環境対策に取り組むすべての人へ
最新の知見を届ける情報サイト

DOWAエコジャーナル

2026.06.01 廃棄物管理 法律

廃棄物処理法の改正案を解説! ~スクラップヤードへの許可制導入と排出事業者への影響~

リサイクル廃棄物処理法

2026年4月10日、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。本法案では、これまで法令上の規制が及びにくかった金属・プラスチックのスクラップヤードに対して、新たに許可制が導入されます。あわせて、災害廃棄物処理の制度的な備えも強化されます。今回は、スクラップヤード規制を中心に、改正のポイントと排出事業者への影響について解説します。

※本記事における条文番号は、特に断りのない限り、改正案による改正後の廃棄物処理法の条文を指します。

■改正案の背景

使用済みの金属・プラスチック物品(雑品スクラップ)を屋外で保管・再生する事業場、いわゆる「スクラップヤード」は、資源循環の輪において重要な役割を担ってきました。一方で近年、一部のヤードで騒音、悪臭、水質・土壌汚染、火災等の生活環境保全上の支障が報告されています。環境省が都道府県等に実施した実態調査では、全国で4,000件を超える事業場が確認されており、その規制の必要性が指摘されてきました。

  • 一部の雑品スクラップは廃棄物としての規制の対象外
    廃棄物処理法の規制は「廃棄物」を対象とするため、有価物として取引される雑品スクラップには規制がかかりません。
    家電・小型家電を含む「有害使用済機器」は、平成29年改正により廃棄物でなくても届出制の対象とされましたが、これに該当しない金属・プラスチックの雑品スクラップは規制の枠外にとどまっていました。
    同一ヤード内で有害使用済機器とそれ以外の雑品スクラップが混在して保管される例もあり、「有価物か廃棄物かの線引きが難しく、指導に限界がある」という自治体の声が上がっていました。
  • 蓄電池、リチウムイオン電池などの有害・危険物が生活環境上の支障を生んでいる
    使用済みの金属・プラスチック物品(雑品スクラップ)の中には、適正な管理を欠くと環境や安全に直接の被害を及ぼすものが含まれます。
    実態調査では、廃鉛蓄電池の解体・精錬に伴う鉛による水質汚染(環境基準超過)や悪臭が報告されたほか、屋外保管された雑品スクラップに混入したリチウムイオン電池を原因とする火災が各地で確認されています。
    有価物であるために規制が及ばない一方で、こうした有害・危険物への対応が急務であることが浮き彫りになりました。

これらの背景を受けて、令和6年度に開催された「ヤード環境対策検討会」(全5回)で論点整理が行われ、令和7年2月から令和8年3月にかけて開催された中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度小委員会で制度設計が審議されました。

令和8年4月7日に中央環境審議会会長から環境大臣に対して「今後の廃棄物処理制度のあり方について」が意見具申され、これを受けて廃棄物処理法等の改正案の閣議決定に至っています。

■法案の内容(スクラップヤード規制部分)

事業者の皆様にとって重要なポイントを中心に紹介します。

1.新たに定義される三つの「物品」(第2条第7項~第9項)

改正案では、「廃棄物」の定義(第2条第1項)は変わらず、廃棄物とは別カテゴリーとして次の三つの「物品」を新設します。これらは法令上、廃棄物ではなく、有価物として扱われる物品が対象となります。

①使用済金属・プラスチック物品(第2条第7項)

使用を終了し、収集された物品で、その全部又は一部が金属又はプラスチックから成るもの(廃棄物並びに放射性物質及びこれによって汚染された物を除く)。

②要適正保管使用済金属・プラスチック物品(第2条第8項)

①のうち、適正でない保管(譲渡のためのものに限る)が行われた場合には、人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるため、廃棄物の適正な保管と生活環境の保全上同等の保管を要するもの。

③要適正再生使用済金属・プラスチック物品(第2条第9項)

①のうち、適正でない再生及び当該再生のために行う保管が行われた場合に、被害を生ずるおそれがあるため、廃棄物の適正な再生及び保管と同等の取扱いを要するもの。

具体的な品目については、委員会の報告書では金属やプラスチックが含まれる使用済物品を包括的に対象とすべきとされています。特に、廃鉛蓄電池や廃リチウム蓄電池等の有害性の高い物品が中心的に想定されています。

2.保管業・再生業の許可制(第24条の7、第24条の15)

改正案では、新たに「第四章の二 要適正保管使用済金属・プラスチック物品及び要適正再生使用済金属・プラスチック物品」(第24条の7~第24条の36)が設けられ、以下の事業について都道府県知事による許可制が導入されます。

①要適正保管使用済金属・プラスチック物品保管業の許可(第24条の7)

要適正保管使用済金属・プラスチック物品の保管(譲渡のためのものに限る)を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければなりません。ただし、事業場の敷地面積が政令で定める面積以下である者などは除外されます(小規模事業者の取扱いは政令で示される)。

②要適正再生使用済金属・プラスチック物品再生業の許可(第24条の15以下)

再生を業として行おうとする者についても、同様に都道府県知事の許可が必要となります。

欠格要件、許可取消し、措置命令などのスキームは、既存の産業廃棄物処理業の許可制度に準じた内容となっています。

3.基準の遵守義務、改善命令、措置命令、罰則

許可業者は、保管・再生に係る基準を遵守する義務を負います。基準違反に対しては、改善命令、措置命令が発出され、違反した場合は罰則が適用されます。

4.輸出時の環境大臣の確認

環境汚染のおそれのある物品(※1)については、国内における保管・再生を原則とし、輸出する際には事前に環境大臣の確認(国内において保管・再生が困難であること等)を要することとされています。これは、海外での不適正保管・再生による環境汚染のおそれを抑制しようとするものですが、結果として資源の海外流出を抑止し、国内資源循環を強化することにつながることが想定されます。

(※1)改正廃棄物処理法の対象となる使用済金属・プラスチック物品であって、バーゼル法の規制対象となるもの

5.従来の「有害使用済機器」制度(現行第17条の2)の整理

上記の許可制度導入に伴い、平成29年改正で導入された「有害使用済機器の保管等」(届出制)の規定は、本改正により削除されます。届出制の下で対応してきた事業者にとっては、許可申請に切り替える必要があります。

改正前後の規制の範囲

■「廃棄物」と「使用済金属・プラスチック物品」の関係

今回の改正は、新設される「要適正保管/再生使用済金属・プラスチック物品」が、法令上の「廃棄物」とは別の概念として整理されていることがポイントになります。

廃棄物処理法における「廃棄物」の判断は、従来どおり「総合判断説」(昭和52年環計37号通知)に基づいて行われます。つまり、その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無、占有者の意思等を総合的に勘案して判断されます。今回の改正は、廃棄物の定義そのものは変更していません。

> 廃棄物処理法解説 はじめの一歩(その1) 〜一般廃棄物と産業廃棄物の定義〜

使用済の金属・プラスチック物品をめぐる規制構造は、改正後は以下のように整理されます。

物品の性質 該当する規制 主な根拠条文
廃棄物に該当する場合 廃棄物処理法(産業廃棄物処理業の許可、委託基準、マニフェスト等) 第12条、第14条等
廃棄物に該当せず、要適正保管/再生に該当する場合 廃棄物処理法(保管業・再生業の許可、基準遵守、輸出確認等) 第24条の7以下

この整理は、「有価物として扱われていれば廃棄物処理法の網がかからない」というこれまでの運用を踏まえて、廃棄物に該当しない物品についても、廃棄物と同等の管理を要求する仕組みを並列に設けるものです。

■排出事業者に求められること ~コンプライアンスの強化~

今回の改正は、直接的にはスクラップヤード事業者を規制する内容ですが、排出事業者も次の観点での対応が必要となります。

1.取引先ヤードの許可取得状況の確認

これまで使用済の金属やプラスチックを「有価物」としてヤードに売却してきた排出事業者は、今後、引き取り先のヤードが新制度の許可(第24条の7、第24条の15)を取得しているかどうかの確認が重要になると考えられます。許可未取得のヤードに引き渡した場合、当該ヤードは業者が処罰されるリスクを負うことになり、結果として自社の資源出口が機能しなくなるなどの影響を被る可能性があります。

※排出事業者責任(第3条)の対象は廃棄物に限定されます。

2.輸出ルートを利用している場合の影響確認

自社の使用済物品が輸出ルートを経由しているサプライチェーンに組み込まれている場合、環境大臣の確認制度の導入により、輸出可否の判断や手続きに影響が及ぶ可能性があります。

3.自治体条例との関係整理

千葉県等、すでに独自のヤード条例を設けている自治体があります。改正法の施行後も、これらの自治体条例が引き続き存在するとすれば、許可制(法)と条例の二重対応が必要となる可能性があります。

■施行までのスケジュール

本法案は、第221回国会に提出される予定です。スクラップヤード規制部分の施行日は、公布の日から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日とされています。施行までの期間は、ヤード事業者・排出事業者の双方にとって、新制度への対応準備期間と位置づけられます。

なお、もう一つの柱である災害廃棄物処理の推進規定については、緊急性の高さを踏まえ、公布の日から3か月を超えない範囲で政令で定める日等から速やかに施行される予定です。

■まとめ

今回の改正は、これまで法令上の網にかかりにくかったスクラップヤードに対して、廃棄物処理業と同等のスキームによる規制を導入するものです。形式上は「廃棄物」とは別カテゴリーとして整理されていますが、実質的な要求水準は廃棄物処理業に近いものとなります。

排出事業者の立場では、廃棄物の処理委託に直接の追加義務が課されるわけではないものの、有価物として引き渡している使用済物品の引取先について、これまで以上に許可・適正性の確認が求められることになります。

この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました

ACCESS RANKING

よく見られている記事

CONTACT

お問い合わせ

お問い合わせはこちら