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EUにおけるリサイクル制度および資源効率性(RE)政策の検討状況に関わる最近の動向について その3

公益財団法人 日本生産性本部
主任経営コンサルタント
喜多川 和典(きたがわ かずのり)様

公益財団法人 日本生産性本部

EUでは、省資源、省エネルギー経済を包括的な枠組みとして形成し、その中でEUの産業の付加価値と競争力を高める政策の検討が行われており、経済システムの大きな方向転換の波が訪れようとしています。

その取り組みは、廃棄物の削減・リサイクル・リユースなどを重点に進めてきた、日本の環境政策にも今後影響を及ぼすものと予想されます。

今回のインタビューは、改正のポイント「廃棄物の優先順位」について、お話を伺いました。

【その3】廃棄物処理の優先順位とソーティングセンターについて

前回、ヨーロッパでは、「監視が必要な廃棄物(有害な廃棄物)」と「監視が不要な廃棄物(無害な廃棄物)」とに分けられ、監視の高い方から低い方へ、自然な形で廃棄物が流れるように、仕向けられるように制度自体が設定されている。というお話をお伺いしました。
その他にも、EUでは日本と考え方が違う事がありますか?

廃棄物枠組指令が改正され、廃棄物の優先順位というものが前の廃棄物枠組指令よりも少し細かくなり、一層厳重に管理される方向で決定されました。
廃棄物の優先順位を見てみますと、予防あるいはプリベンションという言葉があります。

これを見ると、リデュースという言葉は使っていません。日本では、リデュース・リユース・リサイクルという3Rの最初にリデュースが登場するのですが、ヨーロッパではプリベンション、つまり予防という言葉を使います。

なぜリデュースという言葉を使わないのかと言うと、例えば自動車を作る場合、「自動車の材料をリデュースできれば可能な限りリデュースしたほうがいいですね」となった時、極端のことを言えば、「環境のために自動車は無い方がいいですね」ということになるかもしれません。
しかし、自動車メーカーにすればそれは企業の死を意味するわけですからそんなことはできません。

容器を例にとると「やはり容器をリデュースしましょう」といったとき、「容器は最後に必ずゴミになるのだから、なくなるくらい材料は節約しましょう」となり、お粗末な容器になったとしたらどうでしょうか。
中身がすぐに細菌に汚染される、内容物の持ちが悪いなど、容器本来の機能が不十分になり廃棄物もむしろ増えるかもしれません。

そこで改めて自動車なら自動車というもの、容器なら容器というものを考えると、それぞれが独自の製品機能をきちんと果たすというところを出発点として考えなければならない。つまり、どういう条件を満たしたものでなければならないのかをまず考えなければならないというのがヨーロッパの基本的な考え方です。

自動車なら車の機能だけでなく人の安全もキチンと確保できるものをつくらなきゃいけない。
容器なら内容物をきちんと守り、衛生面の確保も重要ですし、消費者に必要な情報を提供するという機能も必要です。
それらの製品機能がしっかり確保されたうえでのリデュースを議論しなければならないというのが予防という考え方です。
つまりこの予防という概念は「最適化」という概念にかなり近いものだと考えています。合理的と言えば合理的だと思います。

次に、再使用のための準備(プレパレーション)。これは、日本で言うリユースの事ですね。
リユースされる容器、例えば、牛乳のビンなどを思い出していただくといいんですが、牛乳ビンが汚れて戻ってきて、それを洗浄して乾燥させるという作業は廃棄物の処理プロセスということになりますので、ここでは単にリユースとだけ言わず、再使用するための準備のプロセスを特定してそれが廃棄物管理におけるオペレーションのひとつであると定義しています。こういうところも結構厳密ですね(笑)。

次にくるのが「リサイクル」ですけれども、リサイクルと言う言葉はヨーロッパでは材料リサイクルのみを指しています。

次の「その他のリカバリー」は、概ねエネルギーリカバリーとイコールです。
ヨーロッパでは、材料リサイクルとエネルギー回収は明確に一線を画しています。ここのところも日本とは違います。

そして最後は、「処分」。どうしようもないゴミだけを処分するということです。

「予防」という考え方は、日本には無いですね。
まず製品がどういう条件を満たしたものでなければならないのかを考えるんですね。

次に廃棄物管理の優先順位に関してですが、先ほどの優先順位を見た時、どう思いましたか?「リサイクルできるものをリサイクルするのはイイじゃないか、そうした方がよいのは当たり前じゃないか」と思うのではないでしょうか。
この優先順位に多くの一般市民はなにも違和感をもたず、日本でも概ねこの順位で廃棄物を管理しているものと思うかもしれません。
しかし、これを実行するのは簡単ではありません。
ここに紙屑ひとつあったとします。しかしそれが他の材料のごみのなかにある場合、それを材料リサイクルルートに導き出すというのは日本のごみ処理施設では対応できていません。

日本の大きな廃棄物処理施設(焼却施設)に入っていくゴミを見ていると、市民が資源ごみとして分別しているようなもの、例えばPETボトルや缶も少ないながら入って来ています。
驚いたのは焼却炉の出口から大きな金属の塊が出て来たことです。ようするに本来混ざっていないはずの金属容器なども焼却炉に少なからず投入されているのが現実です。

それらの廃棄物は事前に分別されていればリサイクルできたはずです。
あるいは、焼却炉の入り口にそうした分別機能があれば焼却せずにリサイクルできますが残念ながら今の日本の自治体が運営する焼却炉にはそうした機能はなくリサイクルがなされない、それが現実です。

日本ではリサイクルできるものは、分別回収していますので、一旦可燃ごみに入ってしまうとそうなりますね。

そうですね、廃棄物が家庭からごみに出されます。可燃物として出された廃棄物は日本の場合、全部焼却炉に入ってゆきます。焼却炉に投入する前で、リサイクルできるものかどうかチェックして、救い出しているかと言えば救い出していません。けれどヨーロッパで廃棄物の優先順位を適用することの意味はそういうことを許さないということなんです。

つまり全ての廃棄物のひとつひとつに対して、先ほどの優先順位を適用しないさいということを求めているのです。
それも全ての廃棄物、ひとつひとつに対してです。
それぞれの廃棄物がリサイクルできるんだったらリサイクルしなさい、エネルギーリカバリーできるんだったらエネルギーリカバリーしなさい、それら両方ともができないなら、そこで初めて焼却したり埋立したりしてもイイですよ。ひとつひとつを個別に見なさいといっているんです。

ただ漠然と、あのプライオリティがあるというのではなくて、それぞれの廃棄物に対して個別にあの優先順位が守られなきゃいけないのです。

例えばオーストリアの法律では、廃棄物をRPFなどの固形燃料にして、火力発電所や生産工場に「燃料として利用できます」と持ってこられたとしても、それは「エネルギーリカバリー」として実績をカウントしてはいけないということになっています。
なぜなら材料リサイクルできるがどうかの事前のチェックがかかっていないから優先順位の適用不十分ということで認められないのです。

チェックがかかった後のものであればエネルギーリカバリーになるのだけれど、そうでなければエネルギーリカバリーとは認められない、つまり個別の廃棄物に対して先ほどの優先順位に照らし合わせてチェックしなければいけないのです。

この廃棄物の優先順位というものはこのようにかなり厳しいもので、現実として、非常に重たいものとして機能するという状況になってきております。

全部の廃棄物を個別にチェックするというのはムリな気がしますが、可能なのですか?

そうですね、ヨーロッパでは廃棄物を個別にチェックするという事を、ソーティングセンターという施設で行っています。そして2020年までにヨーロッパ全域にソーティング処理のインフラを拡張し整えていくことがヨーロッパにおける重要な課題になってきています。

もう一つ、ヨーロッパの廃棄物制度には日本にはない概念として、「エンドオブウェイスト」があります。

End of Waste・・・廃棄物の終わりですか?

廃棄物枠組指令の中で新しく規定された概念として、廃棄物の終結状態が定義されました。鉄、アルミ、銅等に関しては既に基準が欧州委員会から発表されています。
廃棄物のひとつひとつに関して、いつまで廃棄物なのか、材料としてどこまで品質が高まれば廃棄物ではなくなるのか、つまりエンドオブウェイストになるのかを示しています。

エンドオブウェイストになった後の物品は廃棄物ではありませんので、自由な経済活動の中で製品として、原料としての取引ができます。

廃棄物の規制を離れて自由な取引のできる材へと移るための基準を具体的に示すことによってリサイクル、あるいはソーティングに関するインセンティブを与えるのと同時に廃棄物管理における品質管理のボトムアップを実現させていこうという概念を設定したことになります。

この廃棄物処理業における品質管理システムの向上は、廃棄物処理業に素材製造業と同レベルの品質管理システムを実行させることで、廃棄物処理業を従来の素材産業と肩を並べる資源産業へと成長させ統合化していく狙いがあるものと思います。

廃棄物の終わりを明確化することで、質の良いリサイクルが促進される、という事なんですね!

リサイクルができる状況をどのように生み出していくかに関しては、ソーティングセンターが重要な施設となってきます。
逆に言うと、ヨーロッパの廃棄物法は廃棄物を混合させること、希釈させること、そういうことに対し非常に厳しい規制・罰則を設けています。分けることを善とし、混合することを悪とする原則が設定されているといってもよいでしょう。

最近、ヨーロッパでの自動車リサイクルにおいて問題になったことですが、自動車の中の電子基板などに一部臭素系の難燃剤が使われています。ヨーロッパの法律はそれらを分けて処理しなければならないと規定している規則があります。

しかし今は、日本と同じように車を解体して、シュレッダーにかけ、シュレッダーの残渣であるASRを処理して、燃料等に利用していますので、ASRの中には臭素系難燃剤が含まれたプラスチックも多少混入します。
この混入が問題視されたのですが、それはなぜかと言えば、有害物をシュレッダーにおいて破砕することで希釈していると考えるからです。

それでは、臭素系難燃剤の使われたパーツを搭載した車がシュレッダーの破砕機に入る前に取り出さなければいけないのか?といったことが当然議論に取り上げられていますが、それについては欧州委員会も悩んでいます。
つまりそうなるとこれまでELV指令の枠内でやってきた自動車リサイクルのスキームが揺らぐ可能性があるからです。

2006年までに85%のリカバリーだとか2015年までに95%のリカバリーだとかいった目標値をELV指令で達成しなければならないのですが、それが他の法律からの干渉を受けることでスキームにきしみが生じるので管轄当局としても有難くないと考えているようです。

少し余計な話をしましたがヨーロッパでは、希釈をする、特に有害物質の入っているものを希釈する、混合することに対して強い罰則と禁止が働きます。
ヨーロッパでは廃車から液類・オイル類、バッテリーを取り外す自動車の解体処理を無害化というのも破砕処理のところで有害廃棄物との混合・希釈を避けることを目的とした処置という意味からです。
この無害化という処置が定義されたことで、ヨーロッパでは廃車の破砕残渣であるASRと呼ばれる最終残渣もまた無害廃棄物であるという帰結が出てくるわけです。

兎に角ヨーロッパは廃棄物は「混ぜない・分けるが」基本的な廃棄物管理の原則として位置づけられていると考えてよいでしょう。
そういう基本的な考え方にマッチした廃棄物処理がソーティング処理なのですが、それが環境保護の観点から広まったのかというと実はそうではない。そこにヨーロッパのソーティングセンターの興味深い歴史があります。

ソーティングセンターの詳しい話は、次回お話しましょう。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、ソーティングセンターについて、さらに詳しいお話をお伺いしています。


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