物流効率化法及び貨物自動車運送事業法が改正されました
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」2024年5月15日に公布され、2025年4月1日から施行されました。
■改正の背景
働き方改革に関する法律(2019年4月施行)において5年間の適用延長となっていた自動車運転業務・建設事業・医師に対し、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されることとなりました。この時間外労働の上限規制適用による物流停滞の懸念が「物流の2024年問題」と称されています。 この2024年問題、具体的には何も対策しない場合の輸送力不足(2030年には34%、9億t)が懸念されているものです。

(出典)新物効法について(国土交通省)
この問題に対し、物流事業者のみの対策では抜本的な対策とはならないため、今回の法改正により荷主企業、物流事業者、一般消費者が協力して対策を講じていくことを明文化しています。
■今回の改正内容(改正2法)
①対象:全ての荷主、連鎖化事業者(フランチャイズ)、物流事業者(トラック/鉄道/港湾運送/航空輸送/倉庫)
※流通業務総合効率化法
→物流効率化のために取り組むべき措置について「努力義務」
※取り組むべき措置:積載率の向上/荷待ち時間の短縮/荷役時間等の短縮

(出典)新物効法について(国土交通省)
②対象:①のうち、一定規模以上の事業者(特定事業者)
※流通業務総合効率化法
→2026年4月~ 物流効率化のために取り組むべき措置について「義務」
※2025年度中に特定事業者が指定される予定

(出典)「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(国土交通省)
※掲載時点では事業者を指定する数値は予定数値となります。
特定事業者に指定された場合、以下取り組みが必要となります。
- 中長期計画の提出(毎年度提出が基本も、計画に変更なければ5年に1度)
- 定期報告の提出(毎年度提出)
- (荷主)物流統括管理者(CLO)の選任
※事業運営上重要な決定に参画する管理的地位にある役員等の経営幹部から選任が必要
※事業会社制の法人の場合は、子法人毎に判断・対応が必要となります
積載率の向上/荷待ち時間の短縮/荷役時間等の短縮への取り組み状況が、国が示す判断基準に著しく不十分である場合、国から当該措置を取るよう勧告されることがあります。勧告に従わなかった場合はその旨が公表され、正当な理由なく措置を行わないときは、当該措置をとるよう命令されます。命令に違反したときには百万円以下の「罰金」が科されます。

(出典)「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(国土交通省)
③対象:トラック事業者
※貨物自動車運送事業法
- 元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した「実運送体制管理簿」の作成義務
- 荷主・トラック事業者・利用運送事業者に対し、運送契約の締結時に提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、燃料サーチャージ等)等を記載した書面による交付等を義務付け
- トラック事業者・利用運送事業者に対し、他の事業者の運送の利用(=下請けに出す行為)の適正化について努力義務
■最後に
今回の法改正で影響する事業者の多い流通業務総合効率化法については、国交省の作成した特設サイトが非常にわかりやすくまとまっていますので、下記からご参照ください。
「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(国土交通省)
なお、2024年2月の「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」で政府の2030年度に向けた中長期計画が策定・公表されており、今回の改正は、中長期計画の一環として実施されたもので、同計画は毎年フォローアップ等が行われるとされていることから、今後も物流政策動向を注視していく必要があります。
■参考文献
物流効率化法について(物流改正法)(国土交通省)
新物効法に関する荷主向け説明会(2025年2月開催)
(アーカイブ)新物効法に関する荷主向け説明会(農林水産省YouTube)
(説明資料)新物効法の施行に向けた状況(2025年2月)
各判断基準・解説書
貨物自動車運送事業者
貨物自動車関連事業者
荷主:解説書
荷主:解説書事例集
物流パターン別の考え方
2030年度に向けた政府の中長期計画(ポイント)(内閣官房)
この記事は
DOWAエコシステム ロジスティックス事業部
矢澤 が担当しました