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EU新循環経済行動計画のポイント その4
~イントロダクション(後半)~

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

2016年から2017年にかけて、「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしたIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳 様に、2020年3月11日に発表されたEU新循環経済行動計画(A new Circular Economy Action Plan For a cleaner and more competitive Europe – The European Green Deal)についてお伺いします。

【その4】イントロダクション(後半)

⑤持続可能な経済システムに向けた精力的かつ不可逆的な移行は、EUの新産業戦略に不可欠
・循環経済原則の適用が、EUのGDPを2030年までに0.5%増加、70万人の雇用創出

GDP押し上げ効果を明記したのは、初めてですか?

これも難しい質問です。まずこの数値は、2018年の「Impacts of circular economy policies on the labour market」というレポートの内容が採用されたものです。EC環境局が外部機関に委託したモデル分析のようですが、こういった社会経済な観点からCEについてEUが定量的な検討をしていることがわかります。

ご質問の、初めてか否かですが、2015年の最初の循環経済行動計画が発表される1年前の2014年に一度旧循環経済行動計画「Towards a circular economy: A zero waste programme for Europe」が発表されており、そこには、GDPや雇用数に関する数値が明記されていました。エレンマッカーサー財団の報告の数値やEU内で検討されたものが採用されていました。
なお、2014年この循環行動計画はその後撤回され、2015年に採択されたものを正式の最初の循環経済行動計画としたという経緯があります。ですので、初めてといえば初めてといえます。

⑥市民にとっても、
・機能的かつ安全、効率的で安価、長寿命、再使用・修理・高質リサイクルに適した製品を提供
・製品のサービス化やデジタル化などで持続可能なサービスの新たな在り方が、よりよい生活、革新的仕事、よりよい知見と技能を提供する

気に入ったものを長く使えると、お財布にも優しい、という面と、新しいものが次々に発売されると、ワクワクして楽しいという面を、製品のサービス化やデジタル化で両立する、という感じでしょうか。最近は、服やバックをレンタルで色々送ってくれるというサービスや、子供のおもちゃもレンタルで子供の月齢にあったものを送ってくれるサービスもあります。「モノ」を所有せずに、その時その時に必要なモノを使うというサービスが、徐々に浸透しているのかなと思います。

そういったシェアリングサービス/レンタルサービスも話題にのぼることが増えてきましたね。デジタル技術の向上によって、このようなシェアリングサービスの拡大につながる可能性が増してきたということは言えると思います。

CEや資源効率性については、デカップリング(切り離し)という考え方が根底にあるのですが、資源使用(およびそれに伴う環境影響)から経済成長・人間の幸福(安寧)の切り離しという意味合いを持ちます。
こういった長寿命、再使用・修理・高質リサイクルに加えて、お話に出たシェアリングサービスなどは、まさに人間の幸福(安寧)と資源の使用の切り離しに通じるものかと思います。

なお、EUもグリーンディールや、この度の新型コロナウィルスからの緑の復興(グリーンリカバリー)においても、デジタル技術やCEを推していますが、今後の経済の主要分野という位置づけにしているのかと思います。

レンタルだと「所有」はできないけれど、保管する「場所」や管理する「手間」は不要になりますし、お勧めをピックアップしてくれる、色々試すことができる、という点では良いのでしょうね。

そうですね、そういった利便性とともに、返却した後に管理者であるサービス提供者がメンテナンスなどを通して、省エネ性の維持や製品寿命の延長といった結果になれば、さらによいと思います。加えて、最終的に使用しきった後には、同質の使用済み製品が所有者の手元に集まることになるので、そこからさらに質が高くコスト安の安定した循環が生み出されることが理想です。

⑦新循環経済行動計画は、よりクリーンでより競争力の高い欧州の達成に向けた未来志向型のアジェンダを提供する。
・経済アクター、消費者、市民、市民社会機関が協働

ここは言葉が難しいですが、未来志向型のアジェンダとは何ですか? アジェンダ=検討課題、とすると、未来志向型の検討課題を提供するって、具体的にはどういうイメージなのでしょうか?

よりクリーンでより競争力の高い欧州の達成というよりよい未来を達成するための取組テーマ・取組課題を提供する。そのよりよい未来に向けて、ないしは志向しながら、様々な主体で連携して取り組んでいこうということかと思います。これで言葉は足りているでしょうか。

アジェンダは、必ずしも検討課題という意味には限らず、議題やテーマといったニュアンスでも使われる英語なので、今のように言ってもよいかと思います。

⑧協力かつ整合的な製品政策枠組みを構築し、持続可能な製品とサービスを標準規範とし、廃棄物が発生しない消費パターンに転換する
・廃棄物削減、より機能的な効率二次原材料の域内市場の確保

持続可能な製品とサービスというのは、④に近い(同じ)のでしょうか。

そうですね、といってよいかと思います。

廃棄物の発生抑制、廃棄物となってしまったものは2次原料への転換を促進するということですか。

そうですね。資源消費の低減・循環を想定した設計やビジネスモデルなどより上流での取組に焦点を当てていると思います。

⑨EU単独ではなく、循環経済へのグローバルレベルでの道筋を主導、SDGs実施にも貢献

③とも近いですが、地球規模での改革につなげたいという意思があるという事ですよね。

そうですね、グローバル化した経済を想定するとEU単独でのCEの実施は非現実的なところもあります。域内の循環を想定してはいるものの、適正な国際資源循環を検討することも必要だと思います。加えて、欧州のCE関連企業の国際的な活躍も念頭に入っていると思います。そして、そのような地球改革での改革のリーダーシップをとりたいという意思の表れかと思います。

⑩循環経済が、人々・地域・都市、気候中立性、研究イノベーション・デジタル化にも貢献

市民にメリットがあるよ、というのを強調したものが多いですね。

そうですね。市民との連携、市民への機能的な製品の提供といった記述が良く見られますね。積極的に情報提供を消費者に行い、リサイクル材を用いた製品や、修理やアップグレードなども積極的に消費者が選択できるようになるという観点も以前の行動計画にも書かれていましたし(EUのCE(Circular Economy)政策 その2 〜行動計画の構成と内容−1〜)、本行動計画でも、のちのセクションにおいて強調されています。

リサイクル可能性や修理可能性などの製品情報が消費者により伝わることで消費者にもメリットがあるということかと思います。修理する権利という用語が後程出てきますが、そのような消費者の権利強化を目指すことや、適切な情報の提供を通じて、Green Washなどの環境に配慮した製品のようにごまかすことの防止も含まれます。

加えて、消費者が積極的にCEを認め・受け入れ、循環性の高い製品をより選択するようになることにより、企業によるCEへの取組意欲が喚起され、CE型製品のイノベーションやデジタル技術等がさらに促進されることも想像できます。そういった消費の在り方を変えるという点からも、CE政策において市民の存在は欠かせないものと考えます。

少し長期的にみると、消費者が積極的に情報を得られるようになると、例えば、新機能・新製品の開発や計画的陳腐化などを通じた、生産者主導による短いスパンでの買い替え需要の促進が難しくなるなど、ビジネスの在り方が変わってくるかもしれません。

⑪安寧(well-being)を測定するモニタリングの枠組みの開発も目指す

安寧は、なんて読むのですか?
ブータンのGNHみたいな感じでしょうか?

「あんねい」です。Well-beingの訳が難しく、これまでも、幸福、福祉、福利といろんな用語を使っていたのですが、いくつか調べていたところ、「安寧」という訳もあり(例えば、小学館 プログレッシブ英和中辞典)、今回はそれを使用しました。なお、Well-beingですが、Cambridge dictionaryの英英辞典では、the state of feeling healthy and happyとなっています。健康かつ幸福感をもった状態ということです。

ブータンのGNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)は、一般的に発展の程度を表現するGDPにかわり、ブータンが採用している国民の幸福度を示す指標・尺度です。ですので、同じとは言えませんが、要は、Well-beingが幸福という意味合いも持つということかと思います。

今回の持続可能な製品政策枠組みで提示されている姿は、大量生産大量消費ということには当然ながらなりません。したがって、CEから得られる便益が、金額的、言い換えるとGDPの伸びには直接的には反映されにくい可能性があります。
一方で、さきほどのデカップリングの話にも通じますが、市民のWell-beingが結果的に向上する社会に移行することが究極的には重要なので、Well-beingの測定も検討したいということなのでしょう。本文にもBeyond GDP=GDPを超えてWell-beingの測定に貢献するよいモニタリング枠組みとあります。ただし、主な取組一覧にはモニタリング枠組みのさらなる開発は挙げられていますが、Well-beingそのものの測定はあげられていません。


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