2026年4月10日に閣議決定された廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案には、前回解説したスクラップヤード規制と並ぶもう一つの柱として、「災害廃棄物の処理の推進」が盛り込まれています。
令和6年能登半島地震をはじめとする近年の災害対応の教訓を踏まえ、平時からの備えの制度化と、被災自治体への支援体制の強化を図るものです。自治体のほか、災害廃棄物の処理を担う民間の処理業者、排出事業者にも関係する内容です。今回は、改正案のうち災害廃棄物に関する部分を解説します。
※本記事における条文番号は、特に断りのない限り、改正案による改正後の廃棄物処理法の条文を指します。
■改正案の背景
災害廃棄物対策については、東日本大震災の教訓を踏まえ、平成27年の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律」により、平時の備えから大規模災害発生時の対応まで切れ目なく対策を行うための法整備が行われました。その後も、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨、そして令和6年能登半島地震と、大規模災害への対応が続いています。
こうした近年の災害対応を通じて、環境省の災害廃棄物対策推進検討会では現行制度の点検・検証が行われ、次のような課題が指摘されました。
- 事前計画の不足
災害廃棄物処理計画の策定率は、都道府県では100%に達している一方、市町村では86%にとどまっています。また、計画を策定済みの市町村でも、仮置場候補地の選定、水害の被害想定、民間団体との協定締結といった重要事項の反映が不十分なケースが多いとされています。 - 民間の廃棄物処理施設の活用の停滞
平成27年改正で設けられた災害時の特例措置について、活用をさらに進める必要があるほか、特例措置の拡充を求める意見が自治体等から示されていました。また、民間の最終処分場が災害廃棄物を受け入れると残余容量が大幅に減少し、通常の事業に支障を来すおそれがあることから、受入れを促進するための制度的措置を求める声が事業者団体から上がっていました。 - 被災自治体の人員・専門的知見の不足
発災時のし尿・生活ごみ対策、片付けごみ対策、損壊家屋の公費解体などの実務はもとより、平時の計画策定や研修・訓練についても、自治体のマンパワー・ノウハウ不足が大きな課題とされています。
これらの課題を受けて、令和7年2月から令和8年3月にかけて開催された中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度小委員会で制度設計が審議され、令和8年4月7日に中央環境審議会会長から環境大臣に対して今後の廃棄物処理制度のあり方についてが意見具申されました。改正案の災害廃棄物関係の規定は、この意見具申の「Ⅴ.災害廃棄物への対応」の内容が反映されています。
■法案の内容(災害廃棄物関係部分)
改正案の災害廃棄物関係の措置は、平時からの備えの制度化や、災害発生時の処理を円滑化する特例、自治体への支援体制の構築などの観点で規定されています。
○平時からの備えの制度化
①市町村の災害廃棄物処理計画の策定の義務化(第6条第2項第6号)
市町村が定める一般廃棄物処理計画の記載事項に、「非常災害時における一般廃棄物の適正な処理等に関する施策に関する事項」が追加されます。これまで災害廃棄物処理計画の策定は法律上の義務ではなく、環境省の災害廃棄物対策指針等に基づく行政上の取組として進められてきましたが、改正により、法定計画である一般廃棄物処理計画の一部として策定が義務付けられることになります。
平時の一般廃棄物処理と発災時の災害廃棄物処理の一体性・連動性を確保し、計画の実効性を高める狙いがあります。
②自治体と民間事業者等との災害支援協定の締結(第5条の6の2、第6条の4)
都道府県及び市町村は、「非常災害廃棄物適正処理業者等」との間で、非常災害廃棄物の処理に関する協定を締結するよう努めなければならないこととされます(努力義務)。
災害廃棄物の処理は市町村だけでは対応が難しく、民間の処理業者・団体との連携が不可欠であることから、平時からの協定締結を法律上の努力義務として位置付けています。
○発災時の処理を円滑化する特例
①再委託・再々委託の特例(第6条の2)
市町村から非常災害廃棄物の処理の委託を受けた者(非常災害廃棄物処理受託者等)が当該処理を他人に再委託すること、さらに再委託を受けた者(非常災害廃棄物処理再受託者等)が他人に再々委託することができることとされます。
一般廃棄物の処理委託については再委託が厳しく制限されており、平成27年改正に伴い非常災害時の委託の特例(施行令第4条の2)が設けられていましたが、改正案では、非常災害廃棄物について再委託に加え再々委託までが法律上で位置付けられています。大規模災害時には多数の事業者が処理に関与する実態があるためです。
②一般廃棄物処理施設の設置手続の特例(第9条の3の3)
非常災害廃棄物処理受託者等が、非常災害廃棄物の処分のため、生活環境保全上の支障が生ずるおそれの少ない一般廃棄物処理施設を設置する場合、都道府県知事への届出の際に、生活環境影響調査の結果を記載した書類の添付を省略できることとされます。
発災後に仮設の破砕施設等を迅速に立ち上げるためには、施設設置手続の所要時間が課題となります。意見具申では、畳、瓦、石膏ボードの破砕施設等(廃棄物処理法第15条の許可対象とならない産業廃棄物処理施設)で同種の災害廃棄物を処理する場合の手続簡素化の必要性が指摘されており、これに対応するものです。
③非常災害廃棄物最終処分場の指定制度(第9条の3の4)
都道府県知事は、一般廃棄物の最終処分場等であって基準に適合すると認められるものの設置者を、その申請に基づき、「非常災害廃棄物最終処分場」の設置者として指定できることとされます。指定を受けた設置者は、非常災害廃棄物の処分の委託を求められたときは、正当な理由がある場合を除き、委託を受けなければなりません。
災害時には市町村の最終処分場だけでは埋立容量が不足するため、民間の最終処分場の活用が不可欠です。あらかじめ指定する仕組みにより、発災時の受け皿を平時から確保しておくものです。なお、指定は設置者の「申請に基づき」行われるため、民間の処分場が一方的に指定されるものではありませんが、指定を受けた場合には受託義務が生じる点が特徴です。また、指定を受けた最終処分場の設置者は、都道府県知事による定期検査が免除されるというメリットが生じます。
○自治体への支援体制の構築
①国による情報提供・調査研究等とJESCO等への委託(第23条の2の2)
国は、非常災害廃棄物の適正処理の円滑かつ迅速な実施に関する情報・技術的知識の自治体への提供、調査研究及び技術開発を推進するとともに、これらの事務を中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)その他の機関に委託できることとされます。
②JESCO法の改正
中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(JESCO法)が改正され、JESCOの目的に「非常災害廃棄物の適正な処理の円滑かつ迅速な実施」等が追加されるとともに(JESCO法第1条)、事業として次の2つが追加されます(JESCO法第7条)。
- 市町村・都道府県に対する、処理の方策に関する提案、専門的知識を有する者の派遣その他の援助
- 国の委託を受けて行う、情報・技術的知識の提供、調査研究及び技術開発
■施行までのスケジュール
災害廃棄物関係の規定は、公布の日から3か月を超えない範囲内において政令で定める日等から施行される予定です。スクラップヤード規制(公布から2年6か月以内)と比べて早い施行が予定されています。
■まとめ
今回の改正は、能登半島地震等の教訓を踏まえ、災害廃棄物対策について平時からの備えと被災自治体への支援体制の強化を制度化するものです。市町村の計画策定義務化、協定締結の推進、民間最終処分場の指定制度、JESCOによる支援といった、自治体と民間事業者の連携を前提とした措置が盛り込まれています。具体的な委託基準や指定の要件等は今後の政省令で定められる見込みです。
この記事は
DOWAエコシステム 企画室 後藤 が担当しました











