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その道の人に聞く

EUのCE(Circular Economy)政策 その11
〜国を横断した取組〜(最終回)

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

今回は2015年に欧州で発表され、海外で注目されている資源効率(Resource Efficiency)や循環経済(Circular economy:CE)に関する研究をされているIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳(あおき ちか)様に「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしました。

【その11】国を横断しての取組

最終回の今回は、国を横断した取り組みや、欧州委員会のCE以外の枠組みの動向をご紹介します。

1)再生資源の取引円滑化のための協定

(International Green Deal North Sea Resources Roundabout:2016年3月)

イギリス、フランス、ベルギー(フランダース)、オランダおよび各国の関連民間企業、その他スエズ・ベオリアといった静脈関連企業に加えて、各国の産業団体・廃棄物企業団体・港湾当局そして関連NGOが参加し、2016年3月に発足しました。(EC(欧州委員会)がオブザーバーとして参加しています)

EUの北海周辺は様々な国が国境を接しているので、国を跨いだ再生資源のやり取りを促進しようという事ですね。

ただ、協定といっても何かを決めたわけではありません。北海周辺の二次資源(再生資源)の越境移動について特定の再生資源の取引に関する作業部会を立ち上げ官民で検討していこうという取り組みです。

2016年時点では

  • 焼却灰からの非鉄金属
  • コンポスト
  • PVCリサイクル
  • スツルバイト(リン酸塩鉱物)

をケーススタディとしてとりあげています。今後、これらを含めて10程度のケーススタディの分析をすすめ、越境移動の障壁を分析して対応を検討していくとされています。
その他、廃棄物の終了、廃棄物貿易、REACHなどの課題も議論するとのことです。

【参考資料】
INTERNATIONAL GREEN DEAL ON THE NORTH SEA RESOURCES ROUNDABOUT

この他にはECから既に出されている指令(Direction)や決定も、CEに関連した改正の動きがあります。

2)エコラベルに関する欧州委員会決定

EUエコラベルに関して、2016年7月と8月に欧州委員会の決定が発表されました。

  • Commission decision of 10 August 2016 establishing the criteria for the award of the EU Ecolabel for personal, notebook and tablet computers
  • Commission decision of 5 August 2016 establishing the ecological criteria for the award of the EU Ecolabel for footwear
  • Commission Decision of 28 July 2016 establishing the ecological criteria for the award of the EU Ecolabel for furniture

エコラベルは、どういうものですか?

エコラベルといっても様々あり、これはEUエコラベルに関する話題です。EUエコラベルは、欧州経済領域で上市された製品のうち、環境影響が少ないと認められた製品(食品、医薬品を除く日用品)に対する認証制度です。1993年から開始されました。日本だと、エコマークがEUエコラベルに最も近いタイプのラベルといってよいかと思います。

今回は、パソコン(デスクトップパソコン、ノートパソコン、タブレット)と、靴、家具に関するEUエコラベルの認定基準が改定されました。(今後6年間有効)

パソコンと家具は、分かる気もしますが、靴もですか?

そうですね、あらゆる日用品を対象とした制度ですし、靴も、皮革やプラスチック、綿など様々な原材料を使用する製品ですね。

参照したプレスリリースによれば、パソコン類については、アップグレード可能性および解体・回収・リサイクル容易性などが新たに考慮されたとのことです。家具については、元々の耐久性や修理容易性に関する基準に加え、製造業者に対し、特に有害物質の含有に着目したライフサイクル全体の包括的影響評価の実施が、追加項目として挙げられていました。なぜか、そのリリースには靴の基準追加に関する記述はなかったのですが。
新しく発表された基準での主な循環経済関連項目には以下のようなものがあります。

【パソコン】

  • 耐久性、アップグレード可能性、修理可能性、リサイクル可能性、に関する基準
  • 再生プラスチック材の最低含有率(最低10%以上、25%以上ならラベル横に宣言可能)

【靴】

  • 使用する綿素材について、リサイクル材使用70%に基づき、要求事項(オーガニック綿含有率や総合ペスト対策管理原則に沿った綿の使用率等)の免除
  • 取扱説明書内に‘Repair your footwear rather than throw it away. This is less damaging to the environment.’と明記

【家具】

  • リサイクル材の含有(例:プラスチック部品中の再生プラスチック含有率が少なくとも30%)
  • 使用する綿素材について、リサイクル材使用70%に基づき、要求事項(オーガニック綿含有率や総合ペスト対策管理原則に沿った綿の使用率等)の免除
  • リサイクル木材・プラスチックに含まれる有害物質混入の最低基準
  • 混入の最低基準が規定された物質:砒素、水銀、カドミニウム、フッ素、クロム、塩素、銅、鉛、ベンゾピレン、ペンタクルルフェノール

3)エコデザイン指令改正にむけた動向

2016年11月には、循環経済行動計画にも示されているエコデザイン指令の改正に関連するエコデザインの作業プランが採択されました。
(COM(2016)773 final:Ecodesign Working Plan 2016‐2019)

改めて、循環経済の観点をエコデザイン指令の改正に盛り込むことが明らかにされました。循環経済に関連する点に関する要求事項の検討として、具体的に以下の事項が検討されています。

耐久性、修理可能性、アップグレード可能性、分解のためのデザイン、情報(例:プラスチック部品の場所等)開示、再使用・リサイクルの容易性

各種製品の基準の改正と並行して、特に携帯電話(スマートフォン含む)などのICT製品の循環経済関連の課題と検討する取組を始めたいという提案もなされていました。

また、これに先立ち、2015年12月に、製品への物質効率(material efficiency)のより体系的な適用を促すため、物質(資源)効率基準の検討が欧州標準化委員会に要請されました。CEN(欧州標準化委員会)及びCENELEC(欧州電気標準化委員会)において、エネルギー関連製品の物質効率、特に、製品寿命の延長、使用済み製品の再使用・リサイクル可能性、製品中の再使用部品やリサイクル材の使用に関する基準の検討が開始されています。

エコデザインは、CEを実現するための手段として、CEの中でも触れられていました。製造メーカーが関わる事なので、議論も白熱しそうですね。

確かに皆さん関心高くもっていらっしゃるという印象です。この他、メーカーの方々がよく気にされている製品環境フットプリントもこの動きに関連します。

資料には「物質効率(material efficiency)のより体系的な適用」とあり、加盟国間での差異をなくして、EU市場内での統一的な循環経済をつくりだすためのEUなりの事情といった側面もあるようです。上流と下流を確実にリンクさせ、EU市場内で二次資源を循環させたいというEUの意図が明確で、それが分野横断的な取組となっているところにCEの特徴が表れている気がします。

EU内で製造される、又は、設計される製品はエコデザイン指令を満たす必要があると思いますが、輸入製品についてはどのように適用されますか?

基本的には、EU内で上市される製品は対象になると思いますので、同様に適用されるのではないかと考えます。ただし、一定の販売数以下であれば適用外になる場合もあるようですね。

RoHS指令改正指令案(2017年1月)
“Proposal for a DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL, amending Directive 2011/65/EU on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment COM(2017) 38 final”

RoHS指令には、特定の製品に対する再使用・修理等のためのケーブルやスペア部品中の化学物質含有を適用外とする条文がありますが、このRoHS指令改正案の中で、RoHS1では対象外かつ2019年7月22日以前に上市する電気・電子製品(EEE)を新たな適用外の対象として追加することが提案されました。廃棄物の発生抑制のさらなる促進という意図かと思います。

部品に化学物質が含まれていて、RoHS指令によりその部品を使用できないので修理できない、という状況を避けよう、という事ですね。

ということかと思います。CEにおいて再使用・修理を重要視している姿勢がよく表れた対応だと思います。

【終わりに】

今回で、粟生木さんへのインタビューは最後です。今まで11回にわたってCEについてお話を伺いました。
私が、印象的だったのは、包括的に考えているという事です。環境を守りたい、資源を大切に使いたい、という気持ちだけでなく、雇用を創出しよう、資源価格が高くなっても製品製造が継続できるような仕組みにしよう、という社会的なニーズがあり、それらを俯瞰して政策を立案している、という印象を受けました。
粟生木さんが、CEについて調査・研究されている中で、感じる事を最後にお伺いできますか?

包括的。そうですね。
CEは環境政策であると同時に社会経済政策でもあります。
また、最近は、むしろ社会経済観点の方が強調されている印象があります。

これは、欧州議会サイト内の議論進捗を示すページにおいても「環境・公衆衛生・食品安全(ENVIRONMENT, PUBLIC HEALTH AND FOOD SAFETY)」というカテゴリーがあるにもかかわらずCEの取組は「雇用・成長・投資への新たな起爆剤(NEW BOOST FOR JOBS, GROWTH AND INVESTMENT)」というカテゴリーに分類されていることからも実感します。

インタビューをお受けする中で、CEは、廃棄物問題や資源輸入依存といった課題を解決するニーズ対応型の政策でありながら、低炭素化やICTやAIの進化、製造業の途上国移転等によってかわりゆく産業構造・労働市場の変化を吸収するため、資源を経済内で循環させるという手段で新市場を形成とするシーズ志向型の発展戦略でもあるということ、いわゆる持続可能な発展に関するトリプルボトムライン(環境、社会、経済)を網羅した新しい政策のあり方なのかもしれないという新たな気づきを得ることができました。
ありがとうございました。

約一年に渡り、CEについて詳しく教えて頂きまして、ありがとうございました。
CEについては日本の循環経済政策と類似するとも言われますが、EUと日本、どちらの環境政策が優れているかという事ではなく、CEが将来を見据えた政策という点で、学びは多いと思いました。



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