2026年4月10日、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法及び中間貯蔵・環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。これまで規制の対象外だった「使用中の低濃度PCB使用製品」に対して、新たに届出義務や管理基準の遵守が求められます。今回は、改正のポイントについて解説します。
■法案の背景
PCBは、高い絶縁性・耐熱性・化学的安定性を持つ油状の化学物質で、変圧器やコンデンサーをはじめとする電気機器の絶縁油などに広く使われていました。しかし、人体に蓄積しやすく、有害性が判明したため、昭和47年(1972年)以降、国内での製造は禁止されています。
平成13年(2001年)にPCB特措法が制定され、高濃度PCB廃棄物はJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)での処理が進められてきましたが、処理事業は令和8年(2026年)3月に終了しました。低濃度PCB廃棄物については、DOWAグループを含めた民間の無害化処理認定施設等で処理が行われており、令和9年(2027年)3月末が処分期限とされています。
上記の政策によって処理が進む一方で、使用中の低濃度PCB含有製品には、これまで届出も管理も法律上の規制がありませんでした。そのため、処分期限以降に機器の寿命等で廃棄される際の適正処理の確保が課題となっていました。こうした背景から、今回の法改正に至りました。
(参考)2027年のPCB処理期限後の制度に関する検討が行われました
■法案の内容
事業者の皆様にとって重要なポイントを中心に紹介します。
※以下、掲載されている条文は本法案の条文を指します
1.低濃度PCB使用製品の届出義務
今回の改正で最も大きなインパクトがあると想定されるのが、使用中の低濃度PCB使用製品を所有する事業者に対する新たな規制です。
① 所有・使用状況の届出(第8条)
低濃度PCB使用製品を所有する事業者は、氏名・住所、製品の所有及び使用の状況、使用場所、使用終了の見込み等を都道府県知事に届け出なければなりません。
② 管理基準の遵守(第9条)
届出をした事業者(届出所有事業者)は、政令で定める基準に従い、低濃度PCB使用製品を管理する義務を負います。具体的な基準は政省令で定められますが、以下の通り、法案の概要資料ではPCBの飛散・漏えい等がないような管理とされています。
(出典)環境省【参考資料】ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法及び中間貯蔵・環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案
③ 指導及び助言(第10条)
都道府県知事は、届出所有事業者に対して管理について必要な指導及び助言をすることができます。
現行法では、PCB廃棄物の「保管事業者」だけが届出・処分義務を負っていました。使用中の低濃度PCB製品は法律上の対象外でした。改正後は、使用中の段階から届出・管理が義務化されます。
2.使用終了後の届出と処分義務
低濃度PCB使用製品の使用を終了した場合の届出制度も新たに規定されます。
① 使用終了時の届出(第12条第1項)
使用を終了した月の翌月末日までに、保管状況等を都道府県知事へ届け出なければなりません。
② 一定期間内の処分義務(第12条第3項)
使用を終了した日から「5年を超えない範囲内において政令で定める期間」内に処分しなければなりません。現行法の「令和9年3月末」という期限から、相対的な期限に変わります。
③ 毎年度の届出(第12条第4項)
使用終了の届出をした翌年度以降、毎年度、保管・処分の状況等を都道府県知事へ届け出る必要があります。
④ 処分終了の届出(第12条第6項)
処分が完了した場合は、その旨を都道府県知事へ届け出ます。
また、保管する廃棄物が低濃度PCB廃棄物であると新たに判明した場合も、同様に届出を行い、一定期間内の処分が義務付けられます(第18条~第21条)。
3.高濃度PCB廃棄物の取扱い
JESCOでの処理事業が終了したことを受け、高濃度PCB廃棄物についても制度が見直されます。
① 発見後の処分義務(第22条~第27条)
高濃度PCB廃棄物は該当すると判明した日から一定期間内の処分が義務付けられます。JESCOでの処理事業が令和8年3月に終了したことを受け、現行の一律の処分期限に代わる仕組みとなります。
※使用中の高濃度PCB使用製品は、高濃度PCB廃棄物とみなされます(法22条第7項)。
② 民間処理施設での処分
今後は、廃棄物処理法に基づく無害化処理認定制度の対象に高濃度PCB廃棄物が追加され、処理能力を有する民間処理施設で処分されることになります。
4.その他の改正
① PCB廃棄物処理計画の廃止
都道府県等のPCB廃棄物処理計画の策定義務(現行法第7条)が廃止されます。JESCOでの大量処理が完了した段階を反映した見直しです。
② JESCO法の改正
JESCOの事業からPCB廃棄物の処理事業が削除されます。
③ PCB含有塗膜への対応
橋梁やタンク等の設備に施工されたPCB含有塗膜について、環境大臣が所管大臣に対し、飛散防止のための必要な措置を要請できる規定が設けられます(第29条)。
④ 改善命令・代執行
処分義務に違反した場合、環境大臣又は都道府県知事による改善命令(第15条)、さらに命令に従わない場合等の代執行(第16条)の規定が設けられています。低濃度PCBの所有の届出を行わなかった場合等についての罰則規定も設けられています(第43条)。
■低濃度PCB使用製品の所有者に求められること
上記の通り、届出や管理を行う必要があります。まとめると、以下の通りとなります。
| 段階 | 義務の内容 | 根拠となる条文(改正案) |
|---|---|---|
| 使用中 | 所有・使用状況の届出 | 第8条(低濃度PCB使用製品の所有等の届出) |
| 管理基準の遵守 | 第9条(低濃度PCB使用製品の管理) | |
| 使用終了時 | 保管状況等の届出 | 第12条第1項(翌月末日まで) |
| 毎年度の届出 | 第12条第4項 | |
| 一定期間内の処分 | 第12条第3項(5年を超えない範囲で、政令で定める期間) | |
| 処分完了時 | 処分終了の届出 | 第12条第6項 |
なお、本法案は令和9年(2027年)4月1日から施行予定です(附則第1条)。現行の低濃度PCB廃棄物の処分期限(令和9年3月末)の翌日から、新制度に切り替わる形となります。
低濃度PCB使用製品は、使用段階から届出を行う必要があります。また使用終了後は一定期間内の処分が義務付けられるため、注意が必要です。
なお、本法案と同日には廃棄物処理法の改正についての法律案が閣議決定されています。その改正内容は、PCB廃棄物への対応と併せて「廃棄物処理制度小委員会」で議論されていました。
○環境省:「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案」の閣議決定について
廃棄物処理法の改正についても、DOWAエコジャーナルでご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
> 廃棄物処理法改正およびPCB特措法改正の法律案が閣議設定されました
■DOWAグループのPCB処理ネットワーク
DOWAグループでは、エコシステム秋田・エコシステム小坂(秋田県)、エコシステム千葉(千葉県)、エコシステム山陽(岡山県)の計4拠点で低濃度PCB廃棄物の処理に対応しています。岡山県には積替保管施設もあり、全国からの受入が可能です。
DOWAグループのPCB処理の特徴
- 解体から収集運搬・処理まで一貫サポート。500tクラスの大型機器も現地解体での搬出実績あり
- 国内最大級の処理能力。4拠点の工場と積替保管施設で全国対応
- 安全・安心の無害化処理。鋼製容器で運搬し、焼却後の無害化確認サンプリングを実施
法改正により、これまで対象外だった使用中の低濃度PCB製品を持つ事業者の皆さまも、届出や管理が必要になります。「自社の設備にPCBが含まれているか分からない」「処分の費用感を知りたい」「どこから手を付ければよいか分からない」という方も、お気軽にご相談ください。お見積りは無料です。
(DOWAグループの営業会社「エコシステムジャパン」のHPにアクセスします)
DOWAグループのPCB処理について、詳しい解説はこちらからご覧ください。
DOWAグループのPCB処理サービス
この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました











