中には紙包装の場合もあります。
  • 調味料・冷凍食品
    紙箱にそのまま入っているものがあります。
    塩など細かいものは陳列の時点で少し箱からこぼれていたり、一度開封すると保存に困るマイナス点もありますが、実用性よりもエコ対策のほうが顧客に満足されている傾向があると言えます。
  • ヨーグルト
    ガラス瓶に入ったものは、デポジットがついていて店舗に返却が可能です。
  • テイクアウト
    コロナ過で利用が増えたレストランのテイクアウトは、希望の場合にのみ使い捨てでない容器(タッパーなど)を使用する店も増えています。
    使用後は店に自分で返却しなければなりませんが、その手間を面倒と感じるよりも、多くの人が使い捨て容器を削減したいと個人で取り組んでいます。

写真:スーパーでの購入品

これらは一般的なスーパーやレストランの取り組みですが、近年では「Unverpackt(梱包を排除)」をコンセプトにゼロパッキングを実現したショップも都市部ではみられるようになりました。

食材はそのまま陳列され、調味料や穀物などは、リフィルスタイルで量り売りされていて、これは理想的なサスティナブルの販売形態とされ話題になっています。

6)最後に

写真:街のゴミ箱

エコ意識が高いと言われる一方、残念ながらそうでない人も多く、街中には至る所に公共のゴミ箱が設置されていますが、ごみのポイ捨てが目立ちます。
ドイツでは日本のように、自治体が行う住民の清掃活動などの行事もなく、街の清掃は業者に頼っているのが現状です。

現在、インフレの加速化とドイツはロシアからのガス供給量減少に伴う大きな問題を抱えているため、今後の環境対策などが注目されています。

この記事は
ドイツ在住、旅行・イベント関連を専門としたWEBライター ドレーゼン志穂 が担当しました

2023.01.06 サーキュラーエコノミー

100%リサイクル素材による正極材製造への可能性

DOWAの取組リサイクル

2022年11月7日に秋田大学とDOWAエコシステムによるリチウムイオン電池正極材リサイクルに関する新たなリサイクル手法についてのプレスリリースを行いました。
今回は、その「新たなリサイクル手法」についてご紹介します。

参考:DOWAと秋田大学が使用済みリチウムイオン電池からの正極材リサイクルに成功 – ニュースリリース | DOWAエコシステム株式会社

1. 背景

リチウムイオン電池の利用が増えている中で、将来の需要の増加に対応するため、リチウムイオン電池のリサイクルについて取り組みが進められています。

リチウムイオン電池には正極材に、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄など複数の元素が使われ、集電体としてアルミニウム箔や銅箔が使われています。

参考:LIB(リチウムイオンバッテリー)とは? その2 LIBに含まれる金属

リチウムイオン電池をリサイクルする過程で得られる「ブラックマス」は、製錬所で元素ごとに分離・精製されます。
ただ、元素ごとに分離・精製するためには精製コストや精製に伴うエネルギーが必要となりますし、製錬所では鉱石由来の原料と合わせて精製されるため、精製後のニッケルやコバルトなどの再生原料比率が低くなるという傾向があります。

図:LIBのサプライチェーンとリサイクル(現状)

2. 新たなリサイクル手法とは

将来の需要増が見込まれる中で持続的にリチウムイオン電池を製造するために、より効率的なリサイクル手法が求められていますが、リサイクルの過程で得られたブラックマスを元素毎に分離・精製せず、ブラックマスからリチウムイオン電池の正極材を製造するという研究は、今までなされてきませんでした。

当社はブラックマスに含まれる不純物を可能な限り取り除くことにより、ブラックマスを分離・精製せずにリチウムイオン電池の正極材の前駆体を作り、その前駆体を用いて正極材を製造することに成功しました。

このリサイクルにより得られた正極材を使用したリチウムイオン電池の性能を、秋田大学電動化システム共同研究センターと同理工学研究科の研究グループが評価した結果、リチウムイオン電池の正極材として使用でき、リチウムイオン電池の放充電を繰り返した際の安定性が市販品と同等程度の性能を有する事が確認されました。

図:LIBのサプライチェーンと効率的なリサイクル

DOWAのリサイクルプロセスでは元素毎にそれぞれ製錬・精製するプロセスが不要となるため、低炭素で経済的なリチウムイオン電池のリサイクルが可能になります。

また、リチウムイオン電池から得られたブラックマスから正極材を製造するため、使用済みの電池から新たな電池を製造する電池の水平リサイクルや、100%リサイクル素材で正極材を製造することも可能になります。さらに製品に使われるリサイクル素材比率の向上にも寄与します。

3. さいごに

DOWAグループと秋田大学は引き続き、リチウムイオン電池リサイクルについての研究開発に取り組んでいきます。今後は、不純物がどの程度リチウムイオン電池の性能に影響するかの調査や、不純物除去プロセスの開発、スケールアップをして実証試験を進めていく予定です。
合わせて、DOWAではリチウムイオン電池から炭酸リチウムを回収する実証実験も実施しています。

リチウムイオン電池の製造や研究開発には複数のサプライヤーが関わっているため、リチウムイオン電池の効率的なリサイクル体制の構築に貢献するためには、複数のサプライヤーとの協業が必要となります。リサイクル材をリチウムイオン電池へリサイクルする実用化を推進するため、リサイクル材のサプライチェーン構築の検討を進めていきます。

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この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2023.01.06 法律

「毒物及び劇物取締法」概要 その1 目的と対象

毒劇法

毒物及び劇物取締法は昭和25年に制定された法律です。
お客様からこの法律についてのお問い合わせが多いので紹介します。
今回は、目的と対象について説明します。

1. 毒物及び劇物取締法の概要

毒物及び劇物取締法(以下、毒劇法)は、急性毒性を有する化学物質を規制する法律です。なお、慢性毒性を有する化学物質を規制するのは「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)です。

毒物及び劇物取締法は、日常流通する有用な化学物質のうち、主として 急性毒性による健康被害が発生するおそれが高い物質を毒物又は劇物に指定し、 保健衛生上の見地から必要な規制を行うことを目的としています。 具体的には、毒物劇物営業者の登録制度 容器等への表示販売(譲渡)の際の手続盗難・紛失・漏洩等防止の対策運搬・廃棄時の基準等を定めており、 毒物劇物の不適切な流通や漏洩等が起きないよう規制を行っています。

(出典)毒物および劇物取締法について(厚生労働省)

2. 毒劇法の目的

(目的)

第一条
この法律は、毒物及び劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とする。

「保健衛生上の見地」とありますが、これは何を指すのでしょうか。

ここでいう保健衛生上の見地とは、
・毒物劇物の盗難、紛失の防止
・毒物劇物の漏えいの防止
を行うことにより、人体への健康被害を防止することを意味しています。

(出典)見目善弘「まるごとわかる環境法第19回毒物及び毒物取締法<前編>」、『環境管理』、2017年3月号66頁

3. 毒物・劇物の定義

(定義)第二条

この法律で「毒物」とは、別表第一に掲げる物であつて、医薬品及び医薬部外品以外のものをいう。
2 この法律で「劇物」とは、別表第二に掲げる物であつて、医薬品及び医薬部外品以外のものをいう。
3 この法律で「特定毒物」とは、毒物であつて、別表第三に掲げるものをいう。

別表第一、別表第二、別表第三は、「毒物及び劇物取締法」(e-GOV法令検索)に記載があります。

別表第一は27種類、別表第二は93種類、別表第三は9種類の化合物が規定されています。
毒物、劇物、特定毒物について」(国立医薬品食品衛生研究所)

取扱う製品が、毒劇物に該当するか確認したい時は、
毒物及び劇物取締法(毒劇法) - 毒物劇物の検索」(国立医薬品食品衛生研究所)をご覧ください。

次回は、毒物及び劇物取締の規制内容について説明します。

■参考「保健衛生」について

保健衛生という言葉が聞き慣れなかったので他の法律を調べてみました。
調べた中では、薬機法(旧薬事法)、覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法といった法律においては、目的に「保健衛生」が挙げられていました。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法(旧薬事法)
(目的)

第一条
この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。

覚醒剤取締法
(この法律の目的)

第一条
この法律は、覚醒剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚醒剤及び覚醒剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締りを行うことを目的とする。

麻薬及び向精神薬取締法
(目的)

第一条
この法律は、麻薬及び向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し等について必要な取締りを行うとともに、麻薬中毒者について必要な医療を行う等の措置を講ずること等により、麻薬及び向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉の増進を図ることを目的とする。

なお、環境分野の3つの法律の目的を一覧にすると以下のようになります。

水質汚濁防止法 国民の健康保護、生活環境の保全、被害者保護
廃棄物処理法 生活環境の保全、公衆衛生の向上
土壌汚染対策法 国民の健康保護

水質汚濁防止法、土壌汚染対策法では「健康保護」、廃棄物処理法では「公衆衛生の向上」が挙げられています。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律 昭和四十五年法律第百三十七号
(目的)

第一条
この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

水質汚濁防止法 昭和四十五年法律第百三十八号
(目的)

第一条
この法律は、工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制するとともに、生活排水対策の実施を推進すること等によつて、公共用水域及び地下水の水質の汚濁(水質以外の水の状態が悪化することを含む。以下同じ。)の防止を図り、もつて国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。

土壌汚染対策法 平成十四年法律第五十三号
(目的)

第一条
この法律は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする。

上田 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 上田 が担当しました