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DOWAエコジャーナル

2026.04.01 カーボンニュートラル

脱炭素社会の歩き方 ~DOWAグループのCFP算定の取り組み

DOWAの取組カーボンニュートラル環境コンサル

排出量取引制度(GX-ETS)が開始されることとなり、CO2などの温室効果ガス(GHG)が、お金と同様の経済価値を持つ社会の実現が、いよいよ現実味を帯びてきました。そんな「脱炭素社会の歩き方」として、数回に分けて、企業のGHG算定にまつわる動きを取り上げていきます。

今回は、最終回として、DOWAグループのCFP算定の取り組みについて、ご紹介します。

■サービス分野のCFP・EPD

3月26日付プレスリリースのとおり、当社は、廃棄物業界としては初めて、顧客別に廃棄物処理サービスのCFP(Carbon Footprint of Product;製品のカーボンフットプリント)を算定し、実態に即したScope3・カテゴリ5の一次データとして提供するサービスを開始しました。

CFPとは、製品・サービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通したGHG排出量を、CO2排出量として換算した値のことです(過去記事:2025年12月)。本サービスの場合は、一般的な製品のライフサイクルの「原材料調達」が廃棄物・副資材の調達、「生産」が焼却処理、「流通・販売」「使用・維持管理」は無く、「廃棄・リサイクル」が焼却残渣の廃棄・リサイクルに相当します。

また、当社の算定システムは、ISO 14067:2018及びGHG Protocol Product Standardへの準拠について、国際的な認証機関であるインターテック・サーティフィケ―ション株式会社から、ISO 14064-3:2019に基づく妥当性確認を受けています。

製品系のCFP第三者検証(=検証/Verification)は、過去に取得されたデータに基づいて導き出されたCFP算定結果の基準への適合を確認するのに対し、システム系のCFP第三者検証(=妥当性確認/Validation)は、将来CFP算定結果を導き出すデータ収集や算定に関するシステムの、基準への適合を確認します(過去記事:2026年2月)。

つまり、当社が開発し、妥当性確認を取得した算定システムにより導き出されるCFPは、例えば、2025年度のデータを2026年度のデータに入れ替えた場合においても、高い客観性で国際標準への準拠が担保されるということになります。

建築物LCA制度の導入に向けて、建材関係ではISO14065に基づくEPD(Environmental Product Declaration;環境製品宣言;ISO14025に準拠する環境ラベル)の取得が増加していますが(過去記事:2026年1月)、国内で一般社団法人サステナブル経営推進機構(通称:SuMPO)が運営するEPD(SuMPO EPD)には、廃棄物処理サービスに関するPCR(Product Category Rule;プログラムで決められた製品別の算定ルール)はありません。サービス分野のPCRも使用済み製品回収サービスの1件しかなく、このPCRを用いて公開されているEPDもありません。

一方、海外に目を向けると、スウェーデンのEPDであるEPD Internationalでは、サービスに関するPCRは、クリーニングや観光など、8件があり、サービス分野のPCRを用いて公開されているEPDも12件あります。

廃棄物処理サービスのPCRとしては、「Solid waste collection, treatment and disposal services(固形廃棄物の収集、処理及び処分サービス)」があり、このPCRを用いて公開されているEPDとしては、イタリアのEssere SPA社の医療廃棄物の焼却処理サービスのEPDがあります。さらに、新たな廃棄物処理サービス関連のPCRとして、「Waste and scrap recovery (recycling) services(廃棄物及びスクラップ回収(リサイクル)サービス)」も現在開発中です。

このように、海外では、日本と比べて、廃棄物処理サービスを含むサービス分野でのEPDの算定・取得が進んでいることが分かります。

■金額ベースの廃棄物処理原単位の課題

当社の廃棄物処理サービスのCFP報告サービスは、お客様のScope3・カテゴリ5の一次データとして活用いただくことを想定しています。
Scope3の算定には、金額ベースの原単位を使うことが一般的ですが(過去記事:2025年11月)、環境省のサプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースで提供されている廃棄物処理に関する金額ベースの原単位は、「廃棄物処理(公営)」(16.37t-CO2eq/百万円)と「廃棄物処理(産業)」(7.81t-CO2eq/百万円)の2つだけです。

これらの原単位の元となっている2005年産業連関表の平成17年(2005年)産業連関表(-総合解説編-)によれば、「廃棄物処理(公営)」と「廃棄物処理(産業)」は、いずれも、日本標準産業分類の中分類85「廃棄物処理業」に該当し、そのうち、地方公共団体が行う活動を「廃棄物処理(公営)」、民営事業所が行う活動を「廃棄物処理(産業)」とすると定義されています。

そこで、日本標準産業分類(平成14年3月改定)分類項目表を見てみると、中分類85「廃棄物処理業」には、以下のような産業が含まれています。

  • 一般廃棄物処理業:し尿収集運搬業、し尿処分業、浄化槽清掃業、浄化槽保守点検業、ごみ収集運搬業、ごみ処分業、清掃事務所
  • 産業廃棄物処理業:産業廃棄物収集運搬業、産業廃棄物処分業、特別管理産業廃棄物収集運搬業、特別管理産業廃棄物処分業
  • その他の廃棄物処理業:死亡獣畜取扱業、他に分類されない廃棄物処理業(放射性廃棄物収集運搬業・処理業など)

ここから分かるのは、2つの金額ベースの原単位で対象となっている廃棄物には、し尿から特別管理産業廃棄物まで、処理方法や管理の厳格さが異なるものが含まれており、活動についても、清掃・保守点検、収集運搬、処分(※この中には、海洋投入、焼却、埋立、破砕・圧縮、堆肥化、廃酸・廃アルカリ処理などが含まれます)など、多様なものが含まれているということです。

積み上げベースの原単位であるAIST-IDEAver3.5の場合、中分類「88廃棄物処理業」には、廃棄物の種類や処理方法別に193の原単位があり、その大部分を占めるkgベースの原単位で比較してみると、廃棄物1kg当たりのGHG排出量には、最大で10,000倍もの開きがあります。

物理量ベースの原単位と金額ベースの原単位を直接比較することはできませんが、金額ベースの排出原単位は、これほど異なる活動を全部含めて1つにまとめたものであり、企業が自社のScope3・カテゴリ5の実態を知るには、原単位として幅が広すぎることが分かります。

当社が新たに始めたサービスは、このような課題の解決と、お客様のScope3・カテゴリ5の実質的な削減ソリューションの提供を目指したものとなります。

■おわりに

当社が始めたサービスと類似の国内事例としては、ヤマト運輸株式会社が2025年11月に開始した温室効果ガス排出量提供サービスがあります。これは、より実態に即したScope3・カテゴリ4・9の一次データを顧客に提供するというもので、算定基準については、物流に特化した国際規格であるISO 14083:2023が使用されています。

これまで、カテゴリ1(購入した製品・サービス)ばかりが注目されてきたScope3ですが、GHGプロトコルの改定案では、カテゴリ5における廃棄物輸送の算定義務化、カテゴリ6における宿泊の算定義務化が議論されるなど、今後は、カテゴリ1以外においても、実態に即したサプライヤーからの一次データの重要性が、高まっていく可能性が考えられます。

古屋 この記事は
イー・アンド・イー ソリューションズ 古屋 が担当しました

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