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その道の人に聞く

環境格付融資と環境リスクについて―(その7)

株式会社日本政策投資銀行
事業開発部 CSR支援室長
竹ケ原 啓介 様


【DBJ】日本政策投資銀行
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今回は、竹ケ原啓介様インタビューの7回目です。
「まとめ―環境格付け融資」についてお話しいただいています。

・・・前回のドイツの話の流れから・・・

ドイツのリサイクルや産廃物処理についてはどのような状況ですか?

やはり仕掛けづくりがうまいなと思いますね。ドイツのリサイクルの原点は、72年に「廃棄物の適正な処理に関する法律」に始まります。これは、単に公衆衛生の観点から「生活圏から廃棄物を除きましょう」という程度の内容でした。そのあと86年の法改正で「3R」が唱われ。その具体策として「容器リサイクル法」が制定されます。その基本にあるのが「拡大生産者責任」という概念であり、一度消費者の手に渡った財の回収・再資源化まで、製造者の責任としたわけです。

回収の義務を負った企業約600社が「これは大変だ!」ということで協力し、回収の会社「DSD(デュアルシステム)」を作りました。ドイツでは、元々廃棄物処理は従量制で有料だったのですが、そこに新しいゴミ箱を用意し「ここへ指定の容器を入れてくれたなら、無料で回収します」としたわけです。

そうなると、分別をしっかりしてリサイクルに回せば回すだけ、有料である普通ゴミの発生量を減らせますから、放っておいても分別排出のインセンティヴが働きます。発生源できちんと分別排出された容器ですから、この後のリサイクル工程の負担も小さくなります。こうして回収システムがうまく回っていきました。

大型の家電についても、これと同様のコンセプトにより、「シェアードレスポンスビリティ」という概念のもと、回収用地を自治体が提供し、ユーザーはそこまで持って行き(分別排出)、メーカーが無償回収して再資源化するというインフラが整備されています。回収量が多すぎて処理キャパシティと技術が間に合わなかったり、大型機器はこのインフラに乗るけれども、小型家電はつい面倒で自治体のゴミ箱に混入してしまうなどの様々な問題は発生していますが、ファインチューニングが続けられています。その過程で、容器包装リサイクル用に整備された、各家庭の庭先まで整備されたインフラを活用して、小型家電類の回収基盤を図るなどといった新しい取り組みが出てきています。

再資源化などの処理の技術や丁寧さ、これといって経済的な動機付けなどないのに、きちんと分別排出する平均的な住民意識レベルの高さなどは日本の方が優れていると思いますが、とにかく仕組み作りのうまさは見習うべきことが多いですね。

以前に別のコラム記事で、ドイツの「消費エネルギー証明」「必要エネルギー証明」というシステムが紹介されていたのですが、非常に良いシステムだと思いました。「断熱窓」とか「太陽光発電」とか、パーツごとのPRだけでなく、全体としてこれくらいである、と表示されると理解しやすいです。

「エネルギー証明書」のシステムは、公的に建物を診断して、その建物の省エネ性能を数値化しているのですが、自動車を買う際に燃費を均一尺度で比較するように、住宅の燃費性能を比較できるようにするためのシステムです。

「この建物は1平米あたりの消費エネルギーは何kw/hで、 もう一方の建物に比べ半分のエネルギー消費で済みます。」と言われたら、その価値は高まりますね。「あくまで参考値」としての位置づけですが、定着してくればそれに留まらず不動産の購入や賃借の際の判断の目安になっていくでしょう。

高い評価を得て、販売価格や賃料が安定している物件はよいのですが、評価が下がってしまった建物は、家賃や売価に響きますから、大家さんや売り手も断熱性能を改善するなど高機能化を進めることになり、省エネリフォーム投資が促されます。

またこのシステムは、その診断を行う「エネルギーアドバイザー」を商工会議所に認定された地元の工務店や設計士が行っていて、地域における雇用促進の役割も果たしています。
日本でも同様な考え方をしている方もいらっしゃるようなので、いずれ似たようなシステムが入ってくるのではと思います。
日本でも民生部門のエネルギー対策が進まないと言われていますが、このようなシステムは非常に効果的だと思います。

最後に、環境格付け融資を受けようと思われている企業の方に何かアドバイス的な物がありましたらお願いします。

これまで、200社近い評価をさせていただいているんですが、基本的にEMSがしっかりしていれば問題がないといえます。何か特別なハウツーがあるわけではありません。
中小企業の経営者のなかには、「はっきり言って、コストは考えているけど、環境への取り組みなんかしていませんよ・・」などとおっしゃる方もいらっしゃいます。しかし、実際には自社の、意図せざる環境対策にお気づきでないだけのことも多いです。
このような会社を調査してみると、配管からのエアー漏れをこまめに点検し、また頻繁にポンプを点検修理するなどの形で無理無駄を排除するための地道な取り組みを行っています。

これは我々の評価では環境対策を行っている事になります。乾いたぞうきんを絞るくらいコストダウンの工夫をしているということは、環境配慮に繋がっている場合が多いんですね。コストダウンの努力、生産性改善に向けた不断の努力が環境経営でもあるわけです。
環境格付けの本質的な役割は、企業の地道な努力をきちんと評価し、これをマーケットに伝えることで、その代弁をすることにあると考えています。その点で、BtoCの製造業の方は「自分たちのプロダクトはエコである、当社はこれだけ環境に良いことをしている」とアピールしやすいのですが、BtoBの業種は「ウチが提供している部材はとても環境性能に優れており、川下企業の役にたっています」と言ってもなかなか気づいてもらえません。こうした部分に光をあてるためのツールであって、決して○×をつけるためのものではありません。

「環境格付け」というと、ミシュランのように外から勝手に評価するという印象があるのですが、どういうきっかけでどのようなことを評価するのですか。

確かに、「格付け」という言葉にはそんなイメージがありますね。我々は、当初「格付け」とは言ってなかったのですが、マスコミによる報道のなかでいつの間にか定着したので、我々も使わせてもらっているというのが実態です。
決して、勝手に企業をのぞきに行く訳ではなく、我々はお客様からの融資の申し込みをいただいた後に、守秘義務契約を結んだ上で企業の内部を見させて頂きます。その結果が、調達条件の改善であったり、各種報道を通じたIR面での効果に結びつくのであれば、大変喜ばしいことです。

DBJ環境格付けは3つのパーツから構成されています。
まず一つ目は経営事項(EMS)ですね。リスクマネージメントも含め、環境問題への対応を企業経営上の課題として認識しており、その取り組みがPDCAサイクルのような流れできちんと管理されているかどうかをうかがいます。ISO14001をきちんと回している企業さんであれば充分クリアできるかと思います。
二つ目は数値データ、これを「環境パフォーマンス」と呼んでいます。エネルギー投入量、温暖化ガスの排出量、マテリアルのIN/OUT、化学物質の使用/管理、水の出入り、廃棄物の量や処理など、全て定量データですね。いろいろなデータを総量、原単位に加えて財務データと照らし合わせた「環境効率性」を見る計算式によって評価させていただきます。
三つ目は事業関連と呼んでいますが、各業態ごとにサプライチェーンが異なるので、その業態に合わせた質問事項を調査させてもらっています。

最初の説明の繰り返しになってしまいますが、「環境格付け」というのは金融機関としての社会的責任の一環として、環境に資する金融商品として開発したものです。
金融が環境に対して、「もっと積極的に貢献したいが、何かできないだろうか?」というところが出発点で、環境負荷削減に積極的に取り組む企業には融資の面でも優遇して、環境経営を後押しするための制度です。

先にも言いましたが、これまでのほんのほとんどの企業さんが行ってきた、乾いたぞうきんを絞るような経営努力がそのまま環境評価としてのポイントになるということに気づいていただければと思います。日本企業の持つ環境ポテンシャルは非常に高いのです。

7回シリーズでお届けしました「環境格付融資と環境リスクについて」は今回で終了です。
ドイツでの日常生活での出来事なども面白いエピソードもお話しいただいたのですが、本題の話題が盛りだくさんで、ご紹介しきれなかったことが大変残念です。

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