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EU新循環経済行動計画のポイント その17
廃棄物削減と価値創造 ~EUからの廃棄物輸出対策~

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

2016年から2017年にかけて、「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしたIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳 様に、2020年3月11日に発表されたEU新循環経済行動計画(Circular economy action plan(europa.eu))についてお伺いします。

【その17】EUからの廃棄物輸出対策

前回は4.3 2次原材料のための機能的なEU市場創出についてお伺いしましたので、今回は、4.4 EUからの廃棄物輸出対策についてお伺いします。
今回は、廃棄物の輸出対策。廃棄物の輸出と言えば2018年の中国の禁輸政策によって、日本にも影響がありました。

背景

  • 過去10年に、数百万トンの廃棄物がEU外へ輸出され、輸出先で環境・健康への悪影響を生じ、EUでのリサイクルの機会を喪失
  • 海外の廃棄物輸入規制で、EUの輸出依存が露呈したが、EUにおけるリサイクル能力と廃棄物価値増加のためにリサイクル産業を動員

背景に書かれている事は、中国に端を発した廃プラ・紙・mixメタルの輸入規制が主要因でしょうか。

はい、そうですね。前のプラスチック戦略には、実際に中国の禁輸について言及されていました。プラスチック戦略の検討のタイミングと中国の禁輸発表の時期が合致したため、よりプラスチック戦略への流れが強化されたようにも感じていました。

輸出先での、環境・健康へ悪影響を生じさせていた、と反省するのは、潔いと感じました。

そうですね。これに限らず、EUの政策文書はメッセージが明確でわかりやすいという特徴があると思います。

海外へ輸出されていたことを、EUでのリサイクルの機会を喪失、輸出できなくなったことが「EUにおけるリサイクル能力と廃棄物付加価値増加のためにリサイクル産業を動員」と言ってしまうのが、ポジティブというか、転んでもただで起きないというか、こういう人が偉くなるんだろうな、と思いました(笑)

そうですね。英語では、they have also mobilised the recycling industry to increase its capacity and add value to waste in the EUとあって、前後の文脈からtheyは最近の輸入規制の事を指すのですが、より直訳的にすると「最近の輸入規制が、EUの廃棄物に付加価値を与え、リサイクル産業能力を増加するためにリサイクル産業を結集/動員させることになった」という感じになります。いずれにせよ、機会をとらえた前向きな表現です。

ちなみに、中国の禁輸を受けて、欧州からの輸出の受け皿となっていた国がトルコといわれています。そのトルコも、ポリエチレン廃棄物の輸入を禁止したのですが、あまり間をおかず、それを撤回して、管理を強化することにしたと新聞や雑誌に掲載されていました。

AP NEWS
Turkey bans polyethylene plastic imports
Plastics Recycling Update
Turkey reverses ban on scrap plastic imports

このように実際の状況としては、廃棄物輸送規則の改定にも関わってくるのかもしれませんが、域内での循環を増やしつつも完全に域内だけで循環を閉じることもないのかもしれません。

日本で「リサイクル材の輸出」について語られる時は、
「日本でリサイクルをするとコストが増加する」、「日本ではリサイクル困難なものが、他国においてリサイクル可能な場合がある」という論点はありますが、日本のリサイクル産業をどう伸ばすかについて語られることは少ないとように思いますが、いかがですか?

先の質問とも関連しますが、日本自身もこれをきっかけとして資源の消費、循環にまつわる社会システムを見直す好機にすべきだと考えています。

リサイクル産業を強化するということと同時に、利便性を維持しつつ、資源消費量を減少させるということ、必要な分は消費し、消費したものは、循環がコスト的・技術的・消費者行動的にも容易になる社会システムを作ることも念頭に置かなければと思います。

資源消費量を減少させるために、どういう社会である必要があるか、という事でしょうか?

この観点、特に再生資源の観点で言えば、「質が高くかつ量も安定して、コストが安い循環の実現」には、「量と質および価格の見通し」が、製造業と循環産業の間で共有できることが重要ではないかと考えます。
つまり、今の制度や普及している製品を前提とし、今現在(もしくは将来)の技術で、どの程度の質で、どのくらいの量の再生資源を生産できるのか、何がどの程度変わると、質・コスト・量の点においてどう変わるのか、製造業が再生資源を原材料として採用可能かどうか等を明らかにすることです。

これには、製造業とリサイクル業との対話が重要になってくると考えます。また、EUの再生プラスチックの質の基準の議論にもありましたが、量・質・コストを安定させ、循環資源を取り巻く産業の生産性を向上させるためには、製品や各種ルールなどの共通化標準化といった議論も必要になってくるかもしれません。

製品デザイン、循環技術・循環産業、市民・消費者の理解・行動促進と、それらを支える社会制度の整備、それぞれを丁寧に組み合わせて、日本社会全体で可能な限り全体最適になるような社会システム設計を行うことが必要になります。

なお、当然大量生産大量リサイクルではなく、不要な資源の消費をそもそも削減するビジネスモデルや製品が必要です。資源は必要な分だけ消費し、廃棄物量が最小化した上で、上記のシステムが構築されることが理想です。

例えば、先にも話題となっているプラスチックですが、現在様々な容器包装の見直しが進められているところかと思います。

以前、脱プラを意識して、ペットボトルからアルミ付き紙容器に変更したという事例を見たことがあります。アルミコーティングが施された紙パック(アルミ付き紙容器)、それ自体は食品の品質保持等に重要な役割を果たしており、食品ロスの観点からも非常に重要です。

しかし、リサイクルの面から考えると、多くの自治体では、アルミ付き紙容器は紙リサイクルにはならず可燃ごみとされていることがほとんどです。

実は、アルミ付き紙容器のリサイクルの技術やリサイクル施設は存在して、リサイクル自体は可能ではあるのですが、リサイクルをするためには、一部地域の一部スーパー等などに排出する必要があるなど、日本社会全体で利用しやすい(ないしは広く普及している)リサイクルシステムとは必ずしも言えない状況にあります。一方で、ペットボトルの分別排出のアクセスは高く、実際に非常に高いリサイクル率といえます。

テトラパックリサイクル便
アルミ付き紙容器のリサイクルについて | 富山県生活協同組合

この事例からは、各主体の努力にもかかわらず、全体の最適化という面では、いくつか難しいと思われる点があることをご理解いただけると思います。よりよいCEへの移行にむけて、製品製造、リサイクル制度、消費者行動、循環技術産業、それぞれの役割を統合的に考えていかなければならないと思います。大変複雑なのですが、一つ一つ現状と将来像を整理して、どのような移行をするかというロードマップが求められているように思います。

・・・長くなりました。

先の例に当てはめて考えると、ペットボトルがいいのか、アルミ付き紙容器がいいのかを検討する時には、複数のポイントがある。

  • リサイクル容易性(技術的に可能か)
  • リサイクル実施可能性(リサイクル会社に持ち込めるか)
  • 市町村の判断
  • アルミ付き紙容器が焼却されるとした場合、ペットボトルの資源循環を取るか、脱プラでアルミ付き紙容器にするか

というような事でしょうか。技術的に可能か、だけではなく、運べる範囲内に設備があるか、所管行政はどう考えているか、分別回収できるか、優先する価値観は誰が決めるのかなど、複数の要因が関係してくるのですね。

方針と施策

  • EUから廃棄物課題を輸出しない方針
  • 製品設計とリサイクル材の安全性・品質の確保、EUでのリサイクル市場を拡大を通じた「EUリサイクル」を効率的な2次原材料のベンチマーク
  • 廃棄物の輸出に関するEUルールの徹底的な見直しを通じたEUにおける再使用とリサイクルの促進
  • 違法な廃棄物の移動、国際的な環境犯罪の取り締まり

EUから廃棄物課題を輸出しない方針とありますが、「廃棄物課題」について教えてください。

はい、これは、先にも出た、廃棄物の輸出先での社会環境問題の事を指していると考えられます。

高質な2次原材料のベンチマークというのは、前回教えて頂いた、廃棄物の終了とか、標準化、というような事を指すのでしょうか?

英語では、「making “recycled in the EU” a benchmark for qualititative secondary materials.」とあるので、EUでリサイクルされたということが質がよい2次原材料であるという状況にまで仕上げていきたいということかと思います。
プラスチック戦略内にもありましたが、2次原材料再生資源の質の基準を設定する議論にも関係するかと思います。

EUルールの徹底的な見直しとありますが、EUは既に、ルールがあるのですが、それを“徹底的に”見直すというのは、どういうイメージなのでしょうか?

はい、今まさに廃棄物輸送規則(Waste shipment regulation : WSR)の見直しが行われているところです。CE行動計画上でも2021年に見直しとあります。
その議論の進捗を確認したところ、

Waste shipments – revision of EU rules

  • EU内の廃棄物の再利用とリサイクルの準備を促進し、それによってEU内の廃棄物に付加価値を与える。
  • WSRの実施に関連する負担を一般的に簡素化・軽減し、特にリサイクル・再利用を目的とした廃棄物のEU域内市場の円滑な機能を確保し、循環経済モデルへの移行を支援する。
  • 目的地の国、問題のある廃棄物の流れ、懸念の原因となっている廃棄物処理の種類、違法な出荷に対抗するための執行に焦点を当てることにより、第三国で環境および健康に有害な影響を与えるか、またはEU内で国内処理が可能な廃棄物の輸出を制限する。
  • EU域内での廃棄物の違法な輸送に対処し、多国間、地域間、二国間レベルで、特に違法輸出や違法取引の分野での環境犯罪に対処するための方策を検討し、廃棄物の輸送管理を強化し、第三国での廃棄物の持続可能な管理を改善すること。

とありました。

実際にどの程度の規則の見直しや措置を行うかは、今後さらに検討されるということですが、情報交換のためのデジタル・アプローチ、手続きの簡素化、特定の手続きの調和、不必要な規制や行政上の負担を軽減するための措置などが含まれる可能性があるとされています。

ですので、EU域内での移動はより促進して、循環産業を発展させ、第3国へ行くことになる場合は、トレーサビリティなどをさらに強化する手段をとっていくということかと考えられます。

違法な廃棄物の移動、国際的な環境犯罪の取り締まりは、日本でも課題だと聞きます。日本は島国のため海岸線が長いという難しさがありますが、EUは域内の移動と域外の移動を区別する難しさがあるのかなと思いました。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


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