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米国環境保護庁(EPA)がPFASに関わる飲料水基準を最終決定

2024年4月10日に米国環境保護庁(EPA)がPFASの第一種飲料水規則(National Primary Drinking Water Regulation(NPDWR))を最終決定しました。米国で飲料水中のPFASについて法的拘束力のある基準が設定されるのは初めてとなります。

(出典)Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) | US EPA

これまでは飲料水の健康勧告値としてPFOSとPFOAの合算で70ng/Lと定められていました。

EPAはPFAS汚染から国民の健康を保護するために2021年10月のPFAS戦略ロードマップを策定し、多くの措置を講じてきており、この飲料水基準もその一環となるものです。
EPAの文章には、この規則が、約1億人の飲料水からのPFASの暴露に加えて数千人もの死者を防ぎ、PFASに起因する数万人の重篤な病気を減少できるものと期待される、とあります。

■PFASに関わる飲料水基準

下表にPFASに関わる第一種飲料水規則を示します。

項目 MCL
(最大汚染レベル)
MCLG
(最大汚染レベル目標)
PFOA
(ペルフルオロオクタン酸)
4ppt
(ng/L)
0
PFOS
(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
4ppt
(ng/L)
0
PFHxS
(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)
10ppt
(ng/L)
10ppt
(ng/L)
PFNA
(ペルフルオロノナン酸)
10ppt
(ng/L)
10ppt
(ng/L)
HFPO-DA(一般名:GenX)
(ヘキサフルオロプロピレンオキシド二量体酸およびそのアンモニウム塩)
10ppt
(ng/L)
10ppt
(ng/L)
PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBS※を2種以上含む混合物 1.0
Hazard Index
1.0
Hazard Index

※PFBS:パーフルオロブタンスルホン酸

PFASについては、PFOSやPFOAなどの6項目に基準が設定されています。
法的強制力のある最大汚染レベル(Maximum Contaminant Level (MCL))と法的強制力のない最大汚染レベル目標値(Maximum Contaminant Level Goal(MCLG))の二種類があり、MCLが日本でいう水道水の水質基準に当たるものです。MCLGは健康にリスクがないと知られている又は期待される濃度であり目標となる濃度です。

PFOSとPFOAのMCLはそれぞれ4ppt(ng/L)となっています。
日本の水道水水質についてはPFOSとPFOAは水質基準項目ではなく、その下の水質管理目標設定項目が定められており、暫定基準としてPFOSとPFOAの合算値で50ng/L以下(0.00005mg/L)と定められています。

また、PFOSやPFOAに加えて、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)、PFNA(ペルフルオロノナン酸)、HFPO-DA(ヘキサフルオロプロピレンオキシド二量体酸およびそのアンモニウム塩、通称:GenX化合物)についてはそれぞれに基準が設けられ、さらにPFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBS(パーフルオロブタンスルホン酸)を2種以上含む混合物、についても基準が定められています。

■第一種飲料水規則公布後の対応

この第一種飲料水規則の公布によって、水道事業者等は飲料水中のPFASについて初期モニタリングを2027年までの3年間実施し、その後も継続する必要があります。また、2027年以降はこれらの情報を一般に公表しなければなりません。

モニタリングの結果、MCLを超過することが判明した場合は、2029年までの5年間は低減措置に猶予が与えられますが、2029年以降は低減措置を講じ、違反を一般に通知する必要があります。

EPAは、州などが水道事業者等のPFAS検査や処理、また民間の井戸所有者のPFAS汚染への対応を支援するために、インフラ法を通じて新たに対策予算として10億ドルが利用可能としております。

■日本では

2024年の4月1日より、これまで厚生労働省が行っていた水道対策のうち、水質基準の策定、水道整備・管理のうち水質・衛生、が環境省に移管されています。なお、水道整備・管理のうち水質・衛生以外は国土交通省となります。

環境省おいて、2022年度より「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」と「PFOS・PFOA に係る水質の目標値等の専門家会議」が設置されています。

水道水のPFOS 及び PFOA についての今後の対応として、2024年2月の最新の「PFOS・PFOA に係る水質の目標値等の専門家会議」において、諸外国の動向及び内閣府食品安全委員会による健康影響評価を踏まえて、引き続き取扱いを検討することとされています。

また、PFHxS及びその他の有機フッ素化合物については、「PFAS に対する総合戦略検討専門家会議」が2023年7月にとりまとめた「PFAS に関する今後の対応の方向性」等を踏まえながら検討していくこととされています。

(参考)環境省ホームページ
PFASに対する総合戦略検討専門家会議 | 水・土壌・地盤・海洋環境の保全
PFOS・PFOAに係る水質の目標値等の専門家会議 | 水・土壌・地盤・海洋環境の保全

■最後に

PFASについては、国内におけるPFOS等の環境中での検出事例とその報道、化審法での規制物質の追加に加えて、国際的な規制強化の動向、例えば、欧州のREACH規則でのPFAS一括規制動きなど、から関心が高まっています。影響する事業も多岐にわたる可能性があることから、今後の動きについては注視していく必要があろうかと思います。


この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
山野 が担当しました

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