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EUのCE(Circular Economy)政策 その10
〜EU加盟国の具体的取組②〜

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

今回は2015年に欧州で発表され、海外で注目されている資源効率(Resource Efficiency)や循環経済(Circular economy:CE)に関する研究をされているIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳(あおき ちか)様に「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしました。

【その10】EU加盟国の具体的取組②

前回に続いて、欧州におけるCE・REにかかわる各国の具体的な取り組み事例をご紹介します。

3)オランダ

オランダは、フィンランドとともに、CEに対して非常に積極的かつ野心的な姿勢をとっていると思う国のひとつです。オランダは2016年に“A Circular Economy in the Netherlands by 2050 – Government-wide Program for a Circular Economy “を公表しました。これは、インフラ・環境省と経済省が共同で発表した行動計画です。内閣も認定した政府横断プログラムとして位置づけられています。

【参考資料】
A Circular Economy in the Netherlands by 2050

ここでは、原料に対する需要拡大、他国への天然資源依存や気候変動課題と資源課題の関連性を背景に、成長と物質使用のデカップリング(切り離し)や原材料の持続可能な採掘と自然資本保全の確保に焦点をあて、

  • 既存サプライチェーンにおける質の高い方法での原材料活用。
  • 化石ベースで重大かつ持続的に生産不可能な原料から持続的に生産可能で再生可能かつ広く利用可能な原料への代替。
  • 新たな生産方法・製品デザインの開発による新たな(経済)領域の構築。新たな消費方法の促進。

を目標として掲げています。

法規制の拡充や市場インセンティブ、融資(ファイナンス)、知識とイノベーション、国際協力に関する実施中・計画中の取組がまとめられています。

具体的な取り組みの例としては、廃棄物にかかわる各種定義の見直し、環境投資に関する還付や減価償却に対する循環経済の観点の反映、廃棄物処分税の対象を2015年1月に廃棄物焼却にまで拡張したことなどがあります。
また、優先取り組み分野として、バイオマスと食品、プラスチック、製造業、建設セクター、消費者製品があげられています。

この行動計画の他にも、いくつか、特に情報共有や市場喚起のための興味深い取り組みもみられます。昨年2016年には、Netherlands Circular Economy Hotspotという政府協力のキャンペーンが展開され、自治体(ロッテルダム・アムステルダム)や産業における事例紹介、Circular Expoなどのイベント開催を行い、オランダを対外的に循環経済のフロントランナーと位置づけるための活動がなされました。

また、インフラ環境省による循環起業家のためのマッチングプラットフォームが開設されています。加えて、環境評価庁が、「循環経済の機会」と題したWebサイトページを公開し、オランダが循環経済へ移行することによって、5万人規模の雇用や70億ユーロ規模の経済価値、一次資源輸入の25%削減、CO2排出10%削減などの効果があるとの試算や、循環経済ビジネスの事例などを公表しています。これらは、オランダの循環経済市場規模を拡大していくための取り組みと考えられます

【参考資料】
Circular Hotspot
Circulair ondernemen
Opportunities for a circular economy

4)フランス

フランスは、2015年8月に“Energy Transition for the GreenGrowth Act“が施行されました。環境・エネルギー・海洋省(旧:エコロジー・持続可能な開発・エネルギー省)が所管する法律です。その中で、循環経済(CE)に関する取り組みが重要な柱として位置づけられています。

CEに関する取り組みについては、経済成長と原材料消費のデカップリング、家庭廃棄物等削減、リサイクル促進、埋立半減などの目標を掲げ、プラスチック廃棄物、食品廃棄物、古紙、建設廃棄物、生産と廃棄物処理の近接、リサイクル材促進、デザイン改善などの分野に取り組むことが挙げられています。

【参考資料】
ENERGY TRANSITION FOR GREEN GROWTH ACT in action
Regions - Citizens - Business

目標として、

  • 革新的に経済成長と原材料の消費の関係を分離
  • 2020年までに家庭廃棄物および類似製品を10%削減
  • 非有害廃棄物のリサイクル率を2020年までに55%、2025年までに65%とする
  • 2020年までに建設廃棄物・土木工事による廃棄物の70%を回収
  • 埋立処分量を2025年までに半減

を掲げています。

具体的な動きとしては、例えば、2017年1月より車修理企業に対し顧客にリサイクル部品使用の提案を義務化、一定規模以上の小売店に対する食品ロス回避のための寄付の義務付けや小売店における使い捨てプラスチックバック・生鮮食品包装用のプラスチックバック・プラスチック製食器の使用禁止などの措置が進められています。

5)ドイツ

ドイツは、日本とともに、資源効率・循環経済に関する先駆者的な位置づけの国といえるかと思います。2016年に“German Resource Efficiency Program II – Programme for the sustainable use and conservation of natural resources(ProgRess II)“を発表しています。
ドイツ連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省が発行し、内閣が採択した行動計画です。

ドイツでは、すでに2012年に第一次資源効率プログラム(ProgRess I)が発表されており、これはその継続・改訂版となります。なお、このドイツ資源効率プログラム(ProgRess)は4年ごとに更新されることとなっています。

【参考資料】
German Resource Efficiency Programme II

主な目標として、

  • 原材料生産性(GDP/天然資源等投入量(非生物的資源))を1994年から2020年にかけて2倍にする
  • 総原材料生産性((GDP + 輸入)/(一次資源等価換算投入量(生物的資源含む)))の2000年から2010年の間の総原材料生産性の推移(トレンド)を2030年まで維持する
  • 2020年までに、一般廃棄物リサイクル率を65%に、またプラスチックリサイクル率を著しく増加させる
  • 2030年までに、リサイクル建設材使用量と質を著しく増加させる
  • 2020年までに、廃自動車から回収する電子機器の割合を可能な限り最大化
  • 廃電気電子機器収集率を継続的に増加させ、2019年までに最低でも65%を達成する
  • 有機廃棄物の分別収集量を2020年までに2010年比で50%増加させ、高度なリサイクルを推進する

こと等が掲げられています。

この計画は全体で160ページ程度のボリュームがあり、

  • 持続可能な原料供給の確保(低環境負荷型鉱物・化石資源採取、重要資源の依存提言、再生資源の原料使用拡大等)
  • 生産における資源効率の増大(資源効率的生産手法開発、企業向け資源効率指南など)
  • より資源効率的な生産と消費(持続可能な消費のための国家プログラム、資源効率的製品に関する消費者情報、製品開発への資源効率の反映、資源効率向上のためのイノベーションとサービスシステム開発、資源効率的製品に対するインセンティブなど)
  • 資源効率的な循環経済の発展(廃棄物の回避や製品責任強化、各種リサイクル改善・強化、都市鉱山など)
  • 持続可能な建設物と都市開発(資源効率的地域・建造物・インフラ開発、資源効率的観点による建造物情報表示、建造物におけるリサイクル材使用など)
  • 資源効率的な情報とコミュニケーション技術(ICT製品の資源効率の改善や、効率的ソフトウェアによる資源消費削減など)
  • 分野横断的な手法(資源効率的金融セクター・サービス、資源消費を促進する補助金削減、各種法的枠組みへの資源効率観点の統合・他の政策分野との相乗効果対立解消、研究とイノベーション、国民意識創造など)
  • 国際・EUレベルでの資源政策の強化(資源効率課題の確立、EUレベルでの支援実施、途上・新興国支援など)

に関する2016-2019年の取組計画が数多くかつ具体的に示されています。

■ドイツ環境庁(Federal Environment Agency)長官による提案(2016年11月)

2016年11月にベルリンで開催された国家資源フォーラムにおけるドイツ環境庁(UBA)による天然資源管理の使用に関する報告書”The Use of Natural Resources Repot for Germany 2016”の発表に際し、Maria Krautzberger 環境庁長官から資源効率に関する以下のような政策的提案がなされました(2016年11月11日 UBA プレスリリース)。

【提案項目】
  • 資源効率性の高い製品や修理活動に対する付加価値税率低減
  • 資源に関する義務的環境・社会基準の設定
  • 建築セクターにおけるリサイクル材の活用
  • 製品ごとのリサイクル材の含有率の設定
  • エコデザイン指令における最低限および情報要件の導入

【参考資料】
The Use of Natural Resources Report for Germany 2016
Resource-efficient products should be cheaper

この提案の背景として、上記報告書(“The Use of Natural Resource - Report for Germany 2016”)での主な結論「ドイツは、一人当たり16トン/年(44kg/日)以上の金属・セメント・木材・その他原材料を消費しており、他の国と比較しても高い消費状況である」という点や同プレスリリースでも示されていた環境庁長官のコメントにもあるような「ドイツの経済と消費が他国の環境に大きく依存し、70%の原材料が輸入され、うち80%が非再生資源であることを考慮すると、より慎重に資源を使用すべきであり、資源保全型製品はより安価で消費者に提供されるべき」というドイツの社会経済状況があげられます。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、国をまたいだ取組やEU指令の改正に関してお伺いします。


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