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DOWAエコジャーナル

2026.03.02 カーボンニュートラル

脱炭素社会の歩き方 ~再資源化事業等高度化法におけるGHG排出削減効果

DOWAの取組カーボンニュートラル環境コンサル

排出量取引制度(GX-ETS)が開始されることとなり、CO2などの温室効果ガス(GHG)が、お金と同様の経済価値を持つ社会の実現が、いよいよ現実味を帯びてきました。そんな「脱炭素社会の歩き方」として、数回に分けて、企業のGHG算定にまつわる動きを取り上げていきます。

今回は、2050年カーボンニュートラルに向けて、脱炭素・GX関連の補助事業が拡充する中、重要な評価基準となっている事業によるGHG排出削減効果の算定に関して、「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(再資源化事業等高度化法)を事例として、説明します。

■認定基準

過去記事で紹介したように、再資源化事業等高度化法は、「脱炭素化」と「資源循環」の取組を一体的に推進することを目的としています。このため、認定申請に際しては、「事業シナリオ」(認定申請を行う事業を実施した際の状況を想定したシナリオ)と「基準シナリオ」(認定申請を行う事業の効果を確認するための基準となるシナリオ)について、GHG排出削減効果と資源循環効果を算定して比較し、下表の認定基準を満たすことを示す必要があります。

類型* GHG排出削減効果 資源循環の効果
類型① 事業シナリオによる基準シナリオからの削減効果が0より大きい 事業シナリオの値が基準シナリオの値より大きい
類型②
類型③ 事業シナリオによる基準シナリオからの削減効果が基準シナリオの排出量の3%より大きい -(事業シナリオの値が算出されていること)

*類型①高度再資源化事業:需要に応じた資源循環のために実施する再資源化事業。広域的な分別収集・再資源化のためのペットボトルの水平リサイクルなど。
類型②高度分離・回収事業:廃棄物(※現時点では廃太陽光電池、廃リチウムイオン電池等または廃ニッケル水素電池等)から高度な技術を用いた有用なものの分離、再生部品/再生資源の回収を行う再資源化事業。PVパネルリサイクルにおけるホットナイフ・ウォータージェット導入など。
類型③再資源化工程の高度化:廃棄物処理施設への再資源化工程効率化のための設備やGHG排出量削減に資する設備の導入。混合廃棄物のAI選別など。

(出典)資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律(再資源化事業等高度化法)

■事業シナリオ・基準シナリオの設定

事業シナリオは、計画(リアル)に基づいて設定することができますが、基準シナリオは、事業が無かった場合の仮想(バーチャル)のシナリオになります(考え方としては、ISO14064-2(JIS Q 14064-2)の「ベースラインシナリオ」やJ-クレジット制度の「ベースライン排出量」に近いものとなります)。基準シナリオの設定は、それぞれの効果の算定結果に大きく影響するため、下表のように、設定に当たっての原則と方法が定められています。

類型 基準シナリオの設定の原則 基準シナリオの設定の方法
類型① 当該廃棄物に係る全国平均の処理 文献(国や業界団体の調査等)を基に設定
類型② 当該廃棄物に係る通常の再資源化事業 ガイドラインで具体的に規定(例 廃太陽電池:ハンマー破砕方式で、回収したガラスカレットは路盤材原料として使用)
類型③ 事業実施前/設備更新前(または同種類の通常の設備が導入された事業) 実績値(またはカタログ値)

(出典)温室効果ガス排出量の削減効果・資源循環の効果算出ガイドライン

具体的な例として、類型①の算出シート例(廃プラスチック類の油化事業)で見てみると、基準シナリオ(=廃プラスチックの全国平均の処理)は、環境省 廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利⽤量実態調査報告書(令和4年度実績)を用いて、焼却76%・素材原料19%・燃料化2%・その他3%、焼却はごみ発電、素材原料は樹脂製造、その他は直接埋⽴とみなす(=実際には発電を伴わない焼却や埋立しないその他(高炉還元など)も含まれるが、典型的/保守的な処理で代表させる)と設定されています。

■事業シナリオ・基準シナリオの算定

基準シナリオが設定できたら、GHG排出削減効果の算定については、「処理/リサイクルプロセスの変化」(範囲A)と「再生品の量的・質的変化」(範囲B)を反映しつつ、両シナリオでのインプット・アウトプットが同量・同質になるように、プロセスを具体化していきます。

下図は、類型①の算出シート例から引用・加筆したものですが、範囲A(事業/基準A)を見ると、事業シナリオでは油・塩酸が、基準シナリオでは電力・ガス燃料・樹脂がアウトプットとなっており、全く異なります。これらを比較できるようにするために、事業シナリオの範囲B(事業/基準B)に、基準シナリオで得られるものと同量・同質の電力・ガス燃料・樹脂を天然資源から製造するプロセスを足し、基準シナリオの範囲Bに、事業シナリオで得られるものと同量・同質の油・塩酸を天然資源から製造するプロセスを足します。

これで、インプット(=廃プラ)とアウトプット(=油・塩酸・電力・ガス燃料・樹脂)がシナリオ間で一致し、比較できるようになります。なお、比較には、廃棄物処理量1t当たりのGHG排出量を用いることになっており、算定対象となるGHGは、CO2・CH4・N2O・HFC・PFC・SF6・NF3の7ガスです。

このようにして事業シナリオと基準シナリオをプロセスに分解・具体化できたら、次に、個々のプロセスの活動量に排出係数を乗じて、GHG排出量を算定していきます。

下表は、類型①の算出シート例から引用したものですが、例えば、基準シナリオの熱回収(No.2)の活動量は0.76tとなっており、前述の文献ベースの処理比率(76%)に基づいていることが分かります。この活動量に、海洋プラスチック問題対応協議会(2019)「プラスチック製容器包装再商品化⼿法およびエネルギーリカバリーの環境負荷評価(LCA)」に基づく発電焼却の排出係数(2,710kgCO2e/t)を乗じて、GHG排出量が計算されています。

このようにして各プロセスの計算結果を積み上げると、事業シナリオのGHG排出量は3,074kgCO2e/t、基準シナリオのGHG排出量は3,621kgCO2e/tと計算され、類型①の認定基準(事業シナリオによる基準シナリオからの削減効果が0より大きい)を満たすことを定量的に示すことができます。

なお、活動量は、取得可能な場合には、1次データ(計測器等を使用した実測データ等)を用いることとされており、排出係数としては、ガイドラインに挙げられているデータベースや文献を用いることができます。

■おわりに

再資源化事業等高度化法については、コールセンターの設置や全国14ヶ所での説明会の開催など、事業者の認定申請を後押しする取り組みが積極的に行われています。認定申請に当たって、算定結果の第三者検証は求められておりませんが、「算出結果は十分な検証・精査を行い、根拠とするインベントリデータ等も含めて妥当性を確認したうえで申請すること」とされており、ガイドラインを十分理解した上で、正確に算定を行うことが重要です。

次回は、DOWAグループのCFP算定の取り組みについてのご紹介を予定しています。
当社の資源循環への取り組みについては、以下についても併せてご覧ください。

> レアアースとは何か? ~私たちの暮らしを支える「産業のビタミン」~
> 動静脈連携~リサイクル金属を確保・活用する資源循環スキームの構築~

古屋 この記事は
イー・アンド・イー ソリューションズ 古屋 が担当しました

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