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循環型社会を目指すオランダの取り組み
その4 オランダの政策

オランダは資源を効率的に利用するとともに再生産し、持続可能な形で循環させながら利用していく循環型社会を、2050年に達成することを目指しています(*1)
廃棄物収集・リサイクル・清掃を行う行政機関であるMeerlandenをネット検索すると、”Samen sneller circulair”(共により早く循環へ)というスローガンが出てきました。

オランダは特にパッケージング分野のリサイクルではEUの先端を走っており、EU全体として2030年にパッケージングのリサイクル70%を目指す中、オランダはすでに来年この数値が達成される見込みです(*2)

PMD

目標達成方法の一つとして、パッケージング類の分別をシンプルに、「ガラス」「紙・ダンボール」そして「PMD(Plastics, Metal, Drink Cartons)」のみにしていくという手法が選択され、自治体ごとに段階的に取り入れられています。

この手法にはごみ収集後、機械で分別するための技術の発展が不可欠ですが、現在主流である細かい分別から住民の負担を減らし、余計なごみを混ぜることを減らせる点も評価されています。

牛乳やジュースなどの、「ドリンクカートン」と呼ばれる紙パックはラミネート加工された厚紙とプラスチックの注ぎ口が一体となった紙パックです。

紙とプラスチックが一体化しているので、今まではこのままではリサイクルできませんでしたが、上記PMD移行の一環として、最近これをプラスチックの蓋ごとプラスチックごみに出せるようになりました。

オランダでは年間約70,000トン以上のドリンクカートンがごみとなりますが、このシステムでは収集後のドリンクカートンは他のプラスチック類から分離され、紙、アルミニウム、プラスチックの部分ごとに、それぞれが原材料に戻る工場へ送られ、新たにペン、箱、新聞などに生まれ変わります。

PMD移行への途中ですが、現在自治体によってはプラスチックや紙類を混合ごみと一緒に出すと、その先で自動的に分けられるシステムになっているところもあります。一緒に集められたプラスチックと紙や、プラスチックとドリンクカートンを分けるためには、赤外線カメラや紙を吹き飛ばす送風設備が使われています。

オランダは金属類のリサイクルにも非常に力を入れており、家庭から出る飲料や食料品の缶詰など金属包装のリサイクル率は2016年時点で94%(1994年時はその半分)でした。
当時のEUの目標がリサイクル率50%、オランダ自身が85%だったため、オランダは自国の目標も上回っていることになります(*4)

今後PMDで収集方法が変わると思いますが、ジュース缶や食品の缶詰や、アルミホイルなどのアルミごみは、現在私が住む地域ではグレーの混合ごみに入れて出して良いことになっています。
これら金属ごみはリサイクル工場に集められ、鋼鉄類(スチール)など、磁石で吸着できる金属は特殊磁石、アルミなど吸着できない金属は渦電流セパレーター(Eddy current separators(*5))で分別され、再利用されています。

人々の住む地域や教育レベルによって意識は違いますが、オランダの家庭ごみに関する一般的な認識は、可能な限り生ごみ、ビン、缶・メタル類、プラスチック類、紙・ダンボール類、繊維、薬品等化学物質などの各カテゴリーに分けてリサイクルし、どうしても分けられないものは混合ごみとして出すというものです。

政府の面白い取り組みとして、混合ごみ以外を全て収集車で引き取りに行き、混合ごみだけを個人がコンテナに出しに行かなければならないという地域を実験として作ったところ、混合ごみを出しに行くのが面倒なため分別に熱心になり、混合ごみが減ったという実験結果になりました。様々な試みでゴミを減らす方法を探っていることに感銘を受けました。

再利用可能な資源は国内または外国の施設でリサイクルされ、再利用できない資源は焼却または埋め立てられます。
焼却や埋め立ては最善ではありませんが、焼却の場合は少なくとも電力を生み出すため、この2つの選択肢の中では出来るだけ焼却が選択されるようになっているとのことです(*3)

【参考資料】

 
StatLine - Windenergie op land; productie en capaciteit per provincie
*1
Circular Dutch economy by 2050
*2
State Secretary Van Veldhoven launches new campaign to combat packaging waste
*3
Schooltv: Hoe maak je energie uit afval?
*4
Nederlanders ongemerkt kampioen in blik recyclen
*5
渦電流セパレーターと特殊マグネットによる分別
Hoe wordt blik gerecycled?
Metaal tot in de eeuwigheid

この記事は
オランダ在住・在勤・元ジャパンタイムズ紙記者
Yumi Wijers-Hasegawa が担当しました

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