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IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは その2
〜IPCCの概要と報告書作成の現場「IPCCの組織」〜

IPCCインベントリータスクフォース 共同議長
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
上席研究員 / TSUシニアアドバイザー
田邉 清人(たなべ きよと)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
IPCC - Intergovernmental Panel on Climate Change

1997年に採択された京都議定書以来18年ぶりの国際的枠組みであるパリ協定をはじめ、気候変動に関わる国際条約や政策を検討する際には、IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)の評価レポートが科学的根拠として用いられます。

世界で最も信頼できると言われるIPCCのレポートはどのように作られているのか、IPCCインベントリータスクフォースの共同議長をされている田邉清人様にお話を伺いました。

今回のインタビューは環境ソリューション室 三戸が担当いたします。

【関連ページ】DOWAエコジャーナル/そうだったのか!地球温暖化とその対策(7)

【その2】IPCCの概要と報告書作成の現場

3)IPCCの組織

IPCCは4つのグループに分かれているとの事でしたが、それぞれの役割についてお教えいただけますか。

これよく講演で使う図なんですが・・いわゆる「地球温暖化問題」の全体像をザクっと示すと、こんな感じになります。

まず最初に、人間が二酸化炭素とか、メタンとかこれらのガスを大量に出し続けることよって、大気中の温暖化ガス濃度が上がる。これらのガスはもともと大気中にあるんですけど濃度が上がると、温室効果が強まって、気温が上昇し、海面が上昇し、気候に影響が出て、そのおかげで人間の社会に影響が出てくる・・・。それが地球温暖化問題の流れです。

人類は、そういう変化が好ましくないので、それを抑える努力をしなきゃいけない一方で、抑えるだけというのはもう手遅れなので、その変化になるべく適応する努力もしなきゃいけない。そのための検討に役立つ科学的なアドバイスをするのがIPCCです。

参考:IPCCの組織体系(2017年)

■第一作業部会:ワーキンググループ1

まずワーキング1、ここは、自然科学の物理的な現象についての評価を担当する所です。たとえば、このままいくと、100年後には気温がどれぐらい上昇するだろうとか、海水面はどれぐらい上昇するだろうとか、降雨、雨の降り方のパターンがどう変化するだろうとか、そういった現象の予測を担当しています。
過去も含めてまず温暖化の事実を確認して、それを基に将来を予測するというところまでがワーキンググループ1です。

■第二作業部会:ワーキンググループ2

ワーキンググループ2は、温暖化の影響が人間社会にどういう影響をもたらすかを科学的に検討します。
経済的な損失や、洪水がどういう所で起こりやすくなるだろうとか、農作物の収量がどうなるだとか、こういう伝染病がはやりやすくなるとか、感染域が広がるだとか、そういった評価をして、それに人間社会が適応していくためにはどういう方策があるかというのを検討するのがワーキンググループ2です。

■第三作業部会:ワーキンググループ3

ワーキンググループ3では、どうしたら温暖化を抑え込めるか=温室効果ガスの排出量をどうやって減らしていくべきか、どういう対策をすると、これくらい減ります・・ということを評価するのがワーキンググループ3です。

この3つのワーキンググループで温暖化全体をカバーする構造になっています。

■インベントリー タスクフォース

1988年にIPCCができたときはワーキンググループ1、2、3だけでしたが、10年後の1998年にできたのが、4つ目のインベントリーのタスクフォース:Task Force on Inventories(TFI)です。温暖化ガスの排出量を把握するための検討をするグループです。

最初は、この問題はワーキンググループ1のサブプログラムとして量的把握を検討するグループが行っていました。1997年に京都会議(COP3)で京都議定書が採択され、先進国限定ではありますが、2008年から2012年までの具体的な削減目標ができました。その目標を達成できたかどうかを判定するためには、毎年、それらの国がどれだけのガスを出しているかを、なるべく正確に計算する必要が生じました。

それを境に重要視されるようになり、ワーキンググループ1のサブプログラムから格上げの形で四つ目のグループとなりました。その時、事務局機能(テクニカル・サポート・ユニット)を引き受けたのが日本だったんです。

日本が事務局機能を引き受けた背景としては、一つは、京都会議が日本開催だったことが関係していたと思います。もう一つは、他の3つのワーキンググループの事務局機能が欧米に偏っていたという地理的な背景もあります。

当時はワーキンググループ1の事務局機能がイギリスにあって、イギリス政府がお金を全部出して、その事務局機能を面倒見ていたわけです。同様にワーキンググループ2はアメリカ、ワーキンググループ3はオランダに事務局機能がありました。そうすると、4つ目は日本だとバランスが良くなるわけです。

そういうこともあって、日本が事務局になると申し出て、それ以来20年近く日本がインベントリタスクフォースの面倒を見ています。

当時は、ということは今の議長国は違うのですか。

現在は、ワーキンググループ1の共同議長国はフランスと中国、ワーキンググループ2はドイツと南アフリカ、ワーキンググループ3はイギリスとインドです。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、「議長国が変わる理由~IPCCのしくみ~」について、お伺いします。


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