今回は、環境分野の情報管理についての記事の第3弾として、前回ご紹介したデジタル製品パスポート(DPP)に関連する「バッテリーパスポート」についてご紹介します。
前回の記事:環境分野の情報管理 その2 デジタル製品パスポート(DPP)
■バッテリーパスポートについて(概略)
バッテリーパスポートとは、電池のライフサイクル全体に関わる情報をデジタルで記録・共有するための電子記録です。原材料の調達から製造、使用、リユース・リサイクルまで、バッテリーに関するあらゆる情報を一元的に管理できる仕組みとなっています。
バッテリーに貼られたQRコードを読み取ることで、消費者や事業者がバッテリーに関する様々な情報にアクセスできるようになります。対象となるバッテリーは、LMT(軽輸送手段用)バッテリー、容量2kWhを超える産業用バッテリー、EV用バッテリーです。
前回の記事でご紹介したデジタル製品パスポート(DPP)のうち、バッテリーパスポートはEU域内で早期に(2027年2月18日から)義務化されます。
※Official Journal of the European Union Regulation (EU) 2023/1542 第77条より
■バッテリーパスポートの法的な位置づけ
バッテリーパスポートは、バッテリーのライフサイクル全体の情報を透明化し、環境保護、人権尊重、資源循環の実現を目指す取り組みです。法的には、欧州電池規則(Regulation (EU) 2023/1542)にルールが定められています。
経緯
前回の記事では、「欧州グリーンディール」でサーキュラーエコノミーへの移行が目指され、「新サーキュラーエコノミー行動計画」でサーキュラーエコノミーにより市民へ持続性の高い製品が供給されることが示され、その製品の要件(DPPを含む)が「エコデザイン規則」で定められていることをご紹介しました。一方、電池について、欧州では、以前から含有する物質の環境影響への懸念等により規制が進められていました。
その後、サーキュラーエコノミーへの対応を含めた形で検討が行われ、2023年8月に電池に関するバッテリーパスポートの実施を含めた欧州電池規則(Regulation (EU) 2023/1542)が発効しています。そして、2024年8月に定められたエコデザイン規則の先行事例と位置付けられ、実施に向けた作業が進められています。
欧州電池規則
欧州電池規則には、上記のバッテリーパスポートの義務化の他、カーボンフットプリント、デューデリジェンス、リサイクル材料の含有割合などに関する義務などが定められおり、それらの内容は、バッテリーパスポートで表示することになります。
■バッテリーパスポートに含まれる情報
バッテリーパスポートには、製品のライフサイクル全体の様々な情報が含まれます。ただし、誰もがすべての情報を閲覧できるわけではなく、アクセス権限に応じて分類されます。
※詳細は、Official Journal of the European Union Regulation (EU) 2023/1542 第77条や附属書 XIIIに掲載
一般公開情報(誰でもアクセス可能)
- 製造者に関する情報
- バッテリーに関する一般的な情報(製造日、重量、容量、化学組成、有害物質など)
- カーボンフットプリントの情報(ライフサイクル全体のCO2排出量)
- デューデリジェンスに関する情報
- リサイクル・再利用に関する情報 など
その他、アクセス権限が生じる情報
(ステークホルダー、認証機関等、情報によってアクセスできる者が異なる)
- 電池の正極、負極、電解液の詳細な構成
- 部品情報
- 分解情報
- 安全対策
- 性能情報 など
■日本の対応
日本においても、欧州電池規則への対応を含め、蓄電池のサステナビリティ確保に向けた取り組みが進められています。
ウラノス・エコシステム
バッテリーパスポートに含まれる様々な情報は、原材料製造、電池製造、製品製造、リユース、リサイクルなど関連する事業者によって情報が提供され、閲覧できる状態にされる必要があり、国内外で様々な取り組みが進んでいます。
前回の記事でも紹介した通り、日本が推進する「ウラノス・エコシステム」では、自動車・蓄電池業界のデータ連携を担う事業体が設立されており、EUのCatena-Xとの連携も進められています。
ウラノス・エコシステムでは、以下の図のように、国内のバッテリーパスポート(日本版バッテリーパスポート)の情報を集めるために関連する事業者の様々なステークホルダーが関与するための構築を進めています。
(出典)経済産業省:ウラノス・エコシステムの拡大及び相互運用性確保 に向けたトラスト研究会 報告書
電池サプライチェーン協議会(BASC)
電池サプライチェーンの国際競争力強化を推進する団体である「電池サプライチェーン協議会」は、バッテリーパスポートにおいて連携すべき情報を検討し、蓄電池のリユースやリサイクルを始めとするユースケースの確立や拡大を行っています。
なお、電池サプライチェーン協議会には、当社も参画しています。
■おわりに
バッテリーパスポートは、デジタル製品パスポート(DPP)の一形態として、2027年からEUで義務化されます。上述の通りバッテリーのライフサイクル全体の情報を透明化することになるため、EUへ上市する日本企業も対応が必要になってきます。
バッテリーパスポートをきっかけに、他の製品カテゴリーでもDPPの実装が進んでいきます。環境分野における情報管理の重要性は今後ますます高まっていくと予想されます。
この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました











