PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む変圧器やコンデンサー、塗膜くずなどは、法律により期限内の処分が義務付けられています。低濃度PCB廃棄物の処分期限は2027年3月31日に迫っており、高濃度PCB廃棄物を処理してきたJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)の事業は2026年3月に終了しています。さらに2026年6月には改正PCB特措法が公布され、これまで規制の対象外だった「使用中」の低濃度PCB使用製品にも届出義務が課されることになりました。
本記事では、PCBの基礎から、対象物の見分け方、処理期限、処理業者の選び方、処理の流れについて解説します。
■PCBとは?
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、絶縁性・不燃性・化学的安定性に優れた油状の化学物質です。こうした性質から、変圧器(トランス)やコンデンサーの絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など、幅広い用途に使われていました。
しかし、1968年のカネミ油症事件をきっかけに毒性が社会問題となり、昭和47年(1972年)から製造が中止され、また、環境を経由して人の健康を損なうおそれがある化学物質の製造、輸入及び使用を規制する「化学物質審査規制法」制定のきっかけとなり、その第1号物質(第一種特定化学物質)として指定されました。PCBは化学的に安定していて分解されにくく、人の健康や環境への有害性が確認されているうえ、大気中の移動によって広い範囲に残留することも分かっています。
(参考:化学物質審査規制法ホームページ | 保健・化学物質対策 | 環境省)
■なぜ処分しなければならないのか
国際的には、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約で、PCBを含む機器の使用を2025年までに終え、2028年までに廃棄物を適正に処理することが目標とされています。日本もこの条約に批准しています。
国内では2001年に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(以下、PCB特措法)が制定され、PCB廃棄物を保管する事業者に、保管状況の届出や期限内の処分などが義務付けられました。
■なぜ今もPCBが残っているのか
製造禁止から50年以上が経った現在もPCBを含む機器が残っている理由としては、以下の理由などが挙げられています。
1つは、処理施設の立地に時間がかかったことです。かつては処理施設の立地について地元の理解が得られず、処理体制が整うまでの間、各事業者が保管を続ける状況が長く続きました。その後、PCB特措法が施行され、処理体制が整備されていきます。
もう1つは、低濃度PCBの意図しない混入です。低濃度PCBは、主に平成2年(1990年)頃まで行われていた再生絶縁油の製造・流通・使用の過程で、意図せず混入したと推定されています。そのため、PCBの製造中止後につくられた比較的新しい機器にも、低濃度PCBが含まれている可能性があります。
環境省の資料によると、令和6年(2024年)6月末までに保管中の低濃度PCB廃棄物として届け出られている約5万台の変圧器・コンデンサー等に加え、使用中の低濃度PCB含有疑い機器が約30万台存在すると推計されています。
■高濃度PCBと低濃度PCBの区分
PCB廃棄物は、PCBの濃度によって「高濃度」と「低濃度」に区分され、処理先や処分期限がそれぞれ定められています。
| 区分 | 濃度 | 主な処理先 |
|---|---|---|
| 高濃度PCB廃棄物 | 5,000mg/kg(ppm)を超えるもの(可燃性の汚染物は100,000mg/kgを超えるもの) | JESCOの5事業所(2026年3月までに事業終了) |
| 低濃度PCB廃棄物 | 0.5mg/kgを超え、5,000mg/kg以下(可燃性の汚染物は100,000mg/kg以下) | 環境大臣の無害化処理認定施設、都道府県知事等の許可施設 |
なお、PCB濃度が0.5mg/kg以下のものは、PCB廃棄物としての規制の対象外です。
低濃度PCB廃棄物には、変圧器・コンデンサー等の電気機器や絶縁油のほか、橋梁・タンク等の塗膜くず、ウエス・軍手、汚泥なども含まれます。
■対象となる機器の見分け方
高濃度PCBを使用した変圧器やコンデンサーは、銘板に記載された情報から判別できます。銘板に書かれた製造者名、型式、表示記号などを元に確認します。主に昭和47年(1972年)以前に製造されたものの一部が該当します。
低濃度PCBは銘板だけでは判別できないため、製造年を確認したうえで絶縁油のPCB濃度を測定する必要があります。絶縁油の交換が可能な変圧器等は平成5年(1993年)以前、絶縁油の入れ替えができないコンデンサーは平成2年(1990年)以前に製造されたものについて、PCB汚染の可能性があるとされています。
また、環境省は平成24年(2012年)に、平成6年(1994年)以降に製造された変圧器と平成3年(1991年)以降に製造されたコンデンサーには原則としてPCB汚染がない旨を通知していました。しかし、その後これらの年以降に製造された機器からも低濃度PCBの検出が報告されたため、当面は平成16年(2004年)までに製造されたコンデンサー等についても、廃棄時に絶縁油のPCB濃度を測定するよう求めています。
■処理期限について
高濃度PCB廃棄物は、JESCOが全国5か所(北九州・大阪・豊田・東京・北海道)の施設で処理してきましたが、令和7年(2025年)10月15日に登録受付を終了し、令和8年(2026年)3月末で処理事業を終了しました。環境省は、新たに高濃度PCB廃棄物が発見された場合、管轄の自治体へ保管状況を報告するよう求めています。
低濃度PCB廃棄物の処分期間は、PCB特措法により令和9年(2027年)3月31日までとされています。期限を過ぎて低濃度PCB廃棄物を保有していると法令違反となり、改善命令等の対象となる可能性があります。
■改正PCB特措法について
改正PCB特措法は令和8年(2026年)6月19日に公布され、令和9年(2027年)4月1日に施行されます。低濃度PCB廃棄物の処分期限の翌日から、新しい制度に切り替わる形です。
主な改正点の1つ目は、低濃度PCB使用製品の届出と管理です。使用中の低濃度PCB使用製品を所有する事業者は、所有・使用の状況、使用場所、使用終了の見込み等を都道府県知事に届け出るとともに、政令で定める基準に従って管理することが求められます。
2つ目は、処分期限の考え方の変更です。現行の低濃度PCB廃棄物の処分期限(令和9年(2027年)3月31日)は変わらず、期限内に処分すべきものは引き続き現行法の対象です。一方で、改正法の施行日以降に使用を終了した製品や、新たにPCB廃棄物と判明したものは、使用終了日または判明日から5年を超えない範囲で政令で定める期間内に処分することとされました。これまでの全国一律の期限から、個々のPCB廃棄物ごとに設定される期限へと見直されています。
3つ目は、高濃度PCB廃棄物の取扱いです。新たに見つかった高濃度PCB廃棄物も同様に一定期間内の処分が義務付けられ、今後は処理能力を有する民間の処理施設で処分されることになります。
なお、環境省は処分期限に向けて、施設内の電気設備を総点検し、該当する機器がないか確認するようアナウンスしています。
(参考:低濃度PCB廃棄物処分について | 低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト| 環境省)
■処理業者の選び方
低濃度PCB廃棄物の処分を委託できるのは、廃棄物処理法に基づき環境大臣の無害化処理認定を受けた施設、または都道府県知事(政令市の場合は市長)の許可を受けた施設に限られます。処理方法は施設ごとに異なり、焼却や洗浄などの方法で無害化されます。収集運搬についても、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者への委託が必要です。
委託先を検討する際は、処分したいもの(電気機器、絶縁油、塗膜くず、汚泥、ウエス等)が処理可能な品目に含まれているか、認定や許可の内容と有効期限、大型機器であれば現地での解体や搬出まで対応できるか、といった点を確認しておくと安全です。
認定施設の一覧や制度の概要は、環境省の低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイトで確認できます。
■処理費用と助成制度
処理費用は、対象物の種類・数量・大きさ・PCB濃度・保管場所などによって大きく変わります。機器情報や写真などをもとに、まずはお見積りをお出しします。
中小企業(個人事業主を含む)を対象に、国の助成制度「低濃度PCB廃棄物処理支援事業」(公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団)が実施されています。低濃度PCB廃棄物の分析費・収集運搬費・処分費について、対象となる経費の2分の1の額が助成されます。申請期限は令和9年(2027年)3月31日で、予算の範囲を超えた場合はその時点で受付が停止されます。分析や処理は、交付決定通知書を受け取った後に行う必要があります。
■処理の流れ
DOWAグループにご相談いただいた場合の一般的な流れは、次の4ステップです。
- ご相談・調査・お見積り
設備情報や保管状況を確認し、必要に応じて現地調査を実施したうえで、処理方法や費用をご提案します。 - ご契約・処理準備
契約や事前協議などの手続きを行い、搬出方法や日程を調整します。 - 搬出
マニフェストを発行し、収集運搬の専門業者が安全に搬出します。 - 処理・完了報告
法令に基づき適正に処理し、処理完了後にマニフェストを返却します。
ご相談の際に、機器の重量・サイズ・メーカー・型式などの機器情報、PCB濃度分析結果報告書の写し、PCB廃棄物の保管届出書の写しをご用意いただけると、検討がスムーズです。分析結果がない場合でも、機器情報から低濃度PCBを含む可能性を判断し、必要に応じて分析方法についてもご案内します。
DOWAの低濃度PCB廃棄物処理■DOWAグループのPCB処理体制
DOWAグループは、低濃度PCB廃棄物を処理できる施設を国内に4拠点(エコシステム秋田、エコシステム千葉、エコシステム山陽、エコシステム小坂)持ち、積替保管施設とあわせて全国の低濃度PCB廃棄物に対応しています。
大型機器は、低床トレーラーで運搬可能なサイズ・重量であればそのまま受け入れることができ、500tクラスの大型機器についても、現地解体による搬出実績があります。現地で解体した機器は鋼製容器に収納して運搬し、運搬時の漏洩を防いでいます。また、焼却後は毎日サンプリングを行い、無害化を確認しています。
電気機器や絶縁油に加え、塗膜くずや汚染物などにも対応しています。
■まとめ
PCBは製造禁止から50年以上が経った現在も、保管中・使用中の機器に残っています。高濃度PCB廃棄物、低濃度PCB廃棄物ともにPCB特措法の改正を伴いながら、排出ルールが取り決められています。
低濃度PCBを含む可能性のある機器や廃棄物をお持ちの場合や、該当するかどうか判断に迷う場合は、お気軽にご相談ください。
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この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました











