今回から3回に分けて、中南米エルサルバドルでのごみ事情についてご紹介します。
第1回目はエルサルバドルという国の概要とごみ処理の概要についてご紹介します。
国概要
皆さんは、エルサルバドルという国をご存じでしょうか。海外事情に詳しい方なら、「治安の悪い中米の国」というイメージを持っているかもしれません。
エルサルバドルは中米にあり、九州のおよそ半分の面積に、約603万人が暮らしています。1970年代から続いた内戦は1992年に終結しましたが、その後もギャング抗争が絶えず、「世界で最も治安が悪い国」と呼ばれることさえありました。
転機となったのは2019年。当時37歳という若さで大統領に就任し、自らを「世界で最もクールな独裁者」と称するナジブ・ブケレ氏の政権誕生です。彼は徹底したギャング撲滅政策を推し進め、4万人を収容できる巨大刑務所の建設は日本でもニュースとなりました。その結果、2015年には人口10万人あたり105人だった殺人による死者数が、2024年にはわずか1.9人まで激減。現在では、南北アメリカ大陸でカナダに次ぐ治安の良い国とされています。
劇的に治安が改善した一方で、エルサルバドルのGDPの約25%は、国外(主にアメリカ)に暮らす約250万人の移民からの送金に依存しています。こうした背景から政府は経済政策にも力を入れています。ビットコインを法定通貨に採用したり、観光促進にも力を入れています。世界でも良好なサーフィンスポットであることを活かし、「サーフシティ」としてブランド化しインフラ整備を進めるほか、旧市街、美しい火山、高品質なコーヒー豆などの豊かな観光資源を世界に発信し、より魅力的な国づくりを目指しています。
エルサルバドル人は明るくダンスが好きで、そして真面目な方々ばかりです。道端ですれ違う時は、「Buenos días!(おはよう)」「Que te vaya bien!(よい一日を!)」と挨拶します。都会であっても、知らない人同士でも関係ありません。
それでは中米のフレンドリーな国、エルサルバドルのごみ事情をご紹介します。
エルサルバドルのごみ処理の概観
エルサルバドルでは2020年に廃棄物総合管理及びリサイクル促進法(以下、廃棄物管理法、注1)が制定され、それを踏まえ2022年には廃棄物に関する国による調査報告書(注2)が公表されており、いずれもインターネットで確認することができます。廃棄物管理法の中では、循環経済のアプローチを導入する必要性が言及されており、廃棄物管理の優先順位は「発生抑制 → 再使用 → リサイクル → 資源回収(エネルギー回収) → 環境的に適正な最終処分」と定められています。さらに「拡大生産者責任(EPR)」が明記され、生産者は製品ライフサイクル全体に責任を持つことが義務付けられています。廃棄物は「一般」「有害」「特殊(E-waste、タイヤ、建設廃材など)」に大別され、さらに有機・無機や資源化の可否でも分類されます。罰則規定、市民参加制度、環境教育など多岐にわたる内容が含まれています。
廃棄物は自治体ごとに収集・処分を行い、多くは民間企業や非営利団体と連携しています。調査報告書によると、2020年時点では、国全体の一般廃棄物発生量は約 4,226トン/日と推測されており、収集量は約 3,001トン/日で、収集率の全国平均は約71%です。収集率には都市部と農村部で差があり、最も収集率が高いサンサルバドル県で約80%ですが、農村の多い県では50%程度に留まっています。収集されずに不適切に処理されたものは森林や河川、海洋を汚染していると言及されています。
第2回目は、首都サンサルバトルと農村地域のごみ事情比較をご紹介します。
- 注1:
- Ministerio de Medio Ambiente y Recursos Naturales (MARN). Decreto Nº 527.- Ley de gestión integral de residuos y fomento al reciclaje. 2020年
- 注2:
- Ministerio de Medio Ambiente y Recursos Naturales (MARN). Diagnóstico Nacional de Residuos. 2022年
この記事は
エコジャーナルサポーター 藤井 が担当しました











