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DOWAエコジャーナル

2025.01.07 サーキュラーエコノミー 法律

使用済太陽光パネルのリサイクル制度創設に向けた審議報告 (その2)

PVリサイクル

2024年9月から、環境省の「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省の「太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」が合同で開催されています。

今回は、昨年12月18日から実施されているパブリックコメントの内容をレビューします。

「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)」に対する意見募集(パブリックコメント)について
実施期間:2024年12月18日~2025年1月16日

■パブリックコメントの概要

政府は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの中心である太陽光発電の更なる導入拡大を進めています。

太陽光発電の導入拡大に伴い、このままいくと2030年代後半以降には使用済みパネルの排出量がピークを迎え、最終処分量の大幅な増加や放置・不法投棄問題につながる懸念があるなど、使用済太陽光パネルへの対応が課題となっています。

そこで今回、太陽光発電設備のリサイクル制度の創設に向けて、環境省・経済産業省はこれまでの審議状況を取りまとめた制度のあり方(案)を公表し、広く意見を募集しています。

公表された取りまとめ案は15ページからなり、以下の項目で構成されています。

  • 総論(モノ・費用・情報の考え方)
  • 具体的な措置
  • 第三者機関について
  • 風力発電設備の廃棄・リサイクルについて
  • 今後の課題

次に、取りまとめ案の内容について見ていきます。
(文中の挿入図はすべてパブリックコメント参考資料から引用しています)

■リサイクル制度の骨格

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、「廃棄物処理法」)に基づき適正処理を求めるとともに、再資源化を義務付ける仕組みとする。
  • 使用済太陽光パネルが関係者間で適切に受け渡され、確実に再資源化が行われるようにする。
  • 制度化にあたっては太陽光パネルのリデュース(発電設備の長期安定電源化)、リユースの促進も併せて進める。

■制度の対象

  • 制度開始以降に廃棄物として排出されるFIT/FIP設備と非FIT/非FIP設備の太陽光パネル(制度開始時点で設置済の設備を含む)を制度対象とする。
  • コンクリート基礎や土台、パワーコンディショナー等、太陽光パネル以外の部材は再資源化義務の対象外。
  • ペロブスカイトなど次世代型太陽電池については、今後の導入状況や再資源化技術の開発・普及状態に応じて対象とすることを検討。

■リサイクルの質

  • 制度開始から当面の間は、ガラスのダウンサイクル(路盤材等)、プラスチック・シリコンの熱回収を認めつつ、高度リサイクルに向けた中長期的な水準、方向性を制度で示す。
  • 再資源化にかかる社会的費用を可能な限り低減する。

■リサイクルの実施体制の構築

  • 設備所有者に対し、使用済パネルの速やかな取り外しを求める。
  • 解体・撤去業者等に対し、中間処理業者への引渡し義務を課す。
  • 収集運搬業者に対し、再資源化に支障がない方法での収集運搬を求める。
  • 広域的に太陽光パネルを引取り、一定水準以上の再資源化が可能な中間処理業者を、主務大臣が認定する。また、当該業者に対して引取り義務を課し、再資源化等の実施を求める。
  • 「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(令和6年法律第41号)や設備補助制度等を通じて、全国各地へ高度リサイクル設備の導入を進める。
  • 使用済パネルの集積や一時保管を行うことで収集運搬を効率化できる可能性があることから、収集運搬等に関する廃棄物処理法の基準について検討する。

■放置・不法投棄対策

  • 太陽光発電設備全体を対象として、既存制度の着実な運用を図る。すなわち、FIT/FIP制度における解体等費用の外部積立を確実に行い、関係機関と連携しながら廃棄物処理法の規定をもとに適切に指導していく。
  • 万が一、放置が行われた場合には、所有者等の原因者を特定し、設備の解体・撤去の履行を最大限追求する。その上で、やむを得ず自治体等の第三者が解体・撤去を行った際に、その時点で確保されていた解体等費用・再資源化費用を活用できるようにする。

■費用について

  • 費用については、適正に解体等する費用(以下、「解体等費用」)と、再資源化にかかる費用(以下、「再資源化費用」)に分けて負担する仕組みとする。
  • 解体等費用については、「排出者責任」の観点から設備所有者が負担する。再資源化費用については、生産者が製品の再資源化等に一定の責任を負うとする「拡大生産者責任」の観点から、製造業者が負担する。(ただし、海外製造製品については、輸入業者が負担。)
  • 解体等費用について、設備所有者は、原則として発電事業の初期段階に解体等費用を第三者機関へ預託する。設備所有者は、解体等の実施に際して第三者機関から解体等費用を受領する。なお、確実な費用確保が見込まれる設備所有者については、例外的に内部積立を認める。
  • 再資源化費用について、製造・輸入業者(以下、「製造業者等」)は、太陽光パネルを上市する時点等に再資源化費用を第三者機関へ納付する。再資源化を実施したことを証明できる書類等の提出を条件に、設備所有者は第三者機関から一定額の再資源化費用の交付を受けることができる。
  • 解体等費用、再資源化費用の水準の大枠は早期に示すことが望ましい。

■情報について

  • パネルの適正な廃棄・リサイクルを行うため、以下についての情報を一元的に管理し関係者間で共有する。
    • パネルの含有物質(鉛、カドミウム、ヒ素、セレン等)等
    • 発電設備の解体・撤去やパネルの再資源化・処理状況等
    • 発電設備の所在、発電事業の廃止等
    • 解体等費用、再資源化費用の支払義務者、支払い状況、支払額等

■第三者機関について

  • 解体等費用、再資源化費用と情報の管理を行う。
  • 効率的な再資源化の実施に向け、調査研究や再資源化事業者等の関連事業者に対する情報提供等を行う。
  • 高い公益性・中立性と効率的な運営となるよう、個別リサイクル法を参考に検討を進める。

■風力発電設備の廃棄・リサイクルの考え方

  • 風力発電設備についても解体等費用を確保する方策が必要なところ、基本的にはFIT/FIP制度の活用を想定し、所管の関係審議会で議論を深める。
  • 風力発電設備のリサイクルについては、リサイクル技術が実証途上にあるブレード、およびネオジム等のレアアースの再資源化技術の確立を進める。

■今後の課題

  • ガラスの高度リサイクル、プラスチックやシリコンのマテリアルリサイクル及びケミカルリサイクルといった中長期的に目指す再資源化の水準・方向性を示す。
  • 高度リサイクルへのインセンティブ付与、再生材の利用の促進により、動静脈連携による太陽光パネル由来の再生材市場を構築する。
  • ペロブスカイト太陽電池について、適正処理のためのルール作りやリサイクル技術の開発を進め、本制度への位置づけを検討する。
  • 本制度の実施にあたり、制度の仕組みや手続に必要な情報の周知に努める。
  • 太陽光パネルの国内資源循環について、環境配慮設計の考え方を含め、海外製造業者等への対外的な発信を行う。

■関係主体の役割・責任のまとめ

  • 製造業者等は、「拡大生産者責任」の考え方に基づき再資源化費用を負担(第三者機関へ納付)する。また、パネル型式・含有物質等情報を第三者機関に登録する。
  • 設備所有者は、「排出者責任」の考え方に基づきパネルの取り外しの実施・発注を行い、解体等費用を負担(第三者機関へ預託)する。また、発電設備情報を第三者機関に登録する。
  • 解体・撤去業者は、パネルの取り外し、収集運搬業者への引き渡しを行う。また、解体・撤去情報を第三者機関に登録する。
  • 収集運搬業者は、委託を受けたパネルの収集運搬を行う。また、収集運搬情報を第三者機関に登録する。
  • 再資源化事業者は、パネルの引取り・再資源化を行う。また、再資源化情報を第三者機関に登録する。
  • 第三者機関は、解体等費用・再資源化費用や再資源化に要する情報を管理する。また、調査研究や情報提供等を行う。

狩野 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 狩野 が担当しました

2025.01.07 サーキュラーエコノミー

対談企画 サーキュラーエコノミーでハッピーになるのか その1 資源生産性

対談

今回は、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)の粟生木 千佳様とのご対談をお届けします。

細田 衛士(ほそだ えいじ)様

東海大学副学長、政治経済学部経済学科・教授
慶應義塾大学名誉教授
中部大学理事、名誉教授

1993年より国税庁中央酒類審議会 新産業部会リサイクルワーキンググループ座長、1995年通商産業省産業構造審議会廃棄物小委員会委員、2000年運輸省FRP廃船の高度リサイクルシステム・プロジェクト推進委員会委員、2003年環境省政策評価委員会委員、2011年中央環境審議会委員、2011年林政審議会委員、2023年「サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ」事業における総会、ビジョン・ロードマップ検討ワーキンググループの委員などを歴任

粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 持続可能な消費と生産領域 主任研究員

2000年京都大学工学部卒業、2002年東京大学大学院工学系研究科修了(工学修士)。2007年政策研究大学院大学修了(国際開発学修士)。2023年9月立命館大学大学院理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)2002年-2005年(株)野村総合研究所にて研究員/コンサルタントとして、環境ビジネス・環境政策関連調査/コンサルティングに従事。2007年6月IGES入所。循環経済・資源効率性向上に向けた政策研究や国際政策動向の調査・分析、循環経済・資源生産性指標の政策応用に関する調査研究を行っている。

細田

粟生木さんとは、会議などでお会いしていますが、直接お話しする機会は、あまりありませんでしたね。
今日はどんな話をしましょうか。

粟生木

私は、資源効率性(Resource Efficiency:RE)やサーキュラーエコノミー(Circular Economy:CE)に関する政策調査・研究してきました。「サーキュラーエコノミーは 本当に経済に役に立つのか」そこはかとない疑問を持っていまして、それをお伺いしたいと思っております。

日本の経済全般に、というよりは、例えば、サーキュラーエコノミーへの移行が進むことによって、賃金が上がるのかに興味があります。

循環型社会や国際的にサーキュラーエコノミーを評価する主要な指標の一つとして、多くの国が資源生産性(日本では、GDP/天然資源等投入量)を使用しています。つまり、天然資源(いわゆるバージン資源)の投入量とGDPの比率となります。つまり、サーキュラーエコノミーが進み、資源効率的な経済になり、天然資源の投入量が減少すれば、資源生産性の上昇要因となります。

それで、1995年を基準として、日本の労働生産性と資源生産性の伸びを比較したグラフがこちらです。

就業者一人当たり実質労働生産性(万円/人)= 実質GDP(万円)/ 就業者数(人)
資源生産性(万円/トン)= 実質GDP(万円)/天然資源等投入量(トン)

労働生産性のデータは、日本生産性本部が公表している、「就業者一人当たり名目労働生産性」のデータを実質GDPに変換した「就業者一人当たり実質労働生産性」です。
(出典)日本の労働生産性の動向 2023(日本生産性本部)
資源生産性は、環境省のデータで、「天然資源1トン当たりの付加価値額」を示しています。
(出典)「物質フロー指標の性質・狙い及び推計」(環境省)

このグラフは労働生産性と資源生産性を比較しているのですが、資源生産性は上がっている一方で、労働生産性は上がっていないんです。労働生産性の向上がイコール賃金上昇、という事にはならないと思いますが、労働生産性が上がらないと、賃金も上がりませんので、労働生産性のデータを見ています。

上田

すみません、GDPというのはなんでしたっけ?

細田

国内総生産(Gross Domestic Product)は、「1年間に市場に向けて生産された、最終財・サービスの総貨幣価値」です。名目GDPは、その時その時の国内総生産で、物価の上昇を加味したものが実質GDPです。

GDPを計測する時に、製造過程における消費や投資を差し引くので、GDPは「付加価値」を表しています。

マクロ経済の付加価値は、ざっくり言うと、
付加価値 = 企業の収入 - 中間財の費用
ですので、つまり
GDP = 全企業の付加価値の合計
という事になります。

先ほどの、就業者一人当たり労働生産性は「就業者1人当たり付加価値額」、資源生産性は「天然資源1トン当たりの付加価値額」です。

粟生木さんが示してくれたグラフが何を意味しているかというと、資源の方はGDP原単位が小さくなっているけど、労働の方はGDP原単位が変わってない、ということですよね。

粟生木

サーキュラーエコノミーに関する各国の戦略などを読んでいると、「資源を国内で循環させると、国内で付加価値が生まれる。そして国内で、産業が生まれて雇用も増える。天然資源を購入することで国外に逃げていたお金が国内で回る。」という文脈/コンテクストが見て取れます。

サーキュラーエコノミーには、CEコマースビジネスなど、いろんな姿がありますが、それが都市と地域の経済格差や、先進国の中でも特に低い労働生産性や、所得水準の向上に役に立つのか、という問いがあります。

CEコマース
「CEに資する物品の利用を促進するビジネス (CEコマースビジネス)」
(シェアリング、サブスクリプションなどのサービス化や、リペアなどの長期利用、リマン、リファービッシュ、リユースなどの二次流通が該当)

(出典)成長志向型の資源自律経済戦略の実現に向けた制度見直しに関する取りまとめ(案)
産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会(令和6年12月)

細田先生が以前講演された際に、資源生産性を経済学的に要因分解されていたのを拝見しまして、経済学的に考えた場合、循環経済を通じてこれらの点について改善するためには、こういう制度設計が必要ではないかといった点をお伺い出来たらと思っています。

細田

なるほど、面白い観点ですね。
サーキュラーエコノミーは、ご存知の様に雇用の創出、GDPの増加、経済成長に非常に重きを置いていて、「経済の活性化」を1つの目標としているところに特徴があります。環境政策でありつつも経済政策の1つとして位置付けられていると理解すべきです。

エレンマッカーサーによると、 Linear Economy(線形経済)からCircular Economy(循環経済)に移行することで、

  • 資源の投入量が少なくなり、エネルギー使用量も少なくなる
  • 雇用は増加し、GDPも増加する。
  • 2030年までのGDP成長はbusiness as usual caseから7%ポイント増加する

とされています。

資源投入が減少する一方で GDP が増加するのは、ものすごい技術進歩があって資源生産性がものすごく上昇すると想定されているということです。

上田

GDPは「市場に向けて生産された、最終財・サービスの総貨幣価値」でしたので、サーキュラーエコノミーによって、資源とエネルギー投入量は減るけれども、最終財の生産が減らないようにしないといけない。つまり、少しの資源で沢山の最終財を生産できるように、資源生産性が「ものすごく上昇」しないといけないということでしょうか。

細田

資源生産性を上げるためには、製品を効率よく生産するだけではなく、例えば、サービスとかソフトウエアでもいいんですよ。

上田

確かに、サービスやソフトウエアは資源をそれほど使いませんね。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、「需要の創出」についてお話しいただきます。

2025.01.07 サーキュラーエコノミー

一般廃棄物の「灰」事情 その1 排出量と最終処分場の現状

DOWAの取組リサイクル廃棄物処理

家庭などで発生する燃えるごみなどは、廃棄物処理法では「一般廃棄物」に分類されます。
今回は、この一般廃棄物の排出量と、最終処分場の現状について、ご紹介いたします。

(参考記事)一般廃棄物 | エコペディア

■一般廃棄物の処理

(1)一般的なごみの処理フロー

一般的なごみの処理フローについてご説明いたします。

①ごみ処理施設への運搬

ご家庭で近くのごみ集積場に出された一般廃棄物は、多くの場合、ごみ収集車(パッカー車)で収集されます。

②中間処理

その後、多くの場合、燃えるごみは清掃工場で焼却されます。燃えるごみを焼却することにより、有害物質の無害化や、ごみを減容化(嵩を減らす)することができます。焼却後の残渣を「焼却灰」と呼びます。

③最終処分(埋め立て処分)

焼却灰などは最終的に安全な状態で埋め立てられ、最終処分されます。最終処分場では、埋立処分した後も地下水汚染、廃棄物の飛散など環境保全などに注意しながら管理されています。

④再資源化

最終処分以外にも、焼却灰を溶融することにより建設資材(路盤材等)や金属原料、セメント原料として再資源化されます。

(2)令和4年度のごみ総処理量

令和4年度のごみ総処理量は3,890万tでした。そのうち焼却、破砕・選別等により中間処理された量は3,668万でごみ全体の94.3%、再生業者等へ直接搬入され資源化された量は188万tでごみ全体の4.8%でした。そのまま埋め立てられる量は34万tで、ごみ全体の0.9%です。

ほとんどのごみは中間処理が行われていることがわかります。
中間処理量を行い減量化した量は2,913万tで、74.9%重量を減らすことができています。

中間処理後に資源化された量(処理後再生利用量)は451万tで、ごみ全体量の11.6%は、中間処理後再資源としてリサイクルされています。

(出典)一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和4年度)について(環境省)

■最終処分場はあと何年分?

令和4年度末で残余容量は9,666万m2、残余年数は23.4年となっています。
残り少ない処分場を少しでも長く使用するために、ゴミをなるべく出さないことや、リサイクルするなど3Rの取り組みがますます重要になってきます。

(令和4年度末現在)
残余容量 9,666万m3 (前年度9,845万m3)[1.8%減]
残余年数 23.4年 (前年度23.5年)

(出典)一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について | 報道発表資料(環境省)

■DOWAグループの最終処分場とリサイクル

DOWAグループでは、焼却した後の焼却灰を埋め立てる最終処分と、灰のリサイクルを行っています。
最終処分場は秋田県に2拠点(グリーンフィル小坂・エコシステム花岡)、灰のリサイクル事業はメルテック(栃木県小山市・神奈川県横須賀市)・メルテックいわき(福島県いわき市)の3拠点があります。

▼詳しくはこちら
グリーンフィル小坂株式会社
エコシステム花岡株式会社
メルテック株式会社
メルテックいわき株式会社

伊藤 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 伊藤 が担当しました

2024.12.02 サーキュラーエコノミー 法律

使用済太陽光パネルのリサイクル制度創設に向けた審議報告 (その1)

PVリサイクル

2024年9月から、環境省の「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省の「太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」が合同で開催されています。

今回は、これまでの合同会議の様子をレビューします。
今後の審議状況についても定期的にレポートしていきます。

■趣旨

環境省と経済産業省は合同で、今後排出の増加が見込まれる太陽光パネルをはじめとする再エネ発電設備のリサイクル・適正処理に関する対応の強化に向け、制度的対応も含めた具体的な方策について検討することを目的として、2023年4月に【再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会】を開催しました。

その後、合計7回の合同会議が開催され、2024年1月に中間取りまとめが公表されました。
中間取りまとめでは、ライフサイクル全体の各プレーヤーが、「再エネ発電設備(モノ)」を適切に処理できるよう、必要な「費用(カネ)」と「情報」が円滑に流通する枠組みを構築するべく、各事業段階における課題について整理がなされました。

中間取りまとめの結果を受け、2024年9月からの合同会議では、モノ・費用・情報の3点を中心に制度化に向けた審議が行われています。

■第1回~第3回合同会議の概要

中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ

第1回合同会議
2024年9月13日
第2回合同会議
2024年10月1日
第3回合同会議
2024年10月15日

モノ・費用・情報の3点について事務局案が示されました。委員からは事務局案に対し概ね評価する意見が出されたものの、制度化の具体的な検討において、対象とすべき範囲や費用負担のあり方などについて様々な指摘がありました。一例を以下に示します。

「モノ」の観点

既設パネルや将来導入が見込まれるペロブスカイト型も含め、原則すべての太陽光パネルを制度対象とするべきとの指摘、パネル廃棄等に関わる事業者の登録制度・許可制度の検討、収集運搬時の積替え規制緩和、排出時ピーク(下図)の平準化に資する施策の必要性、パネル放置の可能性が高いシナリオを前提とした制度設計の必要性等

「費用」の観点

解体・撤去から適正処理・再資源化費用にかかる費用を「解体等費用」と「再資源化費用」に分け、前者は発電事業者が、後者は製造業者等がそれぞれ負担する仕組みとしてはどうか、拡大生産者責任を念頭に物理的責任と費用的責任を分けた上で製造業者等が環境配慮設計も果たせる仕組みの必要性、事業終了時に製造業者等が不存在となる可能性を考慮し、太陽光パネルの購入・設置時点で再資源化費用を預託してはどうか、運営維持費を抑えつつ費用確保できる透明性の高い資金管理団体の必要性等

「情報」の観点

放置対策のため非FIT/FIPを含めた処理責任者、設備所有者の情報把握の必要性、今後上市されるパネル情報の一元管理のためのデータベース整備、環境配慮設計の促進のためリサイクル率などの情報が製造事業者に戻る仕組み、送配電事業者や中間処理業者など関係者の協力により情報を確保する制度やマニフェストにより管理する仕組みの必要性等

(出典)中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ 第1回合同会議資料より

■第4回、第5回合同会議の概要

中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ

第4回合同会議
2024年10月28日
第5回合同会議
2024年10月29日

第4回、第5回合同会議では関係者へのヒアリングが行われました。

ヒアリング対象者

  • 公益社団法人全国解体工事業団体連合会
  • 一般社団法人太陽光パネルリユース・リサイクル協会
  • AGC株式会社
  • 福岡県
  • PVCYCLE JAPAN
  • 一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会
  • 一般社団法人太陽光発電協会

ヒアリングでは各主体の取り組みや認識課題が紹介されたほか、モノ・費用・情報の各論点に対する業界としての考え方が示されました。また、一度に多量のパネルが廃棄された場合に備え廃掃法の処理期限の緩和や広域的な収集運搬にむけた広域認定制度の創設、中間集積場(積替え保管場所)の整備等の要望が出されました。

■今後の予定

前回までに実施されたヒアリングを踏まえつつ、次回合同会議より制度化に向けた議論が再開される予定です。今後も月1~2回程度で開催し、今冬頃に取りまとめがなされる見込みです。

狩野 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 狩野 が担当しました

2024.12.02 国際動向

これまでの海外のごみ事情(まとめ)

海外ごみ事情

これまで、DOWAエコジャーナルでは多くの国のごみ事情を紹介してきました。今回は番外編として、これまでどの国のごみ事情を取り扱ってきたのか、どのような特徴があったのかなどを振り返っていきます。

■これまでに取り上げてきた国々

これまでに、29ヶ国の記事を取り上げてきました。
以下の図の通り、先進国とDOWAが環境事業を展開する東南アジアが多い傾向があり、1つの国でも複数の都市や様々な観点でごみ事情を取り上げている場合もあります。例えば、タイだと16記事を掲載しました。

■海外ごみ処理事情の一例

海外のごみ事情では、日本と異なる様々な状況が見て取れます。過去の記事のため、現在は異なる可能性がありますが、少しだけ各国のごみ事情を抜粋して紹介します(以下、写真は当該記事からの掲載です)。

スペイン・バルセロナの多様なゴミ収集事情

空気圧式収集ポスト

バルセロナでは、新たなごみ収集システムの始動ついて紹介されています。ごみを回収する車両は電動化し、街中ではごみが空気圧式収集ポストで地下のコンテナに収集されるようです。電化製品・廃油は地区ごとの収集場所(グリーンポイント)で集められており、住民は廃棄物を持っていくことで一部税金の割引になるポイントが溜まるそうです。

ネパール 観光地ポカラのゴミ事情とは その1その2

ネパールではポイ捨てが多いそうですが、自分の家の前は毎朝清掃する習慣もあるそうです。また、ゴミを拾って生計を立てる人々もいるらしく、それにより街中が清掃されているという特徴がありました。
リサイクルについては、日本同様、ペットボトルをリサイクルする工場があるものの、それでもリサイクル率は低く課題が残るという話もありました。

インドネシアにはゴミ山が存在する その1

インドネシアもポイ捨てする人が多いそうで、またごみの分別もあまりされていないようですが、一方で、切れた電球も修理し、ゴミとなった中綿を再販売するなど、日本と比べて様々なものをリサイクルしている一面もあるようでした。

写真左:回収された電球・蛍光灯 / 写真右:回収された中綿

ニューヨークの新しい生ごみ回収

アメリカのニューヨークでは、生ごみを肥料等に変えるコンポストに力を入れているそうです。2018年の1年間で、50,000 トン以上ものコンポストの回収に成功したとのことでした。

すばやい行動で、フランス国民が取り組んでいる廃棄物処理と対策 その2

ファーストフード店の洗って再利用できる容器

フランスでは循環経済のための法規制が進んでおり、例えば、ゴミの分別においては歯磨き粉のチューブがリサイクルできるごみに指定されたり、一定の規模以上のファーストフード店では使い捨ての食器が使用禁止になっているようです。

■おわりに

国によってごみ処理には様々な特徴があり、日本とは違う点も数多く見られます。今後も、様々な国のごみ処理事情を取り上げていきたいと思います。

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2024.12.02 カーボンニュートラル

石炭の代替になるバイオマス燃料のご紹介

DOWAの取組バイオ燃料

■はじめに

2024年11月6日に、化石燃料の代替として期待されているバイオコークスの製造装置および燃料評価装置を導入し、民間企業としては初めて開発から製造・品質評価までを一貫して行える体制の構築についてプレスリリースしました。

民間初となるバイオコークスの開発・製造・評価の一貫体制を構築 ~様々な原料を用いたグリーンな燃料の開発を本格推進~

バイオコークスについては、以前、近畿大学・井田民男先生の記事を掲載しておりますが、改めて紹介したいと思います。

参考:その道の人に聞く:バイオコークスの研究と未来

■バイオコークスとは

バイオコークスは、近畿大学の井田民男教授が研究・開発をしたもので、動植物から生まれた生物資源(バイオマス)を原料に作られたバイオマス固形燃料の一種です。石炭や石炭コークス等の化石燃料の代替燃料としての活用を目的に開発され、カーボンニュートラルな燃料として脱炭素社会の構築に期待されています。

弊社はこれまで井田教授とともに木質系、農業系、廃棄物系など様々な原料を用いたバイオコークスの製造に関する研究開発に取り組んできました。

写真左:バイオコークス製造装置 / 右:バイオコークス

■バイオコークスの製造フローと特徴

バイオコークスの製造フローは、自然界で石炭が作られる過程を短時間で疑似再現したものとなります。

  1. 充填:バイオマス原料を反応容器に充填する
  2. 加圧:反応容器内でバイオマス原料を加圧し、密度を高めて成型を行う
  3. 加熱:加圧状態で加熱をし、原料成分の熱分解と熱硬化反応により強度を高める
  4. 冷却:反応容器を冷却することで原料の反発による成形崩れを防ぐ

上述した製造フローにより、バイオコークスは次の4つの特徴を持つことができます。

  1. 高強度であること
    製造工程において、加圧・加熱をすることで高密度・高純度となり、石炭コークスに近い強度を持たせることができます。
  2. 燃焼維持時間が長いこと
    高密度・高純度であるため、1,000℃を超える高温化でも形状を保持することから、燃焼維持時間を長く保たせることができます。
  3. 原料適用幅が広いこと
    製造工程に加熱過程と冷却過程があることで強度や成形性が高まり、様々な廃棄物資源をバイオコークスにすることができます。
    原料によって生産効率は変わりますが、籾殻、稲わら、蕎麦殻、コーヒー豆など、多種多様なバイオマス資源から燃料を製造することができることを確認しています。
  4. 保管容易性が高い
    石炭コークスと同様に自然発火の危険性は比較的低く、高強度であることから輸送時や保管時の破損も少なく、水に溶けず、腐敗もしないことから長期間の保管に適しています。
バイオコークスの製造フロー

■バイオコークスの用途

CO2削減が求められている企業にとっては、カーボンニュートラルな燃料として活用が可能です。
バイオコークスの用途先としては、工業炉や溶融炉や廃棄物焼却施設、ボイラー燃料(発電、暖房など)、変わったところでは薪ストーブ燃料などでの活用にも期待されています。
なお、グループ内の廃棄物処理施設(溶融炉)において、農業系残渣を原料としたバイオコークスが石炭コークスの一部を代替可能であることを確認しております。

■終わりに

今後は、多様な原料サプライヤーやバイオコークスユーザーとの関係構築を進め、安定的な原料調達と顧客ニーズに応じた製品開発を推進し、普及拡大に取り組んでいきます。
化石燃料の脱炭素化を図りたい方、未利用バイオマスでお困りの方など、ご興味を持たれた方は是非ともお問い合わせください。

【参考記事】

バイオコークスの研究と未来 その1 | その道の人に聞く
バイオコークスの研究と未来 その2 | その道の人に聞く
バイオコークスの研究と未来 その3 | その道の人に聞く
バイオコークスの研究と未来 その4 | その道の人に聞く

この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室 市原 が担当しました

2024.11.01 サーキュラーエコノミー

太陽光パネルのリサイクル制度についての小委員会が開催されています

PVリサイクル

2024年9月から、環境省の「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省の「太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」が合同で開催されています。

小委員会について

この小委員会は、太陽光発電設備のリサイクル制度、使用済み太陽光発電設備の再利用の推進のあり方などについて検討するために開催されています。現時点で5回開催されており、現在も審議が続いています。

環境省:太陽光発電設備リサイクル制度小委員会

審議内容

太陽光パネルのリサイクルに関して「モノ(再エネ発電設備)」「費用」「情報」の3点に分けて制度的な検討が行われています。

例えば「モノ」については効率的な収集運搬の仕組みなど、「費用」については再資源化にあたっての適切な負担のあり方など、「情報」についてはトレーサビリティ確保のための情報管理の方法などが論点に上がっています。

また、「モノ」についての議論では、以下の図にも記載がある通り、太陽光パネルのリサイクルの義務化についても検討されています。

(出典)第2回審議会資料より

審議会に関連した制度の動き

再資源化事業等高度化法

2024年5月には「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(再資源化事業等高度化法)が公布されました。これは、再資源化の取り組みを高度化し、資源循環産業の発展を目指すために策定されています。具体的には、基本方針の策定や、再資源化の促進のための廃棄物処理業者の判断基準、再資源化事業の高度化のための認定制度などについて定められています。

「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」が閣議決定されました

法律の中では、「分離・回収技術の高度化」を促進するための認定制度が定められており、以下の環境省の概要資料では、太陽光パネルのリサイクルについても言及されています。

(出典)環境省:資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の概要(筆者赤枠追記)

第5次循環型社会形成推進基本計画

2024年8月には、第5次循環型社会形成推進基本計画が閣議決定されました。副題は「循環経済を国家戦略に」となっており、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行は気候変動や生物多様性、地方創生、経済安全保障などにも資する重要な政策課題とされています。

この基本計画の中では、再資源化事業等高度化法に基づき、脱炭素化と再生資源の質と量の確保などの取組を一体的に促進することや、高度な資源循環の取組に対して3年間で100件以上の認定を行うことなどが言及されています。

上記のようなサーキュラーエコノミーへの移行のための政策が進められています。

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

2024.11.01 法律

「毒物及び劇物取締法」概要 その10 立入検査

毒劇法

毒物及び劇物取締法(以下、毒劇法)は昭和25年に制定された法律です。
前回は、「危害防止規定」についてご説明しました。
今回は、「立入検査」についてご説明していきます。

「立入検査」は、毒劇法において規定されています。

毒物及び劇物取締法

第十八条 (立入検査等)
都道府県知事は、保健衛生上必要があると認めるときは、毒物劇物営業者若しくは特定毒物研究者から必要な報告を徴し、又は薬事監視員のうちからあらかじめ指定する者に、これらの者の製造所、営業所、店舗、研究所その他業務上毒物若しくは劇物を取り扱う場所に立ち入り、帳簿その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、若しくは試験のため必要な最小限度の分量に限り、毒物、劇物、第十一条第二項の政令で定める物若しくはその疑いのある物を収去させることができる。

毒物及び劇物取締法第18条では、保健所の職員等が保健衛生上の観点から、毒物劇物を取扱う者から必要な報告を求めたり、立入検査を実施することが規定されています。このうち、立入検査については、“帳簿その他の物件を検査、関係者への質問、毒物劇物等の収去”とされており、以下のような内容が考えられます。

■帳簿
譲渡や交付時に、帳簿の記載若しくは譲受書の提出を受け、5年間保管しなければなりません。
帳簿を検査することによって、譲渡や交付、販売してはならない者へ譲渡・販売していないかが確認されます。

■その他の物件
貯蔵場所の表示、容器への表示、貯蔵施設が基準を満たしているか、などが確認されます。

「毒物及び劇物取締法」概要 その5 表示
「毒物及び劇物取締法」概要 その7 貯蔵
「毒物及び劇物取締法」概要 その3 取り扱い(盗難・紛失防止)
「毒物及び劇物取締法」概要 その4 取り扱い(漏洩防止)

■毒物劇物等の収去
検査のため薬品等のサンプルを採取し、持ち帰ることです。

■(参考)立入検査の実施状況
令和4年の立入検査施行施設数は、総数として19,203、登録届出許可施設数の29.5%に当たります。
違反発見施設数は1,770、立入検査数の9.2%であり、違反の内訳は、譲渡手続き違反43%、取扱違反28%、表示違反15%、登録違反3%、その他43%(重複あり)となっています。
業種別にみると、一般販売業が60%を占めていますが、製造業や電気めっき業、毒劇物運送業の違反も確認されています。

※画像をクリックで拡大します

(出典)令和5年度 全国薬務関係主管課長会議資料【医薬品審査管理課化学物質安全対策室】参考資料(厚生労働省)

登録については、更新申請や、開設者変更、取扱品目の範囲の変更、貯蔵施設の変更に関する届出、取扱責任者の届出などについても、ご注意ください。

■参考資料

毒物及び劇物取締法Q&A(国立医薬品食品衛生研究所)

厚生省ホームページ
毒劇法 通知一覧
毒物劇物監視指導指針の取扱いについて(通知)
毒物及び劇物の適正な保管管理等の徹底について(通知)

令和4年度衛生行政報告例(政府統計の総合窓口(e-Stat))

上田 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 上田 が担当しました

2024.11.01 国際動向

フランス・ルーアンのごみ処理事情

海外ごみ事情

1. フランス・ルーアンのごみの分別

ルーアンは、フランス北西部のノルマンディー地方に位置する小さな街です。伝統的な木組みの家が並ぶ美しい旧市街が知られており、パリから日帰りで行ける観光地としても人気です。

今回はそんなフランスの小さな地方都市ルーアンのごみ処理事情について紹介します。

ルーアンのごみの分別のルールは日本に比べると大雑把です。
私は2021年から2022年までルーアンの旧市街にアパートを借りて住んでいました。大家さんから伝えられたごみ出しのルールは、

  1. ごみは適当な袋に入れて共有のごみ捨て場に捨てること
  2. 綺麗な段ボールはごみ捨て場の隅にまとめておくか近所の回収ボックスに入れること
  3. ガラス瓶は近所の回収ボックスに入れること

の3点だけです。

プラスチック等の分別や曜日ごとの回収日程についても聞いてみたのですが、「そのうち回収されるから、曜日なんて気にしなくていいわ!ガラスと段ボール以外は分別しなくていいよ。大きいものでも共有のごみ捨て場に収まる程度なら、持って行ってくれるよ。」と大変おおらかな回答。そして住んでみたところ実際その通りで驚きました。

こちらがルーアンの街中の共有ごみ捨て場の写真です(写真1)。

写真1:ルーアン市内の一般家庭用ごみ捨て場の様子

一部の段ボールだけは分別されているものの、燃えるごみのごみ箱の横には古いキャットタワーやプラスチック製の棚など大型のごみも一緒に捨てられています。これも数日後には回収されて全てなくなっているので驚きです。ごみ箱ごとごみ収集車の搬入口にひっくり返して回収するため、ごみ袋に入っていないごみでも回収してくれます。ごみ箱横に置いてあるごみは、回収員の方が拾って搬入口に放り込んでいきます。

市街地にはガラス瓶と紙・段ボール類を回収するための資源ごみ回収ボックスが設置されています。これらの資源ごみ回収ボックスは市街地では数百メートルごとに設置されており、本体部分は地下に埋まっているため景観を損なうことなく大量の資源ごみを常時受け入れることができます(写真2)。

写真2:ガラス瓶と紙・段ボール用の資源ごみ回収ボックス

フランスでは、文化的にプラスチック容器に入った食品があまり好まれないため、ビールやワイン、パスタソース、調味料などはいまでもガラス瓶入りの製品が主流です。一般家庭でもガラスのごみが多くでるため、ガラス類をいつでも捨てられるように回収ボックスへの持ち込み方式になっています。

フランスならではのごみの分別もあります。それはクリスマスツリーです。
フランスでは11月末頃から各家庭でクリスマスツリーを飾りはじめ、新年を迎えたあとに片づけます。

本物のモミの木にガラスや木製の飾りをつけるクリスマスツリーが一般的であるため、新年には大量のクリスマスツリーが捨てられます。この捨てられたクリスマスツリーは特別に回収され堆肥に再利用されています。例えば2023年は1月9日と10日がクリスマスツリー専用の回収日になっており、2メートル以内の大きさであれば、玄関前にクリスマスツリーを出しておくと回収してくれます。2m以上の大型のツリーの場合は購入店で回収してもらうか、2m以内に切り分けて戸別回収をしてもらうことができます。

写真3:クリスマスツリーの回収日のお知らせ

(参考)ルーアンの地方公共団体(Métropole Rouen Normandie)のホームページに公開されているごみの分別ルールブックより

さらに2023年から、これまで一般家庭にあまり普及していなかったごみの分別を推進するため、ごみの分別回収のルールが強化されました(写真4)。

写真4:「2023年、ごみの分別を強化します!」と記載された新しいごみの分別ルール

(参考)ルーアンの地方公共団体(Métropole Rouen Normandie)のホームページに公開されているごみの分別ルールブックより

紙・プラスチック・金属類はそれぞれ分別して、自治体から支給される指定の黄色いごみ袋に入れ、黄色いマークの入った資源ごみ用のごみ箱に捨てます。また、野菜くずは透明のごみ袋にいれて、燃えるごみとは分けて出すことになりました。

あと数年で、日本のような細かいごみの分別ルールがルーアンの一般家庭にも浸透するかもしれません。

2. フランス・ルーアンのごみの回収

ごみの回収は、地区ごとに日程が決められています(写真5)。例えばルーアンの中心部では、地図中のピンクで示された通りでは燃えるごみは毎日回収されます。街中に設置された資源ごみ回収ボックスは不定期の回収です。

写真5:ルーアン中心部のごみの回収スケジュール

(参考)ルーアンの地方公共団体(Métropole Rouen Normandie)のホームページに公開されているごみの分別ルールブックより

ただしフランスの場合、こういったスケジュールはほぼ意味のないものだと思ったほうが良いです。毎日回収となっている場所でも、実際には2~3日に一度になってしまうことはよくあります。また、労働者のストライキも頻繁に起こる国であるため、ストライキによって数日間ごみの回収が止まるということもあります。

回収日が厳密に決まっているのはクリスマスツリーぐらいなので、その他のごみについては皆、「そのうち持って行ってくれるだろう」くらいののんびりとした気持ちでだしています。

3. フランスに根付くリユースの精神

最後に、リユースについて紹介します。長い歴史を持つ国であるフランスに住む人たちは、ものを長く大事に使うということにとてもこだわりを持っています。

私が住んでいたアパートは、ルーアンの旧市街にある18世紀に建てられた木組みの家で、観光客が毎日訪れる伝統的な建築群の中のひとつでした。こんなに古い建物をアパートに使うのかと驚きましたが、フランスではこのようなケースは珍しくありません。

建物だけでなく、家具や食器類なども良いものをできるだけ長く大事に使おうとします。それでも自分自身が使わなくなった家具類や食器類は、捨てるよりも誰か使ってくれる人に譲ろうと考えます。例えばルーアンでは、5月の週末に街のあちこちの通りでフリーマーケットが開催されます。誰でも参加することができ、家具や洋服、食器類など様々なものが売られています(写真6)。

写真6:ルーアンで開催されていたフリーマーケットの様子

簡単に買って簡単に捨ててしまうよりも、良いものを買って長く使いたい、もし自分がいらなくなっても別の人に使ってもらいたい、フランスではそう考える人が多いように感じました。

ルーアンのごみの分別・回収は日本に比べおおらかな部分がありますが、良いものを長く使おうという考え方や、プラスチック製の食品容器の使用を避ける生活習慣など、見習いたい部分は多くあります。また、ごみの回収ルールは今後も毎年進化していきそうです。

旅行などでフランスを訪れた際は、最新のごみ処理事情がどうなっているのか、ぜひ観察してみてください。

この記事は
フランス・アメリカ在住webライター プロトン主水 が担当しました

2024.10.01 法律

「毒物及び劇物取締法」概要 その9 危害防止規定

毒劇法

毒物及び劇物取締法(以下、毒劇法)は昭和25年に制定された法律です。
前回は、「事故時の措置」についてご説明しました。
今回は、「危害防止規定」についてご説明していきます。

■概要

毒物劇物営業者等(毒劇物を製造、輸入、販売などする者)は、法令に基づき置かなければならない「毒物劇物取扱責任者」が円滑に業務を遂行できるよう、常時製造所等に勤務し、かつ、適切な権限を有する者を指名すること、そして、自主的な規範として、毒物劇物の管理、責任体制を明確にするための「毒物劇物危害防止規定」を作成することとされています。

事業所で取り扱っている毒劇物の種類や取り扱い状況など、各事業所の実情に応じた対策をあらかじめ策定して周知する必要があります。

■内容

毒物劇物危害防止規定では、以下のような事項について、定めることとされています。

  • 毒物劇物を貯蔵又は取扱いの作業、設備等の点検・保守、事故時における関係機関への通報及び応急措置を行うそれぞれの担当者の職務及び組織
  • 取扱い作業、設備等の点検、整備、補修の方法
  • 事故時通報及び応急措置活動
  • 教育及び訓練

(出典)毒劇物盗難等防止ガイド

■危害防止規定のモデル

厚生労働省のホームページに、業種別(製造業、販売業、輸送業)の危害防止規定のモデルとチェックリストが掲載されています。

●危害防止規定のモデル

図:毒物劇物危害防止規定のモデル(製造業)(一部抜粋)

(出典)毒物劇物の安全対策(厚生労働省 医薬・生活衛生局化学物質安全対策室)

●チェックリスト

図:毒物劇物危害防止規定の策定に用いるチェックリスト(輸送業)(一部抜粋)

(出典)毒物劇物の安全対策(厚生労働省 医薬・生活衛生局化学物質安全対策室)

■参照通知・通達

毒物劇物危害防止規定について(通知)

1 危害防止規定の目的及び性格について
危害防止規定は、毒物劇物製造所等における毒物又は劇物の管理・責任体制を明確にし、もつて毒物又は劇物による保健衛生上の危害を未然に防止することをねらいとした、事業者の自主的な規範であること。

2 危害防止規定の記載事項について
(1) 危害防止規定は、当該製造所等において取扱われる毒物及び劇物の種類・量、取扱いの方法等の態様に応じ、具体的、かつ、詳細な内容になるように作成すること。
なお、毒物及び劇物の運搬車など製造所等以外の事項にわたる内容であつても差し支えないこと。
(2) 危害防止規定の記載事項には、毒物及び劇物の管理・責任体制を明確にし、毒物及び劇物による危害防止の目的を達成しうるよう、左記の基本的な事項が記載されていなければならないこと。

なお、危害防止規定に付随してそれぞれの基本的事項について、規定を具体的に実施するために必要な細則を定めること

ア 毒物及び劇物の貯蔵又は取扱いの作業を行う者、これらの作業に係る設備等の点検・保守を行う者事故時における関係機関への通報及び応急措置を行う者職務及び組織に関する事項
イ 毒物及び劇物の貯蔵又は取扱いに係る作業の方法に関する事項
ウ 毒物及び劇物の貯蔵又は取扱いに係る設備等の点検の方法に関する事項
エ 毒物及び劇物の貯蔵又は取扱いに係る設備等の整備又は補修に関する事項
オ 事故時における関係機関への通報及び応急措置活動に関する事項
カ 毒物及び劇物の貯蔵又は取扱いの作業を行う者及びこれらの作業に係る設備等の保守を行う者並びに事故時の応急措置を行う者の教育及び訓練に関する事項
キ その他、保健衛生上の危害を防止するために遵守しなければならない事項

■参考

毒物劇物危害防止規定について(通知)(薬安第八〇号・薬監第一三四号)
毒物劇物取扱責任者の業務について(通達)(薬発第六六八号)

厚生省ホームページ
毒物劇物の安全対策

上田 この記事は
エコシステムジャパン株式会社 上田 が担当しました